八嶋智人にインタビュー~大原櫻子・
小泉今日子と共演する、シス・カンパ
ニー『ミネオラ・ツインズ』は「新し
く挑戦できる芝居」

シス・カンパニーが、2022年1月7日(金)~31日(月)、東京・青山のスパイラルホールにて、アメリカの劇作家ポーラ・ヴォーゲルの戯曲『ミネオラ・ツインズ』を上演する。
『ミネオラ・ツインズ』は1999年にオフ・ブロードウェイで上演され、その過激なテーマと舞台を渦巻くエネルギーが絶賛された。第二次世界大戦以降、アメリカ社会で女性たちが何を体験してきたかを痛烈な風刺をこめて描いた作品だ。副題が「六場、四つの夢、(最低)六つのウィッグからなるコメディ」となっていることからも、戯曲の指定通り一人の俳優がウィッグと衣裳を早替えしながら物語の中心となる双子を演じ分ける、スピード感あふれるシニカルな笑いが期待できそうだ。
日本初演となる今作の演出を手掛けるのは、2021年読売演劇大賞最優秀演出家賞を受賞し、その活躍にますます注目が集まる藤田俊太郎。双子の姉妹・マーナとマイラを演じるのは、俳優としても歌手としても活躍する大原櫻子。共演には八嶋智人、小泉今日子らが顔を揃える。また、スパイラルホールというスタイリッシュな小空間に、美術:種田陽平、照明:日下靖順、衣装デザイン:伊藤佐智子、音響:加藤温、映像:横山翼、ヘアメイク:宮内宏明、ステージング:小野寺修二などの最先端のクリエイティブチームが集結することにも注目が集まっている。
SPICEでは今作の出演者である八嶋智人にインタビューを行い、今作に挑む思いなどを聞いた。
『ミネオラ・ツインズ』イラストビジュアル

■小泉さんと一緒にできることは安心感もある
――今作ですが、シス・カンパニー公演で、アメリカの戯曲で、八嶋さんと小泉さんが共演されるということで、2005年に上演された『エドモンド』(デイヴィッド・マメット作、長塚圭史演出)を思い出しました。
もう15年以上も前になりますね、ありがとうございます。『エドモンド』という作品も、背景には差別や格差といった、今もなお社会が抱える問題、しかもその問題が以前よりひどくなっているんじゃないかという現状がありました。『ミネオラ・ツインズ』では、ジェンダー・フリーという問題が描かれています。アメリカの政治的な時代の背景と共に、大原櫻子さんが1人で演じ分ける双子の2人の女性がどのように変化していくのかというお話しなんです。ポーラ・ヴォーゲルが1950年代から1980年代を描いたかなりチャレンジングな戯曲ですが、もしかしたら、今ようやく日本で上演してもそのニュアンスが伝わるのかなという気がします。この戯曲に書かれている問題が日本でも認知され始めている中で、演劇的に面白くやれるのではないかなと。
――小泉さんとの舞台での共演は『エドモンド』以来になりますか?
そうですね、舞台は2002年に『おかしな2人』で共演して、次に『エドモンド』があって、それ以来です。小泉さんはアイドル時代を経て、今は俳優さん、プロデューサーさんとしてまた新たなフェーズに入られた感じがあり、いつも一歩先を歩いていらっしゃるなという印象です。ハードルの高そうな今作を小泉さんと一緒にできるということは、非常に安心感があります。それと、僕自身、『エドモンド』から少しは成長したところを小泉さんに見ていただきたい、という思いもありますね。
――取り扱ってるそのテーマは先ほど八嶋さんもお話しされたようにすごく社会的なのですが、副題にも入ってる通り今作は「コメディ」なんですよね。
コメディと聞くと、明るくて楽しいという印象が強いと思いますが、コメディにもシニカルな笑いとか、たくさん種類があると思うんです。今作も考えさせられる部分の多い作品ですから、その中で役者がのたうち回るなど、滑稽に見えるところをユーモアだと感じていただければいいのかなと思います。
――ポーラ・ヴォーゲルが自身の戯曲について、あえて写実的な表現を避けて漫画的だったり虚構性を高める舞台を作ることで、笑いの要素があってもなお一層弱まらないメッセージ性というものが際立つ、という趣旨の発言をしています。だから今作の副題に「コメディ」と入っているんだな、とすごく腑に落ちました。
もしかすると、観客が笑った後に、笑ったこと自体にゾッとするみたいなところがあって、それでメッセージが極まる、というのもあるのかもしれないですね。海外戯曲に描かれている具体的な政治的背景というのは、日本にいる僕らにはやはりどうしてもわからない部分があって、翻訳劇は常にそれとの戦いだと思うんです。でも、そこをもう少し人間味のあるところに落とし込んで、「生きていく」という根源的な命題にもテーマが広がっていけば、国を超えて現代に生きている僕らにフィードバックできますし、それこそが演劇の在り方だと思います。だから、この作品に対するお客様の反応を早く見てみたいという思いが強くありますね。

■お客さんより先にまずは俳優が一番最初にワクワクしたい
――八嶋さんは、藤田俊太郎さんと大原櫻子さんとは今回が初めての顔合わせになりますね。既に何日間かワークショップを行ったとうかがいましたが、そのときの藤田さんと大原さんの印象はいかがでしたか。
藤田さん、まずかっこいいでしょ。俳優さんみたいだし「あなたが出演しなさいよ」と思います(笑)。ミュージシャンみたいな雰囲気もあるし、実際音楽活動もやってらっしゃるんですよね。演出家としてはすごく誠実で、作品に対する思いを熱く語ってくださったり、関連資料なども全部自分で用意してくださって、信用できる方だな、と思いました。お客さんより先にまずは僕ら俳優が一番最初にワクワクしたいんですよ。その第1関門はもう大クリアですね。すごく楽しかったです。
藤田俊太郎
大原さんは、芯が強そうな感じと、可愛さと小悪魔さみたいなものを全部ひっくるめて、性格が正反対の双子の姉妹を演じ分けていくのにぴったりだな、と思いました。ご自分では「不安なんです」みたいなこともおっしゃっていたけれど、いざ読み始めたらとても頼もしかったです。歌もお上手なので、今回はストレートプレイですけど歌も聞きたいなと思ってしまいますね(笑)。
――大原さんは歌手としてもご活躍ですし、小泉さんも歌手としての実績がありますし、藤田さんもバンド活動をやっていたりミュージカルの演出も手掛けていますし、八嶋さんだってミュージカルにご出演されるくらい歌唱力をお持ちです。
僕がミュージカルに出たっていうのは『太平洋序曲』(2011年上演)のことですか。あの作品はすごく面白かったですが、僕自身の歌唱力という点では難しかったですよね(笑)。でも歌に関して言えば、「時給800円」というユニットでCDを出してますから(笑)。
――懐かしいですね(笑)。このままミュージカルをやれるんじゃないかという、音楽的なセンスも持ったメンバーが揃ったという印象です。
いいメンバーだなと思います。ジェンダーの問題も扱う今作で、大原さんと小泉さんとご一緒する僕は、歳も重ねて、どんどんおばちゃんみたいになってきて、ジェンダーレス化してますし(笑)。
(左から)大原櫻子、八嶋智人、小泉今日子

■劇団は僕にとって一番厳しい場所
――おばちゃんっぽくなってきたといえば、八嶋さんが所属している劇団「カムカムミニキーナ」が今年(2021年)8~9月に上演した『サナギ』では、引退した女優の役を演じていらっしゃいましたね。女性とか男性とか関係ない一人の人間として、全く違和感なく作品世界に存在しているなと感じました。
元女優という役を真正面からふざけることなくやりました。あの作品自体「境界線」がテーマになっていたということもあり、どちらでもない場所にいるという象徴的な役なのかもしれないなと思いながら演じていました。
――「カムカムミニキーナ」についてもお話し聞かせてください。昨年、新型コロナウィルス感染症拡大の影響で劇場が閉ざされてしばらく舞台上演が止まってしまった時期がありましたが、7月2日~12日に行われた劇団公演……八嶋さんはご出演はされていませんでしたが……『猿女(さるめ)のリレー』は、ちょうど舞台上演が世の中で再開され始めた直後、様々なカンパニー等の中でも先陣を切るような形で行われました。どうしてもまだ「本当に舞台上演して大丈夫なんだろうか?」という不安を感じている人も多い中で、感染症対策をしっかり取りながら感染者を出さず全公演を無事に上演されたことで、その後に続いた舞台公演に道筋を作ってくださったし、舞台関係者にも観客にも希望を持たせてくださったと思います。
僕はその時期出演する予定だった別の舞台が中止になってしまったので、ほぼ毎日、劇団公演の劇場に行ってましたけど、毎日「今日が千穐楽になるかもしれないんだな」と思っていました。自治体や劇場のガイドラインに沿って、劇団としてもガイドラインを作って公演をやりましたが、まだ未知数なことが多かったですね。そんな中で劇場に来てくださったお客様の存在の大きさというのは、僕も客席に毎日いたので強く感じましたし、座長の松村武も「お客様は一緒にこの作品を作った仲間だ」と言っていて、本来コロナ以前からずっとそうだったはずなのに、改めてちゃんとそれに気づけてよかったなと思いますね。
――八嶋さんは90年代後半からどんどんご活躍の場を広げていって、劇団外のお仕事も非常に多くなっていく中でも、変わらず劇団員であり続けていらっしゃいます。
劇団は、僕にとって一番厳しい場所なんですよ。松村の戯曲に関して言えば、もう意味もわからなくなってきていて、それは良いとか悪いとかじゃなくて、松村自身もわからないで書いている部分もあるんです。その戯曲を僕らの体を通したときに新しい何かが出てきたり、各々アイディアを出し合ってシーンを作ったりすることで、予定調和ではないものが作られていくんですね。言葉で説明できたら演劇なんかやる必要がないんだよね、ということをちゃんと愚直にやってる劇団だから、一番厳しい場所だし、でも、だからこそ面白いんですよ。僕は劇団外の仕事もやっていますが、例えばバラエティに出るときでも、それも役者の仕事だと思っています。呼んでいただいた場所で与えられた役割を全うするという、劇団でやっていることと何も変わらないなって思っています。その場所によってルールとかやり方とかの違いがあるというところも楽しいです。

■演劇には世界を狭めないし決めつけないという夢がある
――「カムカムミニキーナ」は1990年に早稲田の演劇サークルから旗揚げされましたが、当時の早稲田を中心とした演劇界隈は小劇場系の人気劇団がいくつもあって、現在第一線で活躍されている劇作家や演出家、俳優も多くいましたね。
昨日劇団の取材がありまして、そのとき面白かったのが、僕らの世代が「小劇場純粋培養世代」だ、という話になったんです。古き良きアングラでもないし、静かな演劇とか現代口語演劇とかいろいろな世代のちょうど間の、どうしようもない世代で(笑)、上の世代の兄ちゃんたちのすごさも知ってるし、下の世代の弟たちのすごさもちゃんと認めてるし、っていう狭間の世代なんだっていう話になったんですよ。
――なるほど。狭間の世代だからこそ、同世代同士の交流も多く、結びつきが強かったのかもしれませんね。個人的に印象的だったのは、2001年に三鷹市芸術文化センター星のホールで劇団「拙者ムニエル」が、当時劇団員だった伊奈恵一さんが就職のため退団されるので記念の公演として「INA-GIG」と銘打って、「カムカムミニキーナ」の松村さん、「猫のホテル」の千葉雅子さん、「猫ニャー」のブルースカイ(当時)さん、「阿佐ヶ谷スパイダース」の長塚圭史さんといった様々な劇団の劇作家が提供した脚本をオムニバス形式で上演されていたことを強烈に覚えています。
伊奈ちゃんね! 俳優を引退するというので、繋がりのあったいろんな劇団の人たちも参加して華々しく送り出しましたね。頭良すぎてクレイジーでね、大好きですよ。思えば、演劇界にああいう人が減ったんですよね。伊奈ちゃんの場合は就職のタイミングとか事情があっての俳優引退でしたが、もっといろんな種類の俳優、いろんな種類の演劇があっていいのに、もしかしたらそういった多様性を受け入れるキャパシティが狭くなってるんじゃないか、という危機感もあります。いろんなタイプの演劇人がもっとのびのびとできて、もっと訳わからない劇団も昔はいっぱいあったのにのな、って(笑)。今はどこに行ったらああいう面白い人に会えるんでしょうね?
――すみません、思い出話が楽しくて作品の話から脱線してしまいました(笑)。
でも、全部同じ話なんですよ。狭い価値観の中に収まらない人をどう捉えますかっていう、『ミネオラ・ツインズ』もそういう話ですし、しかも正解はなくて、それなのに正解を決めるためにずっと勝負していたりとかして。その感じもひっくるめて、世の中がどんどんグローバル化して広がっているようで、実はどんどん狭まってるのかな、という怖さも感じる。だから今作を通じて、演劇には世界を狭めないし決めつけない、そういう夢があるんだよ、っていうことをお伝えできたらいいですね。演劇って、劇場というお客さんと同じ空間の中で一緒に体験をして、劇場の外に出たときに見える風景がさっきと違って見えるように、世の中をとらえ直すための役割があるのかなと思っています。今作は僕自身も新しく挑戦できる、あまりやったことのないお芝居になると思うので、楽しみにしています。
取材・文=久田絢子

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