el:cid インタビュー。封印していた
ワイン(音源)を30年ぶりに開封。熟
成した、その音楽が示したものとは…

8月18日にアルバム『In the Shade』を発売するel:cid。このたび、ヴォーカルのShigetaがインタビューに応じてくれた。彼が今、どんな気持ちでel:cidを背負っているのか、その想いをここへ記したい。
――el:cidは、8月18日にアルバム『In the Shade』を発売します。収録した曲たちは、過去に作り上げていた曲たちだと聞きました。

Shigeta 収録曲たちを最初にレコーディングしたのが、1990年後半の時期。当初は、とあるレーベルからリリースを行なうことから、今回収録した以上の楽曲数をレコーディングしていました。でも、レーベルが無くなってしまったんですね。その後、音源をどうしようか…とメンバー内で話をしていた中、el:cidとしての表だった活動も止まってしまったことから、そのままずーっと眠らせ続けてきました。
じつはここ数年、BRASTのNAGANOさんといろんなやりとりを続けているんですけど。NAGANOさんとのやりとりの中、眠らせていたel:cidの楽曲を聞いていただき、マスタリングをして直してもらうという、謎のやりとりもしていました(笑)。ただし、当初はリリースを考えてというわけではなく、あくまでもNAGANOさんとのやりとりの中での一つの工程でした。でも、お互いに「いつか、形にして出したいね」という話もしていた中、昨年のコロナ禍以降、自分にも時間的な余裕が生まれたことから 「このタイミングで一気にアルバムを仕上げてしまおう」とNAGANOさんからご提案していただき、サウンドトリートメントをお願いしたところ、ご快諾していただきました。BEASTの活動の合間を縫うという忙しい中、全部で20曲以上新たにサウンドトリートメントしていただき、その中からアルバムの色を考慮して15曲を選曲。HAUNTED HOUSEというレーベルを通し、アルバム『In the Shade』を出すことになりました。

――収録した曲たちを聞いて感じたのが、シューゲイザーなどの要素も取り入れた90年代UKギターロックの匂いを覚える曲たちが中心になっていること。そのうえで、ポジパンと呼ばれたゴシックロックの要素や、いわゆる切ない歌メロを魅力に据えた90年代ヴィジュアル系スタイル曲なども織りまぜて構築していません?

Shigeta el:cid自体がヴィジュアル系と呼ばれるジャンルが生まれる前から活動をしてきたバンド。僕ら自身、メイクなどもしていますけど。当時でいうなら、BOOWYやBUCK-TICKZIGGYJUN SKY WALKER(S)などジャンル関係なくメイクや髪の毛を逆立てていたバンドがいたように、同じ感覚で取り入れていました。加えて、僕自身がBauhausやCureなどポジティブパンクと呼ばれたバンドが好きだったこともあって、その影響下の中で活動を始めています。ただ、活動をしていく中、次第に黒服を着た女の子たちの支持が強くなり、気がついたらヴィジュアル系という枠の中でも活動をしていたことからその範疇で語られることも増えましたけど。僕ら自身は、とくにヴィジュアル系バンドだという意識では活動をしていませんでした。
――だから音楽性も、ゴシックやギターロックなど、時代の流れと寄り添う曲たちが多かったんだ。ヴィジュアル系風の楽曲も、時代に寄り添う形で取り入れたものだったのでしょうか?

Shigeta きっかけはいくつかあって。一番は、バンドである、一人でやっているわけではないということ。僕一人でやっていたら、趣味趣向へどっぷりと浸った、本当に一部のマニアックな人にしか届かない音楽性になっていたと思います。でも、バンドである以上、メンバーみんなが納得した音楽を演奏するのが大事なこと。
el:cidのメンバーは、小学生時代からの付き合いがほとんどで、みんな幼なじみで遊び友達。その延長でバンドも組んだので、音楽的な好みが全く同じの人間たちが集まったわけではない。しかも友達どうしだからこそ、遠慮なく本音で言いあえる。そこが良い面ではあるんですけど。自分の趣味趣向を押し出した楽曲をやり続けていく中、次第に「暗い曲ばかりを演奏し続けるのは、しんどい。もうちょっと明るい曲をやらないのか?」と言われたのが一つ。アルバムの終盤に収録した「Crying Limit」や「Cry for the Moonlight」のようなヴィジュアル系ナンバーは、デビュー当初のGLAYと対バンする機会を得たときに、メンバーから「GLAY好きな人たちが好みそうな曲をやって、取り込もう」と言われ、それで作った曲たち。そういう経緯もあって、わりとポップなヴィジュアル系寄りの楽曲もやるようになりました。

――多様性を出したことで、結果的にバンドも活性化していったわけですよね。

Shigeta そこは大きかったですね。バンドの中へ、その時期時期の流行りに敏感なメンバーがいたので、彼らの感覚にひっかかる楽曲を作れば、それが時代に寄り添う要素を持った楽曲にもなることから、いわゆるバンド内でマーケットリサーチをしながら楽曲を作ってゆくようなこともやっていました。
シューゲイザー的なギターロックナンバーに関しては、僕自身がシューゲイザー好きだったという理由もありますが、それをまんまやってしまうと、好き嫌いの好みがはっきりと出てしまう。僕自身メロディアスな歌が好きだし、どんな曲調であろうとそこを軸に据えてゆく姿勢を持ってもっていたこともあって、ギターロックな曲調に関しても、シューゲイザーな雰囲気も巧みに取り入れながら聞きやすい音楽にと仕上げたわけなんです。

――メロ重視の姿勢が、el:cidの楽曲へ惹かれる要素になっているのも確かですからね。

Shigeta そこなんですよね。自分自身もメロディアスな楽曲でないと聞いてて飽きてしまうと言いますか、歌詞とメロディーとの行間に自分の感情を挟み込む余地のある楽曲が好きなので,そこはこれからも大切にしていきたいなと思っています。

――Shigetaさんの書く歌詞が,とても孤独を覚えさせるといいますか、痛い心模様を、痛みを伴ったままに伝えています。そこも好きなんです。

Shigeta リア充の歌詞って、自分で歌っても、聞いてても面白くないというか、正直聞いてられへんとなる(笑)。アルバムに詰め込んだ曲たちの多くが高校時代に作っていたので、あの年代の頃はとくに、世の中から虐げられていたものに強く惹かれてゆく傾向もありました。それに、人なら誰しも病むときってあるじゃないですか。そこへ寄り添う歌詞があってもいいと昔からそう思っていました。

――世の中には、痛みを伴う歌詞にほど気持ちを委ねられる人たちもいますからね。

Shigeta そうなんですよ。人の人生には浮き沈みが伴うものじゃないですか。浮いてるときは、何でも受け入れる余裕が心にも生まれますけど。大事なのは、感情が沈んだときに、いかにして気持ちを浮き上がらせてゆくか。沈んだ感情のときに支えになるのって、明るい感情ではなく、同じように沈んでいるときの気持ちや心模様なんですよね。そういう沈んだときの心境に当てはまる歌詞を自分は好んで書いています。そこには、自分自身のどろどろとした部分や闇の面なども自然に投影されていますからね(笑)。
――完成したアルバム『In the Shade』を今、どん気持ちで受け止めています?

Shigeta まるで古い日記を読んでいるような感覚といいますか、こうやって時期を経て1枚の作品へまとめあげたことで、改めて自分自身を見つめ返す機会にもなりました。

――だからと言って古さをまったく感じさせないところに、音楽が持つ普遍性があるんでしょうね。

Shigeta きっとワインみたいなものなんでしょうね。30年前に仕込んだ作品を、市場も熟成した今になって封を開けて聞かせるみたいな。もともと流行を追いかけていたスタイルではないので、いい具合に熟成した音楽を楽しめると思います。しかも、歌詞を取ってもそう。たとえばポケベルなど、その時代を映し出す言葉は用いてないように、何時の時代に聞いても普遍的に人の胸に響く表現が成されている。しかも行間を読むといいますか、どれも想像の余地を広げてくれる。もともとそういう音楽に惹かれていたけど、そこがしっかり反映した曲ばかりが、ここには並んでいます。

――そして、今後のel:cidについてですが…。

Shigeta メンバーから「ライブもやろう」という言葉も出ていますが、まだまだコロナ禍の情勢の中、あるべき姿でライブが出来る環境ではないように、そこは今後を見据えつつ。じつは、未発表の曲たちがまだあるので、それらを新たにまとめあげた作品を発売しようかとも計画しています。もちろん、新曲も作ろうという意欲も高めていますから。

――熟成したワインと言ってましたけど。まさに、今の時代でこそ、より人の胸に突き刺さる曲たちという印象は自分も覚えました。

Shigeta 今は聞く人たちの感性も多様化しているように、けっして売れてる人たちを追いかける時代でもなければ、表現する側も、売れている人たちをなぞらえる必要などまったくない。自分たちが精力的に活動をしていた時代は、どうしても「売れてる音楽性に寄せろ」という変なバイアスがかかっていた。だからこそ、一度バンド自体も封印してしまったわけですが。結果、「刺さる人にだけ刺さればいい」という今の時代性の中で封を開けたことで、より多様性をもって受け止められたし、あの頃以上に自由さをもって広がってゆくのを今、感じています。ホント、個人発信が主流になった今の時代に封印を解いたことは、バンドにとっても正解だったなと思っています。

――el:cidとしては、変に焦ることなく、自分らのペースを大切に活動していくスタイルなんでしょうね。

Shigeta そうしていますし、今後もそうしていきます。先にも語りましたが、アルバム『In the Shade』の世界へ一緒に並べると上手く混じり合わない曲たちも、まだいろいろストックしてあるので、次はその辺の曲たちをまとめあげようかなとも思っていますし、自分たちでも「ここ」というタイミングに合わせ、焦ることなく自分たちのペースで活動をしていくつもりです。引き続き、el:cidを追いかけてもらえたら嬉しく思います。
TEXT:長澤智典

information

『In the Shade 』2021.8.18(WED) Amazon他NET SHOP 及び各CD SHOPにて取り扱い

el:cid
“In the Shade”
品番 : HHMS-008
価格: ¥2.750(税抜価格¥2.500)
発売元 : HAUNTED HOUSE
販売元 : FWD

[収録曲]
01.Calling
02.退屈な世界
03.dragonfly
04.I’ll be there
05.鉄錆廃園
06.the world where the stars fall
07.真昼の鼓動
08.gain[2020 REMIX]
09.芸術の都
10.窓辺に咲く花
[Bonus Track]
11.Never free
12.2020(noiseguitar_nagano
13.ペジュマール
14.Crying Limit
15.Cry for the Moonlight

【HAUNTED HOUSE通販特典CD-R】
「ロック天国」オムニバスアルバム収録曲『斜陽』(Original Ver)+初期デモ音源(※ライブで演奏していた曲のデモ音源5曲)

[HAUNTED HOUSE SHOP ]5/21より先行予約受付中。(※7月末より発送予定)

◉ご予約は下記リンクから
↓ ↓ ↓
https://www.hauntedhouse.rocks/shop
Tags: el:cid

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