ヤユヨ、初の全国ワンマンツアーを完
走、日常に寄り添う音楽を鳴らし続け
「生きてる心地」を実感

ヤユヨの秋冬ワンマンツアー2021~君が唯一私のなんとやらで編〜』2021.12.17(FRI)東京・TSUTAYA O-WEST
いまヤユヨはロックバンドの階段を着実に一段一段のぼり続けている。平均年齢21歳。今年大学卒業を控えるメンバーで構成された4人組バンドが、全国9ヵ所をまわったワンマンツアー『ヤユヨの秋冬ワンマンツアー2021~君が唯一私のなんとやらで編〜』だ。春に東名阪ツアーに成功させたばかりのヤユヨにとって、名古屋、金沢、広島、福岡、高松、仙台、大阪、東京と、全国を細かくまわるツアーは今回が初めて。しかも、ツアーファイナルになった東京・TSUTAYA O-WESTはバンド最大キャパになる。そのステージでリコ(Vo.Gt)は「全国ツアーは初めてだったんですけど、無事に完走できてよかったです。今日あなたたちに会えることが私たちの何よりもうれしい出来事です」とよろこびを伝えた。結成から3年弱。急成長を遂げるバンドの「今」がステージには詰まっていた。
ヤユヨ
初恋の嵐「Untitled」をSEに、ぺっぺ(Gt)、すーちゃん(Dr)に加えて、今回のツアーでは学業に専念するためにお休みしているはな(Ba)に代わり、サポートベースを務めるのんが登場したあと、最後にリコがステージに現れた。ゆるくウェーブのかかったロングヘア。細身のシャツにブーツカットパンツという70年代のソウル/ブルースシンガーを思わせるヒッピー風のスタイルは、そこに直接のルーツがあると言うよりも、そこから影響をJ-POPに昇華させるSuperflyGLIM SPANKYといったアーティストからのインスパイアも大きい気がする。「大阪から来ましたヤユヨです!」。リコの第一声ではじまったのは「いい日になりそう」。晴れやかでポップなメロディの奥にオールディーズの匂いをまとった、どこか懐かしいバンドサウンドがO-EASTに温かく響きわたっていった。

ヤユヨ

今回のツアーの主役は6月にリリースされた2ndアルバム『THE ORDINARY LIFE』。その1曲目に置かれた「星に願いを」では、疾走感のなかに切ない感情を滲ませた楽曲に合わせて、O-EASTの壁にミラーボールがやさしく光の模様を描いた。続けて、おもちゃみたいな可愛らしいタンバリンを叩きながら歌った「ユー!」へ。コロナ禍のルールで一緒に声を出すことのできないフロアをゆったりと踊らせる。日常という物語を音に変えてゆく。ヤユヨの音楽には、そんな表現がよく似合う。海辺を爽快にドライブするようなアンサンブルの途中にぺっぺによる酩酊感ただようギターソロを挟み、恋する女の子のくすぶった感情を表現した「Yellow wave」ではハンドマイクで踊るように歌うリコ。ステージをブルーに染め、混沌を渦巻きながら熱量を高めていったバラードナンバー「一度きりの夢」はまだ音源化こそされていないが、ライブは何度も演奏されている名曲だ。

ヤユヨ
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MCでは和気あいあいとツアーを振り返った。「(大阪から車で)仙台に行けたときは、日本を征服できると思った(笑)」とぺっぺ。ヤユヨの遠征はリコのミニカーでまわる。そこにパンパンに機材を詰め込み、三角座りで12時間ほどの移動をすることもあったという。さらに今回のツアーで初めて取り入れたメンバー紹介のコーナーでは、来年やってみたいことを語り合う場面も。「バンジージャンプをしたい」というぺっぺ。リコの無茶ぶりに応えてインコのものまねで「釣り!」と叫んで笑いをとったすーちゃん。リコは「髪の毛の色を変えて、イメチェンの年にしたい」と、それぞれの個性があふれるトークで会場をなごませた。
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歪んだベースが口火を切り、あやしげな世界観を描いたのは最新アルバム『THE ORDINARY LIFE』のなかでも異色の存在感を放つ「おとぎばなし」。ブルージーな気配が色濃いバンドの代表曲「メアリーちゃん」へと、曲が進むにつれて、よりディープなヤユヨワールドへとお客さんを引き連れていく。「今日みたいなツアーをやれるから生きてゆける。大切なひとが側にいることに感謝したいです。みんなにも、隣にいるメンバーにも歌いたいと思います」というような言葉を添えた「君の隣」は中盤のハイライトだった。人肌のぬくもりを感じるバンドサウンドにぺっぺとすーちゃんによるやわらかなコーラスが重なる。少しずつ明るくなってゆく会場。<君の明日が 感じたことない幸せでありますように>と願うようにして紡がれる歌が、その場をハッピーな色で包み込んでいった。
ヤユヨ
初めての大きなステージということで緊張気味ではあったものの、お互いにアイコンタクトを重ねた瞬間には、少しほっとしたような表情を見せていたライブの終盤、「やっぱりライブはめちゃくちゃ楽しい!」と笑顔で伝えたリコ。「これからもみんなの日常に寄り添う音楽を作っていきたいです」と、この日の手応えを噛みしめるように今後への意気込みを伝えクライマックスへ。ぺっぺのギターが性急なリズムを刻むインスト曲「前夜前夜」から、アウトロでリコのハーモニカが絡み合った「さよなら前夜」。最後は観客の息の合った手拍子を巻き込みながら、陽気に別れを告げる「今度会ったら」で最高の笑顔のなかで本編を締めくくった。
ヤユヨ
アンコールはリコとぺっぺがふたりきりで再登場。「悲しい時間も前向きにっていう歌です」と紹介して、映画『スパゲティコード・ラブ』に謎のシンガーAmy役で出演したリコが歌って話題になった挿入歌「Candy」を弾き語りで披露した。ギター1本、歌ひとつという編成でありながら、どこか「バンドの音」を感じられるような聴き心地は、ヤユヨのまだ見ぬポテンシャルに触れるようなワンシーンだった。再び4人に戻ると、新曲「あばよ、」を初披露した。すーちゃんによる軽快なスネアを軸に8分の6拍子の大きなリズムを生み出していく。ヤユヨの新機軸と言える祝祭感に満ちた楽曲だ。「またいい歌を引っ提げて帰ってきますので、そのときはよろしくお願いします」。最後にリコが力強い言葉を残し、全16曲のライブは「春の街で」で終演。
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軽やかにステップを踏みながら届けたその歌には、〈私、今日も生きていく なんとなく幸せ>というフレーズがある。インタビューでリコはこの歌について「コロナで自粛してやりたいことはできへんし、学校にも行かれへんし、ライブも思うようにできへん状況下やと、生きてる心地がしいへんから、あえて私ちゃんと生きてますよという確認の意味も込めて作りました」と語っていた。本心から自分は幸せ、なんて言えなくてもいい。なんとかそうやって自分に言い聞かせることができたら、きっと人は前を向ける。ヤユヨがポリシーに掲げる「日常に寄り添う音楽」とは、そんなふうに私たちの人生を少しでも明るいほうに傾けられるような、優しい寄り添い方なのだ。
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取材・文=秦理絵 撮影=酒井ダイスケ​

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