デュオ・リサイタルを開催するオペラ
界の次世代スター、高野百合絵と黒田
祐貴に聞く

2021年の佐渡裕プロデュースオペラ2021喜歌劇『メリー・ウィドウ』で鮮烈デビューを飾ったハンナ役の高野百合絵とダニロ役の黒田祐貴。芸術監督の佐渡裕が、「今後の日本のオペラをリードするスター性がある」と称した二人が、考え抜いた最高のプログラムを引っ提げて、兵庫県立芸術文化センターの大ホールでデュオ・リサイタルを2022年1月10日に開催する。
『メリー・ウィドウ』以降も、話題のコンサートなどへの出演が続き、着実に “次世代スター“ への道を進む二人に、思い出のホール客席で、あんなコトやこんなコトを聞いてみた。
日本のオペラ界をリードするスター候補、高野百合絵と黒田祐貴   (c)H.isojima
―― お二人が揃われるのは、佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2021喜歌劇『メリー・ウィドウ』以来ですか?
黒田祐貴 9月に東京の王子ホールでデュオ・リサイタルを開催しました。
―― ああ、そうでしたね。バーンスタインの秘曲とも言える「アリアと舟歌」が、後半のメインプログラムに入っていたリサイタルですね。あの曲、どうして選ばれたのですか?
高野百合絵 私が黒田さんにこの曲どうですかってお伺いを立てました。実は、珍しい曲を探し出すのが好きなんです(笑)。いつか歌いたいなぁって温めていた曲なんですが、黒田さんが「面白いね、やってみよう!」と仰ってくださったのは意外でした。
黒田 まったく知らない曲でした(笑)。色々と調べてみても、日本で演奏された記録は出てきませんでした。
―― そんな感じでプログラムが決まって行くのも、何となくお二人らしいかなと思いますね。以前、『メリー・ウィドウ』の取材をさせていただいた時に、将来どんな歌手になりたいですかとお二人にお聞きしたところ、高野さんは「将来的には、職業を聞かれた時に、オペラ歌手です!ではなく、高野百合絵です!と言えるようになりたいです」とお答えになったのが印象的でした。唯一無二の存在という意味だと思いますが、プロデュースオペラデビューのタイミングで凄いなぁと感心しました。そして、黒田さんにも同じ質問を投げかけた所、「高野さんに似ていますが、職業は声楽家というより、芸術家と言えるようになりたい」と仰っていました。ご自身の感性で言葉を紡がれるところが、お二人は似ておられるなと思いました。
高野 言いましたね、確かに(笑)。
黒田 似ているかもしれませんね(笑)。
『メリー・ウィドウ』(21.7 兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール)
―― お二人は同じレーベルからCDを発売していますね。以前からの知り合いだったそうですが、9月のリサイタルの選曲などをされていたタイミングでは『メリー・ウィドウ』にお互いが出演する事を知らなかったとお聞きしました。公演のキャスト表を見て互いの出演を知り、驚いたと話してくださいました。
黒田 めちゃくちゃ驚きました。しかも相手役ですからね(笑)。
―― 背が高くて、スタイルもビジュアルも良くて、実力は佐渡さんの折り紙付き!このゴールデンカップル(古いですね、失礼!)を作って本番の舞台で、プロデュースオペラ不動の4番バッターと言える、並河寿美 & 大山大輔のダブルキャストの相手に持って来られたのは、事務局のファインプレーだと唸ったことを覚えています。券売も遜色なかったとお聞きしているだけに、この二人でデュオ・リサイタルが開催される事は、当然の流れのように思って見ていました。
黒田 そうですか⁈ 『メリー・ウィドウ』をやった大ホールに、たった二人とピアニストだけですから緊張します。
高野 私もてっきり小ホールか中ホールを想像していました。大ホールだとは…(笑)。
『メリー・ウィドウ』(21.7 兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール)
―― そこで佐渡さんが、スペシャル・トーク・ゲストとして出演されるというのもストーリーが出来ていますね(笑)。お二人を「これからの日本のオペラ界をリードするスター性のある二人」と評されただけに、お二人の成長を見届ける責任を感じておられるのでしょう。『メリー・ウィドウ』の裏話など、聞いてみたいハナシはいっぱいあります。
高野 もうありがたくって、恐縮してしまいます。ここ兵庫県立芸術文化センターが在るのが兵庫県西宮市。私が、高校野球や甲子園ボウルで国歌を歌わせて頂いた甲子園球場があるのも同じく西宮。ここは、私の始まりの場所であると共に、私が力を貰える場所です。今回、リサイタルのプログラムに、初めてプッチーニの歌劇『トスカ』より “歌に生き、愛に生き” を入れました。やはり、『トスカ』というオペラはザ・プリマドンナの曲ですし、特別な曲。歌いたい気持ちはずっと有りましたが、精神的にも難しい役ですし、今まで少し躊躇していました。今回、『メリー・ウィドウ』のハンナをやらせて頂いたこのホールでもう一度歌わせて頂けるのなら、思い切って挑戦させて頂こうと決めました。この先、何度も歌っていくであろう『トスカ』のアリアを28歳の高野百合絵が、ここ兵庫県西宮の地で歌わせて頂きます。皆さまにはぜひ、見届けて頂きたいです。
兵庫県西宮は、高野百合絵の始まりの地であり、力を貰える場所なんです!  (c)H.isojima
―― 黒田さんは、今回のプログラミングはどのように決められましたか。
黒田 2022年6月にニッセイオペラ『セビリアの理髪師』で初めてフィガロをやらせて頂きます。オペラの中でもフィガロの登場シーンで歌われる、物語をスタートさせるに相応しい「私は町の何でも屋」なら、お客様に元気になって頂けるので良いかなと思い選びました。CDでも1曲目に入れた曲です。1年のスタートとなるタイミングで、皆さまに自信をもってお届け出来る曲ですので、ぜひお聴きください。
―― 曲目を見ていて驚いたのが、ベートーヴェン、グリーグ、リヒャルト・シュトラウスという3人の作曲家による「君を愛す」(Ich liebe dich)が並びました。この狙いは何だったのでしょうか。
黒田 タイトルは同じですが、3曲は全然曲調が違います。これまで、グリーグとリヒャルト・シュトラウスは歌った事はありましたが、ベートーヴェンを人にお聴かせするのは初めてです。同じタイトルでも作曲家や詩人、時代によってこれだけ音楽が違うものなんだと比較していただくと楽しいのではと、冗談のつもりで話していたら、決まりました(笑)。
3人の作曲家による「君を愛す」の聴き比べをお楽しみください!  (c)H.isojima
―― 『メリー・ウィドウ』の中からも、代表的な曲は歌われるのでしょうか。
高野 はい、もちろん。お客様はそれがいちばんお聴きになりたいと思います(笑)。 “ヴィリアの歌” 、 “唇は語らずとも” も歌わせて頂きますのでどうぞお楽しみに。
『メリー・ウィドウ』の曲も歌いますのでご期待下さい!(21.7 兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール)
―― お二人とも『メリー・ウィドウ』以降の活躍も目覚ましいのですが、黒田さんは11月に行われた世界的なピアニスト、エフゲニー・キーシンのプロジェクト「作曲家キーシン〜その肖像」に出演されていましたね。あれはどうして決まったのでしょうか。
黒田 凄いメンバーですよね。歌い手が森谷真理さん、林美智子さんと私というのも凄いですし、楽器奏者も世界で活躍している方ばかりでしたからね。私たちが演奏した最後の曲「古い蓄音機から飛び出した小鳥のアレフ」が、イディッシュ語の曲だったというのが、私にお声がけいただいた理由の一つに有ったかもしれませんね。実は、先ほど話をしていたバーンスタインの歌曲「アリアと舟歌」の中にイディッシュ語の曲が有って、そのことが決め手になったのかもしれません。キーシンさんの作曲家としてのコンサートでしたが、世界初演、日本初演の曲が並ぶ演奏会だけに、記録に残るコンサートでした。素晴らしいメンバーと共演できたことは、とても刺激になりました。
「メリー・ウィドウ」後も、精力的に活動の幅を広げる黒田祐貴  (c)Masatoshi-Yamashiro
―― 高野さんは、12月の初めに開催された田尾下哲さんの演出付きの『マタイ受難曲』に出演されました。たいへん注目のコンサートですが、演出付きの『マタイ受難曲』というと、サイモン・ラトル指揮、ピーター・セラーズ演出のベルリン・フィルの演奏が有名です。動きが有るので暗譜ですよね。そこでアルトソロを歌われたという事は、あの曲もですか。
高野 はい。マタイ受難曲は初めての挑戦で、しかも暗譜で演出付きでの出演は凄い経験でした。ペテロの否認の「主よ、憐れみたまえ」はある意味、この曲の中心となる曲。精神力が問われます。歌い終わった後は、ぐったりでしたが、とても達成感がありました。
宗教曲の歌唱にも定評のある高野百合絵  (c)Takafumi Ueno
黒田 注目のコンサートだけに、私も見に行きましたよ。視覚化する事で、情景や言葉がはっきりしますね。実は『マタイ受難曲』は歌う機会が多く、イエスも、バスのソロも、合唱でも歌っていますが、格好いいステージングで完全にやられました。高野さんの「主よ、憐れみたまえ」は、本当に素晴らしかったです。そこまで凄いか!と嫉妬するほどで、改めて実力を突き付けられた感じでした。表現の幅が広く、ハンナとのギャップに驚きました。
―― お二人とも大きな舞台で活躍のご様子。確実にスターへの道を歩み始められていますね。高野さん、黒田さん、貴重なお話を聞かせて頂きまして、ありがとうございました。デュオ・リサイタル、楽しみにしています。
高野・黒田 ありがとうございました。
私達のリサイタルにぜひお越しください!  (c)H.isojima
取材・文=磯島浩彰

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