『Reborn-Art Festival 2021-22』レ
ポート 石巻を中心に行われる、アー
ト・音楽・食の総合芸術祭

宮城県の石巻市と牡鹿半島を主な舞台とした『Reborn-Art Festival 2021-22』が、8月11日(水)に幕を開けた。東日本大震災から10年の今年、3回目を迎えた「アート」と「音楽」と「食」の総合芸術祭で、今回のテーマは「利他と流動性」。開催に先駆け、8月10日(火)にプレスツアーとレセプション、11日(水)にオープニングセレモニーが開かれた。現地で取材してきた各会場の様子などをレポートしたい。
『Reborn-Art Festival』の実行委員長は、音楽家で一般社団法人「ap bank」代表理事の小林武史氏だ。東日本大震災の直後から石巻に入り、「ap bank」としてボランティア活動を続けていた縁で、地域と協力してアートで東北を支援する音楽&地域再生のイベントができないかと企画を立ち上げた。2016年のプレイベントを経て、「Reborn-Art=人が生きる術」をキーワードに、2017年夏に1回目を開催。第2回は「いのちのてざわり」をテーマに2019年夏に開催され、延べ約44万人を動員した。
コロナ禍に見舞われた今回は、延期や中止も検討されたそうだが、会期を今夏(2021年8月11日~9月26日)と来春(2022年4月23日~6月5日)に分け、来場者情報の記録や検温、混雑時の入場制限といった対策を講じて、開催に踏み切った。そこには、地域からの「やれるのなら、やって欲しい」という強い思いがあったという。
11日のオープニングセレモニーでは、今回のもう一人の実行委員長である石巻市長・齋藤正美氏がはじめに挨拶し、夏会期のキュレーターを務める窪田研二氏は、開会を迎えられたことへの感慨と感謝を語った。また、小林氏の「コロナ禍で、人間も自然の一部だと思い知り、どう運営していくか試行錯誤したことで、地域の皆さんとの結束が強まり、より一枚岩になってきたように感じる。きっと次の段階へ繋げていくヒントも見つかるはず。地域にバトンが渡されていく喜びを実感しつつ、自分の役割をしっかり果たしていきたい」という言葉も印象的だった。
オープニングセレモニーより。向かって右から4番目が小林武史氏、その左隣が石巻市長の齋藤正美氏。
先述したように、今回のテーマは「利他と流動性」。これまでの石巻市街地と牡鹿半島に、新たに女川エリアが加わり、夏会期では石巻市街地、女川、桃浦、荻浜、小積、鮎川という6つのエリア・23組のアーティストの作品が展開される。「市街地は人と人の触れ合い、半島部では人と自然のつながりがテーマ。作品を通じて感じてもらえれば」と窪田氏。以下では、各エリアの主な作品を紹介する(アーティストの敬称は省略)。
石巻市街地エリア
東日本大震災時に仮設風呂に隣接したコミュニティースペースとしてにぎわった旧千人風呂では、大友良英による昭和家電のオーケストラ《バラ色の人生》(2015/2021)、長靴に履き替えて鑑賞するHouxoQueのインスタレーション《泉》(2021)、片山真理のセルフポートレート《ballet #002》(2013)、旧観慶丸商店2Fでは、ハーブのミントを使った廣瀬智央の《クールダウン》(2001/2021)、《無題(ミント・ガーデン)》(2021)などが鑑賞できる。
大友良英《バラ色の人生》(2015/2021) 上演時間15分。鑑賞の際には事前予約が必要
また、銭湯としての長年の歴史に幕を閉じたばかりの旧つるの湯では、アーティストユニットMESによるインスタレーション《サイ》(2021)、同じ建物の2階・旧サウナ石巻では、マユンキキの《SIKNU シㇰヌ》(2021)、片山真理の《hole on black ほか》(2018)、西尾康之の《磔刑》(2021)など、石巻の子供たちにはお馴染みのアイススケート場・プレナミヤギでは、バーバラ・ヴァーグナー&ベンジャミン・デ・ブルカが2019年のヴェネチア・ビエンナーレで発表した映像作品《Swinguerra》(2019)、日和山公園にある旧レストランかしまでは、雨宮庸介のインスタレーション《石巻13分》(2021)が展開。高橋匡太が石巻市民らにリクエストされた色で石ノ森萬画館を照らす《光の贈り物》(2021)では、その背景にあるエピソードを新聞やラジオなどで紹介する。石ノ森萬画館を望む元気食堂のテラスで10日に開催されたレセプションでは、ライトアップを背景に、地元の役者によるエピソードの朗読が披露された。
※高橋匡太の「高」は「はしごだか」が正式表記
マユンキキ《SIKNU シㇰヌ》(2021)
女川エリア
今年新たに会場に加わった女川は、高い防潮堤を作らず、海と共存していくことを選んだ独自の町づくりが特徴的。坂茂の設計による女川駅舎は温泉施設を併設し、商店街の向こうには海が見える。ここでは、女川駅舎の前に会田誠の彫刻《考えない人》(2012)、津波で倒壊転倒した旧女川交番の姿をそのまま残した震災遺構の前に、オノ・ヨーコが世界中で展開している参加型の作品《Wish Tree》(1996/2021)が設置され、《Wish Tree》では鑑賞者が自ら願いを書いた短冊を木の枝に結ぶことができる。また女川町海岸広場周辺では、震災で海に沈んだ車を地元民約100人で引き上げた加藤翼のプロジェクトの映像《Surface》(2021)を鑑賞できる。
会田誠《考えない人》(2012)
オノ・ヨーコ《Wish Tree》(1996/2021)
桃浦エリア
牡鹿半島の最初の作品展示エリアとなる桃浦では、2018年に廃校となった旧荻浜小学校の校庭や教室、倉庫や体育館を使って、作品を展開。森本千絵✕WOW✕RAF実行委員長の小林武史によるインスタレーション《forgive》(2021)、巨大なバルーンを用いた篠田太郎の《幼年期の終わりに》(2021)、サエボーグの《HISSS》(2015)、N.Y.のブルックリンを拠点に活動するSWOONのフィルムアニメーション作品《CICADA》(2019)、岩根愛の映像作品《Coho Come Home》(2021)、夏井瞬の《呼吸する波》(2021)などが鑑賞できる。
森本千絵×WOW×小林武史《forgive》(2021)Supported by 木ノ下グループ

夏井瞬《呼吸する波》(2021)

篠田太郎《幼年期の終わりに》(2021) この日は風が強くて上げられなかったが、本来ならば15mの高さまで浮かび上がる
荻浜エリア
牡蠣殻で白くなったホワイトシェルビーチに佇む、名和晃平の《White Deer(Oshika)》(2017)をはじめ、森と海に生きる動植物の生態サイクルをダイナミックに描いた小林万里子の《終わりのないよろこび》(2021)や、第二次世界大戦中に作られた秘匿壕(人工の洞窟)を使った布施琳太郎の《あなたと同じ形をしていたかった海を抱きしめて》(2021)、片山真理子の《on the way home #005 ほか》(2016)のほか、林道の先にある荻浜灯台一帯では狩野哲郎の作品群《21の特別な要求》(いずれも2021)を鑑賞できる。小林万里子の作品は、羽山姫神社に上る階段の途中にも。また、地元の旬の食材を楽しめる「リボーンアート・ダイニング」と食堂「はまさいさい」があるのも、このエリアだ。
《終わりのないよろこび》(2021)
小積エリア
牡鹿半島には、その名の通り、たくさんの鹿がいる。小積エリアにある「フェルメント」は、食猟師・小野寺望が中心となり、害獣とされる鹿を地域資源として生かすべく活動している鹿肉解体処理施設だ。志賀理江子+栗原裕介+佐藤貴宏+菊池総太朗による《億年分の今日》(2021)は、小野と継続的に対話を続けている志賀が、フェルメント周辺で展開している作品。湿地化した土地に空気を送るための溝や、痩せてしまった山には、土壌の質を改善するために牡蠣殻が撒かれ、鹿の骨や掘り出された瓦礫等も見られる。また、フェルメントの裏手にはビオトープも作られている。
志賀理江子+栗原裕介+佐藤貴宏+菊池総太朗《億年分の今日》(2021)の一部
鮎川エリア
牡鹿半島の南端部。島袋道浩が大量の白い砂利を敷くなどして遊歩道跡を再生させた《白い道》(2019)と、吉増剛造が窓から金華山が見える部屋のガラス窓に詩を書いた《roomキンカザン》(2019)という、RAF2019の2作品を鑑賞できる。
島袋道浩《白い道》(2019) (オフィシャル提供)
このほか、「アート」と「音楽」と「食」の総合芸術祭を名乗るだけあって、石巻の食の可能性を再発見する「FOODプロジェクト」も充実。地元の食材を中心とした料理を夜市や食堂で提供するほか、食のセッションやシンポジウムも開催される。10日夜のレセプションでは、ディレクターを務める石巻を代表する3人の料理人が登壇し、挨拶。出席者は彼らが用意した地元の旬の食材を使った美味しい料理に舌鼓を打った。
また、2021年8月29日(日)には、Mr.Childrenの櫻井和寿と小林武史が出演するライブ『ワン・バイ・ワン・プラス 〜10年目のフレームより〜 Supported by 木下グループ』を開催。ライブ配信されるほか、9月1日(水)23:59 までアーカイブ視聴も可能だ。
『Reborn-Art Festival 2021-22』の夏会期は9月26日(日)まで開催(休祭日:9月1日、9月15日)。春会期は2022年4月23日(土)から6月5日(日)まで、石巻エリアで開催される。石巻や女川のポジティブなエネルギー、そして牡鹿半島の豊かな自然を感じながら、ぜひアートや音楽や食を味わいたい。

取材・文・撮影=岡崎香 写真(一部)=オフィシャル提供

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