新感覚ハイブリッド音楽集団、NIKO
NIKO TAN TANの魅力に迫る

楽曲制作とパフォーマンスを担当するOchanとAnabebe、映像とアートワークと作詞を担当するSamson LeeとDrugstore Boy。音楽ありきの映像でも映像ありきの音楽でもない4人組の新感覚グループ、NIKO NIKO TAN TANが、2021年9月から11月17日に渡り、シングル「WONDER」、「ヨルガオ」、「夜を彷徨う、僕の衝動」を3カ月連続でリリースした。今回はOchanとAnabebeがインタビューに答えてくれるということで、音楽サイドからグループそのものや各曲の魅力に迫る。サイケデリックロックやオルタナティブロック、エレクトロニカ、R&B/ヒップホップ、ディスコやファンク、ドメスティックポップなどさまざまな音楽から受けた刺激と、映像によって引き出されたポテンシャルを摩訶不思議なセンスで切り貼りしたサウンドの中で、一筋の光を放つメロディ。そのカオスとポップのバランス感覚が見事な作品群のなかに潜むポリシーとは。

音と映像の化学反応で新たなポップの地
平を切り拓く

――NIKO NIKO TAN TANは2019年に始動したとのことですが、お二人は以前にもバンドを組まれていたと聞きました。そもそもどのように出会い意気投合したのですか?

Ochan : 僕らが出会ったのは10年以上前。大阪で当時僕のやっていたバンドのドラムが抜けたので、新たにメンバーを探すことになったんです。それで、いい人がいないかmixiで検索していたらAnabebeが出てきて。プロフィールのところに「好きな飲み物はビール、休みの日は個人練習8時間」と書いてあって、Red Hot Chili PeppersとかMars Voltaとか、好きなバンドもいくつか被っていたので、「なんかおもしろそうだ」と思いメッセージを送りました。

――個人練習を8時間する人と趣味が合うなら声かけますよね。

Ochan : それで難波のマクドナルドの前で待ち合わせするとになりました。当時の僕はなぜがギターをケースに入れず裸で持ち歩くのがかっこいいと思っていて、ギターを抱えながら自転車を漕いで行きました。そしたらAnabebeもスティックを裸で持って現れたんです(笑)。

Anabebe : 自分もスティックを裸で持っていたことは棚に上げて、「変な奴が来た!」と思いましたね(笑)

――ギターはデカいですからね。

Ochan : そこからスタジオに入るわけでもなく、僕がギターを弾いて、Anabebeは自転車とか階段をスティックで叩いジャムみたいなことをしたんですけど、それがすごく楽しかったんです。

Anabebe : Ochanが出す音がかっこよくて、僕のフィーリングにも合っていたので、そのバンドに入ることにしました。

――そこからどういう経緯でNIKO NIKO TAN TANは始まったのですか?

Ochan : 当時はオルタナティブロックというか、ちょっとエモっぽさもあるポストロックみたいなことをしていました。でも、僕の作りたい曲のイメージが変わってきて、そのバンドの枠内でやることが難しくなってきたので活動を止めたんです。そこから僕はしばらくの間、絵を描きながらいずれ個展を開きたいなとか、音楽とは別の表現に気持ちが向かっていたんですけど、映像メンバーのSamson Leeが「音楽と映像で何かしない?」って声をかけてくれて。それがNIKO NIKO TAN TANの始まりですね。

Anabebe : 僕はOchanとSamson Leeがそういう話をしていたことはぜんぜん知らなくて、気がつけば巻き込まれていた、みたいな感じです(笑)

――NIKO NIKO TAN TANの作品は、音楽ありきの映像、映像ありきの音楽ではなくて、両者が対等であることが他にはない特徴だと感じているのですが、意識的にそうしたのでしょうか。

Ochan : 音楽と映像が対等だというのはその通りですね。映像があることで、音楽と向き合っているだけだと、まずやらないしやれないであろう大胆な発想が出てくることは往々にしてありますし、映像チームも同じ感覚は持っていると思います。でも、特に他の表現との差別化みたいな、策略的な発想から生まれた形態ではないですね。自然な流れでそうなりました。

――自然とは?

Ochan : そもそも作品を表に出すつもりはなかったんです。僕はしばらく音楽から離れた生活を送っていたので、勘を取り戻すためのリハビリみたいな感覚でした。Samson Leeは映像制作を仕事にはしていたんですけど、クライアントワークが提示するテーマに沿った作業だけではなく、自分からの発信で何かを作りたいとも思うようになっていて、その手始めに僕と何かやりたかったみたいで。

――目標があるわけではないということは、言い換えれば自由。だから枠に捉われないさまざまなスタイルの作品があるのだと、納得できました。

Ochan : テーマはとにかく“肩の力を抜いてやる”ことでした。前のバンド時代に、自分たちが作ってきたものやバンド名に縛られるようになった経験があったので、同じ轍は踏みたくなかった。最初は初期衝動でただやりたいことをやっていたはずなのに、だんだんと難しくなってきたんですよね。僕の性格的な問題もあると思うんですけど、続けていくことは大変だなって。

――NIKO NIKO TAN TANは、さまざまな場所に飛んでいけるターミナルのような印象を受けました。

Ochan : そうですね。特定の方向性を目指しているわけではくて、その時々でやりたいことをやっていきたい。その発信地としてNIKO NIKO TAN TANがあるような感覚ですね。

――その発信地自体がどういうものなのかを考えたときに、私は“ポップ”だと思ったんです。それについてはどうですか?

Ochan : 僕らのやっていることをポップだと思っていただけたのなら、すごく嬉しいです。

――しかし、ポップという概念は受け手がいて初めて成り立つもの。となると「表に作品を出すつもりはなかった」とおっしゃった結成当初から、どこかで意識が変わったということになりますが、いかがですか?

Ochan : やっていくうちにまず一度、作品を出してみたくなって「東京ミッドナイト feat. Botani」をMVとともに公開したら、思いのほか反響が大きかったんです。そこで、もともとはバンドをやってライブをしたり、絵を描いて個展をしたいと思ったりしていたように、何かを発信したいタイプの人間のリハビリだったので、再び熱が上がってきました。じゃあそんな心境の変化が以降の作風に表れているのかとなると、しばらくはそうでもないんですけど。

――“しばらくは”ということは、もう一段階、変化があったということですか?

Ochan : 肩の力を抜いてやりたいという気持ちは変わっていないですし、変わらないように意識している部分もあります。その中で、もっともっと伝わる作品を作っていきたいという想いは強くなりました。

――“肩の力を抜いて出てくるアイデア”と“伝わる作品”の間にギャップがあるということでしょうか。

Ochan : 僕らの音楽的な影響源のほとんどは海外の音楽。なかでも広義のオルタナティブな音楽なんです。なので、そういった要素は肩の力を抜いた状態で出てくるんですけど、それだと現状の日本ではなかなか難しい。そこで両者のバランスを考えることが今はすごく楽しくて。それが今回の3連続シングル、「WONDER」、「ヨルガオ」、「夜を彷徨う、僕の衝動」だと思います。

――確かに、サイケデリックロックやプログレッシブロック、ソウルやファンクといったさまざまな音楽的要素が詰まっている3曲ですが、そこにポップな筋が通っているように思います。それは既存のロジックやヒットチャートの動向に倣ったものではなく、オルタナティブなエッジは担保したまま、新しいポップの扉を開こうとする意志からだったのですね。

Ochan : J-POPのフィールドにはある程度のセオリーがあると思うんです。Aメロ、Bメロ、サビという展開を軸にした歌の面積の大きさは、そのもっともわかりやすい例だと思います。そういったことは自分なりに解析しつつ、自然と湧き出てくるサウンドのアイデアとどう擦り合わせていくのか。いちばんいい場所を探って出しているつもりなので、汲み取っていただけてよかったです。

――多岐にわたる音楽的な要素を、バンドというよりはDJ ShadowThe Avalanchesといったサンプリング音楽や、エレクトロニカ的な発想で切り貼りしているような印象も受けるのですが、いかがですか?

Anabebe : おっしゃる通りですね。僕は生ドラムのプレイヤーではありますが、DJ Shadowからの影響はかなり強いですし、エレクトロニカやダンスミュージックの打ち込みよるリズムの音のほうがどちらかと言えば好きなんです。

――ドラマー目線で、“生にしか出せない人間味がある”とはならないのですか?

Anabebe : それって言い換えれば、“人間が叩けばどうやっても生々しくなってしまう”ということじゃないですか。そっちの視点からの事実を受け入れたうえで、打ち込みの音とThomas PridgenやThomas Pridgenといった僕の好きなドラマーのプレイスキルから受けた影響をどう重ね合わせるか。言葉にするとそんな感じなんですけど、単純にかっこいいと思う音やリズムパターンを探し続けているだけですね。

Ochan : 考え方が柔軟なドラマーなので、すごくやりやすいです。

――ドラムとベースによるところが大きいと思うのですが、オントレンドであること対する意識の高さも感じます。

Ochan : どのジャンルが流行っているからどうとか、音楽性のトレンドは特に気にしていないですね。でもミックスについてはすごく意識しています。その点で、僕がもっとも大きな衝撃を受けたアーティストはJames Blakeなんですけど、ここ10年くらいを振り返ってみると、とりわけリズムの構造、キックの位置やベースの鳴り方がすごく進化したように思います。そうなると聴く人の耳もおのずと低音に向いていく。その部分は現在進行形の音楽として響くようにしないと、多くの人に聴いてもらえる可能性のある曲も聴いてもらえなくなってしまうので。そのうえで、歌も含めた上音のレイヤーをどうデザインしていくか。

――それもまた伝わるものと自然に出てくるものとのバランスですよね。では、3カ月連続シングルそれぞれについても質問させてください。まずは3カ月連続リリースにした理由を聞かせていただけますか?

Ochan : もともとシングルはリリースしたいと思っていたのでタイミングを計っていたら、11月21日に渋谷WWWでのワンマンライヴが決まったので、そこに向かって段階を踏んで出していくことにしました。
――1曲目の「WONDER」は、これまでのNIKO NIKO TAN TANにはあまりないタイプのストレートなディスコ/ファンクテイストが強い曲です。それはライブを意識されてのことなのかなと。

Ochan : 確かに、「WONDER」のような、ここまでディスコやダンスミュージックの真ん中を意識したBPMが120台の曲は初めてですね。この曲は3連続リリースが決まる前、2020年にはできていた曲。コロナ禍に、また再びライブができるようになったときに生えるような曲を作ろうと思いました。あとは、自粛生活という閉鎖的な環境に置かれたことで不感症気味になっていたので、いろんなものに対する好奇心を忘れないでおこうと思って、あえて派手でダンサブルな曲にしました。

――イントロの展開からドラマチックで高揚します。

Ochan : イントロは映像チームの作ったライブ用の映像やMVがあってこそのサウンドを象徴していると思います。リフから始まって「バーンッ!」って、映画のオープニングのような感じで一気に景色が開ける。僕ら二人だけで作っていたらここまでの大胆で明快なアレンジには踏み込めないんです。その臨場感を思いっきり味わってもらえるのがライブなので、ぜひ一度観ていただきたいですね。
――「ヨルガオ」はサウンドとアートワーク、MVなどトータルのテーマ性が強い曲だと感じました。

Ochan : この曲は2021年に入って作った曲です。テーマは“摩訶不思議な夢の中で流れる子守歌”。夢の中ではすごく楽しかったり怖かったりしたのに、朝起きると思い出せないことってあるじゃないですか。

――めちゃくちゃあります。

Ochan : それが1回目の緊急事態宣言が出た時期やコロナ禍の先が見えない時期と重なったんですよね。「WONDER」が自粛期間の閉鎖的な環境のなかで鬱々とした感情を抱えながら、来るべきライブへの想いや自分自身の好奇心を取り戻すために作った曲だったことに対して、「ヨルガオ」は「あの頃って何やったんやろ」って、まるで夢の中での出来事を振り返るようなちょっと不思議な気持ちになっている2021年現在みたいな。

――すごくわかります。今までの味わったことのない落胆と発奮。その振り幅の大きさとスピード感を思い起こすと、何とも言えない気持ちになります。

Ochan : 確かにいろんなことを考えたし実際に曲も作った。すごく濃厚な日々だったはずなのに、ずっと眠っていたかのような空白感があって。そんなイメージを音にしつつ、ビートの展開やイントロのオリエンタルな音など、大胆で挑戦的な要素も盛り込んでエッジを作っていきました。

――オリエンタル、和の要素の強さはすごく印象的でしたが、そこは“エッジ”なんですね。

Ochan : 僕らの音楽は、よくオルタナティブと言われます。確かにそう呼ばれる音楽からの影響は強いんですけど、自分たちがオルタナティブなものを作っているつもりはなくて。そのうえで冒頭のオリエンタルな音は、物心ついた頃からというか、オルタナティブとかポップといった概念とは関係のない次元で染みついていて頭の中をリフレインする、“理屈抜きで好きな音楽”みたいなイメージでした。

――童謡やわらべうたなどのことですか?

Ochan : 僕にとってはそれが久石譲さんの音楽なんですけど、そういうことですね。その要素と、音楽に対する自我やリテラシーが生まれて以降好きになった音楽の要素が、地続きになるような曲にしたかったんです。うまくバランスを取ることには苦労しつつ、映像も含めていい形になったと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=udZPgV0jV_c&feature=youtu.be

――「夜を彷徨う、僕の衝動」は、サイケやファンク、ジャズなど音楽的な背景や音の色彩感のすごく豊か。これだけの情報を3分台のポップミュージックとしてまとめるセンスに驚きました。

Ochan : そこはポップソングを作っている以上、戦い続けるであろう部分ですね。楽曲の構成はすごく大切にしていて、さまざまなやりたい音楽性や偶発的なサンプル音を詰め込みながらも、余計なものを削いでエディットして3分くらいにまとめるようにしています。その作業自体は作る側の話なので日が当たらなくてもいいし、歌が伝わればそれでいいんです。でも、自ら膨大な情報を整理するという、掘っても掘っても底が見えない沼のようなところに飛び込んでいくことで、制作における高いモチベーションが保てますし、だからこそ新しいスタイルが生まれると思うんです。

――「歌が伝わればそれでいい」とおっしゃいましたが、確かにサイケな音のカオスの中で、歌とメロディはくっきりと浮かび上がってくるのは、その温度感が絶妙だからだと思います。

Ochan : 単に湧き上がってくる感情とサウンドを同化させるのではなく、悲しいことを歌っているけどサウンドは明るいとか、その逆やどちらとも言えない感覚も然りで、少し俯瞰的な目線に立って歌が際立つようにしています。

――Samson Leeさんの歌詞もいいですね。

Ochan : 今までは出していなかった内容だと思います。あまり詩的ではなく、より日常との距離が近い言葉。閉鎖的な空間から生まれた「WONDER」、その頃を振り返って変な夢を見ていたような気分になっている「ヨルガオ」、そこから今も予断を許さない状況は続いていますけど、やっとかつての日常を取り戻せそうな感覚や、ポストコロナの生活が見えてきた状況を歌詞にしたいねって、話していたんです。この1年半で失ってしまったものは、人それぞれあると思います。その経験があってまた新たに何かをやっていこうという気持ちを紡いで歌ってみたら、珍しくラブソングっぽい曲になりました。

――額面通り捉えると、誰かを応援するような言葉や希望的な言葉は入っていないんですけど、前向きになれます。

Ochan : 「夜を彷徨う、僕の衝動」という言葉通り、僕は寝る前に散歩というか、近所を徘徊しながら考え事をするんです。毎夜いろんなことを考えるんですけど出口は見つからなくて、また次の日が来る。その繰り返しでなんですけど、何かを考えていることそのものが、自分が自分たる取り戻しリセットする行為のように感じていて、それはそれでいいんじゃないかって。だから自分に対して歌っているような曲でもありますね。

――そんな日々のなか、NIKO NIKO TAN TANの未来についてはどうお考えですか?

Ochan : 来年も引き続き作品をリリースしていく予定です。今回、曲もMVもライブ用の映像も含めて、まるで別の空間で起こっているかのような3作品を続けてリリースしたように、「こういう音や映像をやってるグループだよね」みたいな統一感ではなく、いろんなことをやりながら、そのどれもにNIKO NIKO TAN TANという筋が通っているようなことをやっていくと思います。

――11月21日、渋谷WWWでのワンマンについても一言聞かせてください。

Ochan : 映像と音楽とが交わったNIKO NIKO TAN TANの、これまでの集大成的なライブです。さまざまな角度からの刺激を楽しんでもらえるようなステージにしますので、よろしくお願いします。

Anabebe : 今年の締め、頑張ります!
『夜を彷徨う、僕の衝動 』
Release: 2021.11.17
Format: Digital
Label: NIKO NIKO TAN TAN RECORDS

配信リンク
https://friendship.lnk.to/YwSBnS

【「夜を彷徨う、僕の衝動」Music Video】
https://youtu.be/udZPgV0jV_c


「NIKO NIKO TAN TAN 1st One-Man Live “微笑坦々”」

11/21(日) Shibuya WWW
OPEN 17:00/START 18:00
チケット:ALL STANDING(立ち位置指定) ¥3,000

チケット販売URL
https://l-tike.com/nikonikotantan/

NIKO NIKO TAN TAN

新感覚ハイブリッド音楽集団、NIKO NIKO TAN TANの魅力に迫るはミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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