「ライヴハウスで会いましょう」と笑顔になる5曲

「ライヴハウスで会いましょう」と笑顔になる5曲

「ライヴハウスで会いましょう」と
笑顔になる5曲

変異株の気配に怯えながらも、懐かしい喧騒がようやく戻ってきた高揚を抑えきれない今日この頃。他人の汗、自分以外の声、アルコールの混じった息、隙間を縫ったり押し合いへし合いの末に近づくコの字型パイプの境界とステージ。どんなビッグネームも「今日、お客さんより総出演者数のほうが多いっすね」という苦笑いや溜息、そっぽを向いた無視の壁を音楽で打ち砕き、あるいは溶かし、もしくは少しずつ削り取って、踊り場で地団駄を踏み続け、やがていつの間にか眩い舞台を駆け上がっていった。その美しさと泥臭さを忘れないように、忘れさせないでくれと祈りながら、「ライヴハウスで会いましょう」と手を振る日常に指先を伸ばす5曲を今からかけます。ライヴハウスで会いましょう!
「空洞です」収録アルバム『空洞です』/ゆらゆら帝国
「GIRL FRIEND」収録アルバム『LAST HEAVEN’S BOOTLEG』/THEE MICHELLE GUN ELEPHANT
「恋文」収録アルバム『恋する惑星』/カネコアヤノ
「NO MAN BREAK」収録アルバム『TIME ACID NO CRY AIR』/dip
「メタモル」収録アルバム『空中のチョコレート工場』/割礼

「空洞です」(’07)/ゆらゆら帝国

「空洞です」収録アルバム『空洞です』/ゆらゆら帝国

「空洞です」収録アルバム『空洞です』/ゆらゆら帝国

この世で最も美しかった3ピースバンドの幕引きを飾ることになってしまったアルバムのタイトル曲は、園子温監督の映画『愛のむきだし』の主題歌やCMソングとしても起用されたが、普遍的なラブソングの靴を履いて、虚無感と神の視点の交点がシンプルに綴られる押韻の心地よさが踊る歌詞は、“個”のさざめきや毛羽立ちが失われてさらりとした質感で何処にでもすうっと馴染むスウィートなダンスミュージックは、それでいて「あの3人の演奏でなければ、ライヴでなければ」という途方もない寂しさを際限なく呼び覚ます。原曲のサックスパートを静謐かつムーディーなベースラインで表現していた亀川千代(Ba)、節目がちに淡々とふたりの足元を描いた柴田一郎(Dr)、彼らと楽曲で持って対話し続けた坂本慎太郎(Vo&Gu)の甘美で冷めた歌声。紛れもないロック、ロックバンドの理想、理想のまま結晶した3人。

「GIRL FRIEND」(’03)
/THEE MICHELLE GUN ELEPHANT

「GIRL FRIEND」収録アルバム『LAST HEAVEN’S BOOTLEG』/THEE MICHELLE GUN ELEPHANT

「GIRL FRIEND」収録アルバム『LAST HEAVEN’S BOOTLEG』/THEE MICHELLE GUN ELEPHANT

お察しの通り、ここまでは12月30日と31日に池袋の名画座で開催される『boidsound映画祭 in 新文芸坐 Vol. 2』の上映作品特集である。今も語り継がれ、そしてようやく真実が明らかになった『ミュージックステーション』のt.A.T.u事件と、同時になおのこと純度と光度を増すTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTの伝説。あの時に演奏された2曲もさることながら、時代のせいかチバユウスケ(Vo&Gu)のストレートな怒りと希望が書き殴り、咆哮する「GIRL FRIEND」ばかり聴いてしまう。心音をイメージさせるクハラカズユキ(Dr)のドラムに重なるピアノの単音はあらゆる事象の終わりと始まりを象徴しているかのようで、伸びる影のように寄り添うウエノコウジ(Ba)のシンプルな“泣き”のベースが素晴らしい。

「恋文」(’15)/カネコアヤノ

「恋文」収録アルバム『恋する惑星』/カネコアヤノ

「恋文」収録アルバム『恋する惑星』/カネコアヤノ

映画と音楽の祭典『MOOSIC LAB 2014』の『恋文X』でベストミュージシャン賞を受賞した時は、まさか日本武道館でワンマンライヴを開催するほどのアーティストに成長するとは思わなかった。『恋文X』の劇中でギターを弾き語り、上映後の舞台挨拶に登壇したカネコアヤノは子供と大人の狭間を行き交う若さをはらみ、素朴な愛らしい存在であり続けることを許される存在であった。鉄壁の“カネコアヤノバンド”を率いて、シティポップの潮流をすいすい泳ぐファンクネスを内包しながら、“心の中の日記”をマスクの中で読み上げるような秘めやかさと、万人が頬を赤らめながらも共感に頷いてしまうポップミュージックで、激流に喘ぐ音楽業界を生き抜いてしまうとは。カネコアヤノは何処までもいけるだろう、いってしまうだろう。手のひらに収まる強さと柔らかさをリスナーに与えながら。

「NO MAN BREAK」(’97)/dip

「NO MAN BREAK」収録アルバム『TIME ACID NO CRY AIR』/dip

「NO MAN BREAK」収録アルバム『TIME ACID NO CRY AIR』/dip

7月25日、大切な友人だと思っていた人物に「君、(dipの)5ちゃんに書いてるだろ?」と濡れ衣を着せられた現場で流れていた楽曲であり、イントロの一音だけで心臓を力ませに引きちぎられるような痛苦と共にトラウマがフラッシュバックするためまったく聴けないでいたのだが、11月27日、下北沢CLUB Queで行なわれたdipのワンマンライヴで目の当たりにした生演奏で傷口ごと抉り取られ、ライヴハウスの数多ある眩い思い出のひとつに変わり果ててしまった。ひとりのミュージシャンとして各々活動していた3人の“dipとしての”音の筋肉と骨がバキバキと覚醒し、血と息の通う3人のdipの音楽の鉱脈が再生までを、瞬きや呼吸音が惜しくなるほどの緊迫感の最中、縦に躍動させるラフな肌触りと言葉遊びと反して、ヤマジカズヒデ(Vo&Gu)の緻密なギターワークに肉食獣のごとく食らいつくナガタヤスシ(Ba)、ナカニシノリユキ(Dr)の平熱以下の温度感を幻視させながらも命がけでじゃれ合うひと幕、あの多幸感はあの場でしか味わえなかった。

「メタモル」(’00)/割礼

「メタモル」収録アルバム『空中のチョコレート工場』/割礼

「メタモル」収録アルバム『空中のチョコレート工場』/割礼

前回も割礼を取り上げた。前回もアルバム『空中のチョコレート工場』の再発について触れた。そして、今回も「ここに試聴リンク貼っとくんで頼むから聴いてください!」と土下座せざるを得ない。なぜなら12月5日の単独公演で“こんなバンド他には絶対いない”という手垢にまみれた美辞麗句すら追いつかないほどの“速さという遅さ”にまたしても撃ち抜かれてしまったから。狂気とエロティシズムがどろりとあふれ出す歌詞の耽美さ、揺りかごにもリズムにも似たタンバリンの裏打ちが追熟させる酩酊感。しかし、耳から瞼の裏側に映し出される音像は、真夏の明け方のごとくさわやかで風通しがいい。当日は三日月に腰かけるような姿勢でゲスト参加したインドバイオリンの金子ユキの笹舟を想起させる音色が加わったのだから、こうしてキーボードを叩いてしまうのも無理はない。上に編集さんとエンジニアさんが試聴リンク貼ってくれたので、頼むから聴いてください!

TEXT:町田ノイズ

町田ノイズ プロフィール:VV magazine、ねとらぼ、M-ON!MUSIC、T-SITE等に寄稿し、東高円寺U.F.O.CLUB、新宿LOFT、下北沢THREE等に通い、末廣亭の桟敷席でおにぎりを頬張り、ホラー漫画と「パタリロ!」を読む。サイケデリックロック、ノーウェーブが好き。

OKMusic編集部

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