布袋寅泰

布袋寅泰

【布袋寅泰 インタビュー】
ロックにはファンタジーと
リアリティーを結合させる
マジックがある

“目標”や“壁”や
“計画”という言葉を
“夢”に置き換えてみてもいい

このEP『Pegasus』とともにライヴ映像作品『40th ANNIVERSARY Live "Message from Budokan"』もリリースされます。まず今さらながらの質問で恐縮ではありますが、このライヴは緊急事態宣言の発令により急遽、無観客での開催を余儀なくされました。1985年からバンド、ソロと何度も立ってきた日本武道館のステージにおいて、まったく観客がいないライヴを行わなければならないと決まった時の心境はどんなものでしたか?

1月に2回目の緊急事態宣言が発令された時は本当にショックでした。コロナによってライヴ活動が一年間できず、僕にとってもファンにとっても、そしてバンドやスタッフにとってもとても大きな意味を持つステージだったのでね。しかし、中止するわけにはいかない。生配信は決まっていましたが、無観客になるとは思っていませんでした。

実際に観客のいない会場を目の当たりにした時にはどんなことを感じましたか?

観客のいない武道館はライヴのサウンドチェックの時しか見たことがなかったので、とても非現実的な不思議な空間でした。初めはまるで大気圏にひとり放り出されたような何とも言えぬ恐怖と孤独感を感じました。しかし、ライヴが始まると空っぽの客席に今までのライヴの記憶が重なり、満員のオーディエンスを思い描くことができたし、バンドやスタッフとともに“今までにない作品を作っているんだ”という意識が徐々に強くなり、また配信で観てくれてる人たちを何よりもハッピーにしたかったし、最後まで気持ちがぶれることなく2日間を無事終えることができました。その模様はしっかり作品化できたし、間違いなく“伝説のライヴ”になったと思います。

私もいち早く拝見させていただきましたが、MCで“満杯の武道館が見える”とおっしゃっていましたし、客席を指したり、“カモン!”とシンガロング、コール&レスポンスを促すような場面もあって、ライヴ映像を観る限りでは、普段のライヴと同じようなスタンスでやっているように思えました。

生配信していたのが良かったんだと思います。多くの配信ライヴは録音録画で編集もされています。絵も音もバランスが良く、やる側も観る側も安心してできるけど、生は緊張感がありますよね。“配信が途切れたりしないか?”とか、44曲もやるので“アレンジを間違えないか?”とか。照明演出もぶっつけ本番だし、“体力的にも大丈夫か?”とか不安要素はあったけどね。でも、やっぱり生の良さってあるんですよね。そんな緊張感が音になるし、絵に映る。僕はライヴではMCは前もって考えず、その時に浮かんだ気持ちを伝えるんですが、生をやっているふりではなく、実際に観客がカメラの向こうで現在進行形で観ているわけだから自然と語りかけることができたので、“寂しい”という本音も伝えられたんだと思います。

そうでしたか。DISC-1『~とどけ。Day1(Memories)~』では、ギターに囲まれた花道をステージに向かうというオープニングシーンが素晴らしかったです!

あれは有観客の通常のライヴではできない演出ですよね。カメラが人の上を移動するのは消防法等で規制されていますから。それぞれ思い出のあるギターが40周年のステージの花道に立って僕に拍手を送ってくれてるように見えて、胸がアツくなりました。ともに旅をし戦った相棒たちですからね。メインの布袋モデルにカメラがクローズアップしていくオープニングは今観てもゾクっときますね。

布袋さんのギターコレクションは、やはりテレキャスターが多いですか?

いや、テレキャスが多いわけではありません。しかし、見事にレスポールは一本もなかったですね(笑)。ロンドンに移住した際、ギターの数はずいぶん減らしました。人に譲ったりね。なかなか手に取ることがないギターを倉庫に眠らせておくのは胸が痛みますから。

DISC-1『~とどけ。Day1(Memories)~』では、BOØWY〜COMPLEX〜ソロキャリア初期のナンバーが演奏されたわけですが、特に前半の楽曲においては、オリジナルと大きくアレンジを変えてなかったような印象がありました。その辺はどんな意識だったのでしょう?

オリジナルが完璧ですからね。下手なことするとファンに怒られます。しかし、今回はサックスが加わったことで、BOØWYの曲を作った当時、頭に描いていたサウンド、アレンジを完全化することができました。BOØWYにはキーボードがいなかったので、僕がギターでホーンセクションやシンセやパッドの音に近い音を加えるために、ハーモナイザーやオクターバーやコーラス、ディレイといったエフェクターを駆使して、それぞれの楽曲に色添えしていました。「Dreamin’」のイントロはデヴィッド・ボウイの「Heroes」にDexy’s midnight runnersのホーンセクションを足したイメージで作ったし、「ホンキー・トンキ・クレイジー」もそう。BOØWYの多くの曲はサックスの音やフレーズを想定して作ってたんです。「Welcome To The Twilight」なんかもろRoxy Musicだしね。今回そういう意味では、40年前自分の頭の中で鳴っていた音を完成させることができたんだと思います。

MCでも“当時は無限に広がっていたイマジネーションをギタリストひとりで表現していた”と仰ってましたもんね。その意味では、今回収録されている「BAD FEELING」はオリジナルとはかなり違ったアレンジで、いい意味での驚きがあったのですが、今回の「BAD FEELING」が本来、布袋さんがイメージしていたアレンジに近いものだったのでしょうか?

僕は高校生の頃からファンクが好きで、ギタリストもレイ・パーカーとかアル・マッケイ、ナイル・ロジャースとかコピーしていたんですね。そんな僕の趣向の色濃い楽曲が「BAD FEELING」や「DANCE CRAZE」でした。しかし、BOØWYのリズム隊は16ビートが苦手で、どうしても縦のリズムになってしまう。イントロは16で弾いてるんだけど、リズムが入ると8ビートになってしまうという(笑)。当時は多少ジレンマでしたが、結果的にはそれが良かったんですけどね。今の布袋バンドは全員腕利きのミュージシャンで、かつテクニックだけではなく音楽的センスも良く、僕とのコミュニケーションが円滑に進むので、今回はちょっとプリンスやファンカデリックテイストを入れてみようと試みました。

あと、「1990」もまったくオリジナルとは違うアコースティックバージョンで、とても興味深く聴かせてもらいました。COMPLEX時代の布袋さんはデジタル指向だったという説がありますが、今回の「1990」はデジタルとは真逆と言えるものですね。

ロンドンから帰国し、自主隔離生活で外に一歩も出れない中、コブクロの小渕健太郎くんに“弾きやすいアコギを一本貸してくれないか?”と連絡したところ、わざわざ届けてくれたのがメイトンというギターで。セットリストを考えがなら昔の曲を爪弾き口ずさんでいたら、なんだか今まで以上にどの曲も歌詞が胸に響いてきたんです。「MEMORY」も「1990」も当時のヒムロック(※氷室京介の愛称)や吉川晃司がどんな想いでこの歌詞を書いたのか、理由が分かったような気がして。時の流れだけが成す魔法でしょうか。ひとりぼっちのクリスマスをこの曲たちを歌いながら過ごすとは思いませんでしたけどね。手前味噌ですが、アコギで歌うとメロディーの美しさが強調された気がします。

DISC-2『~とどけ。Day2(Adventures)~』はソロ代表曲のオンパレードで、どれもこれも素晴らしいのですが、個人的には「Stereocaster」が良かったです。あそこで使っていたのはトーキングモジュレーターですか?

通常のライヴでは観客の目線を遮ることになり、今回は通常では不可能なカメラのセッティングができるということで、何か面白いアイデアはないか考えた時、高校生の時ピーター・フランプトンやジェフ・ベックが使用して話題になったトークボックスを思い出し、“最近の人はこんなの見たことないだろうから新鮮だろうな”と。指定カメラに向かってのパフォーマンスだったので効果的でしたね。

音色が相当に面白いですよね。「Stereocaster」ではCharさんの「Smoky」のフレーズが入ってくるのも最高です!

「Stereocaster」はギタリストとして強い影響を受けたCharさんとのコラボ曲であり、またドラマーの古田たかし氏は長きに渡ってのCharバンドのメンバーということでシャレで入れました。ああいう遊び心って大切ですよね。

あと、中盤の「METROPOLIS」はバンドメンバーだけでの演奏でしたよね? こういうことができるのは、現在の“チーム布袋”がかなりいい状態であるからではないかと想像しましたが、布袋さんからご覧になって現在、一緒にやっているメンバーはどうですか?

ものすごいバンドだと思います。若いメンバーとは言い難いけど、テクニックだけではなく、音楽的なセンスにあふれた人たちですよね。60年代のロック創世記の頃のハードロックやプログレやアメリカン、ブリティッシュロック、ファンク、フォーク、その後のパンクやニューウェイヴやテクノなどあらゆる時代の音楽を体験してきた強者たちです。僕は100パーセント彼らを信頼しているし、また彼らも僕の存在理由をよく理解してくれています。ファンのみなさんの間でもコンサート終盤のバンド・インスト・コーナーは毎回楽しみのひとつなのではないでしょうか。

先ほど、「10年前の今日のこと」の時も仰っていましたし、DISC-2『~とどけ。Day2(Adventures)~』の後半のMCでも来年、還暦を迎えると話されていましたけれども、初日も二日目もしっかりとロングのジャケット、長袖のシャツに身を包んで、7、8曲をMCなしで続けて歌いながらギターを演奏。しかも、後半でも脚が上がるし、ダンスしながら回ってもいました。こんな還暦は他にいないように思います。それは正直、驚きでした。

昔のパフォーマンスに比べればキレも悪いし、ジャンプも低いし、褒められたものではありません(笑)。年相応に落ち着いてギタープレイや歌に集中したほうが精度は上がるのは間違いないでしょうが、ステージに上がると踊らずにいられません。ビートが流れたらステップも僕のギタープレイの一部です。しかし、息切れ切れの状態でそれをやってたら観ているほうもつらいですよね。そうならぬよう体調面での自己管理は今後も必要だと思います。すでに還暦を迎えられたみなさんはみんな現実感がないと思うし、自分も信じられないけど、こうして40周年を迎え、予期せぬコロナという敵と戦いながらも前進しようとしていることは誇らしいし、何よりもたくさんの応援してくれる人がいることが幸せです。カッコ良い還暦を迎えたいと思います。

これは『40th ANNIVERSARY Live "Message from Budokan"』を通して拝見して感じたことなんですが、新曲「Pegasus」のテーマでもある“夢”は、これまでも布袋さんが終始一貫して抱いてきたものであることを痛感させられました。DISC-1『~とどけ。Day1(Memories)~』は「Dreamin’」で始まり、「FLY INTO YOUR DREAM」で終わります。DISC-2『~とどけ。Day2(Adventures)~』は《立体映像の夢が飛び出す》(「バンビーナ」)、《全ては明日の夢に みちびかれた物語》(「さらば青春の光」)、《夢に抱かれ夢を信じ 夢を叶え夢に散った》(「8 BEATのシルエット」)と続き、あらゆる楽曲に“夢”が出てきます。布袋さんにとって“夢”とはなくてはならないものなんでしょうね。今回の2作品からそこは強烈に感じました。

夢に大きさも、期限も、回数もありません。どんなに小さくてもいいし、何度叶えてもいいし、敗れてもいいし、いつまでも求めることができる。“目標”という言葉や“壁”や“計画”という言葉を“夢”に置き換えてみてもいいでしょう。毎日が夢を叶えるための意義のある時間になるはずです。一度きりの人生のかけ替えのない毎日を豊かにする言葉が“夢”です。音楽を通じてみんなの夢を応援するのが僕らの使命です。これからも夢に拘り続けたいと思います。

取材:帆苅智之

EP『Pegasus』2021年6月30日発売 Virgin Music
    • 【2枚組ライブCD付初回生産限定盤】(3CD)
    • TYCT-39157
    • ¥3,300(税込)
    • 【通常盤】(CD)
    • TYCT-30123
    • ¥1,320(税込)
Blu-ray&DVD『40th ANNIVERSARY Live “Message from Budokan”』2021年6月30日発売 Virgin Music
    • 【メモリアルピック&フォトフレーム付完全数量限定盤】(2Blu-ray+GOODS)
    • TYXT-19020
    • ¥14,780(税込)
    • 【メモリアルピック&フォトフレーム付完全数量限定盤】(2DVD+GOODS)
    • TYBT-19030
    • ¥14,280(税込)
    • 【通常盤】(2Blu-ray)
    • TYXT-10054/5
    • ¥11,000(税込)
    • 【通常盤】(2DVD)
    • TYBT-10069〜70
    • ¥10,500(税込)

『HOTEI 40th Anniversary Double Fantasy Tour "BLACK or WHITE ?”』

9/25(⼟) 北海道・コーチャンフォー釧路⽂化ホール(釧路市⺠⽂化会館)⼤ホール
9/26(⽇) 北海道・カナモトホール(札幌市⺠ホール)
10/02(⼟) 京都・ロームシアター京都 メインホール
10/03(⽇) 京都・ロームシアター京都 メインホール
10/09(⼟) 埼⽟・サンシティ越⾕市⺠ホール
10/10(⽇) 埼⽟・サンシティ越⾕市⺠ホール
10/14(⽊) ⽯川・本多の森ホール
10/15(⾦) ⽯川・本多の森ホール
10/20(⽔) 神奈川・神奈川県⺠ホール ⼤ホール
10/21(⽊) 神奈川・神奈川県⺠ホール ⼤ホール
11/02(⽕) 神奈川・よこすか芸術劇場 ⼤劇場
11/03(⽔) 神奈川・よこすか芸術劇場 ⼤劇場
11/25(⽊) 愛知・⽇本特殊陶業市⺠会館 フォレストホール
11/26(⾦) 愛知・⽇本特殊陶業市⺠会館 フォレストホール
12/01(⽔) 福岡・福岡サンパレス ホテル&ホール
12/02(⽊) 福岡・福岡サンパレス ホテル&ホール
12/09(⽊) 宮城・仙台サンプラザホール
12/10(⾦) 宮城・仙台サンプラザホール

布袋寅泰 プロフィール

ホテイトモヤス:日本屈指のロック・ギタリスト兼シンガー。1988年、氷室京介をも擁したBOØWYを解散。同年、アルバム『GUITARHYTHM』でソロデビューを果たす。この求道的なスピリットに満ちた硬派ロックアルバムは、当時としては珍しい全編英詞による極めてアーティスティックな作品であった。翌89年には吉川晃司とCOMPLEXを結成し、1stアルバム『COMPLEX』をリリース。計2枚のアルバムを残し、90年に惜しまれつつ解散。その後、ようやく実質的なソロキャリアをスタートさせ、「ビート・エモーション」「さらば青春の光」「スリル」「ポイズン」と、作家性と大衆側に接近したポップ性が見事に同居した楽曲を続々とリリース。ストイックなロックミュージシャンであると同時にヒットメイカーとしての才能も開花させていった。布袋寅泰 オフィシャルHP

「Pegasus」MV

「Dangerous feat. 吉井和哉」 from
『40th ANNIVERSARY Live
“Message from Budokan”』

「さらば青春の光」 from
『40th ANNIVERSARY Live
“Message from Budokan”』

「MEMORY」 from
『40th ANNIVERSARY Live
“Message from Budokan”』

「B・Blue」from
『40th ANNIVERSARY Live
“Message from Budokan”』

「BE MY BABY」from
『40th ANNIVERSARY Live
“Message from Budokan”』

『40th ANNIVERSARY Live
“Message from Budokan”』
〜メモリアルピック&フォトフレーム付
完全数量限定盤〜 Trailer

OKMusic編集部

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