【観劇レビュー】『劇団四季のアンド
リュー・ロイド=ウェバー コンサー
ト~アンマスクド~』はやっぱり凄い
らしい

2021年12月10日(金)、東京公演の幕を開けた『劇団四季のアンドリュー・ロイド=ウェバー コンサート~アンマスクド~』。本公演はミュージカル界の巨匠、作曲家のアンドリュー・ロイド=ウェバーが手掛けたさまざまな楽曲を、10人の俳優のパフォーマンスと生バンド演奏、そして作曲家本人の解説映像を交えて構成するショーコンサート。劇団四季としては初の試みとなる。

劇団四季ALWコンサート【撮影:阿部章仁】

第1幕のオープニングは『ジーザス・クライスト=スーパースター』からの「序曲」。劇場全体にギュインギュイン響く音に身を任せていると、これまで四季が『ジーザス~』の舞台で具現化した写実的なエルサレムの荒野や、和の世界を抽象的に現した白い大八車まではっきり脳裏に浮かんでくる。
本コンサートの大きな特徴は3つ、まずはそこから見ていきたい。
1.作曲家、アンドリュー・ロイド=ウェバー本人によるお茶目な解説

劇団四季ALWコンサート
開幕前の観客への注意事項から始まり、パートごとにさまざまシチュエーションで登場するロイド=ウェバー先生。時にピアノを弾き、時に元妻のサラ・ブライトマンの名を笑顔で口にしながら、自作の楽曲やミュージカル製作時の“秘話”を次々に披露する。実際にその映像を目の当たりにするまでは教科書的なレクチャーだと思っていたのだが、まさかのブラック(?)トークも満載で目が離せない。

劇団四季ALWコンサート
ある超有名作品の作曲オファーを受けていたものの、発注側と方向性が合わず話は頓挫。その時に作曲したナンバーが、後になって“忘れられた大女優”を主軸にした別のミュージカルに使用されたとか、劇団四季の人気レパートリー作品『エビータ』の製作に当初はまったく乗り気でなかったのが、サヴォイホテルのバーでハロルド・プリンスに背中を押されたとか、プレビューから初日まで1度も手を加えなかった作品は『オペラ座の怪人』だけだとか、ミュージカルファンには聞き逃せないエピソードばかり。
『レ・ミゼラブル』でもメガホンを取ったトム・フーパー監督作『キャッツ』映画版については皮肉たっぷりなコメントを寄せ、既報の通り、71歳にして猫ファンから犬好きに転向したと飼い犬・モヒートまでしっかり紹介するチャーミングぶりだ。
2.劇団四季で未上演作品のナンバーも披露

劇団四季ALWコンサート【撮影:阿部章仁】
これまで『ソング&ダンス』等でも『スターライト・エクスプレス』や『ヨセフと不思議なテクニカラー・ドリームコート』といった劇団未上演作の楽曲は使用されてきたが、本コンサートでは別のカンパニーで公演がおこなわれたミュージカル『Tell Me on a Sunday~サヨナラは日曜日に~』、『ラブ・ネバー・ダイ』などからも聴きごたえのあるナンバーが登場。
中でも『サンセット大通り』からの楽曲は、かつて四季に在籍し、40歳を前に病気でこの世を去った志村幸美のノーマで上演することをロイド=ウェバー自身が望んでいたこともあり、ひときわ強い存在感を放っていた。

3.とことん「歌」に特化したステージ
劇団四季ALWコンサート【撮影:阿部章仁】
劇団創立35周年時に上演された『35 STEPS』から2021年『劇団四季 The Bridge ~歌の架け橋~』まで、歌に加えて華やかなダンスも見どころであったショー形式の舞台を本コンサートでは一新。一部ダンスはあるものの(振付=加藤久美子)、基本的には「歌」を全面に押し出した構成となっている(俳優によるMCや語りもない)。
これら3つの大きな特徴の基に紡がれていく『劇団四季のアンドリュー・ロイド=ウェバー コンサート~アンマスクド~』。その舞台上でエモーショナルな歌声を響かせるのは男女5名ずつ、10人の俳優だ。

劇団四季ALWコンサート
自身がそれまで演じてきた役のナンバーを歌う俳優もいれば、初めてその作品に身を投じるプレイヤーもいて、楽曲の表現方法はさまざま。特に強く印象に残ったのは『オペラ座の怪人』タイトルナンバーと「ミュージック・オブ・ザ・ナイト」他を歌った飯田洋輔、『サンセット大通り』から野心溢れるジョーのナンバー「サンセット・ブールバード」を担った飯田達郎、新作『シンデレラ』から躍動感たっぷりな「バッド・シンデレラ」を魅せた平田愛咲のパフォーマンス。
もちろん、他のキャストも大統領夫人や革命家、年老いた娼婦猫、忘れられた大女優、神と人とのはざまで悩む男……と、さまざまなキャラクターを宿してドラマを構築していた。
劇団四季ALWコンサート
今回、客席で次々と紡がれるロイド=ウェバーの楽曲に身を浸していると、ふと、かつてその役を演じた俳優たちの顔が浮かぶ瞬間があった。それはきっと、劇団四季と偉大な作曲家との長きにわたるパートナーシップがすべての“音”に宿っているからだろう。ブロードウェイでの初演の2年後、1973年に四季はすでに『ジーザス・クライスト=スーパースター』を上演していたのだから。
劇団四季ALWコンサート
作曲家本人によるサプライズ満載の解説の妙と、オーディションを勝ち抜いた10人の俳優が作品世界を体現する『劇団四季のアンドリュー・ロイド=ウェバー コンサート~アンマスクド~』。このゴージャスなコラボレーションに酔いしれ、作品を巡る旅を愉しんでほしい。
取材・文=上村由紀子(演劇ライター)

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