サザンオールスターズとは違う
桑田佳祐の魅力が詰まった
ソロの傑作『孤独の太陽』

社会性を帯びた歌詞に驚き

自分で書いておいて何を言いたいのか分からなくなってきたので、強引に話を修正するが、『TOKYO 2020』を経て、“国民的”の形容がさらに相応しいように思える桑田佳祐である。“2020年東京オリンピック共同企画”のテーマソングを手掛けたこと自体もそうだが、「SMILE~晴れ渡る空のように~」の内容からもそれは感じられる。特に同曲の歌詞《素晴らしき哉 Your Smile(あなたの笑顔)/あなたがいて I'm So Proud(私の誇り)/愛しい友への歌》はそれを強く感じさせるところだ。語り掛ける…というよりも、ほとんど寄り添うようなスタンスである。[桑田は「かなりプレッシャーを感じましたが、今日という日を目指して『一緒にやろう』の精神で楽しい曲作りができました」と語]ったというから、本人もその辺は大分、意識したのだろう([]はWikipediaからの引用)。アーティスト特有のエゴをまるで感じないナンバーである。

さて、ここからが本題。今やそんな桑田佳祐ではあるが、かつてはそうでない時期もあった。アーティストのエゴ丸出し…と言い切ってしまっていいかどうか迷うところだが、少なくとも、「SMILE~晴れ渡る空のように~」と対極にあるような作品がある。今回紹介する『孤独の太陽』はそういうアルバムと言っていいのではないかと思う。まず歌詞がかなり違う。とりわけ目立つのは社会性を帯びたものだ。

《泣く人生の影で 抱く現金の嵐/Oh 公序良俗なす高嶺のブタ共に見た 料亭の魂》《胃は錠剤にただれ 身は注射器の嵐/Oh 理路整然たる水増しの医者共に見た 延命の魂》《子は番号で呼ばれ 一流フェチの嵐/憐れ世のガキよ顔の無い教師らの背に見た 偏差値の魂》(M1「漫画ドリーム」)。

《Ah しゃアない… 嗚呼 人生のブルース/「しゃアない節」よ/嗚呼 「平和」の意味が/違って見える/そして愚かなボスがこう言う…/“さあ!!若者よ人を撃て!!"》(M2「しゃアない節」)。

《暗い教室の隅で彼は泣いてる/重い十字架を生きるために抱いてる/あらぬ 良識で大人達は逃げてる/遠い世界のようだけど… Feelin' Blue》《あらぬ 良識で大人達は逃げてゆく/どんな未来になるだろう?…I'm Feelin' Blue》(M6「飛べないモスキート(MOSQUITO)」)。

《歌が得意な猿なのに 高級外車がお出迎え/スーパー・スターになれたのは/世渡り上手と金まかせ》《儲かる話とクスリにゃ目が無い バカヤロ様がいる/チンチン電車は走るけど 青春時代は帰らない/TVにゃ出ないと言ったのに/ドラマの主役にゃ燃えている》(M9「すべての歌に懺悔しな!!」)。

《可愛いウチの少女には/注射の跡がある/渇いた夏の午後にも/空を見上げてる》《可愛いウチの少女には/恨みも罪も無い/お金で濡れたショーツには/夢がにじんでる》《家族の絆は泡沫(うたかた)の花飾り/高速道路に捨てられた/猫がいる》(M11「太陽が消えた街」)。

《ドル箱映画も不倫のドラマも 演る役者変わらぬ芸能社会/小銭目当てで脱ぎたがる奴 売り上げ本意で生きる奴/アートが理屈を越えない世界 文化じゃ食えない貧乏ブルース》(M12「貧乏ブルース」)。

桑田佳祐ならではの文体は健在であって、100パーセントはっきりとその意味を掴めるものではないが、相当に衝撃的な単語、形容句が散見できる。そんな歌詞の楽曲が上に挙げただけでも6曲とアルバムの約半数を占めているわけで、同時期のサザンの楽曲──シングル「エロティカ・セブン EROTICA SEVEN」「クリスマス・ラブ (涙のあとには白い雪が降る)」(共に1993年)や、「マンピーのG★SPOT」「あなただけを 〜Summer Heartbreak〜」(ともに1995年)などと比べても、これまた対極というか、かなりテーマが異なっていることは明白だ。調べたところ、この『孤独の太陽』は[桑田自身が「自分はこのままでいいのだろうか」と思ったことから前年まで続いたサザンオールスターズの活動を一時的に休止して制作に取り掛かり、発表された]作品であるというから、余程、思うところがあったのだろうし、それを吐き出したかったのだろう([]はWikipediaからの引用)。

OKMusic編集部

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