そらる 『あこそら』ツアーファイナ
ル・東京ガーデンシアター公演に見た
、同じ空間で共に描く“ゆめ”の尊さ
と美しさ

SORARU ACOUSTIC LIVE TOUR 2021 -きみのゆめをきかせて-

2021.8.11 東京ガーデンシアター
生の歌声、音を全身で浴びることのできる幸せ。
そらるが開催した、実に6年ぶりとなるアコースティックライブツアー『SORARU ACOUSTIC LIVE TOUR 2021 -きみのゆめをきかせて-』。彼にとって、有観客公演は2020年1月に出演した『そらまふうらさかのふゆやすみ!』以来、約1年半ぶりのことだ。やはり、リアルな体験に勝るものはない。8月11日に東京ガーデンシアターで迎えた最終公演で、つくづくそう感じた。
7月22日に全世界配信された『SORARU ONLINE LIVE 2021 -きみのゆめをきかせて-』のステージにあった、ブランコや鉄棒、街灯、タイムマシン。輝く星空を思わせるライトに、大木を模したオブジェ。現実と夢想が交錯する、夜の公園さながらのステージだ。そこに、バンドメンバーに続いて現れたそらる。声を出すことはできないけれど、やっと会えた!という歓喜の拍手、そしてそらるのイメージカラーである青を灯して揺れる数多のペンライトが彼をお出迎えする。

そらる

そらる
オープニングナンバーは「ユーリカ」。ギター、ベース、ドラム、生ピアノとパーカッションが彩る贅沢なサウンドに、そらるの伸びやかな美声がよく映える。「今日1日、よろしくお願いします!」と、目の前にいる観客に呼びかけたそらる。どの席からもステージが見やすい立体的な4層構造の客席は、ステージからもよく見渡せるのだろう。
「ぽんこつ白書」は、先日のオンラインライブでも披露されたが、無垢な疾走感と澄んだ歌声の相性の良さを再確認。アグレッシブな「アイフェイクミー」にしても然り、生ピアノやパーカッションを加え幅と奥行きが増したアレンジは、そらるの歌声と楽曲それぞれの世界観を見事に引き立てている。
そらる
「久しぶりのツアーで最初は緊張したんですけど、名古屋、神戸とまわってみんなから力をもらって、今はリラックスしてここに立てています。最後まで出しきって、最高の1日にできたらと思います」
そう挨拶して、『ゆめをきかせて』に収録の「自己採点」と「ブルーパレット」へ。syudou 、Kanaria、という気鋭のクリエイターとの新たな化学変化、そらるだからこそ生々しく表現できる痛みや愁いは、あまりに鮮烈だ。
そらる
「KING」で王者感を見せつけたあとは、メンバー紹介へ。そらるにとって初めてのワンマン公演となった『あこそら』が開催された2013年から、8年。バンドマスターであるピアノ担当の事務員Gと心地よい間合いで思い出話に花を咲かせたそらるだったが、まさかここでのトークがのちの“お手洗い事件”の前振りになるとは……。
「ユラユラ」からは、空気が一変。危うくて、儚くて、優しくいそらるの歌。「文学少年の憂鬱」のピアノで表した踏切の音、そらるが魂を込めて叫んだ<行け>。間にはさまれた生ピアノとパーカッションによるインプロビゼイションも含め、神がかっていたように思う。
そらる
「このライブが終わったらしばらくライブができないと思うと寂しいけど、もともと人前に立つのが怖かった自分がそう思えるようになったというのは嬉しいことです」
偽りない言葉を口にして、またまた事務員Gと和やかトークを繰り広げたあとは、事前に募っていたリクエスト曲の中から3曲を披露。高音も交え歌声で包容した「366日」。語りかけるように歌った「ドライフラワー」。途端に艶っぽさをにじませた「ヴァンパイア」。その変幻自在ぶりに、あらためて目を見張る。
そらる
先のMCで「今日は最後までトイレに行かずに頑張る」と宣言していたものの、事務員Gにしばしその場を任せ、観客に拍手で見送られてお手洗いへと向かうこととなったそらる。ステージに戻って開口一番、「いつものライブでは衣装替えのタイミングがあって、そのときにトイレに行くから……それに身体が慣れているんだと思う。今後のライブで必ず衣装替えの時間を設けよう、という学びを今回のツアーで得ました」と言ったが、なんて自由なんだ。事務員Gはじめメンバーとのとりとめもないトークにしてもそうだが、ステージ上でも飾らないところもまた、そらるの魅力である。
荒ぶる歌声で貫いた「コールボーイ」。ウッドベースが存在感を放つジャジーなアレンジと繊細な歌声が絶妙に絡んだ「シャルル」。背中を押すマーチのように響いた「Liekki」。まだまだ、この夢のような時間が終わってほしくない。
そらる
「アルバム『ゆめをきかせて』に入る楽曲をみんなに最初に聴いてもらいたくて、オンラインライブを含め、今回のツアーを開催しました。正直言って、みんなが集まるライブをするにあたって不安もあったけど、こうして歌う場は大事なものだなってあらためて確認できました」
思うことは、オーディエンスも同じだ。本編最後を飾ったのは、『ゆめをきかせて』に収録の2曲。弱ささえもさらけ出して、かつての自分に語りかけるような「ぼくを叱って」。声は出せなくても、オーディエンスが心で歌った「五線譜のタイムマシン」。一緒に歌える日が、きっと戻って来る。その希望を忘れずにいようとも思った。
そらる
「落ち着いた曲を主に歌う『あこそら』は自分に合っているので、またやりたいです。マスクをしていても、以前と同じようにみんながニコニコして聴いてくれているんだろうなって思いながら、信頼しながら歌っています」
フロアを愛おしそうに眺めて、そう言ったそらる。アンコールで届けてくれた「ワンダー」と「ゆめをきかせて」は、どちらもそらる自らが作詞・作曲を手がけたナンバーだ。“君”に向け手を伸ばしながら、<響かせ続けていこう この歌を>と誓った「ワンダー」。『ゆめをきかせて』の表題曲である、ノスタルジックで温かな「ゆめをきかせて」。同じ空間で共に描く“ゆめ”は、本当に美しく、尊いものであった。
いつかまた会える日まで。まずは、“子どものころの自分に聴かせたい一曲”をテーマにしたアルバム『ゆめをきかせて』を楽しみに待とう。そして、色彩豊かなそらるの歌に寄り添ってもらいながら、それぞれの“ゆめ”を育てていこう。

文=杉江優花 撮影=小松陽祐[ODD JOB]、堀 卓朗[ELENORE]

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