写真:『戦争の犬たち』VHS版。販売・ロイヤルアート

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『戦争の犬たち』:杉作J太郎のDVDレ
ンタル屋の棚に残したい100本の映画
…連載9

杉作J太郎の

DVDレンタル屋の棚に残したい100本の映画
5本目・『戦争の犬たち』映画『戦争の犬たち』を池袋の映画館で見た。
 私は19歳になったばかりだった。
 凄い映画だった。
 傭兵ビジネスで大儲けを企むフィクサー(佐藤慶)と、うだつのあがらない煮え切らない日々をすごしながらもなにかおもしろいことないかと興味津々の若者(飯島洋一)のニーズが一致した。金儲け気分で傭兵として集められた男たちの決意とジレンマ、生き残るための恐怖を描いた近隣戦闘を主題にした痛快で残酷な映画であった。
 客席に主演の飯島洋一さんがいた。初めて目にする生の飯島さんだった。カジュアルな雰囲気で誰かと談笑していた。声をかけることはできなかった。
 もう41年も前になるのか。時は流れた。
 流れたが、ここまでの超大作自主映画はこの作品の後、ない。
 というか、実は自主映画ではない。
 自主映画という言葉もぼちぼち死語だが商業的な目的ではない、趣味が高じて個人で撮る映画をかつては自主映画と呼んだ。『戦争の犬たち』はメジャーの配給を目論んで制作されたので自主映画ではない。映倫マークもついている。劇場での上映、規模、内容、すべて私は自主映画とは思わなかった。初めて見た19歳の時。ただ説明しようとするとやはり自主映画ということになるのかもしれない。なので超大作自主映画と記したがここは難しい話だ。
 私は高校時代に映画を撮っていた。上映場所はほとんどが自宅の襖。絶対的にこれは自主映画である。それでも自主映画とは自称したこともないし言われたくもない。難しい話だ。泉谷しげるさん歌うところの「せこいプライド」だろうと思う。高校の文化祭でいちど上映した。部活動でもなければ学校の許可をとって撮影していたわけではない。立ち入り禁止の場所でも撮影しており内容的にも抗争中のやくざが落としたライフルを拾った高校生が道を歩いていて肩が触れたチンピラに因縁をつけられそのチンピラと松山市内のあちこちで銃撃戦を展開するという、校内で上映が許されるものではなかった。私の通っていた高校は新設で厳しかったのだ。だが出演者をはじめ少しでも多くの人に見てもらいたい気持ちはあった。家の襖に上映するだけではそう何人も見られない。というか、新設で厳しい高校に対して私だけでなく多くの生徒がいまでいうストレスで苦しんでいるのではないか、そのストレスを吹っ飛ばしてスカッとしてもらいたい。余計なお世話そのものだが(実際、恋人がいたり部活を頑張ったりして青春を謳歌していた者もいたはずだ)とにかくそんなわけで文化祭の日、学校には内緒でこっそり上映できないかと考えた。主役や主要な役を演じた同級生たちも見たがっていた。昼間でも暗くなって広さも手頃な、そして学校側にばれにくい秘密の場所はないかと考えた。便所、物置きなどいろいろ考えたが英会話の視聴覚教室がいちばんいいのではないかということになった。
 英会話の先生は笑顔はにこやかだったが厳しくて怖い先生だった。だめだろうなー、怒られるかもしれない、そんなことやってたのか、やめなさい、そう言われると思った。退学もあるかもしれない。冗談抜きでそう思いながら出演者数名と先生の前に立ち、説明した。先生は言った。
「おもしろそうじゃないか」
 かくしてほぼ一時間の映画『崩壊のプレリュード』を文化祭の日に視聴覚教室で上映した。一日中上映した。秘密の上映会だったので基本、出てる人やその友達が見た。噂を耳にした同級生や下級生もいたかもしれない。
 その後。19歳のとき『戦争の犬たち』を見た。私の人生、その方向が決まったときだったと思う。映画を見ただけだったらどうだったろうか。あの日、目の前に飯島さんがいた。現実に存在している。軽いタッチのほがらかな人だった。自分にもできる、と思ったわけではないが、この世のできごとなのだからとは思った。
 27年後。
私の初監督長編劇場公開映画。『任侠秘録人間狩り』に主演していただいた。すでに交流はあったが主演と監督という関係は私以外にはわからない大きな大きな感覚だった。
 飯島さんにこんなセリフを言ってもらった。
「世の中に無理なんてことは、ありはしねえのよ」
 それは池袋の映画館で飯島さんを目の前にしたとき、声をかけることはできなかったが、その飯島さんのからだから聞こえてきた言葉だった。
 なお、フレデリック・フォーサイスの小説『戦争の犬たち』を映画化した同名の作品があるがそちらはまだ見たことがない。いつか見るとも思えない。
『戦争の犬たち』(1980年・アサルトプロダクション)
出演/飯島洋一、清水宏、安岡力也、たこ八郎、港雄一、堀礼文、椎谷建治、龍駿介、南たかし、小島光二、碓水明、梅林敏彦、快楽亭ブラック、佐藤重臣、所ジョージ、梅津栄、草薙幸二郎、佐藤慶、青木義朗
製作/飯島洋一、小泉作一
撮影/伊東英男
音楽/泉谷しげる
スチール/滝本淳助
助監督/成田裕介
監督・脚本/土方鉄人
<隔週金曜日掲載>
※先週は編集部の都合で休載いたしました。
写真:『戦争の犬たち』VHS版。販売・ロイヤルアート。DVD・BD化が望まれる。
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すぎさく・じぇいたろう
漫画家。愛媛県松山市出身。自身が局長を務める(男の墓場改め)狼の墓場プロダクション発行のメルマガ、現代芸術マガジンは週2回更新中。著書に『応答せよ巨大ロボット、ジェノバ』『杉作J太郎が考えたこと』など。
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