Have a Nice Day! 70分ノンストップ
セットというアプローチで浮き彫りに
なったハバナイの特性

Have a Nice Day! 「70min DANCE FLOOR MIX LIVE SET」

2021.12.08 渋谷WWW
2021年は5月にリリースしたニューアルバム『DYSTOPIA ROMANCE 2021』のリリースツアーや単発のライブ、『ボロフェスタ』への出演など、徐々に生で音楽を届ける現場へカムバックした印象のHave a Nice Day!(以下、ハバナイ)。個人的には、昨年10月に開催された現Spotify O-EASTでの動員300名という、モッシュピットからは最も遠く、だからこそファンのエモーションがテンプレではない形で表出したライブを目撃できた。その後、リリースツアーなどを経て、今回はライブタイトル『70min DANCE FLOOR MIX LIVE SET』の通り、70分ノンストップのDJミックスの如きアティチュード。浅見北斗(Vo)の煽りや、発声できなくてもそこに心でリアクションしたい向きには普段と違う体験になったと思う。ノンストップミックスライブという、ひたすら踊り続けることがカタルシスになり得るスタイルは、未だモッシュもシンガロングもできない規制のある状況の中、浅見が試行錯誤した、一つの快楽原則への答えだったのではないだろうか。ちなみに浅見はツイッターで、ドラムンベースやエレクトロニックなヒップホップなど、DJ/ダンスアクト全盛期の90年代のダンスミュージックをガンガンに聴き込んでいることを示唆。そんな側面も今回のDJミックススタイルと無縁ではないんじゃないだろうか。
今回のWWWはフルキャパはまだ不可能とはいえ、コアファンが結集しソールドアウト。入場の際に念入りに発声禁止が呼びかけられていた。入場すると、前方の比較的自由に踊れるスペースに陣取ったファンの熱気は、自分のスペースに荷物を置けた去年とは明らかにムードが違う。筆者は後方で観ていたが、そこでもノンストップで踊り続けるファンがいた。しかも自己と向き合うようなダンスで。
オープナーの「ファウスト」こそじっくり1曲を聴かせるモードで、《本当は世界平和なんてどうでもよくて/全てを支配してめちゃくちゃにしたいだけ》という、踊り、ジャンプする理由めいたこの歌詞がフロアを解放する。DJアクト的なライブを意識してか、ステージ上は最低限のライティングでCGを駆使したエクスペリメンタルなVJがドラッギーだ。打ち込みのベースラインがファンキーな「TOO LONG VACATON」に続き、おなじみニュー・オーダーの「Blue Monday」のキックに湧く「Riot Girl」で一段とジャンプも高くなる。ドラムがGOTOになってから1年強、生ドラムと打ち込み双方でビルドしてサビでグッとブチ上がる正確無比なこの人のドラミングの確かさは、確実にハバナイのエンジンになった感。恍惚感に浸るサビと万華鏡チックなVJは、ノンアルでもかなり意識を飛ばされる。ほとんどMCなしでひたすら演奏を連投するスタイルもサウンドへの没入感を深めるし、なんと言ってもWWWのダンスミュージックならではのローを轟かせるスピーカーシステムが最高だ。そのことをインストの「BRIGHT HORSE」でさらに実感した。
あらゆる時期のレパートリーを今のサウンドデザインに再構築し、そもそも踊れる楽曲ばかりだが、よりハウス/テクノ色を濃く、低音を強めに出していることで、切なく淡々とした印象の新曲「F/A/C/E/」も、その場にいる一人ひとりの孤独をステップの集合体として成立。続いて、コロナ禍の孤独を蹴り飛ばすように「LOCK DOWN」を投下してみせる。ギターの中村むつおの歌メロの裏を行くイマジネーション豊かなフレーズは、さらに必要最低限に研ぎ澄まされていた。
ダンスミックス的ではありつつ、いや、だからこそ歌詞の切実さで繋がる「わたしを離さないで」で挙がる手とサビのジャンプには、声に出せない、マスクの下の口パクのシンガロングと涙がバイブスとして伝わる。さらに新作からの「ビューティフルライフ」の歌い出し《朝、目覚めると涙で頬は濡れていた/どんな夢を見ていたのか》という歌詞。「わたしを離さないで」と時期は違うのに違和感なく繋がるこの感覚の正体はなんだろう? 世界の欺瞞はコロナ禍のもっと前からあったからだろう。泣きながら踊れる秀逸な歌詞世界に引き続き、「ミッドナイトタイムライン」で聴き入る。触れると気持ちが荒むけれど、SOSを発するようにネットの海にダイブしてしまう――前向きでも後ろ向きでもなく、このディストピアで生きているという感覚をこんなに照射してくれる音楽はなかなかない。ステージからフロアに向けた強烈なライトも見事な演出だ。BPMがグッと上がった「NEW WORLD ORDER」は、遊佐春菜(Key)のシンセリフが曲の輝度を上げていく。そういえば浅見は派手なアクションをせず(なんといっても70分ノンストップで歌うのだから)、グリーンのレーザーライトの下を通るたびに身体が部分的に光るのがクールだ。ステージもフロアも並列な関係。それも90年代のDJセット的だ。
4分キックとハイハットに鼓舞される「BLUE MIRROR BALL」。シンセストリングスのリフも切なく美しく、前進するパワーが加速する「Fallin Down」に繋ぎ、もはやダンスは止まらない。しかも一様にジャンプするだけじゃない、誰もが自由に揺れている。トラックは止まらないまま、浅見がラスト1曲を前にフロアを見て、「素晴らしいね。今日は70分セットだったんですけど、来年は3時間ぐらいのセットでやろうと思ってます」と、どうやらこのモッシュじゃなく踊ることで汗だくになるライブをしばらく続けたい様子だ。そして身体が砕け散るほど踊った地平で出会えると歌う、至上の愛の物語「LOVE SUPREME」。自分をさらけ出すことで、誰もが認められ、ここにいていいと思える空間――この感覚はやはりハバナイのライブならではだ。
わざわざ捌けてアンコールを受けるのもダサい、かつ同期なしで演奏できるのが「マーベラス」一択という理由で、同曲で締めくくったこの夜。浅見には3時間、しかもオールナイトでのライブの野望があるという。実現したらともに夜を超えたオーディエンスは覚醒するだろう、自分の可能性に。そんな日を待望しながら、年明け早々にも新規のライブが決まっているので、何か体験的なライブを探している人には強力に推したい。
取材・文=石角友香 撮影=katsunori abe

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