The Birthday『CORE 4』。モノクロの
世界を映し出す、詩情溢れるロックン
ロール

 今年最も聴いている曲のひとつがThe Birthdayの「息もできない」であり、この曲で描かれる情熱的な口づけ、世界が溶けるような一瞬のロマンには、普遍的な魅力があるように思う。濁った世界を見つめる澄んだ瞳、チバユウスケの言葉には時世からの反響を感じつつも、現実に引っ張られ過ぎることのない独立した美しさがある。
 件の1曲を収録した『サンバースト』は、どちらかと言えば朗らかな曲が印象的なアルバムだった。“雲間をついて現れる強い日差し”を意味するタイトルは、あの作品のシンボルだろう。
〝たぶん夏だった。なんかいつも疲れてた。      川の向こうはビルだらけで、あれが全部無くなったら空はもっときれいだろうな、と思った〟
 これは2008年に発行されたチバの歌詞を集めた詩集の中で、「サニー・サイド・リバー」(thee michelle gun elephant/『Chicken Zombies』に収録)について寄せた彼のコメントである。澄み切った青、日差し、光、そこから喚起される未来……サウンドの気分は移ろいながらも、歌には変わらない憧憬があるように思う。リリックの中にはしばしば鳥が出てくるが、それも空(あるいは自由)への期待が表れているのだろう。
 さて、絶賛ツアー中のThe Birthdayから新たな音源が届けられた。タイトルは『CORE 4』。4曲の新曲に加え、4つのライブ音源をパッケージしたシングル作品である(ライブ音源はCDのみ収録)。『サンバースト』の制作中に生まれたという新曲は、アルバム完成後にすぐさまレコーディングを開始。新鮮な内に聴かせたいという意欲が伝わってくる作品だ。
 音楽的には『サンバースト』から地続きのモードを感じるが、作品のトーンは反転している。新曲の「ある朝」、「ブラックバードカタルシス」、「レイトショー」、「ヘッドライト」、そのいずれもがモノクロームの情景を映し出す。まるで濃淡な灰色で描かれたショートムービー、あるいは短編小説である。
 左右のチャンネルから交互に聴こえてくる、2つのギターで始まる「ある朝」。曲のムードを決定付けているのは、じっとりとしたベースとタメの効いたドラムである。ジリジリと熱を帯びていく演奏に円熟味を感じるミディアムナンバーだ。
 夜空を切り裂き飛び立つような高揚感がある、「ブラックバードカタルシス」が白眉である。抒情を含んだフジイケンジのギターが気持ちよく、開放的なアンサンブルが広いステージを思わせる。何より、<ブラックバードカタルシス>という、聞き慣れないフレーズのインパクトが強烈だ。突拍子もない造語だが、チバが叫べばドラマになる。こんなところにも、このバンドの魔法はあるのだろう。
 深夜の不穏な空気を纏ったポエトリー、「レイトショー」も印象深い佳曲である。上映を終えた映画館から出た時に感じる生ぬるい風。夜と朝の間、白と黒の世界。勝者なきカーチェイスを続けるようなスリリングなギターとベース。焦燥感を煽るハイハットと、雪崩のように押し寄せる4人の音。底の見えない沼地にひきづり込まれるようなグルーブ……それは『サンバースト』ではなかなか聴くことのできない深々としたグルーブだ。
 事切れたような一瞬の静寂の後、哀愁を感じるロックバラード「ヘッドライト」に繋がっていく。無常を感じるギターのイントロと、感傷的な旋律。しゃがれた声で歌われる<君の匂いがした>というラインが、逆説的に君の不在を浮かび上がらせる。優れた小説が持つ読後感のような余韻があり、私は作品としては『サンバースト』よりも『CORE 4』を愛聴している。
 今更ながら「ブラックバードカタルシス」のMVを見ている。モノクロで映し出される乗り捨てられた廃車と、その周囲に生い茂る草木。雨に濡れながら、雫を反射して育つその場所で、孵化の時を待つ卵が並んでいる。それは生と死のコントラスト。終わりのすぐ隣には、次なる生命があるのだと暗に示しているように思う。ライブ音源で聴ける最後の言葉は、“またここで会おう”である。
黒田隆太朗
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