Zepp Tokyoラスト3デイズ2日目――マ
イヘア、Hump Backらライブハウスに
賭けてきたバンド達の存在証明

Zepp Tokyo Thanks & So Long!

THE NINTH APOLLO presents"1つの目標として存在してくれたZepp Tokyoにて"
2021.12.30 Zepp Tokyo
2021年末に行われたラストイベント『Zepp Tokyo Thanks & So Long!』を最後に約22年の歴史に幕を下ろしたZepp Tokyo。もしかしたらあなたにも「あの時こんなライブを観たなあ」という思い出があるかもしれないが、来場者約1,300万人の中には、あるライブを観て“いつか自分もこのステージに立ちたい”と音楽の道を志したアーティストもいたことだろう。また、約2,700人キャパのZepp Tokyoはライブハウスにしては大規模であり、‟小さなハコに収まりきらなくなったバンドが次に目指す場所”としての役割を担い続けてきた印象。そういった背景から、この会場でライブすることを一つの目標として掲げてきたバンドも多かった。
『Zepp Tokyo Thanks & So Long!』の2日目、THE NINTH APOLLO所属バンドが集まった12月30日公演は『Zepp Tokyo Thanks & So Long! THE NINTH APOLLO presents "1つの目標として存在してくれたZepp Tokyoにて”』と名付けられた。生粋のライブバンド5組による最後のZepp Tokyo。いったい彼らはどんなライブを見せてくれるのだろうか。6時間に及ぶイベントだが、2階席から見た限り、1組目スタート前の時点で空席はほぼなし。ロックバンドはライブハウスで最も輝く生き物だと知る人たちが早々に座席を埋めている。
トップバッターのTETORAが登場すると、観客の熱い拍手がメンバー3人を迎えた。すっと息を吸った上野羽有音(Vo/Gt)、真っ白なギターを掻き鳴らしながら「本音」を唄い始める。曲名が象徴するように、3ピースサウンドはどこまでもまっすぐ。次の「日常」はテンポやリズムパターンにも変化のある緩急豊かな曲で、バンドの呼吸が手に取るように伝わってきた。「後ろまで見えてます! 上の階も見えてます! 最初から観てくれてありがとうございます! 目の前にいてくれてありがとうございます!」と興奮気味に叫ぶ上野。そしてライブハウスの歌=「正直者だな心拍数」などアッパーチューンを立て続けに演奏していく。
TETORA
ハスキーボイスのボーカリスト特有の、喉元で引っかかりそうなところをしかし自力で突き抜けてみせる強さのある歌声に、高まる気持ちを放つような演奏が重なる。上野は「再生回数じゃなくて、拳の数じゃなくて、今まで出たフェスの回数じゃなくて、目の前にいる人の心を動かしたくてライブやってきた!」「今日のライブで、その視線で、どんなバンドか判断してください!」と曲間や曲中でも観客へ言葉を投げかけている。
TETORA
そんな彼女と想いをともにし、いのり(Ba)、ミユキ(Dr)も熱力高く演奏したバラード「レイリー」は特に素晴らしかった。ラストは「素直」。激しいギターカッティングとともに上野が唄うと、ミユキは大きく身体を揺らしながらリズムに乗り、そのテンポでビートを鳴らし始めた。膝立ちになって弾くいのり。笑顔の上野。2人の後ろで叩きまくるミユキ。最後の一音を長めに響かせてから3人はステージを後にした。
「Zepp Tokyo、調子いいですか?」(ヤマグチユウモリ・Gt/Vo)とサウンドチェックから満場総立ちにさせ、そのままライブを始めたSIX LOUNGE。挨拶代わりにまずは3曲。読んで字のごとくトップギアでぶっ飛ばす「スピード」に「トラッシュ」、「ふたりでこのまま」とパンキッシュでテンポの速い曲を重ねていく。心臓のビートに唸りを上げるベースライン、掻きむしるようなギター。泥臭いロックンロールにフロアからは拳も上がるが、楽器の音がただただ暴れているわけではなく、フレーズ一つ、リズム一つをとっても粒立ちがよい。今のSIX LOUNGEならではの‟研がれた爆走”といった印象を受けた。
SIX LOUNGE
ヤマグチは2021年を「個人的につらい年だった」と振り返りながら、「だけどそれを吹き飛ばすくらいいいこともあった」「そういう瞬間になれるのがロックバンドでありライブハウス」と語っていたが、まさにその言葉の通り、心を真っ白にして音楽を鳴らす時間が続いた。
SIX LOUNGE
そんななか、「ちょっとだけ大人になった気がしますけど、根本にあるクソガキみたいな部分は変わってないです」「羽有音ちゃんも言ってたけど、ここにいる人だけに向けて唄います」と演奏されたのは2017年にリリースされた「大人になってしまうなよ」。あの頃より確かに大人になってしまった感覚と、それでもライブハウスでジャーンと鳴らせば童心に還れるという実感、両者の間で揺れる20代半ばの心情。それが素直に表れた名演だった。その後は「俺たちもライブハウスの歌唄います!」と紹介された「俺のロックンロール」からの「僕を撃て」を経て、夕焼け色の照明の下で響かせた「メリールー」で終了。
3組目のハルカミライは「君にしか」でライブをスタートさせた。橋本学(Vo)が「Zepp Tokyo!」と叫んだあと、メンバー4人で「さよならだぜ!」と声を合わせる一幕もあったが、別れだからとしんみりするのではなく、だからこそ“今”を思いっきり輝かせるのが彼らのやり方。全てを愛で包み込むようなでっかくやさしいバンドサウンドに、ボーカルの橋本のみならず、4人で唄っていく青春のメロディ。シンガロングできない分、観客は握った拳を突き上げる。
ハルカミライ
3曲目で「ファイト!!」を演奏しようとするもステージ上で「今じゃない」「どうしようか」と言い合い、ひとまず「QUATTRO YOUTH」へ。同曲で心と身体を温めてから「よし、今だ!」と満を持して「ファイト!!」へ突入するなど心のままに鳴らす4人。歌詞の一部をTETORAやSIX LOUNGEに替える粋な計らいもありつつ、「僕らは街を光らせた」の<もし俺のこと 選ぶやつがいるならば/どうか どうか 負けずに追って来い>というフレーズが今このフロアにいるかもしれない次を担う世代へのメッセージとして存在感を放ち、嵐のような2ビートも、橋本によるアカペラも、泣き笑いの温度感を帯びていった。
ハルカミライ
観客一人ひとりの目を見て演奏するメンバーや感極まった観客に「おい、姉ちゃん泣くなよ!」と語りかける橋本の姿を見て、TETORAやSIX LOUNGEが言っていた“今目の前にいるあなたに唄う”という姿勢は、今日出演するライブバンドたちの共通項なのだと実感する。ラストを飾ったのは「ヨーロービル、朝」の大きなスケール感。真っ白な照明がバンドを、そしてフロアを満たす観客を残らず照らしたのだった。
ハルカミライのライブで高ぶったのは観客の私たちだけではなかったのか、サウンドチェックの時点でエネルギッシュな音を鳴らしていたHump Back。オープナーは「星丘公園」で、「生きて行く」に「ティーンエイジサンセット」、テンポを速くしたバージョンの「オレンジ」がそれに続いた。林萌々子(Vo/Gt)はよく通る歌声の持ち主だが、特に今日はパワフルで、マイクスタンドが倒れても構わず歌い続ける姿も印象的。時にはうきうきと足踏みしながら弾き、時にはネックを揺らして音を響かせるぴか(Ba/Cho)、一音一音の芯を着実に捉える美咲(Dr/Cho)のプレイからも気合いが感じられた。
Hump Back
MCで「このステージでまだ情熱を燃やしたかった」とZepp Tokyoの営業終了を惜しみながらも「でも、終わりあるものこそ美しい。ここ最近は特にそう思います」と語った林。中盤ではギターを弾きながら即興で心境を歌にし、<強さ、やさしさに形を変えて僕らの心に住み続けるのさ><今日からここから歩き出すのさ>とまとめると「番狂わせ」へと繋げたのだった。また、「2021年に分かったのは、本当の‟さよなら”はないってこと」という実感をバラード「きれいなもの」にも託していく。
Hump Back
クライマックスは「拝啓、少年よ」。膝から床に滑り込みながら渾身のギターソロを披露する林を見て自分まで嬉しくなったのか、林の周りでぴょんぴょん跳ね、「何や?」とツッコまれるぴかの姿も微笑ましい。美咲の元に3人集まり、最後の一音を鳴らしてフィニッシュ……と思いきや、滑り込みセーフと言わんばかりに「宣誓」を演奏。時間いっぱい自分たちの音楽を鳴らしきった3人だった。
「ロックバンドとして、THE NINTH APOLLOとして、Zepp Tokyoに勝ちにきました!」
トリはMy Hair is Bad。「ドキドキしようぜ!」と始まる1曲目は「アフターアワー」だ。3ピースサウンドはみずみずしく、山田淳(Dr)が追い込みをかけると、椎木知仁(Gt/Vo)と山本大樹(Ba/Cho)もガシガシと楽器を鳴らす。
My Hair is Bad
上越EARTHから始まり、今やホールやアリーナでワンマンをするほどにまでなったMy Hair is Bad。出演バンド中最年長ということもあり、「ディアウェンディ」曲中に椎木が「いつまで経ってもクソガキでいいぞ、ユウモリ!」と叫ぶなど先輩らしい一面を見せたが、だからといって演奏は落ち着いたトーンではなく、むしろ、ある種の青さや衝動に飛び込むこともよしとするテンションだった。リリース前の新曲「歓声を探して」以外はあえて2ndフルアルバム以前の曲でまとめたセットリストも象徴的だったように思う。また、特に印象的だったのは「戦争を知らない大人たち」。イントロ前、示し合わせたように笑う3人に「どうした?」と思っていたら、いつもより獰猛な音像で曲が始まったものだから驚いた。
My Hair is Bad
椎木がMCで語ったのは、レーベルの社長から“ライブには勝ち負けがある”と教わったこと。勝ち負けにこだわってきた結果オリジナリティを獲得し、2017年に憧れのZepp Tokyoに立てたこと(中学生の頃に観たELLEGARDENのZepp Tokyo公演のライブDVDをきっかけにレスポールを手に取ったという)。大人になるほど丸くなるし“音楽に勝ち負けはない”という気持ちも湧くが、THE NINTH APOLLOの字を見ると思い出すことがあること。レーベルの古株となった今、どんなライブをすればいいのかと考えながらライブしていたこと。そういった想いも引き連れつつZepp Tokyoと向き合い、Zepp Tokyoに語りかけるような形でこの日の「フロムナウオン」は鳴らされた。「このライブハウスは明日で本当になくなる」「なくなることがどうしても信じられないのは何でかって言ったら、記憶に残り続けるからだ」「今夜が終わっても記憶に残るような夜、別れても記憶に残るような誰かになってくれよ、Zepp Tokyo! バイバイじゃない!」。椎木は湧いた言葉をそのまま叫び、言葉を連ねるほど、バンドのグルーヴも増していく。
My Hair is Bad
その後は「歓声を探して」、「告白」で本編を終え、アンコールとして「優しさの行方」を演奏。「いろいろなことがあっても戻ってこられる場所がなくならないように、ロックバンド頑張っていきます。そしてぜひ、これからもそれを応援してください」(椎木)という言葉にはこの日集まった観客、もといロックバンドファン、ライブハウスラバーへの信頼が表れていた。
Zepp Tokyoのステージに憧れたかつての少年によって締め括られた『Zepp Tokyo Thanks & So Long!』2日目。最終日にはまさに彼が目を輝かせたそのバンドが出演するわけで、ロックバンドの夢とロマンの詰まったバトンリレーに胸が熱くなった。

取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=小杉歩

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