共演者の“裏の顔”とは? 木村達成
、小野賢章、加藤和樹らミュージカル
『ジャック・ザ・リッパー』歌唱披露
&会見レポート

ミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』が2021年9月9日(木)から日生劇場、10月8日(金)からフェニーチェ堺大ホールで開幕する。
世界的に有名な未解決事件として恐れられた殺人犯・通称“ジャック・ザ・リッパー(切り裂くジャック)”。19世期末に英国ロンドンで発生したこの猟奇的連続殺人事件をモチーフに、チェコ共和国でミュージカルが創作された。そのミュージカルを原作に、韓国独自のアレンジを施したミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』は2009年の初演以来、多くの観客に愛される大人気演目に。今回は、日本版演出・日本人キャスト初演として、KAAT神奈川芸術劇場の芸術監督も務めた白井晃が演出を担う。
開幕まで2週間と迫った8月26日(木)、出演者らによる歌唱披露と質疑応答がオンラインで行われた。
演出の白井のほか、ダニエル役(Wキャスト)の木村達成、小野賢章、アンダーソン役(Wキャスト)の松下優也、ジャック役(Wキャスト)の堂珍嘉邦、アンダーソン役とジャック役を兼ねる加藤和樹、グロリア役のMay'n、ポリー役のエリアンナ、モンロー役の田代万里生が登壇。その様子を写真とともにお伝えする。
田代万里生、小野賢章、加藤和樹(左から)
この日、披露されたのは「最後のチャンス」「もしかしたら」「こんな夜が俺は好き」など全6曲。2週間後に初日を控えたキャストたちは、ここまで約一か月の稽古で深めた各役への想いを、魅惑的な音楽にのせて作品の世界観を体現した。
また、今回初披露された本番衣装は、19 世紀末ロンドンの華やかだがどこか陰のある雰囲気が醸し出され、作品全体の世界観に期待が高まる。なお、初日に向けて衣裳・ヘアメイクはまだ進化する予定という。
グロリア役のMay'n
続いて、質疑応答が行われた。
――ご自身の役について、思わず感情を揺さぶられてしまうような台詞やシーンがあればぜひ教えてください。
May’ n:グロリアはいろんな面があるところにとても惹かれます。だからこそ難しいなと思っているんですけども。まず最初、ダニエルと出会って、ここから抜け出すんだという力強い前向きさは、私も心が震えますし、自分自身が夢を信じて上京してきたときを思い出すというか。大切なものを信じて、未来に向かって歩んでいくわというところにとても共感しながら歌を歌っています。
――どういうところを気をつけながら演じられているのですか?
May’ n:台本を読んでいると、当たり前ですけど、展開がわかっていて、グロリアは割と早くから急展開、内面的にも外見的にもズタボロになってしまうんですけど。ダニエルと出会って、「私、信じている!」というところはとても前向きなグロリアでいたいなと心がけています。
ダニエル役の小野賢章
――ダニエルとのシーンが一番心に残っていると。
May’ n:はい!またお二人のダニエルが全然違うので……
田代:どう違いますか?
May’ n:そうですね。木村ダニエルは……木村さんというと怒られるので(笑)。
木村:怒らないですよ。ただ距離を感じるだけです(笑)。
May’ n:達センパイは、本当にまっすぐ。こちらが恥ずかしくて、目をそらしたくなるぐらい、迷いもなく150%ぐらいで見つめてくるのがとても印象的で。賢章くんのダニエルは、ちょっと包容力がある感じというか、そういうことを感じます。でもどちらも素敵です。
――それを受けてお二人はどうですか?
木村:嬉しいですね。僕もそれを意識してやっているので、そう感じていただいているのであれば、今後もやっていけるなと(笑)。
小野:本番までに包容力の幅を広げていきたいなと思います。
木村:真面目!!(笑)
アンダーソン役の加藤和樹
――加藤さんは役を演じる上で、印象に残っていることは?
加藤:今回、アンダーソンとジャックの二役を演じます。アンダーソンの方は、ポリーとの関係性が肝になってくるかなと感じていて、彼の一匹狼的なところもありながら、本心を伝えたくても伝えられない不器用さだったり、僕自身も器用な方ではないので、そういうところには共感しつつ、彼の心の中にある光と闇みたいなものをもっと意識してやっていきたいなと思っております。彼の行動力だったり、ジャックを追い詰めていく、それが正しいことなのかいろいろ葛藤しながら突き進んでいく様にはいつも心を震わせられています。
ジャックの方は、正直掴みどころがなくてですね。彼がなぜ娼婦たちを手にかけていくのかというところや、彼の中にある狂気性というのは、もっともっと見つめていかないといけないなと思います。一人の人間としてはあまり共感できるところはないんですけど(笑)、もっと彼に寄り添って作っていきたいなとは、やりながら思っています。
木村:この作品は、描かれているところも結構少なかったり、自分たちで作って行かなくてはいけない瞬間がかなりあるので、そのバックボーンを各々が構築していく作業がありますよね。
加藤:そこを白井さんにいろいろお話しいただいたり、ヒントのようなことをいただいて、つくってはいます。
ダニエル役の木村達成
――木村さんはどうでしょう?
木村:ある歌詞の中で「もう止められない」という歌詞があるんですけど、その歌詞が僕の背中を押してくれるし、もう後戻りできないんだと、突き進む覚悟みたいなのをくれる曲があります。それが印象的で。確かにそれまでもグロリアに対する気持ちは前のめりなんですけど、それがより悪に走る、背中を押してくれるというか。それがすごく印象的ですね。あと、個人的には、マントプレイっていうんですか?
加藤:マント捌きって言って?(笑)
木村:マント捌き!マント捌きを個人的にやりたいなと思って、その歌の終わりにやると、白井さん嫌がるかな?と不安に思ったんですけど、白井さんから「ここはマントをやってほしい」と言われて、すごく嬉しくて、僕。
白井:別に木村くんがやりたいかどうかは知らなかったんですけど、そうではなくて、音楽的にここは颯爽と去って欲しかったのでお願いしたという……。
木村:僕、あれ嬉しかったです、とても(笑)。
May’ n:あそこめちゃくちゃ格好いいです!
木村:本当ですか!ジャックと気を合わせながらね、頑張りたいと思います!
モンロー役の田代万里生
――田代さんはいかがですか?印象に残っている場面などございますか?
田代:モンローはロンドンタイムズの新聞記者なんですけど、号外をアンダーソンに見せて、モンローが「どうだ、いいだろう、この台詞。ジャック・ザ・リッパー、切り裂くジャック、俺が考えたんだ」というんです。
モンローとしては”ジャック・ザ・リッパー”という言葉が新聞でどんどん世に広まっていく。同時に、僕らカンパニーは『ジャック・ザ・リッパー』を今日本で作っていて、僕らの『ジャック・ザ・リッパー』をみなさんにお届けする。そういった意味では、あそこのシーンをやったあとに、いつも僕らの『ジャック・ザ・リッパー』を早く皆さんにお届けできるといいなと思います。
あとはダニエルとかポリーとかアンダーソンとかグロリアとか、苦悩している役が多い中、僕ほとんど苦悩せずに笑っている感じなので(笑)。稽古が夜8時ぐらいになると、みんな疲弊していく中、(自分も)肉体的にはもちろん疲れるんですけど、どんどん元気になっていく感じもするので、このエネルギーをぜひ劇場で爆発させるつもりです。モンローは明確にこれというものをもってやっているので、日に日に快感になっています(笑)。
――日本版の『ジャック・ザ・リッパー』を再創造されるにあたって、一番注力されたのはどのような部分ですか?
白井:韓国で長くロングランされて人気がある作品なんですが、今こういう世の中の状況にもなっているし、今の我々がこの音楽と台本から感じられる部分を、より自分たちの肉体に即した物語として再生したいなと思っています。
120年以上前の実際の事件から想起して書かれた本なんですが、その事件がなんでこんなにも我々の中にこんなに印象として残っているのか。その事件が未解決にもかかわらず、人々の記憶に残っているのはなぜなのか。そういうところを一つのヒントにして描いていきたいと思います。
登場人物全員が一途なんですよね。田代さんは明るい役だと話していましたけど、彼も狂気的で、一つの特ダネを掴むことに、自分のアクセルが止まらない。ジャックもダニエルも同様に、止められない感覚があるんですね。それが我々の生を止められない感覚とつながっていけばいいなと思います。そこを目指しています。
グロリア役のMay'nとダニエル役の木村達成(左から)
――稽古場でご自身に起きた「変化」を語っていただきたいのですが、何かありますか?
松下:最近の変化で言うと、僕、何持っていったらいいか分からないから、稽古場の荷物が多いんですよ。ぐっちゃぐちゃだったんですよ。飴とかマッサージグッズとか。そしたら、知らぬ間にカゴが置かれていました(笑)。制作さんが用意してくださったと思うんですけど、カゴの中に全部しまってあって。子どもがおもちゃ箱をひっくり返して、それを片付けられたみたいな(笑)。ありがたかったし、助かりました。
エリアンナ:最後、棚になっているんじゃない?
小野:僕、席が隣なんですけど、いつも飴溢れているなぁって、見ていました。
――エリアンナさんはどうですか?
エリアンナ:私自身個人的な話なんですけど、ポリーという人間らしい感情を表に出したり、ロマンスのある役を演じさせていただくのは、私の中で珍しくて。得体の知れない役だったり、自我が強いオペラ歌手の役だったり。ロマンスのあるフェミニンな役というのが、私の中で経験があまりなくて、今回、チャレンジをさせていただいているんです。
ポリーの相手役のアンダーソン、松下くんとかーさん(※加藤和樹のこと)は以前に共演したことがあって。私の中では小っ恥ずかしいシーンが結構あるんですよね。感情を出さなくてはいけないと言うのももちろんわかっているんですけど、どこかでミニエリアンナが「きゃっ」となっているんです(笑)。
2幕で、ポリーが今まで娼婦として生きていかなくてはいけないという鎧をとる、気持ちを吐露するシーンがあるんです。稽古をしている中で、ミニエリアンナが「迷惑かけちゃいけないな」という気持ちでいたら、背中合わせになる時に、松下くんが「全然寄りかかってくれていいよ」と。白井さんも「寄りかかりな」と。よりかかった時に、涙が出そうになって、感情がぶわーっと出そうになって。気持ちの根源が見えた気がして、ブレイクスルーだった瞬間でした。
かーさんアンダーソンに寄り掛かった時も、また別の感情が溢れ出てきて。1人ではシーンは成り立たないし、一緒に作り上げていくものだなと改めて体感できたかなと言うお稽古でした。貴重な経験をさせていただきました。すごく頼もしいお二人です。
ポリー役のエリアンナ
松下:アンダーソンの人間が見えてくるところって、ポリーと一緒にいるところだと思うんですね。それって、そんなに多くはなくて、さらに言葉数も少ないし、二人で歌っているわけでもない。ポリーが歌っている側にアンダーソンがいるシーンなんです。本来セリフがない時の方が手持ち無沙汰になって、考えることが多いと思うんですけど、自然とそれがポリーの歌やお芝居に引っ張られて、居心地がいい感じがしている。
――小野さんは「変化」はありますか?
小野:稽古もだいぶ進んできて、台詞を覚えるとか、動きを覚えるとか、歌をちゃんと歌えるようにするとか、最低限できなくてはいけないことに必死に追われていたんですけど、それがだんだん体に馴染んできて、視野が広くなってきたなというのが変化ですね。
ダニエルという役を追い込んでいくと、新たな感情が生まれたなというのがまた一つありまして。グロリアに対する思いなんですけど、とにかく守るという、愛の強い感情を持つだけではなく、この前は怒りの感情が出てきたりして。それはやっていく中でいろいろ変化していく。その日の自分のコンディションだったり、気持ちの持っていき方だったりで日々変わっていくなと思って、毎日楽しく稽古をしていますね。
自分自身に対する課題も変化しているので、それも一つずつクリアできていったらいいなと思いながら毎日過ごしています。
ジャック役の堂珍嘉邦
――堂珍さんはどうでしょうか?
堂珍:ジャックという人間を演じさせていただくなかで、これからもっと気をつけていかなくてはいけないのは、人を焚きつけていくとか、悪の心に染まってしまうとか、自分以外の人間がそういう気持ちに移り変わる時に、自分としては快感や喜びを感じるというか。そういうところをもっと増やしていく中で、ジャックというものがより厚みが出てくるのかなと。最初の稽古のときに、マネージャーさんと楽しく会話して帰っていたんですけど、最近は無言で、いい感じにぐったりしつつ(笑)。
ジャックはもしかしたら純粋で気弱だったのかなと思うんですよね。例えば、両親とか親戚とかがすごい変な性癖を持っていたり、暴力的だったりしたら、そういう経験を受けて、人格形成されていくはずで。ジャックも瞬間に、娼婦なのか、親族なのか、友達なのか、すごく馬鹿にされてコンプレックスみたいなものがすごく増幅してしまったところがあったりしますし。これからジャックの気持ちにダイブしていこうと思います。
ジャック役の加藤和樹
――『ジャック・ザ・リッパー』にかけまして、稽古を通して、共演者の「裏の顔」をみた方いらっしゃいますか?
小野:裏の顔というと、あんまり言っちゃいけないイメージがあるんですけど、田代さんのカメラワークすごいですよね。カメラが趣味ということで。
田代:小道具のカメラと自前のカメラを常に2つぶら下げて、常に共演者やスタッフさんを撮るんです。SNSのプロモーションとしてやらせてもらっているんですけど、もともとカメラが好きで、こんな素敵な共演者を好きに撮っていいといったら最高で!しかも白井さんが熱く語っている時に、邪魔にならないように、気が散らないように撮らせていただけるというのが、本当に楽しくて。稽古も楽しんですけど、稽古が終わってその写真を見返すのが本当に楽しんです(笑)。
加藤:もうカメラマンじゃん(笑)。
田代:それをトリミングしたり、色加工して制作さんに送るのがすごい楽しいです。
エリアンナ:本にして欲しい!
May'n:すごい飛び回っていますよね。ご自身出番が終わって、休憩するのかなと思ったら、プライベートのカメラを持って走っていくという。
田代:通しの時はちゃんとお芝居するんですけど、場当たりの時などは小道具のカメラではなくて、自分のカメラにすり替えて、モンローがアンダーソンのフラッシュを焚く時は、ばっちり撮っています(笑)。
アンダーソン役の松下優也
――そんな田代さんは何か共演者の「裏の顔」を見かけられました?
田代:加藤和樹さんが『マタ・ハリ』から2作連続でご一緒させていただいて。次に和樹くんが『北斗の拳』が控えているということで、更衣室で定期的に和樹くんの上裸を見ることがあるんですけど、日に日にたくましく、大きくなっている。僕的にはタンクトップに、皮のコートとか着て欲しい(笑)。
松下:タンクトップにガンフォルスターだけとかね!(笑)
加藤:違う作品になっちゃうよ!全然肌が出ることはないです(笑)。
田代:『北斗の拳』まで封印!(笑)。
May'n:和樹さんといえば、お化粧していた時に、ファンデーションの後に塗るパウダーを塩胡椒の瓶に入れていて、さすがお料理好きだなと思います。
木村:まじ?塩胡椒塗っていたわけじゃないよね?(笑)
加藤:塩胡椒塗るわけないだろ(笑)。あれは僕がミュージカル初めてやった『テニスの王子様』の時から、あの入れ物なんですよ。メイク道具とかないので、ヘアメイクさんが用意してくださったものをずっと使っているんです。
松下:じゃあ、その人のせいなんだ?(笑)
加藤:せいとかじゃない!使い勝手はものすごくいいんですよ!……俺はいつからこんなキャラになったんだ(笑)。
白井晃、May’n、堂珍嘉邦、田代万里生、小野賢章、木村達成、加藤和樹、松下優也、エリアンナ(左から)
取材・文=五月女菜穂

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