【明田川進の「音物語」】第52回 東
映撮影所での音づくり、高倉健さんと
大食堂で会った思い出

 虫プロは「鉄腕アトム」の途中まで、フジテレビの別所(孝治)さんがアフレコに立ち会って音関連のディレクションをしていました。その後、田代(敦巳)氏が虫プロ内に音響セクションを立ち上げ、「ジャングル大帝」ではさらに本格的にやろうとなったとき、これまで収録していた街場の録音スタジオではなく、東映撮影所のスタジオを使うことになりました。それを聞いたときは「東映の撮影所に行けるんだ」と小躍りするぐらいうれしかったですね。20代後半だったその頃の体験は、今思い出しても楽しかった思い出のひとつです。
 東映東京撮影所の場所は今と同じ大泉学園駅の近くですが、まだショッピングセンターなどが建つ前で、東映の本体の真ん前に大駐車場があって、その向こうには映画のオープンセットがありました。その頃の東映の映画だと高倉健さん主演のものが主流で、奥のほうには映画「網走番外地」の監獄のセットもありました。今はもうそのあたりは全部マンションなどが建ってしまっていますけれど。
 当時、外部の人が東映のスタジオを借りるのはとても難しいことだったそうですが、それが実現できたのは「ジャングル大帝」で録音・効果を担当したミキサーの岩田廣一さんが東映東京撮影所の方だったからでした。東映の収録スタジオは撮影所のなかにとても大きなステージがあって、録音中は外部に分かるよう赤いランプがつくんですよね。そこで実際に映画の音づくりをしているのを直に見ることもできて、見るものすべてが今までやってきたこととは違うスタイルでした。僕自身、音の世界に入ったばかりということもあり、「ああ、これが映画製作の現場なんだ」と興奮しましたし、いろいろな意味で勉強になりました。
 「ジャングル大帝」の音楽はため録りではなく、1話ごとに冨田勲さんが映像にあわせて作曲していました。音楽の収録には毎回30人ぐらいの演奏メンバーが集まって、終わったあとにちょっと食事でもしようかと撮影所の大食堂に行ったら高倉健さんがいらしたこともありました。大食堂は役者もスタッフもみんな一緒に食事をとり、その喧噪や熱気は大変なものでした。

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