amazarashi 東京公演の余韻、ずぶ濡
れの雨の中で生きていくための言葉を
歌ってきたバンドの姿を見た

amazarashi Live Tour 2020 「ボイコット」

2021.11.17 LINE CUBE SHIBUYA ライブレポート
amazarashiの全国ホールツアー『amazarashi Live Tour 2020 「ボイコット」』が12月4日、バンド結成の地であり秋田ひろむ(Vo/Gt)の出身地・青森でファイナルを迎えた。ツアータイトルが2020なのは、本来2020年4月から始まる予定のツアーだったから。新型コロナウイルスによる感染症拡大の影響を受け2度の延期に見舞われたものの、今年9月からついにスタート、そしてこの度無事終幕したツアーの中から、本稿では11月17日の東京・LINE CUBE SHIBUYA公演をレポートする。
バンドからのメッセージは開演前から発せられていた。ステージを覆う幕に次々と映されるのは“私は、私の○○ではない。”という否定形の構文。○○の部分に入るのは“血筋”、“友達の数”、“勤める会社名”、“再生回数”、“レゾンデートル”などの様々な名詞。私の一側面を語るために便宜上設けられたカテゴリーや数字で、私という人間自体を語ることを拒絶しているということだ。そして“私は、私の私であり誰かの私ではない。”、“私は、私の私であり誰かの夢ではない。”という新たな2文をきっかけにアルバム『ボイコット』の1曲目でもある「拒否オロジー」からライブが始まった。《応答せよ、応答せよ》から始まるポエトリーとともに各楽器の音が立ち上がっていく。《檻を蹴破れ 服役囚を》というフレーズを合図に躍動するバンドサウンド。ギターやベースが全音符を掻き鳴らし、豊川真奈美(Key/Cho)が鍵盤で独立した旋律を奏でるなか、ドラムのビートや歌詞のリズムが8分の6拍子の輪郭を形作った。
《「色々あったな」では済まされない、色々の一つ一つを/あるいは、/未だに得体のしれない、心に翳り続ける憂いの数々の出生を/つまびらかにする為に 性懲りもなく/相も変わらず ここに立って呼びかける》という「拒否オロジー」のフレーズはアルバムのエンディングと繫がるものだが、ライブという場所で改めて聴くと、色々ありすぎた2020年以降に思いを馳せずにいられないし、今このステージに立つバンドの意思を歌っているようにも聞こえる。このツアーの大元にあるアルバム『ボイコット』で扱われた“拒絶”というワードは、自分を苦しめるものにNOを突きつけること――人間が人間らしく尊厳を持って生きることであり、続いて演奏された「ヒガシズム」と「境界線」は共に自分の存在意義について歌った曲だ。色々ありすぎたこの時代で、私たちがどうにか生きていくために果たすべき拒絶について、amazarashiは今歌いに来たのだろう。
セットリストの中核を担うのは『ボイコット』の収録曲だが、それ以外の曲も随所に挿入。例えば、故郷を旅立つ人の心境を描いた「帰ってこいよ」のあとには、豊川の奏でるイントロとともに雪が降った「真っ白な世界」のような青森の景色を想像させる曲、そしてシングル『境界線』リリースのタイミングで再録された初期曲「少年少女」が続いた。また、『ボイコット』の収録曲である「マスクチルドレン」はコロナ禍以前に制作された曲だが、直後に、令和2年に起きた様々な出来事に対する思いを歌ったEP『令和二年、雨天決行』に収録されている2曲(「馬鹿騒ぎはもう終わり」、「世界の解像度」)を続けることで、今に迫ったメッセージとして届けていく。
今回のツアーは公演ごとに一部演奏曲が違っていたようだが、この日は「アルカホール」などビートミュージック寄りの曲が演奏されなかったこともあり、バンドサウンドの剥き出しの質感に胸を揺さぶられる場面が多かった。そんななか、《受諾と拒絶 拒絶 拒絶 手は組めないぜ ただじゃ死なないぜ/許可されて生きる 命ではないよ ああ私の私》と歌う8曲目の「抒情死」は、冒頭の映像演出に対する解として存在。秋田がギターを掻き鳴らすと、サポートメンバーもギターを掻き鳴らし……という様子が紗幕に映るシルエットから伝わってきた。そして、その熱量のままに突入した「マスクチルドレン」はこの日のハイライトといえる場面だったろう。バンドによる硬質なキメと秋田のポエトリーが鮮やかな対比を描き、最終的には合流してクライマックスを描く「独白」の熱演。秋田の歩んできた人生、そして歌に対する決意を言葉にした「ライフイズビューティフル」。紗幕に鍵盤のイラストが大きく映る演出(豊川の弾くメロディ通りに鍵盤が沈むという芸の細かさ)が印象的だった「そういう人になりたいぜ」を終えた頃にはライブはもう終盤。ラスト2曲を前にしてのMCでは、秋田が「ツアーも後半で、もうそろそろ終わりで、今はホッとしています。各地でたくさん観に来てくれてどうもありがとうございました」と心境を言葉にした。また、「amazarashiも10年続くといろいろなお客さんがいると思うんです」と前置きしたうえで、「でも、わいたちは続けていて。“ああ、amazarashiまだやっているんだな”と思ってもらえたときにまた再会できればと思っています。いつでも待ってますので」とも語っていたので、今回のツアーに来られなかった人にも伝わればと思う。
その後演奏された「未来になれなかったあの夜に」でフィナーレと思われたが、最後の音が鳴ると同時に場内が明転。「私は拒絶する。自分を傷つけようとする自分自身を! 私は拒絶する、誰かに許可されて生きる未来を!」といった叫びをきっかけに秋田が言葉を次々と溢れさせ、「別れの歌です。あなたの行き先に、光を」と「夕立旅立ち」へ繋げた。カントリー系のサウンドに車窓からの景色を映した映像。電車の外では雨が降っているが、その温かいバンドサウンドが“行く先に光”と伝えてくれているようだ。そんなエンディングとともに思い出させられたのは、amazarashiは、コロナ禍だろうと何だろうと、ずぶ濡れの雨の中で生きていくための言葉を歌ってきた人たちだったということ。終演後の余韻は希望と呼ぶにふさわしいものだった。
取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=Victor Nomoto - Metacraft

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