山本裕が最新作『GIWA』を上演&WIT
H HARAJUKU コンテンポラリーダンス
フェスティバルをプロデュース

ダンサー・振付家の山本裕の活躍が目覚ましい。文化庁新進芸術家海外研修員制度を活用してオランダのスカピーノ・バレエ団に1年間留学し、ヨーロッパやアジアのフェスティバルより招待を受けてゲスト出演。ダンスカンパニー Honey→Bを主宰し、山本裕ダンス公演を主催する同時に各種公演・企画に招かれ、オペラやMVの振付も手がける。2012年11月9日(火)~10日(水)座・高円寺2で行なう文化庁芸術祭参加公演 山本裕ダンス公演『GIWA』、12月3日(金)~4日(土)に開催され、総合プロデュースを務めるWITH HARAJUKU コンテンポラリーダンスフェスティバル(ともに後日動画配信あり)を前に、これまでの軌跡や意気込みを聞いた。

■「自分のダンスは、孤独ながらも自分でやっていくしかない」
――山本さんは国内外で踊り、創作し、オペラやMV・PVの振付も担当されています。活動のコンセプトとして「人々の純粋な感受性や想像力から独自のダンスを創作。常に場所や人材などの条件から創り出すサイトスペシフィックアートであり、権力や既存の美意識に迎合しないアナーキーなダンスを理想としている」を掲げています。それはどこから来ているのですか?
20歳で上京してきた頃、さまざまな公演を観る機会があったのですが、腑に落ちない気持ちになることが多かったんです。当時コンテンポラリーダンスといっても、世の中に対しての認知もまだ少ない上に、その魅力を上手く出し切れていないのでは?と感じることもあったんです。
ただ「自分ならではのダンスを自由に創る」という考え方自体は素晴らしいと思うし、さまざまな場所や人、状況を生かすことにつながる良さもあります。長く続けていると、そういうことを蔑ろにしてしまうこともあるかもしれませんが、僕はそういう当たり前のことを必ず大切にするという意味合いで自分の活動のコンセプトを掲げています。
要するに「形じゃないよ」という意味ですね。自分のダンスを成立させるためには、人の振りや流行りを追うのではなく、孤独ながらも自分でやっていくしかありません。
オランダのCAMERA JAPAN Festivalにて自作自演『Hidden Gentleman(モザイク紳士)』を踊る

【山本裕 出演動画】AmPm / You Won't feat. Wednesday(Music Video)

――多くのダンスに接して「腑に落ちない」と感じたのはどのような点に関してですか?
悪い意味で「恐れ」を知らないダンスが多いなと感じていました。ダンスをやっていると専門の目線で観るのは当然です。しかし、振付や演出をやる立場からすると、一般大衆の目から観てどうなのだろうかという点も考えます。あと、たとえば生演奏で踊る、台詞を言うといった専門外のことをやる時って恐いじゃないですか。だから、その「恐れ」に真摯に向き合って「良くしていこう!勉強しよう!」って思っていくことが大切ですよね。そのような気持ちの積み重ねがあってこそ、人の心を打つ作品を創り上げることができるではないでしょうか。
六本木アートナイト2017 ~未来ノマツリ~『Deep sea』蜷川実花のオブジェの前で上演 撮影:杉村友弘
EMI JINGU『春霞 ~希望の桜を求めて~』バルーンアート:神宮エミ 撮影:吉川義博
――そう思うに至ったバックグラウンドはどこから生まれたのでしょうか?
若い頃からいろいろなお仕事をいただき、ありがたいことに他分野の素晴らしい方々とご一緒しました。2010年頃には、鈴木優人さん(音楽家)の演奏で踊ったり、石丸さち子さん(演出家)の下で振付を任されたり、服部譲二さん(音楽家)が芸術監督を務め、古今亭志ん輔さん(落語家)も出られた『兵士の物語』を振付・出演したりしました。そこで学んだ気付きがたくさんありました。向かうところは一緒なんだけれど言語が違う。だから寄り添える方法を探すんです。
そのような経験によって、自分は成長できました。近年ではボローニャフィルハーモニー管弦楽団とのオペラ『椿姫』や、藤間爽子さん(現・藤間紫、日本舞踊家)とのデュオ、神宮エミさん(バルーンアート)とのコラボレーションもありました。これからもそうしたご縁に感謝しながら、そこで得た経験を力にしていけたらと思います。

東京演劇アンサンブル『兵士の物語』振付・出演 芸術監督:服部譲二、語り:古今亭志ん輔
公益財団法人さわかみオペラ芸術振興財団 ジャパン・オペラ・フェスティバル2017『椿姫』の振付を担当

■単独公演を主催し、話題作を連打
――2019年から毎年秋に文化庁芸術祭参加公演として山本裕ダンス公演を開催しています。外部からの依頼も多い中で、単独公演を自主的に始めた理由とは?
今まで他の方の自主公演に出演したり、誘われたりする機会はありましたが、信頼関係が成り立っていないような公演もあって「それって、どうなんだろう?」と感じていました。だから単独公演を主催するなんて自分でも意外だったのですが、どうしてもやりたい作品があったんです。
文化庁芸術祭参加公演 山本裕ダンス公演『私達のファウスト』『変態夢宇宙』  撮影:杉村友弘
――2019年10月、能楽師で重要無形文化財(能楽総合)保持者の津村禮次郎さん、俳優の河内大和さんらを迎えて上演した『私達のファウスト』『変態夢宇宙』ですね。
『私達のファウスト』では、舞台全体に黒い紙を敷いて、そこにゲーテの「ファウスト」のヒロインであるマルガレーテ(Kana Kitty)はペイントで悲しみを綴っていきます。さらにファウストの魂を狙う悪魔メフィストを津村さんが演じ、和のテイストも入っています。
その頃、妻(船木こころ)が妊娠しました。すると、死ぬことがもの凄く恐くなりました。子供ってどこからくるんだろう?自分が死んだらどこへ行くんだろうと。人間はどうして自分を意識するのだろうかと悩み、人はいつか死ぬとあらためて気が付きました。宇宙のことからなにから調べ始め、ご飯が食べられなくなりました(笑)。それくらい恐かったんですよ。
『私達のファウスト』に続けて上演した『変態夢宇宙』では、僕と河内さんが踊りました。「ファウストに死後があったとしたら」というメルヘンです。死んで魂になるのは、ある意味役割を終えて自由になること。自分というものが無くなると、逆にいろいろなものに変貌できるのではないかと考えました。だから、途中で海苔巻きになったり、雀になったり、洗濯機になったりするんです。変貌していくのですが、僕の座右の銘というか子どもの頃から「変態」と言われ、この世界でも変態と言われてきたので(笑)そこから『変態夢宇宙』と名付けました。
――2020年11月には、「暗闇から生まれる幻想と現実の世界」を描いた『Night Parade』を発表しました。まさに百鬼夜行の世界が強烈に立ち上がっていました。
2回目はダンサーとサクソフォンの生演奏でやろうと思いました。テーマは「暗闇という見えないもの、未知のものに対して、どう向き合うのか」。コロナ禍ではありますが人間が普遍的にぶつかる問題です。人間同士が相対して分かり合えず、不安だから攻撃的になったり、ネガティブな方向に考えたりします。でも、そこから一歩進んで、未知のものに対して寛容になってみたり、良いように解釈して愛おしく思ってみたりできるのではないかというのがコンセプトでした。
文化庁芸術祭参加公演 山本裕ダンス公演『Night Prade』 撮影:bozzo

■過剰さを排し、シンプルに――新作『GIWA』に向けて
――2021年11月、3年目となる文化庁芸術祭参加公演で新作『GIWA』を上演します。創作の動機をお聞かせください。
今までとは全然違う作品になると思います。これまではダンスを一般の方にも楽しんでもらいたいという意識が強く出ていましたが、今回は地底を流れる水脈のようにシンプルに削ぎ落としたものを創りたかった。自分が飽きてしまうというのもありますが(笑)。毎回ゼロから始めて新しい方程式を創り上げていくことが苦しいけど楽しみですね。
――『GIWA』というタイトルに込められた思いは何ですか?
最初は波打ち際に興味を持ちました。地図上には境界線がありますが、海と陸の境界線ってくっきりしているわけではないだろうなと思ったんです。境界線は、あくまでも人間が創り出したもので、境界は存在していないものかもしれません。
気持ちの境界線となれば、物質的ではないから、なおさら曖昧です。でも、いまの時代に曖昧なものっていいんじゃないかと考えました。たとえばネットで賛否のある問題があったとしても、本当は賛否だけではないですよね。でも人間はどちらかに振り切りたい。曖昧で、変化しているって、まさに波打ち際です。そこから『GIWA』と名付けました。
――出演は、近藤みどり、中西飛希、幅田彩加、藤村港平、船木こころ、山本裕。個性は異なりますが、しっかりしたテクニックと表現力を持った人ばかりですね。
出演者は、体の動きとか質感が通じている部分もありつつ、1人1人の異なる存在感があり、素敵なバランスを取っています。僕は振付をする時に、ほとんどダンサーに投げずに自分で創るのですが、本当に良く対応してくれます。みんな僕に無いものを持っているし、生徒や弟子ではなく、自分の力で立っている人たちだから、お互いにイーブンな立ち位置で一緒にやれています。みんなを尊敬しているからこそ、こちらが油断をしたらいけないと思えるから楽しいですよ。
文化庁芸術祭参加公演 山本裕ダンス公演『GIWA』

■都心・原宿で新たなダンスフェスティバルを立ち上げ
――2021年12月には昨年東京・原宿駅前にオープンした新たなホールWITH HARAJUKUにて「WITH HARAJUKU コンテンポラリーダンスフェスティバル」を開催し、総合プロデュースを務めます。立ち上げの経緯を教えてください。
文化庁のARTS for the future!(コロナ禍を乗り越えるための文化芸術活動の充実支援事業)に応募したのですが、いつもの公演だけではなく他に何かできないかと考えるうちに、ダンスフェスティバルをやろうという案が出てきました。アートの芸術祭は地方にたくさんありますが、ダンスフェスを原宿駅前という、都心の中の都心、若い人をはじめとしていろいろな人が集まる場所でやれば本格的にコンテンポラリーダンスに触れてもらえる機会になると思ったんです。
コンテンポラリーダンスといってもさまざまな棲み分けみたいなものがありますが、それとは関係なく、自分が素晴らしいと思った人、実績と影響力を持つ振付家に依頼しました。ガラコンサートのように1人10分までにしたので、一度にいろいろな作品を観ることができます。
ホールでの「メインパフォーマンス」のほかに入場無料の「庭プロジェクト」を行います。「パーク」という場所にちょっとしたスペースがあり、夜でもライトアップされるので、行き交う人たちが自由に触れることができるパフォーマンスを取り入れました。

WITH HARAJYUKU コンテンポラリーダンスフェスティバル

――出品する振付家は黒田育世さん、東野祥子さん、康本雅子さん、池上直子さん、大前光市さんのような実力者から坂田守さん・長谷川まいこさん、池田美佳さんといった山本さんと同世代、さらに少し下の若い世代も登場します。
世代や棲み分けのバランスを考えています。黒田さんや東野さんのような多方面で活躍されているベテランがいて、若手では近年コンペティションでも受賞している髙瑞貴ちゃんや田村興一郎くんがいます。美佳ちゃんはミュージカルなどでも活躍しているし、直子さんはバレエの方面でも振付家として脚光を浴びています。大前さんは義足のダンサーとして今や時の人です。
――最後に今後の活動の展望、抱負をお聞かせください。
お客さんに対して好き嫌いを超えて、一歩先の風景を見せたいですね。そのために僕は疑問と好奇心を持ち続けて作品を創り続けていく。しんどいですけれど、それが大切です。自分が成長するためにも人と関わりながら、新しい企画を開催していけたら。それが今後の展望ですね。
2016 都民芸術フェスティバル参加 現代舞踊公演『The color of flowers』 撮影:大洞博靖
取材・文=高橋森彦

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