EXILEが
ダンス&ヴォーカルグループとして
天下を獲った理由を
『our style』に見出す

J-POPへの意識とヒューマニティ

EXILEを語る上で、その音源のことだけにしか触れないのは、飛車角落ち…とまでは言えないにしても、その魅力を伝えるには7掛け、いや、下手すると6掛け、5掛けなのかもしれない。ダンスパフォーマンスあってのEXILEである。そう思いながら『our style』を聴き始めたのだが、これが案外そうでもない。もちろんダンスが加わってパーフェクトになることは間違いないのだけれど、音源単体で聴いても十分に楽しめる作品であることはもちろん、本作を聴くことでEXILEがダンス&ヴォーカルグループであることがよりはっきりするような印象を受けた。その辺を塗り絵に喩えたらかなり語弊があるかもしれないが、主線でフォルムが分かるだけでなく、空白に乗る色までもが想像できると言おうか。音源だけでは足りないことは足りない。しかしながら、その足りないことも含めてリスナーに余地を与えたアルバム。そんなことが言えるのではないだろうか。以下、その詳細を述べる。

まず、主旋律とそれを司るヴォーカリゼーションについて。その音楽性をジャンル分けすればダンスミュージックであり、コンテポラリR&Bとなるだろう。さらに大枠で言えばJ-POPとなろう。そこが大きなポイントだと思う。ヒップホップ由来のループするビートと短いメロディをベースとしながら、ヴォーカルはフェイクを加えたり、スキャットを用いたりして歌われる。比較的ハイトーンでファルセットも少なくない。大雑把に言えばそれが当代のR&Bの特徴で、『our style』収録曲もそこに準拠していると言っていい。しかしながら、本場米国のそれに比べ、明らかにフリーキーさが低いというか、歌メロをしっかり歌っている印象が強い。サビはしっかりキャッチーであって、しかもAメロ、Bメロに続いてサビが出て来るという王道の展開がほとんどだ。とりわけJ-POPらしさを強く感じたのは、Cメロ(≒大サビ)の存在と、後半での転調。個人的に印象的だったCメロはM4「fallin'」とM13「VIOLATION」、転調はM7「それが僕だから」とM14「Your Eyes Only」だ。歌メロをつるべ打ちにすることで、ループミュージックにもかかわらず、楽曲をドラマチックに仕上げている。この辺にEXILEの大衆性の秘密があるのだと思う。歌のフェイクにしても、概ねCメロが終えてから出現することが多く、それが多用されるのはラストのサビ周辺だ。そのことからも、EXILEは最初期から単にコンテポラリR&Bを標榜するのではなく、日本のマーケットを意識したR&Bをやろうとしていたことが想像できる。

サウンド面で特徴的に感じたのは、ギターの生音が多いことである。全体を通して見れば、やはりデジタル音が中心であって、ほとんどそれが占めていると言っていいし、それゆえにビートは常にジャストに鳴らされている。その辺のシャープさはM6「D・T・B」やM9「MAX TRIBE(Inst.)」で見て取れる。特にM9でのSF感はデジタルミュージックならではのものだろう。ただ、そこだけに終始していないのが『our style』であり、EXILEの音楽であるようだ。ギターはM4「fallin'」、M5「eyes in maze」、M8「Style」、M10「nobody else」、M11「Feel the Conflict」、M12「こんなにもながい君の不在」、M14「Your Eyes Only」といった辺りで目立つ。中でも特に印象に残るのはM5、M8、M11でのスパニッシュな響きだ。M5、M11は作編曲を手掛けているのが横山輝一なので氏の好みなのかとも思ったが、28thシングル「The Birthday 〜Ti Amo〜」(2008年)でもラテンフレイバーを全開にしているほか、EXILEにはそれら以外にもラテンポップがあるようなので、この辺のサウンドはグループとして得意としているものではあろう。正直言ってEXILEとラテン、スパニッシュとの関係にどんな因果があるのか、軽くググっただけでは分かるはずもなかった(これをお読みの方で何かご存知の方がいらっしゃれば、補足していただけると助かります…よろしくお願いします)。だが、このラテンフレイバーはEXILEにセクシーさを加味していることは間違いないし、それ以外のギターの音色も楽曲に、ある種の熱を注いでいることも確実だろう。デジタルでのシャープさにヒューマニティを加えていると言ってもいいだろうか。それもまたEXILEがヴォーカルのみのグループではなく、ダンス&ヴォーカルグループであるからだと邪推する。彼らの楽曲には生身の人間が踊るパフォーマンスが必ず付随しているからこそ、楽器の演奏にも一定のアナログ感(?)というか、人間が弾いている感覚が必須であって、そこでのケミストリーを考えた上のギターサウンドの注入ではないだろうか。

ダンスが必ず付随していると言えば、『our style』収録曲には、明らかにダンスパートを意識した構成がある。これは最大の特徴と言ってもいいだろうし、改めて言うまでもなく、誰もが知るところではなかろうか。間奏にそれがある。M2「Fly Away」、M6「D・T・B」、M11「Feel the Conflict」、M13「VIOLATION」辺りが顕著だろう。間奏をメロディーではなく、ビートで攻めている。M11は前述したスパニッシュギターが入っているし、M13もそうで先に述べたCメロがあるものの、それぞれそれらが終わったのちにダンスパートが用意されている。今回、映像まではチェックしなかったのでそこで誰がどんなふうに踊っているのかまでは確認しなかったけれども、そんな自分でもそこでパフォーマーが活き活きとダンスしている様子が容易に想像できる。EXILEのファンやライヴの体験者であれば、そこでは誰がどんなパフォーマンスをしている様子が脳裏に映るのではなかろうか。冒頭で“空白に乗る色までもが想像できる”とか、“足りないことも含めてリスナーに余地を与えた”とか述べたのはそこである。そこはポップス、ロックとしては若干異様と言えるかもしれないが、EXILEが邦楽シーンに示したブランニューなスタイルと言うことができるはずだ。

OKMusic編集部

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