黒木岩寿(コントラバス)インタビュ
ー「音楽を理解することは読書に似て
いる」~ラ・ストラヴァガンツァ東京
、新春の演奏会をきく

コントラバス奏者の黒木岩寿とヴァイオリニストの松野弘明がリーダーを務める「ラ・ストラヴァガンツァ東京」が、日本コロムビア主催のコンサートシリーズ『7STARS』に出演する。全8回シリーズの最後を締めくくる公演は2022年1月16日(日)に、東京・浜離宮朝日ホールでの開催が決定。黒木に聴きどころなどを聞いた。
――ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲集 Op.4「ラ・ストラヴァガンツァ」から命名したアンサンブルは2008年に創設されたと聞きました。新年最初のコンサートはどのようなプログラムを考えていらっしゃいますか。
バロック音楽を現代曲のように聴いてもらえたらと思い結成しました。メンバーはソリストとしてステージに立つ実力派ばかりで、リュートが入っていることも大きな特徴です。新春のコンサートはバロック音楽が好きな人は、「そう来たか」とうなるような。親しみがない人も最後まで楽しめるような曲を選んでいます。
――公演を楽しみにしている人のために、少しだけプログラムについて触れていただけますか。
はい。ヴィヴァルディの協奏曲「《ラ・ストラヴァガンツァ》(12 のヴァイオリン協奏曲 Op.4)より 第 3 番 ト長調 RV301」では、松野弘明さんがソロを務めます。松野さんは、横溝耕一さん、猶井悠樹さん、佐々木歩さんとヴァイオリン4人だけでテレマンの「4つのヴァイオリンのための協奏曲 ト長調 TWV 40:201」も演奏されます。これはあまり日本では演奏されることがない曲なので、その時点で驚きがあると思っています。
リュート奏者の佐藤亜紀子さん、チェロの植木昭雄さん、チェンバロの山田武彦さんらが登場する「リュート協奏曲 ニ長調 RV93」、「チェロ協奏曲 ニ短調 RV407」もバロックの演奏会以外では、聴く機会が少ない曲。2名のヴァイオリンも加わるのですが、ヴァイオリンの響きの良さを再認識させてもらいました。序盤は編成の妙義を楽しんでいただけたらと思います。
――リュートの魅力はどんなところにあると感じていらっしゃいますか。
温泉に入っているような癒しを感じるところですね。1音でギリシャ・ローマ時代に戻ってしまう魅力があります。いつかアクロポリス(ギリシャ)の丘で演奏会をしたいですね。
――後半はいよいよ黒木さんがステージに上がられますね。
はい。松野さんと一緒に「パッサカリア」を演奏します。ヘンデルの曲ですが、下半身はバロック、上半身は現代曲風にアレンジをしています。難しい曲なので、いま一生懸命練習をしているところです。コンサートは1月16日なので、お正月にはあまりお酒を飲み過ぎないようにしなくてはと思っています(笑)。
――国内外で豊かな経験をお持ちの黒木さんですが、「ラ・ストラヴァガンツァ東京」での活動はどのようなものですか。
300年前に生まれたバロック音楽を、現代曲を演奏するときのようなアプローチで表現したいと思ったのが始まりでした。僕にとっては「挑戦」だと感じています。クラシックって敷居が高いとか、奏者に対しても真面目なイメージをお持ちの方が多いと思うんです。でも僕はクラシックだけを聴くわけではなくて、ヒップホップやジャズなどいろいろなジャンルの音楽が大好きなんです。だからいろいろなエッセンスを持っている僕だからこそできる、ジャンルを超えた表現を追求していきたいと思っています。
――いろいろな表現を体感されているからこそたどり着ける場所というのでしょうか。
そうですね。歳を重ねたからこそ見えてきた世界はあると思っています。昔は練習をして乗り越えることができた部分が肉体的に厳しくなってきていて。でもだからこそ俯瞰して見えるようになってきたことも……、できているとはまだ言えないです。なっている途中。いつでも成長途中です。
――ヴィヴァルディは、新しい表現をどんな風に感じているでしょうね。
天国から僕らの演奏を見て「あいつら面白そうなことをしているな。盛り上がってるな」と思ってくれたらいいなと思っています。ヴィヴァルディは「四季」の中にソネット(詩)を残していたり、言葉を音楽にできる人なので、僕らも想像力を働かせて景色を描いていきたいです。
――想像力を働かせるためになさっていることはありますか?
僕は「新古今和歌集」や「万葉集」もとても好きなのですが、その世界を理解するために描かれた場所を訪れたりしてみて、藤原定家が考えていたことに思いをはせてみたりするんです。藤原定家は最も少ない言葉で表現をした人と思っているのですが、それが現代だと三島由紀夫や川端康成になる。
――黒木さんは過去のインタビューで日本語の美しさについて谷崎潤一郎の「細雪」や川端康成の「細雪」を挙げられていたことがありましたね。
はい。音楽を理解することは読書をすることに似ていると僕は感じています。物語をただ読むのではなくて、理解をしながら読む。余計な言葉を削ぎ、感情をとらえているのが三島や谷崎たち。そして「失恋した」とか「風が吹いた」ということを音楽で表現したのがヴィヴァルディなんです。
――なるほど。
だから年齢を重ねたからこそできる譜面の読み方があると感じています。描かれている音符をどんな風に消化して表現していくのか。僕たち奏者それぞれの人生経験にも繋がっていますよね。感覚を研ぎ澄ませていたいです。
――新春にすごいステージを体験できそうですね。
新しい年をみなさんと一緒にお祝いできたらと思っています。ごきげんな曲、感動する場面。いろいろな要素を盛り込んでいるので、期待していてください!
取材・文=西村綾乃 撮影=池上夢貢

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