松尾太陽

松尾太陽

【松尾太陽 インタビュー】
イメージは“歌う”
ではなく“語る”、
曲の情景を伝える
語り手でありたかった

通して聴いた時に点と点がつながって、
線になるような作品にしたかった

前向きにも見えるし、ちょっと諦めてるようにも思えるし、ひと筋縄ではいかない詞世界ですよね。3ピースバンドのmacicoが提供した「anemone」も軽快だけどアンニュイな匂いが強いという。

macicoさんに直接お聞きしたところによると、この曲は今のことを歌っているそうなんですよ。例えば、連絡をして“また今度ね”と返ってきたとしても、“その今度っていつなんだろう?”とか、“簡単に会いに行くことができないから、自分にとって大切な人を蔑ろにしているんじゃないか?”とか。そういう不安に襲われても、結局は今まで信じてきたもの、培ってきたものが一番大切なんだということが描かれているんです。それぞれの曲に対して仕上げた時のストーリーや、どういった想いでその歌詞を書いてくださったのかなどをお聞きできたんですけど、そうすると曲のとらえ方がガラッと変わってくるんですよね。“さわやかな曲だなぁ”とか“この曲は不思議な世界観だなぁ”とかのざっくりとした感想だったのが、“そんな意図があったんだ!?”と深く理解できたし、それを自分の中で噛み砕いてからレコーディングに入れたのは良かったです。

とはいえ、歌うにしても難しい曲ばかりですよね。「anemone」もガイドになる音が見えづらくてリズムがとりづらいですし、「デジャヴの夜」なんてラップ的なところもあって、ハイハットやピアノの音に引きずられたら歌がどんどんずれていきそうだし。

めっちゃ難しいです! 「デジャヴの夜」はちょっとジャズ感もあるんだけど、決してそうじゃないっていう。ちょっと聴いただけじゃ絶対に覚えられないですね。あと、この曲では初めてオートチューンを使ってみたんですよ。でも、どう歌ったらいい感じに声に震えがかかるのか分からなくて、普段の歌い方をしたら語尾が味気なく聴こえてしまったり。その塩梅が難しくて、リズムの入れ方をすごく意識しました。

メロディーに沿って歌うという、いわゆる歌謡曲的手法をお得意とする太陽さんからすると、リズムといい、曲の構成といい、かなりハードルの高い曲揃いだったのではないかと。

でも、めちゃくちゃ勉強になりました。僕、結構リズムが前のめりになってしまうことが多いので気をつけていないと、どんどんずれていってしまったんですよ。普通はドラムを頼りに音をとるのですが、そういった目印になる音が入っていなかったり、入っているんだけど意識するのはそこではないっていうこともあったし、そもそもリズムを刻んで歌うこと自体が、もう古くなってきているのかなと思ったり。別にリズムを刻む、ビートを刻むのが全てではないし、そういった音楽の定義も変わりつつあるんだろうなって思うくらい、楽曲を提供してくださったアーティストさんって曲のスタイルが自由だったんですよ。Aメロ、Bメロ、サビ、落ちサビ…っていうフォーマットもなくて、人によって音楽のとらえ方も、曲のアイデンティティーもまったく違っていたのが面白かったですね。

ちなみにレコーディングの際、よく太陽さんは自分の中でキャラクターを設定して歌うとおっしゃっていますが、特にキャラクターを作り込んだ曲は?

1でほとんどが自分なんですよ。とにかく曲の良さを活かしたかったから、キャラクターを投影して声質を変えたりすることで、リスナーの気持ちがそっちに向いてしまうのは避けたかったんです。

曲が描く物語の登場人物になりきって歌うのとは違うとなると、そんなアルバムに“ものがたり”と名づけたのはなぜなんでしょう?

収録された10曲のそれぞれが点だとしたら、全部を通して聴いた時に点と点がつながって、プロローグからエピローグまでがひとつの線になるような作品を作りたいと考えていたんです。なので、今回のイメージとしては“歌う”というよりも“語る”なんですよね。曲の登場人物を演じるんじゃなく、その曲の世界観にどっぷり浸かって、状況とか情景をみんなに伝えられるストーリーテラーでありたかったんです。

なるほど。デビュー作の『うたうたい』とは、ある意味とても対照的ですね。

そう。前回は完全な“歌うたい”だったから、今回は“語り手”でいいなって。

OKMusic編集部

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