Czecho No Republic 新たな姿を見せ
つけたバンドの未来に対する大きな期
待、『Tokyo 2021』レポート

Tokyo 2021

2021.11.26 WWW X
「この8か月、いや、9か月か、ライブ(の予定)を入れずに、おのおの人生について考えてました。(そうしたら)いろいろな変化があって」
この日、終盤のMCで、そんなふうに語った武井優心(Vo,Gt)は、結局、Czecho No Republic(以下チェコ)の何がどう変わったのか、それについては砂川一黄(Gt,Cho)のメガネのフレームがちょっと細くなったこと以外は、はっきりと言葉にはしなかった。けれど、ライブを観た人ならちゃんと感じ取ってくれたに違いないと思ったに違いない。
確かに8か月ぶりのワンマンライブは、チェコの大きな変化を印象づける熱演となった。このレポートでは、そんな変化について書いてみたいと思う。
武井優心(Vo/Ba)
何と言っても一番わかりやすい変化は、サポートベーシストにナリさんことSISTER JETのオオナリヤスシを迎え、武井がギターを弾きながら歌うようになり、4人編成になってからエレクトリックギターも弾いていたタカハシマイ(Vo,Key)が(この日に限って言えば)演奏面ではキーボードに専念することになったことだ。
シュッシュッシュッという汽車のSEとともにホーンとバンジョーが鳴る中、メンバーがステージに出てきたオープニングから、えっ、ベーシストがいる!? あっ、武井さんがギター(白いリッケンバッカー!)を持っている! とびっくりさせられたが、後述するようにオオナリを迎えたことは大正解だったと思う。
「新たにギアを入れるために……じゃないんですけど、ナリさんのライブを観て、弟子入りしようと思った。サンズイのオトコ(=漢)として(笑)」
武井はオオナリをサポートに迎えた理由を、そんなふうに語ったが、最初はサポートを入れることに慎重だった砂川も今では同じギグバッグを使うほど、武井曰く「ナリさんになついている(笑)」そう。
山崎正太郎(Dr)
新たに5人編成になったチェコのライブは昨年8月にリリースした目下の最新アルバム『DOOR』のオープニングを飾る「摩訶不思議」でスタートした。メンバー全員が声を上げながら、一気に盛り上げると、バンドは「旅に出る準備」「MUSIC」「レインボー」「ファインデイ」とお馴染みの曲をたたみかける。
そんな序盤の聴きどころは、「MUSIC」で重ねた武井とタカハシの見事なハーモニーもさることながら、変化ということに着目するなら、やはり「レインボー」だろう。砂川がギターをふぁぁぁと鳴らすバイオリン奏法で作り上げた空間の中で、山崎正太郎(Dr,Cho)のタイトなドラムに合わせ、リズムを刻むオオナリが転調を加えたり、リフを交えたりしながら、フレーズにアクセントをつけたベースプレイは、多くの観客の印象に残ったはず。もしかしたら、武井がこれまでプレイしていたアレンジを踏襲しているのかもしれないが、図太い音色で鳴るオオナリのベースプレイは、歌いながらプレイする武井とはやはり違う重低音の迫力という新たな魅力を、確実にチェコのバンドアンサンブルに加えていたと思う。
タカハシマイ(Syn/Vo)
それに刺激されたのだろうか。単なるバッキングにとどまらず、ギター2本ならではのアンサンブルも意識したギタープレイに意欲を燃やす武井をはじめ、メンバー4人の演奏も以前に比べて、ぐっと熱度が上がってきた。
自分たちの演奏に手応えを感じた武井が思わず「よっしゃ!」と声を上げながら、「Don’ t Cry, Forest Boy」「Call Her」「RUN RUN TIKI BANG BANG」と11年にリリースした1stアルバム『Maminka』から懐かしい3曲をたたみかけ、バンドの演奏はさらに勢いづいていく。ちなみにだが、「RUN RUN TIKI BANG BANG」を、筆者は初めてライブで聴いたかも。砂川の激しいトレモロカッティングがマンドリンの音色を連想させるからなのか、あるいは山崎の前のめりのドラムがそう思わせるからなのか、カントリーパンクなんて言葉も思い浮かぶ、その「RUN RUN TIKI BANG BANG」からは、かつてライブで「日曜日よりの使者」をカバーしたこともある武井のTHE HIGH-LOWSリスペクトが窺えるような気がした。
砂川一黄(Gt)
そこから一転、「去年、アルバムを出して、そこからほとんどライブでやれてない曲があるから、全部はできないけど、(何曲か)やるんで楽しんでください」(武井)と前置きしてからの後半戦は、80'sニューウェーブなファンクサウンドの「Hello New World」から「Melody」まで、ダンサブルな7曲を4つ打ちのリズムで繋げながら、ほぼノンストップで一気に披露。体を揺らす観客の意識を陶酔の境地に誘いつつ、どんどん熱度を上げていき、ついには凄みさえ感じさせ始めたバンドの熱演に面食らった。えっと、チェコってこんなにド迫力のバンドだったっけ!?
改めて、そんなことを思わせた後半戦の聴きどころと言えば、断然、タカハシがリードボーカルを取る「Everything」だ。低音を響かせた演奏ももちろんだが、タカハシのソウルフルな歌声は、さらにパワーアップ。華奢な見た目からは、ちょっと想像しづらい豊かな声量を見せつけながら、圧倒的という言葉もふさわしい魅力で観客の気持ちを鷲掴みに!
そこから速いドラムの4つ打ちと、うねるようなべースプレイが際立つアップテンポの演奏で観客を踊らせた「テレパシー」から一転、ぐっとテンポを落とした「Firework」では、武井とタカハシが重ねるハーモニーがはらむメランコリーが観客の胸を焦がす一方で、ずんずんと鳴る山崎の4つ打ちのキックとオオナリの存在感あるベースプレイが重低音を響き渡らせ、バンドサウンドのスケールアップを印象づけた。
「いろいろ変化があって」と武井が言った、その変化の一つが、迫力のみならず、凄みを増したバンドサウンドのスケールアップだったに違いない。2時間にわたって、この日、バンドが演奏したのは、アンコールで披露した新曲を含む全20曲。タイトル未定の新曲以外は、ベスト選曲とも言えるお馴染みの曲ばかりだったのだが、それにもかかわらず、これまでと印象がかなり違って聴こえたところに大きな意味がある。
コロナ禍の中で、多くのバンドが自分たちの今後について考え、さまざまな決断を下してきたが、チェコもまた、この8か月、メンバーそれぞれに人生について考えながら、バンドが進むべき道について、一つの答えを出したようだ。
それがこの日の熱演だった。
「すごい駆け抜けた!」(武井)
「どうしよう?(ライブが)もう終わっちゃう」(タカハシ)
「砂川さんがMCって古くねって言ったんですよ(笑)」(武井)
「そんなことねえだろっ」(砂川)
MCも挟まず、後半戦を一気に駆け抜けたことに対する武井なりの照れなのか、そんなジョークを言いながら、「あと2曲ぶっとばします!」(武井)とバンドが演奏したのがアンセミックな「No Way」と「土曜日」。
『DOOR』収録の後者は、『DOOR』をリリースした時からバンドがライブで演奏することを楽しみにしていたシューゲイザー風のミッドテンポナンバーだ。武井の歌を包み込むようにメンバーたちが声を重ねるゴスペル風のコーラスが荘厳さを醸し出しながら、最後は轟音のインプロビゼーションに突入する! メンバー全員が繰り広げるカオス寸前の渾身の演奏がダメ押しで、現在のチェコがものにした凄みを印象づけながら、彼らの新たな決意がいかに大きなものだったのかを想像させた。
来年3月に東名阪でワンマンツアーを開催しようと現在、調整していることと。この日のライブが12月4日の19時から配信されることを発表したアンコールでは、前述したとおり、儚げな魅力がある新曲を披露。武井によると、2日前にデモをメンバーに送ったという。直前までセットリストには入っていなかったようだから、急遽、やることになったのだと思うが、当初アンコールに予定していた「好奇心」「ダイナソー」の2曲に加え、バンドが進み始めていることを、新曲という形でどうしても伝えたかったというバンドの思いが窺えるようだ。
この日のライブが配信されることを伝えた際、武井は「みんなが宣伝しなきゃいけない」と笑った。つまり、それだけこの日の演奏に自信があるということだ。
「心の中で一緒に1-2-3-4!」と武井が観客に声をかける。約8か月ぶりのライブを締めくくったのは、「ダイナソー」だ。アンコールの最後に演奏することが多い人気のアンセムだが、《カーニバルが始まるよ さあもう行かなくちゃ》という歌詞が予感させたのは、新たなバンドの姿を見せつけたチェコのこれからに対する大きな期待だったのだ。
取材・文=山口智男 撮影=山川哲

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