フィルモア・イーストで
ライヴ録音された
タジ・マハールの異色作
『ザ・リアル・シング』

本作『ザ・リアル・シング』について

そして、71年にタジ初のライヴアルバムとしてリリースされたのが本作『ザ・リアル・シング』(発売当時はLP2枚組)である。これはフィルモア・イーストでのライヴ録音で、東海岸への遠征だからか、パーカッションのロッキー・ディジョンを除いて、ジェシ・デイヴィスをはじめとするいつものメンバーは参加していない。本作のメンバーはジョン・サイモンがキーボード、ギターにジョン・ホール、べースはビル・リッチ、ドラムはグレッグ・トーマスというウッドストック在住チーム(メンバーはジョン・サイモンが決めたのだろう)である。すごいのはチューバ奏者が4人参加していることである。ハワード・ジョンソン、アール・マッキンタイア、ボブ・スチュワート、ジョセフ・デイリーといった、ジャズ(特に前衛ジャズ)界で活躍するプレーヤーである。この中のハワード・ジョンソンとアール・マッキンタイアはザ・バンドの『ロック・オブ・エイジズ』(’72)にも参加しており、おそらくジョン・サイモンのお気に入りのプレーヤーたちだと思われる。

『ジャイアント・ステップ』に収録されていたインストナンバー「もうディキシーなんか吹くもんか(原題:Ain’t Gwine To Whistle Dixie(Any Mo’))」は9分以上に及ぶ熱演で、ジョン・ホールのギターソロとハワード・ジョンソンのバリトンサックスソロが素晴らしい。ちなみにこの曲「ファーザー・オン・ダウン・ザ・ロード」と同じ曲である。なお、チューバ4本のアンサンブル重低音は「スウィート・ママ・ジャニース」でたっぷり聴ける。ジャジーなブルースナンバー「ジョン・エイント・イット・ハード」でもチューバのアンサンブルは絶好調である。アルバムのラストを締め括るシャッフルナンバーの「これが、僕のブルースさ(原題:You Ain’t No Street Walker Mama, Honey But I Do Love The Way You Strut Your Stuff)」は19分近くあるが、タイトな演奏とメリハリのある構成でどんどん引き込まれていき、熱気あふれる大団円を迎える。ここでもジョン・ホールの好サポートが光っている。なお、収録曲は全部で10曲であったが、CD化に際して1曲(「シー・コート・ザ・ケイティ(アンド・レフト・ミー・ア・ミュール・トゥ・ライド)」)が追加収録されている。

本作のあと、このライヴ時のメンバーと『Happy Just To Be Like I Am』(’71)をリリース(ギターはジョン・ホールではなく、ホーシャル・ライトとジェシ・デイヴィス)し、4管チューバのほかスティールドラムを使うなど、タジがアメリカーナからワールドミュージックへと変わっていく予兆が見られる。

TEXT:河崎直人

アルバム『The Real Thing』1971年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. フィッシン・ブルース/Fishin' Blues
    • 2. もうディキシーなんか吹くものか/Ain't Gwine to Whistle Dixie (Any Mo')
    • 3. スウィート・ママ・ジャニース/Sweet Mama Janisse
    • 4. 田舎へ行って、僕の郵便箱を青く塗ろう/Going Up to the Country and Paint My Mailbox Blue
    • 5. 君に首ったけ/Big Kneed Gal
    • 6. 誰かが必要/You're Going to Need Somebody on Your Bond
    • 7. トムとサリー・ドレイク/Tom and Sally Drake
    • 8. ダイビング・ダック・ブルース/Diving Duck Blues
    • 9. ジョン・エイント・イット・ハード/John, Ain' It Hard
    • 10. シー・コート・ザ・ケイティ・アンド・レフト・ミー・ア・ミュール・トゥ・ライド/She Caught the Katy (And Left Me a Mule to Ride)
    • 11. これが俺のブルースさ/You Ain't No Street Walker Mama, Honey but I Do Love the Way You Strut Your Stuff
『The Real Thing』(’71)/Taj Mahal

OKMusic編集部

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