多くのアーティストに
影響を与えたJ.J.ケイルの
ソロデビューアルバム
『ナチュラリー』

カール・レイドルの功績

クラプトンがデラニー&ボニー・アンド・フレンズに加わっている時、デラニーからケイルという注目すべきアーティストがいることを聞かされる。ちょうどフレンズにはケイルと同郷のカール・レイドルが在籍しており、彼がケイルの「アフター・ミッドナイト」をクラプトンに紹介する。

こういう経緯でエリック・クラプトンのソロ第1作『エリック・クラプトン』で「アフター・ミッドナイト」が取り上げられることになるのだが、そのことをケイルは知らず、彼はすでに西海岸での活動を諦めていて数年前にタルサに引き上げていたのである。クラプトン版の「アフター・ミッドナイト」はシングルカットされビルボードのホット100で18位になり、ケイルは自分の曲をラジオで聴くまで、レコーディングされたことすら知らなかった。

レイドルと同じく『エリック・クラプトン』のレコーディングに参加していたラッセルは、同時期にイギリス人プロデューサーのデニー・コーデルとシェルターレコードを設立しており、ここでもレイドルはラッセルにケイルのデモテープを手渡すなど、ケイルがシェルターと契約できるように橋渡し役を買って出ている。レイドルはそれだけケイルの音楽を買っていたわけだが、ラッセルもまたケイルの独特の音楽性を大いに気に入っており、シェルターはケイルと契約を交わすこととなった。

本作『ナチュラリー』について

そして、ナッシュビルでケイルとプロデューサーチームを組んでいたオーディ・アシュワース(彼とは長い付き合いになる)にプロデュースを任せ、アルバム制作に入る。録音はボー・ブラメルズのアルバムタイトルでもお馴染み、ナッシュビルのブラドリーズ・バーンで行われている。バックを務めるのは盟友のカール・レイドルと、ナッシュビルのエリアコード615のメンバーのほか著名なスタジオミュージシャンたちだ。レイドル以外の同郷のミュージシャンが参加していないのは不思議ではあるが、これは単純にケイルの目指すサウンドが得られるかどうかで決まったのだと思う。曲によってはホーンセクションが入るが、そのクレジットはない。

収録曲は全部で12曲。このうちリズムマシンが使われているのは4曲で、それはずっと彼の先進性(他のルーツロックとの違いを際立たせるため)だと僕は思っていたのだが、ケイルによれば「予算が足りずドラマーに支払うお金がなかったから」と、あるインタビューで語っていて唖然とした。

「コール・ミー・ザ・ブリーズ」「アフター・ミッドナイト」「クレイジー・ママ」(全米22位、ケイル最大のヒット曲)「マグノリア」など、よく知られた名曲をはじめ、全ての曲が文句なしの仕上がりだ。ケイルの音楽について金太郎飴と揶揄するリスナーもいるが、少なくともこのアルバムに限ってはその言葉は当てはまらない。ケイルの音楽は、ブルース、カントリー、R&Bなどが混ざってはいるがスワンプロックとは違う泥臭さが身上であり、ある意味ではメロディの美しいブルースの一種だと言っても間違ってはいない気がする。だからこそケイルの音楽は唯一無二だと言えるのだ。

また、ニール・ヤングは「世界で最も偉大なロックギタリストはジミヘンとケイル」と言い、マーク・ノップラーに至ってはケイルのそっくりさん(ギターだけでなくヴォーカルも)だ。ケイルのギターワーク(リズムもソロも)は饒舌ではないが、簡潔かつ的確に情感のこもったプレイが特徴である。クラプトンをはじめ、ジョン・メイヤーやデレク・トラックスなど、ケイルのギタープレイをリスペクトしているアーティストは多い。

OKMusic編集部

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