ドラマチックアラスカ 新作『人間合
格』に詰め込まれたバンドの佇まいと
メッセージ

神戸発のギターロックバンド、ドラマチックアラスカがミニアルバム『人間合格』をリリースした。ライブでも披露され音源化が期待されていた表題曲「人間合格」をはじめ、バンドならではのソリッドな一面が掻き鳴らされる「CODE:RED」など、新たなバンドアンセムを軸に“アラスカ的人間讃歌”が詰まった温かみある最新8曲を収録した今作。コロナ禍だから生まれたのかもしれない、バンドの佇まいとメッセージが詰まった新作『人間合格』について、根掘り葉掘り訊いてみた。
“生きるだけでも大変な1年半やったと思うから、お互いに称え合おうよ!”という気持ちが伝えたくて、「人間合格」の歌詞を調整しました。(ヒジカタ)
――最新ミニアルバム『人間合格』が発売されました! 無事、リリースを迎えての感想はいかがですか?
ヒジカタ:何が起こるかも分からない世の状況の中で、メンバーみんな健康で発売日を迎えられたのでホッとしてます。
――予定通りにライブができたとか、CDが無事リリースできたとか、コロナ前は当たり前だったことが、一つひとつありがたく感じちゃいますよね。
ヒジカタ:そうですね。去年は事務所の状況も厳しいし、スタジオにもなかなか入れなくて、お店に置くCDも作れない状況だったので。CDショップに並んでいるのを見るのがむちゃくちゃ嬉しいです。
――2020年11月リリースのミニアルバム『□』はクラウドファンディングで制作費を集めて、リモートで制作してとコロナ禍で不自由な中で制作した作品でしたからね。でも、そんな中でも『□』を制作したことが、俺はすごく大きかったんじゃないかと思って。ヒジカタくんが紙資料で、「『□』では、突然訪れたコロナ禍への戸惑いや怒りといった目の前の情景を込めることしかできなかった」と綴っていますが。『人間合格』は、ちゃんとその一歩先に進めています。
ヒジカタ:状況の乗りこなし方が分かってきたというか、前作は誰もなにも分からない状態で、恐怖や不安が大きかったんですけど。それが一年半くらい続いて、色んなことが分かってきて。今作では明るいメッセージも書けたし、落ち着いた心で作れたと思います。
――聴く側も慣れてきたとはいえ、不安な状況が続いているから。どうしてもフィルターを通して聴いてしまうところもあると思うんだけど。バンドとしてはすごくポジティブに健全に、健康的に作品作りに取り組めているという印象を受けました。
ヒジカタ:“最悪、集まれなくても作品はできる!”というのが前作からの学びで。“あれができたんだから、何も怖くないやろ?”っていう気持ちはありましたね。
サワヤナギ:『人間合格』の元のデモは、コロナになる前からあって。それをアルバムのリード曲でできたというのは、前作で不安だったり、迷っていることだったりをちゃんと作品に反映することができたからだと思います。
――いま作品を作ろうと思ったら、どうしてもコロナ禍に想うことが入ってきてしまったりするんだろうけど。“そういえば、良い曲あったよね?”って昔の曲を出してきて形にしたり、変に身構えず作品作りができているのが凄く良いなって。
ヒジカタ:『□』で溜まった膿とか、そういったものを出し切れたのかも知れないですね。
――そこで“俺は何を歌いたいんだろう?”とフラットに思った時に、“全人類を肯定する歌が歌いたい!”と思ったのも凄く良くて。いま不安を抱えている人が、“ここからどう生きよう?”と考えた時、次に求めるのって肯定してもらうことのような気がするんです。
ヒジカタ:会いたい人と直接会えない状況が続いて、コミュニケーションを取れるのがSNSだったりするんですけど。SNSを見ると毎日、誰かと誰かがケンカしていて、テレビ着けても誰かが誰かに文句を言ってて。それを1年半見続けていたら、すごくシンドいなと思って。本当は“パンダの赤ちゃんが生まれた”みたいな明るいニュースが見たいのに、辛いニュースばかり。自分にもできないのに誰かを責めてみたり、その責めてる人も誰かに責められてるかも知れなかったり。“もう、生きてるだけでOKにしようよ! 生きるだけでも大変な1年半やったと思うからさ、お互いに称え合おうよ!”という気持ちが伝えたくて、「人間合格」の歌詞を調整しました。
――俺もカワウソの赤ちゃんのニュースを見て嬉しくなって、池袋の水族館まですぐに会いに行っちゃいました(笑)。みんな不安を抱えて生きてるから、攻撃的にもなってしまうのは分かるけど。俺はもう暗いことばかり聞いたり考えたりするのが嫌すぎて、ネガティブなニュースは耳がフタしちゃって聞こえなくなってる。
ヒジカタ:僕らはライブの状況とかにも関わるから、いまの世の中のルールも知っていなきゃいけないので。どうしてもニュースを見なきゃいけなくて、それで疲れちゃったところはあると思って。動物の赤ちゃんのニュースを多めに流して欲しいですよね(笑)。
ドラマチックアラスカ 撮影=Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)
――直接会えない状況も続いてという話がありましたが、配信ライブやクラウドファンディングといった、新しい形でのファンとの繋がりは経験してみてどうでした?
ヒジカタ:ライブの直接的な反応を得にくい期間だったので、クラウドファンディングとか、お客さんの応援がカタチとして見える取り組みをやれたのはすごく良かったです。クラウドファンディングは支援者が200人くらいいたんですけど、こんな最悪な状況でも僕たちがCDを作ると言ったら、楽しみにしてくれる人が200人もいるってことが分かって。僕らも反応が得にくいからこそ、あえて新曲にはをお客さんと一緒に歌えるパートを作ったり。お客さんをしっかり想像しながら、作品作りができました。
――そんな作品を経ての『人間合格』の制作はいかがでしたか?
タケムラ:とにかく早くライブがしたい!っていう気持ちでレコーディングしていて、アレンジに関してもライブを見据えてやって。自分のやるべきことやどう聴かせたいか? をはっきりとイメージできる中で作っていけたので、結構スムーズでしたね。
ニシバタ:うん。時間は長くかけたけど、“この曲はどうしようか?”っていうイメージや、やるべきことが分かっていたし。
タケムラ:完成して聴いてみても、イメージ通りの曲が作れたんじゃないかと思います。
ヒジカタ:去年は、できても配信ライブだったけど、今年はライブができるだろうって想定もある中で作れたという違いはあったよね。
ニシバタ:コロナ前から振り返っても、バンドの状態はすごく良くて。コロナ禍で制限される中でも、当たり前だけど解散とか活動休止って話は一度も出なかったんです。“どうやって活動していこう?”って話し合いが主で、みんなで試行錯誤してきて。この状況下での要領も良くなったし、バンド内の良い状態が今作に出せたんじゃないかと思います。
サワヤナギ:ライブを意識してっていうのは、どのアルバムでも考えていることなんですけど。この状況でも諦めずに考えられたのは良かったなと思いますね。本当にライブでコール&レスポンスができるのか?っていう不安もあるけど、希望を込めてやれたのが良かったです。
――アルバムタイトル曲であり、1曲目に収録された「人間合格」。以前からデモがあったと話していましたが、アルバムの制作はこの曲ありきで進んでいったんですか?
ヒジカタ:僕の個人的な考えなんですけど、ライブってその日の最後の曲がお客さんの印象に残るけど、アルバムって1曲目が作品の印象として残ると思っていて。いま一番伝えたいメッセージはわりと1曲目に置くようにしているし、ここしか無かったです。
――収録曲が揃って、一枚通して聴いての感想はいかがでした?
ヒジカタ:毎回、“この曲が大変やったな~”とかがすごくあるんですけど。今回の曲たちは、“なんで完成したんやろ?”みたいな気持ちもあって。日常の中で思うこととか、息抜きでポロ~ンとギターを弾いて生まれた曲とか、すごい自然な日常の中で無理せずできた曲たちっていう感じがしていて。自分の生活がそのまま曲になったという感じがしています。
――そこが凄くて、現状の中で曲作りをしたらどうしても聴こえ方を気にしすぎたり、身構えたりしそうなところだけど。平常時と変わらない曲作りができているんですよね。
ヒジカタ:やっぱり『□』を作っているから、自分たちはそこをクリアしているバンドっていう気持ちもあったのかもしれないですね。
サワヤナギ:僕は「人間合格」で始まる、人を肯定する優しさをどの曲からも感じて。出来上がって聴いた時、他のアルバムと比べても温かみのある作品になったと思いました。
タケムラ:うん、温かみもありながら、アラスカらしさも残せてて。所々に尖った印象も与えられているから、凄いの作ったなと思います。
ニシバタ:ヒジカタが“無理せず”って言ってたけど、デモの段階から想いとか日常から感じたことが見えてきて。“いい曲やな”と思う曲が多くて、その曲をさらに良くするっていう作業は難しいところもあったけど。やってて楽しかったし、できた時には達成感もあったし。自信を持って世の中に出せる作品になったなと思いました。
ドラマチックアラスカ 撮影=Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)
――では、それぞれ特に好きな曲や印象に残っている曲を教えてもらえますか?
ヒジカタ:「こどものままで」はボーカルRECでいうと、人生で一番のベストRECと言える手応えで録れたんですけど。去年、配信ライブをやって全曲演奏できるようにしたり、カバー曲をやったり、自分で録る機会も多くてソフトの使い方も覚えたり、めちゃくちゃ修行できたので。歌が我ながら上手になったなと思うし、細かいニュアンスも上手に調節できるようになったなと思っていて。「こどものままで」は自分で聴いてもめちゃくちゃ気持ちいい曲になりました。
サワヤナギ:僕は大変だった曲も色々あるんですけど、「CODE:RED」は逆で。メロディとコードっていうところから、完成形までが秒で行けた曲だったんです。曲って伝え方やアレンジによって全然意味合いが変わったりするので、いろんな可能性を潰してから完成形を決めたいんですけど。この曲はほぼ迷いなく、最短で完成形までたどり着けて。そういう曲ってたまにあるんですけど、理由は分からなくて。弾き語りの時点で、アラスカでやってきたサウンドに最短で行ける何かがあったから、そうなったのかな?と思いました。
タケムラ:僕は逆に苦労した曲で、「ふざけんじゃねえ」はギリギリまで悩んで悩んで、悩んだままで録りました。細かい一音とか音符の位置でめっちゃハマりが悪くなったりして、“ダルいなぁ”と思いながら作り進めて(笑)。いま、ライブに向けて絶賛練習中なんですけど、やっぱり一番難しいですね! ずっと挑戦しているので、やってて楽しいですけどね。
ニシバタ:僕は「人間合格」はもちろんですけど、1曲挙げるならば「瑠璃」ですね。もともと、ヒジカタの弾き語りで会場限定CDで出していて。ヒジカタの想いが詰まった良い曲だなと思っていたんですけど、弾き語りなので音数も少なくてしっとりとした印象の曲で。これを“バンドアレンジしよう”ってなった時、最初の方向性を決めるのが結構大変でした。結果、弾き語りとちょっと印象が違う、曲全体に物語があるようなアレンジになったかな? と思います。
――アルバムラスト、「瑠璃」で終わるのも温かみのあるアルバムに感じる理由かも。
ヒジカタ:「瑠璃」は天国に旅立った愛犬への曲なので、生きることを意識した「人間合格」で始まって、お別れの歌で終わるというのは考えて置きました。
――なるほど。俺がアルバム聴いてて引っかかったのが、「また同じ君に」だったんだけど。セルフライナーノーツを読んだら、みんなでJ-POPをたくさん聴いて研究して作った曲だと書いてあって。なるほど、アラスカにとっての挑戦曲だったんだと思って納得しました。
ヒジカタ:せっかくアルバムを出すので、毎回何かしらにチャレンジしよう、みたいな流れになるんですけど。今回はJ-POPをやってみようって、色々試して。サワヤナギがアレンジに関して色々考えてくれたんですけど、一度は“これはやりすぎじゃないか?”ってところまで行って。“もうちょっとロックめに”みたいな微調整もして、アラスカで歌えるギリギリのラインを探りながらできた曲です。
――“やりすぎじゃないか?”の段階のアレンジも聴いてみたいですけどね。
タケムラ:J-POPできるクオリティの曲が作れることが分かりました(笑)。
サワヤナギ:最初からJ-POPにしようと思って取りかかったわけじゃなかったんですけど。なかなかロックにならないから、作っててすごいシンドかったですよ(笑)。“これはたどり着けないかも知れない”って諦めかけたけど、最後は上手く着地できて良かったです。
――バンドが望むか分からないけど、TikTokとかもハマるんじゃないですか? キャッチーだし、部屋で一人スマホで聴いてる若い子に引っかかりそうだなと思いました。
ヒジカタ:確かに! TikTokと相性良さそうですね。ライブがやりづらくて、“ライブが凄い良い!”って流行り方も難しい時代なので。TikTok発のアーティストも増えてきたことだし、僕らもやりたいなと思っているんですけど、なかなか難しいですよね(笑)。
――ライブに人を集められないなら、他の発信方法も考えなきゃいけないですからね。ライブも以前の状況に戻すだけじゃなくて、なにか新しいカタチが生まれてくるかも知れないね。
ヒジカタ:ライブに行けない状況の中で、音楽以外の楽しいことを見つけてしまって、音楽を離れた人もたくさんいると思うんです。だから、コロナが収束した後は元に戻ることは絶対になくて。ちょっと大変なところからスタートすると思うんですよね。そこで自分たちでも色んな発信方法を考えなきゃいけないと思っていたんですけど。最近、「人間合格」のMVをYouTubeにアップしたら、スペイン語のコメントがめちゃくちゃ付いてて。
――へぇ、面白い!
ヒジカタ:なんかメキシコ人に人気なんです、僕たち(笑)。メキシコの友達ができて、向こうのTikTokにアップロードしたら、みんなが聴いてくれたみたいで。その子はメキシコで「太陽と虎」をオープンするって頑張ってて。バンドを長く続けていると、こんな面白い展開もあるんや!と思ったり。そこに甘えず、自分たちで考えて行動したいと思ってます。
――リリース後は全国リリースツアーも控えています。
ヒジカタ:はい。もう、ツアーを回れることが嬉しすぎて! ツアー行った先で会える人とか、絶対食べるごはんとか、各地の空気を吸えるのがめっちゃ嬉しくて。いまからすごく楽しみにしています。
――そして何より、『人間合格』はライブで演奏するための作品ですから、ライブハウスで鳴らして完成形を見せてやらないと。
ヒジカタ:そうですね。夏の思い出が部屋の天井しかないので、ツアーで夏を取り返して、今年の夏の思い出を作りたいです。
取材・文=フジジュン
ドラマチックアラスカ 撮影=Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)

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