鈴木康博

鈴木康博

【鈴木康博 インタビュー】
身近なことだったり、
ふとした時に感じられることを
歌っていきたい

オフコースのメンバーとして1970年にデビューし、活動50周年を迎えた鈴木康博。半世紀という大きな節目を飾る最新アルバム『十里の九里』は、今も彼の内側には音楽に対する情熱があふれていることを実感させる好盤に仕上がっている。

自分はまだ旅の途中なんですよね

アルバム『十里の九里』の制作はどんな構想のもとで始められたのでしょうか?

構想はなかったです(笑)。昨年コロナ禍が起きて、ライヴハウスが危険な場所と言われるようになってしまったじゃないですか。僕らは活動ができなくなったし、パフォーマンスをやっている人たちはみんな暇になってしまった。それで、“これは曲を作るしかない”と思って、昨年の4月からメロディーをたくさん作り始めたのがアルバム作りのスタートになりましたね。

曲を作る時は、いつもメロディーから入るのでしょうか?

いえ、いろいろです。降ってきたメロディーに楽器をつけていくこともあれば、コード進行から作ったり、最初にドラムのパターンを作ってコードやメロディーを乗せることもあるし。あとは、ギターやベースのいいリフが出てくると、そこから広がっていくんですよね。ただ、どんな作り方をするにせよ、メロディーを大事にするということは一貫しています。

それが奏功して、『十里の九里』も一度聴けば覚えられるキャッチーなものや、深く染みるメロディーを活かした良質な楽曲が揃っていますね。では、今作のポイントになった曲は?

今回は林家木久蔵師匠に「現実ってヤツは」「ふたり」「今夜もカンパイ」という3曲の歌詞を書いてもらいました。師匠はいつも一緒に遊んでいる仲間…いや、遊ばせていただいている方なんです(笑)。師匠もコロナ禍で時間ができてしまっていたので、遊ぶような軽い気持ちで、出来上がりはいつでもいいですからとお願いして。でも、リアリティーを大事にしたいから、嘘じゃない、本当に自分が思っていることを歌詞にしてほしいということは伝えました。そうしたら師匠は歌詞を書くのは初めてだったのに、3週間くらいで「現実ってヤツは」を書き上げたんです。

早いですね。

早かった。お願いしたのは今年の4月くらいで、早くても夏くらいになるかなと思っていたら、あっと言う間でした。しかも、直しがほとんどなくて。師匠は言葉と話の専門家ですから、歌詞を書くのもうまいんですよ。メロディーにちゃんと歌詞が乗るように、言葉の字数だけ送っていたので、その字数に合うようにしてもらったのですが、語彙力もすごくて、同じ意味の言葉をたくさん知っているんですよね。それでいて分かりやすいからびっくりしました。たいがい字数と言葉が合わなかったり、字数に合わせるために意味が分かりにくくなったりするんですけど、そういうことが一切なかったんです。師匠が書いてくださった歌詞を見て刺激を受けて、今作の歌詞の方向性がちょっと変わったんですよ。

どんな変化があったのでしょう?

いつもアルバムを作る時は今までの自分を全部消して、今、本当に思っていることをダイレクトに書くんです。だから、今回もコロナ禍での自分の状況みたいなものを書くところから始まったけど、だんだん思い出のことを歌にするようになっていきました。そうしたら、自分の人生はまだ半分なんじゃないかと思ったんです。70歳になったけど、これからどれくらい生きるのか、何が起こるのか想像がつかなくて、そういう意味ではまだ自分は旅の途中なんですよね。ちょっと話が逸れますけど、ジャーナリストの立花 隆さんが亡くなる少し前に書かれた本に、死ぬ間際になると痛いやら何やらとか、病気の何やらとかで、おちおち休んでいられないと書いてあったんです。死ぬ間際というのはめちゃめちゃ忙しいから、やりたいことがあるなら今のうちにやっておいたほうがいい。病気になってしまったら何もできないぞと。それを思い出したことも含めて、まだ自分は人生半ばだと思ったのと、時代の変化のスピードが速いので、ますます今までとは生活のリズムが違ってくるんじゃないかというのがあって、だんだんアルバムで表現したいことが固まっていったんです。そういう中で、“百里を行く者は九十里を半ばとす”という言葉が浮かんできたんですよ。それにちなんで、タイトルは“十里の九里”に決めました。
鈴木康博
アルバム『十里の九里』

OKMusic編集部

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