cinema staffが海底から見つめる光。
自身らの心情を素直に吐き出した新作

実に4年ぶりとなるアルバムである。『熱源』までの数作で見せていた明るいムードからは一転、cinema staffの新作『海底より愛をこめて』には、メンバーたちの重苦しい心象がストレートに表現されている。“怒りは怒りarlyのまま、暗いところは暗いまま、制御しないで作った”という、三島想平(Dr&Cho)の言葉の通りである。中でも本作の象徴と言えるだろう、「海底」、「I melted into the Void」の2曲には、この時代の中で誰もが感じていたであろうやり場のない空虚感と、その裏返しにある微かな希望が歌われているように思う。本作に繋がる2019年頃からのバンドの動きを紐解きながら、新作の背景に迫るインタビューを行った。アルバムに込めた思いやコロナ禍で聴いていた音楽、バンド人生で一番幸せな日になったという主催フェスについて、ZOOMを通して飯田瑞規(Vo&G)と三島のふたりに語ってもらった。

ナチュラルに作れた

ー『海底より愛をこめて』はこのバンドにとってどんなアルバムになったと思いますか。
三島想平:
20代前半は割と怒りのままにというか、テンションのままにガー!っとやってきたところがあるんですけど。僕らも徐々に大人になっていって、楽曲のメッセージ的にもポジティブにしていこうっていう意識で作ったのが、『blueprint』から『熱源』までの流れだったんです。
ーなるほど。
三島想平:
そうやって良くも悪くも前向きにやっていた感じがあったんですけど、今作は無理にポジティブな感じにする必要はないかなと思って、開き直って作った作品です。怒りは怒りのままに放出して、それが僕らの救いになればいいし、リスナーの方の感情の器にもなれたらいいかなと思っていました。剥き出しのところは剥き出しのまま、暗いところは暗いまま、制御しないで作ったアルバムです。
ー飯田さんはどうですか?
飯田瑞規:
以前はcinema staffとしてどんなバンド像を目指せばいいんだろう?って考えた時、モデルになるようなバンドがいなかったんですよね。でも、年々歳を取るにつれて、それでいいんじゃないかなって思えるようになってきたところがあって。今回のアルバムはコロナ禍で抱える気持ちを三島が言葉にしてくれて、これまでで一番カッコ良いアルバムができたって本気で思える作品になりました。
ー昨年に7inchで『3.28 / TOKYO DISCORDER 7inch EP』をリリースされていますが、あの作品は今作の出発点になっているんですか?
三島想平:
いや、あれはアルバムに繋がる感じではなかったですね。(コロナ禍で)やることがなかったので、1回制作で集まって心をひとつにしようってタイミングで作ったものでした。
ーじゃあ今作の方向性が定った感触のある楽曲があるとしたら?
三島想平:
個人的には「白夜」と「極夜」が軸になったところがありますね。「白夜」は結構前からパーツのあった曲なんですけど、一番無理のない感じの曲というか、最近やりたいことの要素がバランスよく入っている曲になりました。
ー「極夜」は?
三島想平:
「極夜」は2021年になってから作った曲で、ある意味凄く手癖でできている楽曲なんですよね。『熱源』くらいまでは手癖を良しとしてなかったので、意識して避けていたところがあったんですけど、この曲ではそれを全開でやっています。そこに最新のメロの良さや、今のスキルを上手くミックスできた感覚があって、どちらも凄くナチュラルに作れた実感がありますね。
ーおふたりの話を聞いてると、今は自然体に表現するタームに入っているのかなと。
飯田瑞規:
2019年の前半に喉を壊してしまって、3ヵ月間お休みさせてもらったことがあったんですけど、ちょうどその頃に『進撃の巨人』のエンディング曲、「Name of Love」のレコーディングがあって。今だから言えることなんですけど…制作の中で自分らがやりたいことと、会社から求められることで板挟みになっていたんですよね。そこで俺らがやりたいことってこうだっけ?って凄く考える時間になりましたし、喉も治ってライブをやっていこうってなった時に、“いや、これは俺の人生だから”って改めて思いました。僕らの音楽に賛同してくれる人を大切にしようっていう、当たり前のことに気づけたというか、自分たちがカッコ良いと思うことを曲げたらダメだって感じました。そうやって原点を見つめ直せたのが2019年だったんですよね。
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