ギター×バレエ、一日限りの“The S
ession”で行き着く先は?~ Ichika
Nito(ギター)&二山治雄(バレエ
)インタビュー

YouTubeのチャンネル登録者数165万人(2021年9月7日現在)、Martin GarrixやZeddなど、世界的アーティストも注目する日本人ギタリスト・Ichika Nito。17歳でローザンヌバレエ国際コンクールで1位に輝き、さらには世界最大のバレエコンクール[YAGP]シニアの部でゴールドメダル(金賞)を受賞するなど、海外からも注目を集めている若きバレエダンサー・二山治雄。異なる世界でトップを走る二人がコラボレーションする『The Session 「Eclipse(エクリプス)」 ―Melodies for Ballet , Ballet for Melodies-』が、2021年10月15日(金)渋谷ストリーム ホールにて開催される。
ichikaは「Ichika Nito」単独名義の初ライブであり、一方の二山も、他ジャンルアーティストとの初コラボレーションという、「初めて尽くし」の本公演。振付に新井誉久、舞踊監修に山本康介と、バックステージにも世界に誇る日本人アーティストが集結した。
ichikaがこの公演のために書き下ろした“新曲”を中心に、ギター✕バレエで綴る、The Session 「Eclipse(エクリプス)」。出演のichika、二山治雄に話を聞いた。
◆「小さい頃からバレエは身近にあったんです」(ichika)、「もともと新しいことに挑戦してみたい気持ちがあったんです」(二山)
――今回の公演は、ichikaさんが制作チームのみなさんと一緒に企画したと伺いました。そもそも、なぜバレエダンサーとのコラボレーションを?
ichika:実は、僕の妹がバレエダンサーをやっていて、小さい頃からバレエは身近にあったんです。とはいえ、音楽を始めてからは一緒にやることもなかったんですが、今回、過去に仕事でご一緒した方から「バレエダンサーとコラボレーションしてみない?」というお話をいただいて。もともと興味があったし、やってみようかと。
――そこから二山さんが加わったんですね。
ichika:バレエといってもクラシカルなものではなく、新しいものをイメージしていました。まずは制作の方からダンサー候補の方の紙資料をいくつかいただいたんです。写真と、お名前と、経歴と。最初は、二山さんとは年齢が近いし、共通言語ができやすいんじゃないかなと考えて、ご一緒したいと思ったんです。でも、その後にローザンヌとかの映像資料を見せていただいて、それを見た瞬間、この人で間違いないと確信しました。
二山:ありがとうございます(照)。
――二山さんは、どうして今回の出演を決められたんですか?
二山:もともと新しいことに挑戦してみたい気持ちがあったんです。なので、依頼をいただいたときに「まさに!」と思って。バレエって伝統的なものなので、決められたことが多いんですよ。曲についても、例えばチャイコフスキーとか、亡くなっている作曲家が多いですよね。今回は作曲した方が目の前にいて、作曲の意図なんかも直接聞けるし、さらに、作曲家自身が同じステージで演奏してくれる……クラシックバレエではなかなかないので、幸せな環境だと思います。
音楽って、日々進化しているものですよね。その最先端にいる方とこうして共演できることがとてもうれしいです。
――今回は青山英樹さん(※BABY METALの“神バンド”など、様々な有名アーティストのLIVEやレコーディングに参加しているドラマー)もいらっしゃいます。
ichika:ちょうどこの企画が進んでいる時に、青山さんとご一緒した現場があって。それが初対面だったんですけど、プレイを見たら、めちゃめちゃ合うというか、憧れてしまって。この人とできたら楽しいだろうなと。なので今回は結果的に、本当に尊敬している二人とコラボレーションできることになって。ありがたいですね。
◆「ichikaさんの音楽は唯一無二」(二山)、「現場で二山さんのダンスを見て、本当に感動しました」(ichika)
The Most Beautiful 30 Seconds "Dead Lotus"
――ichikaさんと二山さんは、実際にお会いする前、お互いにどういった印象を持たれていましたか?
二山:最初はYouTubeで演奏をお聴きしたんですが、単純に聴き入ってしまいました。普段はオーケストラとかクラシックの楽器と合わせることが多いので、ギターで踊ることに不安もあったんです。でも、聴いてみたら、僕の想像していた音と全く違って。実は、最初はヘビメタ的なものをイメージしていたんです。エレキギター? どうやって踊ればいいんだろ? って(笑)。でも、ichikaさんのギターは繊細というか、ただただ聴き惚れてしまう感じ。今までに聞いたことがない音色で、それこそ唯一無二のichikaさんだけの音楽。「これなら大丈夫。踊れる、入り込めるな」って。同時に、ここに加われるんだ、ってうれしくなりました。
――ichikaさんはどうですか?
ichika:僕も、二山さんの踊りを見てワクワクというか、妄想が膨らみました。自分の音楽に二山さんのダンスが入ると、どういう化学反応が生まれるんだろうって。あと、踊りを見ているうちに、なんとなくですけど、仲良くなれそうだなとも思いました(笑)。
二山:(笑)。
ichika:音楽やダンスのような、人の魂が宿った創作物に触れたとき、ふんわりと作者の人格のような何かを感じることがあるんです。ご時世もあって、二山さんとはまだプライベートで食事もしていないし、お互いの表現を見ているだけの関係なんですが、“この人とは合うだろうな”っていうのが、肌感としてすごくあります。
――現在プロモーション映像が公開中です。撮影で初めてお会いしたと思いますが、印象は変わりましたか?
二山:オーラというのか、アーティストとして洗練されている方という印象を受けました。すごく高いところにいるというか。
ichika:いや、こちらこそです。撮影の現場で二山さんが即興で踊ってくださったんですが、本当に感動しました。それこそ、「この人と一緒にできるのか!」っていう期待感と高揚感で、居ても立っても居られない、みたいな。プロモーション映像の30秒じゃ足りないですよね。その秒数じゃ二山さんの魅力は存分に伝えられない。だから、僕個人のプロモーションビデオにも今度出てほしいってお願いしました(笑)。
◆「Eclipse(エクリプス)」(=太陽と月が重なる日食)に二面性の意を込めた
――ここからは公演内容についてお伺いします。まずは今回のタイトル「エクリプス」について。太陽と月が重なる「日食」という意味だそうですが、こちらの意図を教えてください。
ichika:僕と二山さんの一対一の公演。テーマを考えたときに「二面性」が浮かんだんです。音楽なり、ダンスなり、人が何かに触れたとき、そこにはアンビバレントな感情が生まれると思っていて。たとえば、ものすごく「楽しい」のに、どこか「哀しい」とか。「絶望」を突き詰めていった先に「希望」を感じる、とか。今回、暗い表現の曲も多いんですが、それは一面的な意味ではなくて、「影」を見せることで「光」を感じてもらったり、そういった二面性を表現したいなと。こういう概念を、太陽や月の満ち欠けで表した言葉が「エクリプス」なのかなって。
二山:今みたいな話、実は初めて聞いたんですが(笑)、背景をお聞きして、表現しやすくなった気がします。踊りに音楽は欠かせなくて、二つが合体して一つの作品になる。今回ichikaさんの曲は、すごく怪し気というか不思議というか、自分の中でいろんなイメージがわんわんと溢れつつも、これをどう表現したらいいんだろうと迷うところもあって。でも、今の話を聞いて、光が見えてきたように感じます。
――ちなみにお二人、自分は「太陽」と「月」どちらだなってありますか?
ichika:難しいですね(笑)。自分は、性格的には月だと思いますね、暗いし(笑)。……でも、役割は太陽かもしれないです。働きとして、照らしていくっていうか、能動性という意味で。二山さんは?
二山:考えたことないけど(笑)、月だと思いますね。性格的にも。自分からばーっと光っていくって感じじゃなくて、暗い中で、ぽっと光が見える、みたいな。そんなイメージかな。あと、単純に月のほうが好きですね。
二山治雄(バレエ) 
◆3部構成で、各々の魅力と融合を余すことなく
――公演の構成について、教えてください。
ichika:公演は3部構成になっていて、1幕は僕のパート。ギターが多めだったり、「Ichika Nito」の作品の世界観。2幕は二山さんのパート。クラシックのモチーフやワルツがあって、ギターだけでなく、ハープも演奏します。そして3幕は二人が交わる、というのが基本構成です。その流れにそって、ストーリーも織り交ぜて展開を作りつつ作曲しています。
――今回、演奏曲のおよそ半分が新曲だそうですが、ミュージシャンのLIVEとして考えると、かなり異例ですよね。
ichika:振付の新井さんも二山さんも、今回の舞台のためだけに振付を創ってくれるわけですよね。つまりそれって“新作”じゃないですか。だったら僕も、持ち曲だけでやるわけにはいかないなって。既存曲も公演用にいろいろアレンジしているので、これも楽しみにしていただけたらと思います。
――作曲のテーマやポイントを教えてください。
ichika:作曲にあたっては、二山さんの踊りやすさも考慮しつつ、そこに寄せすぎると僕自身の持ち味が失われてしまう可能性があるので、そのバランスを考えました。
あと、今回僕、人生で初めてタンゴの曲を作ったんですよ。これ大丈夫かな?って思いながら(笑)。でも、出来上がったものは、意外といいんじゃないかなって思っています。もともと僕のことを知ってくださっている方は「ichikaがこんなことするの?!」ってなるんじゃないかなと。
――今回はまずichikaさんが曲を作って、それに対して振付の新井さんと二山さんがクリエーションをしていく、という流れだそうですが。
二山:僕のパートは曲を5ついただいているんですが、暗いイメージもあれば、ワルツのような明るい感じもあって、これをどう表現すればいいのか悩むところもあるんです。でも、だからこそ、いちから作る楽しさがすごくあります。ダンスはボディランゲージですから、新井さんと振付をしながら、単純に音楽を楽しんでいますね。
最初の振りはムーブメントから始めたんです。ichikaさんからいただいた音を少しだけ聞いて、とりあえず動いてみようかって。でも、やり始めたら振りがどんどん進んでいっちゃって。踊り先行でそのままキリがいいところまで作って、改めて音と合わせたんですが、不思議といい感じで合ってるんですよ(笑)。マジックですよね。不思議な感覚でした。いちから作るって、そういうのが楽しいです。
◆「ギターでの曲作りは宇宙を模索するよう」(ichika)、「大変な経験も表現の糧に」(二山)
――今回、クラシック曲のアレンジも予定されているとか。
ichika:ショパンの「前奏曲 第13番」をギターでアレンジします。好きな人が聞いたら怒るかもしれない……ってくらい、ごりごりにアレンジしていますね(苦笑)。でも、音楽にルールはないですし、今回はクラシックの土壌で演奏するわけではないので、あの曲をギターで表現したときにどうなるのか。全く新しい解釈で弾いてみようかなと思っています。
――ピアノとギターというのは、全く違う楽器にも思えますが。
ichika:ギターって、ピアノよりも一音における表現の幅が広いんです。ピックアップ(※弦の振動を拾うマイクのような役割をしているパーツ)、エフェクター、ピックを何にするか、それからビブラートの有無やアップ……その一つひとつの選択で音の味がきらびやかになったり、野暮ったくなったり。一音の選択肢が無限にあるんですよね。その選択肢を横につなげることでメロディになり、縦につなげることでハーモニーになる。いうなれば、宇宙を模索するようなイメージ。僕はそれが楽しくて、ギター一本で音楽を作っているんです。
ichika(ギター/ハープ/音楽監督)
音源っていうのは、選択し終わったもの、切り取られた一つの答えなんですよね。だから、同じ曲でも、演奏のたびに一音一音すべて違っていて、そういう意味では違う曲ともいえる。同じ曲のバリエーション違いっていうんですかね。そのくらい違います。
二山:僕自身も、今頂いている音源は一つのサンプルだと思っています。実際に合わせたときの雰囲気が大事だと思いますし、合わせたらどうなるか、すごく楽しみです。
――二山さんは、普段クラシックの作品に出演されることが多いと思います。今回は二山さんのファンからしても、見たことない二山さんが見られるのでは?
二山:そうですね、今回僕が踊るのはコンテンポラリーなので、そこも楽しみにしてもらえたら。
――ローザンヌの時にコンテンポラリーを踊っていらして、そのインパクトが強く残っているという方も多いのではないでしょうか。それを生で見られる機会っていうのは、贅沢ですよね。新井さんとの振付はいかがですか?
二山:僕と新井さんも今回が初めましてなので、今は僕ができることを確認している状態です。今回、リモートで振付をしているので、そこが難しいところです。僕と新井さん、昼夜逆転しているんですよね(※新井はシカゴ在住)。リモートだと、どうしても雰囲気やニュアンスが伝わりずらいところがあるんですが、新井さんは細かく教えてくださいますし、お互いに楽しみながらできているかなとは思います。何より、そうした大変なこともすべて表現として踊りに現れてくるものですから、そういう経験も使って、踊りたいなと思います。
◆即興ありの「The Session」 初対面での公演という緊張感は今回限り
――今回は「セッション」という副題がついています。
ichika:今はまだ個別に創作をしている段階なので、今から合わせるのが楽しみですね。もちろん作っている段階でもお互いの存在を意識してはいますけれど、対面して合わせたその瞬間に、相互作用が初めて生まれるんだろうなと思います。もちろん中身は同じですけど、昼公演と夜公演でもガラッと変わってくるかもしれないですよね。
二山:そこがこの公演の面白さでもありますよね。自分たちも楽しいし、お客さんも新鮮なんじゃないかな。今回、リハーサルで初対面。もちろん不安だし緊張もしているんですけど、何もわからないからこそ想像できる部分があるし、込み上げてくるものがある。いざ会ってみたら想像と違った、となっても、さらにその上をいけますしね。
ichika:今後再演したとしても、どうしてもこなれ感は出てくるでしょうし。初対面での公演っていう、何が起きるかわからない緊張感は今回限りですよね。
――今回は即興の場面もあると聞きました。
二山:はい、ichikaさんからご提案いただいて。即興はそのときの気持ちや本能のままに踊れるので、普段クラシックをやっている身としては新しくて。
ichika:2幕はきっちりと新井さんの振付があって、そのあと3幕で即興を。完全に“自由”になった二山さんが、僕のギターと青山さんのドラムで、どんなパフォーマンスをしてくれるのか、本当に楽しみです。こういうのは、この公演みたいな座組じゃないとなかなかできないんじゃないかなって。
青山英樹(ドラム)
二山:即興って、本当に本番まで、全く何も聞かせてもらえないんですか?(笑)
ichika:いや、リハーサルで何回か合わせようとは思ってますけど……。まあ、あんまりやりすぎても(笑)。
二山:……わかりました(笑)。
◆「偉人たちの背中に少しでも近づきたい」 ichika✕二山治雄 二人の“本気”が行き着く先は?
――最後に改めて、今回の意気込みをお聞きしたいです。ichikaさんも「クラシカルなものではなく新しいもの」というところでスタートされたと仰っていて、インタビューでも「新しさ」というお話が目立ちました。クラシカルな、伝統的なものと新しいもの。この二つを含めてぜひお聞かせください。
ichika:僕自身は、クラシックに「挑む」というつもりは全くなくて。というのも、クラシックって、音楽の中でもカルチャーとしては別物なんですよね。(クラシックでは)同じ音楽が、何十年と繰り返し表現され、追求され続けている。けれど僕が、この長い人生、寿命が尽きるまで追求していきたいのは、音楽を作る力と演奏する力をどれだけ高め、聴いてくださる方々の琴線に触れるモノを生み出すことができるのか。いうなれば、クラシックの巨匠たちの背中を追いかけているんです。
今の僕は、彼らほどの作曲能力も演奏力もまだぜんぜん持っていません。だからこそ、今回、現時点での僕が出せる全力と二山さんの全力、二つの本気の表現がぶつかって偶発的に生み出されるもので、偉人たちの背中に少しでも近づけたら……そんな希望を持っています。二山さんと一緒なら、自分一人じゃ届かないところまで手が届くんじゃないかなと。
二山:ダンスも同じです。土台となる基礎はもちろんあるけれど、「これじゃなきゃいけない」っていうものはなくて。進化を続けて、終わりが見えないものが芸術だと僕は思っています。
僕個人の意気込みでいうと、今回ichikaさんに出会えて、セッションできること、とてもいいご縁をいただいたなと思います。これを機会に、少しはみ出して、いろんなものをお客さんに届けられたらとダンサーとして思っています。
――今回配信公演もあり、海外からも見られる公演となっています。改めてお客様へ、メッセージをお願いします。
ichika:とにかく美しいものを提示できると思うので、ぜひいらしてください!
二山:バレエファン、ギターファン、全く違うお客さんが見てくださると思うのですが、双方に、きっと初めての感覚だと思うので、二人のセッションを楽しんでいただきたいです。会場にいらしてくださる方、生で見てもらえること自体がありがたいなと思っています。息遣いや雰囲気、においなど、五感でも感じてもらえるので、そういう部分も大事にしたいですね。
取材・文=森岡悠翔

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