サイケデリックブルースロックから
アメリカンロックへと転身した
スティーブ・ミラー・バンドの
『ジョーカー』

『The Joker』(’73)/Steve Miller Band

『The Joker』(’73)/Steve Miller Band

スティーブ・ミラーは多彩な才能を持ったアーティストである。60年代初頭からシカゴで本物のブルースを学び、サンフランシスコに移り住んでからは白人ブルースロッカーとして独自のサイケデリックブルースを追求しようとした。しかし71年、自動車事故による長期間の療養生活の間にいろいろ考えるところがあったようで、グループのメンバーを総入れ替えし、キャッチーなスタイルのロックグループとして再スタートを切る。今回取り上げる『ジョーカー』は新生スティーブ・ミラー・バンドの第一弾アルバムであり、王道のアメリカンロック作品となった。本作はグループ初のトップテンヒット(全米2位)で、タイトル曲の「ジョーカー」は1位を獲得、今でもアメリカンロックを代表する名曲として多くの人から愛されている

60年代サンフランシスコの代表グループ

1960年代中頃のサンフランシスコで人気のあったロックグループと言えば、まだレコードをリリースしているわけではなかったが、ジェファーソン・エアプレイン、クイックシルバー・メッセンジャー・サービス、モビー・グレイプ、グレイトフル・デッド、ドアーズ、ビッグ・ブラザー&ホールディング・カンパニー(ジャニス・ジョプリンを擁した)などが挙げられる。ヒッピー文化が中心であった当時のサンフランシスコのミュージックシーンは、ドラッグ抜きでは語れないことから、彼らの音楽はサイケデリックロックとかアシッドロックなどと呼ばれていた。

フィルモア・オーディトリアム(フィルモア・ウエストの前身)のオーナー、ビル・グレアムはこれらのグループをしょっちゅう出演させていたので、彼らの人気はうなぎのぼりで、レコード会社の多くが彼らと契約しようと躍起になっていた。67年に20万人以上を集めて開催されたロック史上最初のビッグフェスとなる『モンタレー・ポップ・フェスティバル』にこれらのグループが大挙出演してからは、その人気は全国区となっていく。ちなみに、このフェスは以降のロックフェスの雛形となり、『ウッドストック』も『ワトキンスグレン』も、この『モンタレー・ポップフェス』をモデルにしている。

すでにレコーディング経験のあった
スティーブ・ミラー

中でもスティーブ・ミラー・ブルース・バンドは本格的なブルースを演奏するグループとして一目置かれる存在であった。グループのリーダー、スティーブ・ミラーは以前シカゴで、のちにマイク・ブルームフィールドやバディ・マイルスとエレクトリック・フラッグを結成するバリー・ゴールドバーグとの双頭バンド、ゴールドバーグ・ミラー・ブルース・バンドで活動し、65年にはすでにレコードもリリースしていたのである。

この頃の貴重なコメントがある。レコード・プロデューサーのデイビッド・ルービンソンは「私がサンフランシスコに出てきたのは1966年の12月。あの当時で最高のバンドというと、それはもうモビー・グレイプに止めを刺す。他とは比べものにならない。モビー・グレイプと一段下がってスティーブ・ミラーかな? (中略)できもしないブルースを演奏するサンフランシスコのグループなんてのはもう、お笑い草でしかなかったのさ。ただし、スティーブ・ミラーとサンズ・オブ・チャンプリン(筆者注:ビル・チャンプリンのグループ)とモビー・グレイプは別格だった」(『ロックを創った男、ビル・グレアム』ロバート・グリーンフィールド著、大栄出版、1994)と、後年に語っている。

OKMusic編集部

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