『みねこ美根の“映画の指輪のつくり方”』

『みねこ美根の“映画の指輪のつくり方”』

『みねこ美根の
“映画の指輪のつくり方”』
- 第五十三回 -
「ミッドサマー」の指輪

2017年から本格的に活動を開始したシンガーソングライター〈みねこ美根〉が大好きな映画の世界から作り出す紙粘土細工と指輪の制作過程をお見せします。ミニチュア好きな方、アクセサリーづくりに興味のある方は是非見ていってください。指輪はライブ会場にて展示しております。

動画監督・撮影・編集・演奏・文:みねこ美根

「明るい悪夢」(2019年『ミッドサマー ディレクターズカット版(MIDSOMMAR)』)

「宗教とかにハマっちゃいそうだよね」最近そう言われた。とあるニュース番組のコーナー「STOP詐欺被害!私は騙されない」で言っていた「自分が正しいと信じ、まさか自分は騙されまいと思っている人」という“騙されやすい人”の特徴に合致するし、弱みを教えたくないプライドの高さの反動で分かってもらえたら途端に依存してしまいがち。すぐ占いの本買っちゃうし、誰かに認めてもらって得られる安心感が欲しい!……ダメだ!絶対ハマるわ!と自信が持てたところで、最近映画配信サイトで配信開始になり話題の「ミッドサマー」が気になった。

公開当時は見に行けなかったアリ・アスター監督の最新作。「セラピー映画」との噂!でも、グロ描写があるとのことで、二の足を踏み続けていた。先月のライブでドラムの大塚さんとも、ミッドサマー気になりますよね~の会話をした矢先、Twitterでもトレンド入り、ディレクターズカットは16日に配信開始というから、これは今が見るタイミングなんだ!と、この連載を広めたい野心とセラピー効果への期待を抱き、私は一足早くディレクターズカットに挑むのであった。
大学生のダニーは、精神疾患を持つ妹から、両親を巻き込む無理心中を示唆するメールを受け取り、不安に苛まれていた。遠く離れた実家に電話をしても誰も出ない。居ても立っても居られず恋人のクリスチャンにも掛けるが、「妹は君の気を惹きたいだけだ」と言われてしまう。ダニーの不安は的中。家族を失ったダニーはショックと悲しみで、発作を起こすようになる。事件から半年後も精神的に立ち直れず苦しむダニーは、クリスチャンと共通の友人たちが自分の知らぬ間にスウェーデンにある村の夏至祭に参加する旅行の計画を立てていることを知る。ダニーに隠していた負い目から、クリスチャンたちは仕方なくダニーも誘って、ホルガ村に向かう。まさかあんな目やこんな目に遭うとは露ほども思わずに。

予習したグロシーン(ちなみにR18。結局今回もネタバレなしのレビューを読んぢまったよ)を「ほげー!」と観つつも、意外と乗り切れたなと不思議な浮遊感の中で観終えたのだけれど、段々と、あれ?よく考えたら…?と悪夢のフラッシュバックがいっこく堂方式でやってきた。そのあと、うたた寝したら本当に酷い夢を3つ見た。…そういう映画です(?)これまで観て来た世界とは違うこびりつき方をする。

いろんな人の感想が氾濫している「ミッドサマー」、本当に賛否両論!自分の目で確かめるのが一番だし早いと思う。でも私が観る前に知りたかった「グロシーンがどの程度か」を、参考までに特にワッ!なシーンを箇条書きする。私を応援してくれているみんなは、とても優しいから、無理せず見るか否かを判断してね。

・おじいさんとおばあさんの頭部が丸見えクラッシュ
・臓器丸出し
・共鳴型見守り方式の性の儀式

他にも、フラッシュバックや、薬物によるトリップを映像で表現したシーンなどがある。映像酔いしやすい人も注意。私も映画館で観てたら吐いたかもしれない。
様々なレビューの中には、ルーン文字や、実際にある北欧の伝説などと照らし合わせ、専門的に考察をしている方がたくさんいて、見終わった後はそれを読みながらまた楽しめる。でも、そういう専門的な考察は私にはできない!のでここからはネタバレなし個人的な感想に行きます。

まず、映像。白夜でほぼ明るいシーン、色とりどりの花、自然と共存するホルガ村の景色、刺繍をあしらった装束、建物の内部に描かれた細やかな絵や北欧を思わせるモチーフ柄。非常に可愛らしい。監督が「変態のためのオズの魔法使いのような映画だ」といっているらしいが、確かに村に入ってからの鮮やかさは、竜巻に飛ばされた後の「オズの魔法使」(連載第21回で紹介:https://okmusic.jp/news/316112/)を感じる。あと私的には、鮮やかなモチーフがいっぱいあるから嬉しい。今回も凄まじいものができたので見てね。
視覚効果も面白い。私が一番怖かったのが、トリップのシーン。よく見ると、周りの景色がぐにゃぐにゃと歪み顔が浮かび上がったり、花が呼吸をするように開いたり閉じたりする。人々が自分を嘲笑しているように見えたり、顔が絶妙にゆがんだりする。これが普通の映像に紛れ込み、いつの間にかこちらもトリップ。気持ち悪くて恐ろしかった。薬物はダメ絶対!でもこの景色の揺れ方、寝不足の時に影が揺れる感覚に似ていて、寝不足もダメ絶対。

音も怖い。冒頭の泣き叫ぶダニーの声。低音と混ざる、軋むような響き、観てる人の頭も引っ掻き回す叫び。もうだめだ、もうだめだ、の気持ちから溢れ出る苦しい悲しみ、絞り出すことしかできない声が、本当に心がしんどい時の”泣き”だった。ダニー演じるフローレンス・ピューは「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」(連載第43回で紹介:https://okmusic.jp/news/404240/)で四女のエイミーを演じていて、やっぱり私はフローレンスのへの字になる口元が好き。

民族音楽の聴かせ方も不気味で印象的。エンディングもある意味ぴったりで驚いたし、この選曲ができるのは確信犯。
そして、テーマの一つに感じた「共感、共鳴」。泣き叫ぶダニーに共鳴するように、儀式を行う村の女たちも泣き叫ぶ。別のシーンでも見られるので、探してみて欲しいのだが、このダニーのシーンは、何故か涙が出た。こんなに感情を共にして一緒に泣いてくれるのって、すごい嬉しいかもしれない、とかって思ってしまった!ダニーのように本当に弱っている状態でこの村に来たら…どうなってしまうだろう。

ちなみに、ディレクターズカットは、より心理描写とかが丁寧なので、長いけどお勧めです。

いつも映画を観た後は、映像を思い出そうとしてもぼんやりと日常生活の景色に馴染んでいってしまうのだが、恐ろしいことに「ミッドサマー」は忘れられない。助けて!頭にこびりついていることに気が付く。燦燦と照らされたあの景色。どの場面も鮮明に思い出せる。本当の恐怖は見終えた後かもしれない(遠い目)。とりあえず、人里離れた謎の共同体のところには行かないようにしよう。私の「日常でホラー展開を避けるための注意事項」に、新たにそれが加えられたのでした。
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モチーフ:ホルガ村の入り口の門、メイ・ポール、花々、メイ・クイーンが乗る人力車、黄色い花の入った競争のための飲み物、熊、黄色い三角の建物、ルビ・ラダーの書、道化師の帽子、アッテストゥパンの前の儀式、ホルガ村の炎、クリスチャンのためのミートパイ、○○の足

音楽:「MayPole dance theme」 Bobby Krlic
   「The Sun Ain't Gonna Shine(Anymore)」Frankie Valli
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みねこ美根の最新配信曲「我にかえれ」 配信サイト
https://lnk.to/warenikaere

◆みねこ美根 配信リンク
https://lit.link/minekomine

◆みねこ美根 オフィシャルHP
https://powerpop.co.jp/minekomine

◆連載『みねこ美根の“映画の指輪のつくり方”』一覧ページ
http://bit.ly/2VrGl0a
みねこ美根 プロフィール

ミネコミネ:6歳の時にピアノで初めて作曲、11歳からはギターでの作曲も開始し、現在はピアノとギターを用いてライヴ活動中。2019年1月リリースの配信EP『心火を従えて愈々』で楽曲のクオリティの高さ、世界観が注目を集め始める。サウンドプロデュースを手がける誠屋の小名川高弘氏とともに日々楽曲を制作しており、21年3月に自主制作アルバム『avant-titleⅡ』を発売。4月には「さよなら起承転結」、6月には「我にかえれ」を配信シングルとしてリリースした。みねこ美根 オフィシャルHP

OKMusic編集部

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