仙台貨物とはいったい何者なのか? 
5年ぶりの活動再開を祝して7つの観点
で解説

2021年9月、バンド結成20周年を迎える仙台貨物(せんだいかもつ)が、東日本大震災から10年、そしてコロナ禍で苦しんでいる世の中に笑顔を届けるために帰って来る! 2021年9月22日(水)に新曲「開運ざんまい」と「仙台貨物の大冒険」を2枚同時リリース。翌日、9月23日(木・祝)からは大阪・なんばHatchを皮切りに『トゥアー2021 シン・仙台貨物~帰ってきた癒しの宅急便~』を開催することを突然発表した。

仙台貨物といえば、毎回、趣向を凝らしたパンチのあるルックスやMV、楽曲やライブパフォーマンスはもちろんのこと、タレント、お笑い芸人などジャンルを飛び越えた著名人を巻き込んでのコラボなどで、毎度世の中をお騒がせしながらもみんなの元へ次々と音楽と笑いを運び、日本全国各地に“癒し”をもたらしてきたバンド。その貨物が、こんな時期だからこそ活動を再開。ここでは、そんな仙台貨物の20周年のアニバーサリーイヤーとシーン復帰を祝って、オンリーワンのコミックバンドという言葉では収まりきらない彼らの、総合エンタテインメント集団としての魅力と謎に包まれた実態(設定?)を7つの観点から解説していこう。

■じつは“仙台貨物”という運送屋さん
“宮城県が産んだ謎の運送屋集団”という異名を誇る仙台貨物。その実態は、このキャッチコピーが表す通り、“仙台貨物”という運送会社で働いていた社員たちが趣味で始めたバンド、というのがそもそもの始まり。いまや彼らのトレードマークとなっている真っ赤なツナギは、運送会社のユニフォームから派生したものなのだ。真っ赤なツナギを選んだ理由について、過去に彼らにインタビューを行ったとき、スリップノットへの憧れと、自分たちの熱く燃える魂をイメージして情熱的なレッドにしたのだと語っていた。
そうして、いまやレッドは仙台貨物のバンドカラーとして定着。仙台貨物の本業はあくまでも運送会社の正社員。なので、バンド活動のほうは本業に迷惑をかけないようにと、毎年運送会社の仕事がお中元シーズンを終えて落ち着く夏から秋にかけて、期間限定で行っていた。そして、サザンオールスターズやTUBEに負けない夏を象徴するバンドを目指して活動を続け、人気もどんどん高まってきていた最中、アクシデントが彼らを襲う。2009年、本体である運送会社が世の中の“腐況”のあおりを受けて大赤字となり、業績不振で倒産してしまったのだ。そのため、仙台貨物は同年11月5日の本武道館公演をもちやむなく活動を休止。しかし、そんななかでも2010年9月、フロントマンのイガグリ千葉(Vo)が立ち上がり、単独トゥアー(ツアー)を実施。そうして、ついに2011年には仙台貨物としてバンド活動だけを再開。以来、2016年までコンスタントにバンド活動を続けていたのだが、それ以降はイガグリ千葉のみが不定期で活動を継続していた。
だが、世の中が新型コロナウイルスの蔓延で未曾有の危機に襲われたいま、それに立ち向かうべく2021年、全国を笑顔にするために仙台貨物が帰ってきた。新しいアーティスト写では、これまで運んでいた宅配便の段ボールがウーバーイーツのようなデリバリーバッグに変わっていた。ここにはどんな意味があるのか、気になるところだ。ちなみに、彼らのトレードマークに馬が入っているのは、仙台貨物で初めて作った楽曲に馬の鳴き声が入っていたからだという。
■じつはヴィジュアル系バンド、NIGHTMAREの弟がやっているバンド
NIGHTMARE
仙台貨物はイガグリ千葉(Vo)を筆頭にフルフェイス(Gt)、サティ(Gt)、王珍々(Ba)、ギガフレア(Dr)、KURIHARA(Mp)からなる6人編成のバンドである 。メンバーそれぞれのプロフィールは全員とにかくぶっ飛んでいるのだが、なかでも特筆すべきはフロントマンとして歌、トーク、すべてを宮城弁で行なうイガグリ千葉。メンバーのなかで唯一、誕生日(7月4日)を明かしている彼は、自分の兄が2020年に結成20周年のライブで復活を遂げたヴィジュアル系バンド・NIGHTMAREのYOMI(Vo)であることを公言しているのだ。過去に仙台貨物がエイベックスに移籍を決めたときには「(先にエイベックスに移籍していたNIGHTMAREの)お兄ちゃんに泣きついて入れてもらった」と、その経緯を赤裸々に明かした。
■じつはサウンドもヴィジュアルもオールジャンルOKの“芸”達者軍団
猛烈に明るくキャッチーなJ-POPに、パンクロック、メタル、スカ、サンバにカントリー、しっとりとしたバラードから演歌まで、仙台貨物の楽曲は多彩でジャンルレス。どんなサウンドもテクニカルに乗りこなしてしまう芸達者なメンバーたちに加え、それらの曲に、どんなにお下品な内容であってもその根底にキラリと光るLOVE&PEACEなポジティブメッセージを込めて歌詞にして、それを素朴な宮城弁で歌っていく千葉のボーカルスタイル。一度聴けばいろんな意味で耳から離れないフレーズとメロディの衝撃。これは、仙台貨物の音楽芸人として凄いところ。

芸達者なのは音楽だけではない。そのヴィジュアルも、赤いツナギスタイルから「芸スクール漢組!!」(2007年10月発売)というスクールボーイに姿を変えたと思ったら、あるときは時代劇(「絶黄門」2008年10月発売)、あるときは戦隊ヒーローに(「HERO~帰ってきた赤いジャスティス~」2011年6月発売)、次は妖怪(「妖怪大演奏」2015年9月発売)、メタラー(「メタルはじめました」2014年7月発売AL『SENDIE KAMOTSU』収録)にと変幻自在に姿を変えていき、千葉に至っては、単独活動のなかでピカチュウや太陽の塔、初音ミクの独創的なコスプレも披露。ヴィジュアルでも芸達者なところ見せつけ、なんともいえないその奇抜なルックスでみんなを笑顔にしていくのだ。
■じつは豪華ゲストたちと共演
仙台貨物、一見キワモノのように見えて、じつはこれまでにあっと驚くような豪華ゲストたちとの共演を果たしてきている。過去の作品のジャケットやMVを見渡すと、アホの坂田師匠を筆頭に、ダチョウ倶楽部の上島竜兵、元ジョーダンズの三又又三、とにかく明るい安村、稲川淳二、壇蜜など、出演しているキャストがとにかく豪華で多彩、そのたびにマスコミ、世間からも注目を集めていた。さらに、貨物が夏フェス『a-nation』に出演したときはTRFのDJ KOOとコラボして、「BOY MEETS“BOY”」(TRFの「BOY MEETS GIRL」の替え歌)を熱唱して場内を大いにわかせたこともあった。また、全国トゥアーの最終公演に千葉のコスプレをした上島竜兵がいきなり乱入してきて、彼らと一緒に貨物の代表曲「チバイズム~手ぬぐいを脱がさないで~」をパフォーマンスしてニュースになったこともあった。今回の活動ではどんなゲストを仕込んでくるのか。そこも楽しみなところ。
■じつはミュージシャンも大注目
氣志團万博2014 〜房総大パニック!超激突!!〜』 撮影=釘野考宏
『氣志團万博2014 〜房総大パニック!超激突!!〜』 撮影=釘野考宏
「仙台貨物は『氣志團万博』になくてはならない存在」――というのは氣志團の綾小路翔の発言。その言葉通り、仙台貨物は氣志團主催の野外フェス『氣志團万博』にこれまでたびたび出演。貨物として出演できないときは、イガグリ千葉が単独でゲストとして出演。『氣志團万博』を特攻隊長的な役割で、毎年大いに盛り上げてきた。活動を再開した今年、仙台貨物は出演することになるのか、そこは大いに期待したいところだったが、残念ながら『氣志團万博2021』が中止となることが7月22日に発表された。またいつか、『氣志團万博』のステージに仙台貨物が帰って来ることを楽しみにしていよう。
また、ゴールデンボンバーの代表曲「女々しくて」を替え歌にした「ヤリたくて」で注目を集めたイガグリ千葉は、本家であるゴールデンボンバーのオープニングアクトに抜擢され、プライドを投げ捨て売れた後輩バンドに乗っかった。このように、大物ミュージシャンたちも彼らの唯一無二のエンターテイナーぶりには一目を置いているのである。
■じつはすでに武道館アーティスト!
『トゥアー2009 腐況の風』11月5日(木)日本武道館
仙台貨物は会社が倒産に追い込まれた2009年、突然活動休止を発表。そしてその後、会社にお金がなかったため、地元・仙台と東京のみでしか開催できなかった『トゥアー2009腐況の風~仙台貨物FOREVER~』で、彼らは活休前のラストステージ、念願の東京・日本武道館の舞台に立ち、ライブを大成功させた。
このとき、観客を動員することよりも大変だったのは、この厳格な武道館から仙台貨物に対して使用許可がおりるかどうか、ということだった。というのも、彼らが2007年10月21日、『トゥアー2007教師ぎんぎん物語LIVE at 日比谷野外大音楽堂』を行なった際、客席全員が千葉のお面をつけて盛り上がるという演出効果もあってか、イガグリ千葉のテンションは大暴走。最後、いつものように全裸になったところを、週刊誌『FRIDAY』に撮られてしまい、野音を出禁になるという苦い経験があったからだ。ここまで度が過ぎた破天荒な下ネタパフォーマンスを行なっていると、自分たちだけではなく、兄がいるNIGHTMAREまでその余波を受け、野音はおろか日本武道館での公演まで禁止になってしまう。そんな警告を受けた千葉が「絶対に脱がない、出さない」と宣言し、多くの警備員に囲まれ、厳戒態勢のなかで挑んだ貨物初の武道館公演。終わってみれば、笑いあり涙あり感動ありの貨物にしかできない記憶に残るエンタテインメントショーとなった。

■じつは、紅白出場が最大の目標
そうして2021年、こんな大変な時代だからこそ自分たちが日本じゅうに笑顔を届けて、みんなの笑顔で嫌なことを吹き飛ばそう! と再び活動を再開した仙台貨物。そんな彼らの夢は、昔から変わることなく“紅白”に出ることだという。今年の年末こそ、お茶の間にいる子供からお年寄りまで、性別や世代を飛び超え、みんなを笑顔にするステージを彼らはテレビの向こうから全国民に向かって届けることができるのか? 白組なのか紅組なのか……そこも注目したいところだ。

文=東條祥恵

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