TOKYO No.1 SOUL SET
『9 9/9』から検証する、
他のバンドは真似すらできない
彼らの革新性

優れたメロディーとの相乗効果

まず、彼らの楽曲が優れたメロディーを有していることを、大前提として挙げておかねばならないと思う。それはアルバムのオープニングナンバーであるM1「Traffic Express」からはっきりとしている。ブラスとスキャットがそれぞれに心地良い音域と抑揚によって旋律を描き、そのふたつが交差していく。どちらのメロディーもとても耳馴染みが良い。ほぼその繰り返しではあるのだが、楽曲全体で2分半程度であり、しかもその前半40秒くらいはSEなので、冗長には感じない。この辺の作りは上手い。

M2「許された夜」では、ギターが鳴らす印象的な旋律に、若干ノイジーだがキャッチーなスキャットが乗っていて、それが基本となってリピートされていく。これが耳にへばりつく感じ…と言ったもいいだろうか。聴き進めていくと、それとはまた違ったメロディーが聴こえてくる。《例えば夜が 消えて無くなる/忘れ去られる黄昏/例えば君が 消えて無くなる 与えられない影》の箇所だ。しかも、そのパートの終わりでは、ギターのカッティングでこれまでとはまた違ったフレーズが刻まれる。ループが基本で鳴らされているものの、それだけでなく、いくつかの耳の残るメロディーが配されているのである。M2に関して言えば、凡そ3分程度の間に…であるし、《例えば夜が~》のメロディーはその中盤でしか出てこないので、不思議な余韻を残す感じでもある。

M3「先人達の夢」も同様で、決して明るい雰囲気ではないけれども、ポップと言っていいアクセントを持った旋律がイントロから楽曲を引っ張っていく。ここの主旋律は何で鳴らしているのだろうか。ブラスっぽくもあるし、ギターっぽくも聴こえる。シンセかもしれない。いずれにしても、とても耳を惹き付けるメロディーである。そして、これもまたギターが背後を支えている形で、美味しいところでトレモロっぽい鳴りが入ってくる展開が心憎い。


M2、M3とヴォーカルはほぼラップであったのに対して、M4「Key word(9 9/9mix)」では歌から始まる。これがなかなか爽やかなメロディーで、コーラスが重なっていったり、背後でシンセを被せたりと、主旋律を丁寧に聴かせている。途中でラップが入ったあと、いわゆる間奏ではホーンセクションがまた新たな旋律を披露。そのブラスセクションが後半では主旋律に絡んできて、ラップも同様に主メロと交差していくので、同じメロディーと言っても、セクション毎に聴こえ方が違っていて、繰り返している感じがない…とは言わないまでも、聴き進めるのが楽しく感じるところではある。リズムがモータウンっぽいシャッフルビートで、全体に弾むような感じがあるのも、その楽しさを助長しているのだろう。

続くM5「a little sleep」は、ここまでの他の楽曲に比較してトラックはメロディー、サウンドともに控えめな感じではあって、楽曲の中心にはラップがあると言わんばかりのスタイルで進んでいくような印象を受けるが、幻想的なメロディーがこれまたスキャットで聴こえてくるから油断がならない(?)。どこか懐かしく、柔らかい旋律であって、いい意味で肩の力が抜けた感じというか、ゆったりとしたイメージなのだろうと思っていると、ちょうど中盤に差し掛かった辺りで、プログレ風と呼んでいいだろうか。転調して(というか、ほぼカットインして)鋭角的なオルガンが鳴るのだから、ますます油断がならない。

M6「Sunday」は頭打ちのリズムのアップチューンで、シェイカーが疾走感を与えている。途中、モノローグも入っているが、基本は歌モノ。サビはともかく、Aメロ辺りは抑揚に乏しい印象もあるが、オクターブユニゾンで厚みを出しており、聴き応えが乏しいわけではない。ブルースハープが重なる辺りフォーキーというかロックというか…なかなか新鮮な感じでありながら、そのハープが鳴らすメロディーもアウトロにかけて楽曲の中心となっていくのがおもしろいところだ。

…と、図らずも、M1~6までダラダラと解説してしまったが、ここまで聴いてくればはっきりと認識できる通り、ソウルセットの楽曲はループミュージックとはいえ、単純にひとつのメロディーだけを繰り返しているわけではなく、とある旋律がリピートされていったとしても、そこにその他の旋律が重なることで、セクションに応じて別の響きを持たせたり、繰り返しの中にそれとは異なるメロディを差し込むことで、単純な繰り返しに思わせなかったり、といった工夫が成されていることが分かる。しかも、それらのメロディーが印象的なものばかりなので、相乗効果もより大きいと考えられる。ソウルセットの楽曲の心地良さはそこに秘密があるように思う。

OKMusic編集部

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