[Alexandros]川上洋平、孤高の音声分
析官が航空事故の真相を暴く体感型サ
スペンススリラー『ブラックボックス
:音声分析捜査』について語る【映画
連載:ポップコーン、バター多めで 
PART2】

大の映画好きとして知られる[Alexandros]のボーカル&ギター川上洋平の映画連載「ポップコーン、バター多めで PART2」。今回は、『イヴ・サンローラン』の主演でセザール賞を受賞したピエール・ニネが孤高の音声分析官として航空事故の真相を暴く体感型サスペンススリラー『ブラックボックス:音声分析捜査』について語ります。
『ブラックボックス:音声分析捜査』
――先月は『パーフェクト・ケア』を取り上げましたが、川上さんが「今年1かも」というだけに反響がたくさん来てます。 ※前回の連載はこちらから
おお、嬉しいですね。
――12月12日の20時39分にspice_info@eplus.co.jpに送っていただいた読者の方からのメッセージの一部を紹介すると、「何ひとつ共感できない主人公でした!(笑)。ヒール役が主人公だとそこに至るまでのバックボーンが盛り込まれがちですが、それがほぼ描かれてなくてここまで憎たらしいヒロインもおもしろいし、親思いのマフィアの方を応援してしまいました」と。
そうなんですよね! 『ゴーン・ガール』もそうですけど、実にロザムンド・パイクらしい役で。ヤバい女だなっていうか(笑)。病んでる系のヤバさじゃなくて、カラッとしてる。はっきりとした目的のための悪事であって、合理的だしスカッとしますよね。でも恋愛もしていて。やっぱりすごくおもしろい映画でしたね。今年は今のところ『RUN』と『パーフェクト・ケア』かな。
――2月22日公開のこの連載で発表する予定のカワカミー賞も楽しみにしてます!
ありがとうございます(笑)。
――そして、今回の『ブラックボックス:音声分析捜査』はどうでした?
俺は好きでしたね。フランス映画っていうこともあって、割とお洒落で淡々とした雰囲気がありつつも、結構わかりやすいサスペンスで「ああ、こういう映画もあるんだ」っていう好印象でした。ピエール・ニネさんっていう、『イヴ・サンローラン』でイヴ・サン=ローランを演じたフランス人の俳優さんが主演で。
――このヤン・ゴズラン監督の2015年の映画『パーフェクトマン 完全犯罪』もピエール・ニネ主演で、監督は「ピエールは非常に緻密な演技をする役者で、テイクごとに異なる色合いや細かいニュアンスを出してくれる。『ブラックボックス』の脚本を書き始めた時から主演のマチュー役はピエールしか考えられなかった」と話しています。
あ、『パーフェクトマン』もこの前観ました! それもめっちゃおもしろかったです。そっちはピエール・ニネが作家志望の役で、孤独死した老人の日記を読んで、その内容を盗作した本がヒットするっていう。それで、早く新作を書いてほしいって出版社から急かされるんだけど、自分で書いた小説は全然おもしろくなくて、どんどん追い込まれていく、みたいな話なんですけど。自分を偽って成功していく系の映画って、俺観てるとすごく苦しくなってくるんですよね。「いつバレるんだろう」っていう緊張感をすごく感じます。
『ブラックボックス』は、ピエール・ニネが演じるマチューは航空事故調査局の音声分析官で、ヨーロピアン航空の最新型機の墜落事故の原因を、ブラックボックスっていう操縦室の音声が記録されている装置を分析して解明しようとするんですけど。最初はずっと音の波形が映った画面と対峙するワンシチュエーション系のサスペンス映画かと思ったんです。僕はどんどん舞台が変わる映画より、ひとつの場所で展開が繰り広げられるワンシチューエーション映画が好きだったりするんですけど。でも、意外といろんな場所に移動するんだなっていうところでまず裏切られました。
『ブラックボックス:音声分析捜査』より
■音声分析官はミュージシャンの仕事に通じるところがある
音がポイントになっていて。そういう映画っていうと、『私は確信する』っていう電話記録の音声を元に捜査の穴を見つけて真実を解き明かそうとする裁判映画のことを思い出しましたね。あと、電話の音と声だけで誘拐事件を解決しようとする『THE GUILTY/ギルティ』もオリジナル版もリメイク版もめちゃくちゃ好きです。
マチューが音の波形が映っている画面を見ながら、「ここにノイズが入っているから不自然だ」っていう風に事故の原因を解明していく。正直、ミュージシャンの仕事に通じるところがあるなって思ったんですよね。マチューは特殊能力のような鋭い聴覚を持っているが故に、自分にしか聞こえない何かを追い求めてる感じがあって、上司にも「幻聴が聞こえてるんじゃないか」と疑われたりしていて。僕もレコーディングで「ここに聞こえない何かがあるんだよね」みたいなことをメンバーに言って、「え、何も聞こえないけど」って言われたりするから(笑)。ある種病的に「でも俺には聞こえるんだ!」ってことを証明しようとするのが良いなと。あと、同じような画面を見ているけど、やることも目的も全然違ってなんかおもしろいなとも思いました。
『ブラックボックス:音声分析捜査』より
■マチューは主人公として結構不思議なキャラクター
だからマチューは主人公としては結構不思議なキャラクターで。とにかくブラックボックスの音を元にどんどん真実を暴こうとするんですけど、300人の命が失われた事故の真実を解明するという音声分析官としての大義名分ももちろんあるんだけど、それよりも自分の音を聞く能力の正しさを証明する方が勝ってる感じが垣間見えるのがとても狂信的で良かった。周りからはどんどん「おまえおかしいよ」みたいな目で見られていくんだけど、自分の耳を信じて突き進む感じは『X-ファイル』のモルダーを思い出しました(笑)。ミュージシャンもそうだけど、音に対してすごく敏感な人って、映画の中でも変な人として描かれてることも多いですよね。『アマデウス』のモーツァルトとか。偏執狂な部分が際立ってるというか。
『ブラックボックス:音声分析捜査』より
■途中からホラー映画の様相を呈していく
マチューの奥さんは新型航空機の認証機関に勤めていて、セキュリティ関係の友人もいてっていう、それぞれの職種をしっかり頭に入れて観た方がわかりやすいですよね。マチューはどんどん奥さんも友達も信用できなくなって追い込まれていく。ミステリー映画ですけど、途中からホラー映画の様相を呈していくところもあって。マチューひとり職場でヘッドフォンして音がなくなったりする瞬間とか、何も信じられなくなる瞬間とか、地下室に行くシーンとか、かなり緊張感がありました。あと湖に入っていくシーンは、『リング』で松嶋菜々子さんが井戸に入っていく時と似たような恐怖を感じました。死体が浮かびあがってくるんじゃないかって思った(笑)。
『ブラックボックス:音声分析捜査』より
■昔超音波を扱う会社に勤めていたのでより楽しめた
僕は昔超音波を扱う会社に勤めていたんですけど、その仕事の中で何ヘルツとかの波形の話題が出てきてたので、それもあってより楽しめました。「今までは実際人間の耳には聞こえない超音波を扱う仕事だったけど、これからは聞こえる音波を扱います」みたいな感じで音楽活動に専念するために会社を辞めたというか(笑)。それはめちゃくちゃ余談ですけど。
それと、僕の中でフランス人って寿司が好きなイメージがあるので、映画観ながら「絶対寿司食うんだろうな」って思ってたらやっぱり食ってましたね(笑)。「まつだに行かない?」みたいなセリフがありましたけど、調べたらパリにその店ありました。ちなみに僕が幼少期に家族でパリに行った時はふじたって店に行きましたね。まあこれも余談ですけど(笑)。
『ブラックボックス:音声分析捜査』より
■やっぱり人に命を預けたい
――航空機における技術革新、AIへの依存っていうこともひとつのキーワードになっています。
車は自分でハンドル握って運転する方が楽しいし好きだから、自動操縦機能は使ってないんですよね。便利だとは思うけど、機械に頼りすぎるのもなって。『ブラックボックス』の中でも、「パイロットがいらなくなる時代が来る」っていうセリフがありましたけど、「嫌なこと言うな」って思いました。
昔飛行機に乗った時に、もう到着する滑走路が見えて降下してる状態から、また機体が浮上したことがあったんです。急に聞いたことのないキュイーン‼って音がして急浮上して。あれは怖かったですね。悪天候のためだったんですけど、その後しばらく旋回してちゃんと着陸できたので、その時はパイロットの方に対して「命を救ってくれてありがとうございました」っていう気持ちでいっぱいになりました。だから俺はやっぱり最後の最後では人に命を預けたいなと思いますね。
取材・文=小松香里
※本連載や取り上げている作品についての感想等を是非spice_info@eplus.co.jp へお送りください。川上洋平さん共々お待ちしています!

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