Zepp Tokyo最後の日――ELLEGARDENと
BRAHMAN、実現した"最強のツーマン"
が残したもの

Zepp Tokyo Thanks & So Long! FINAL

ELLEGARDEN / BRAHMAN
2021.12.31 Zepp Tokyo
2021年末、3日間にわたって開催されたZepp Tokyoのラストイベント『Zepp Tokyo Thanks & So Long!』。最終日の12月31日には『Zepp Tokyo Thanks & So Long! FINAL』と題してELLEGARDENとBRAHMANのツーマンが行われた。両バンドともZepp Tokyoのステージには何度も立ったことがあるし、東日本大震災以降、ELLEGARDENの細美武士(Vo/Gt)とBRAHMANのTOSHI-LOW(Vo)が交流を深めていったことは広く知られているが、対バンするのは2008年の松山サロンキティ公演以来、約13年ぶり。そしてELLEGARDEN活動再開後では初となる競演がZepp Tokyo最後の日に実現した。
BRAHMAN
BRAHMAN
まずはBRAHMANのライブからスタート。2021年のBRAHMANといえば、バンド初の試みとして、スローナンバーを中心としたツアー『Tour 2021 -Slow Dance-』を実施(現在はその続編となる『Tour -Slow DANCE HALL-』を年を跨ぎ開催中)。メンバーのいるステージが紗幕によって隠された状態で開演し、「Kamuy-pirma」から「Fibs in the hand」に繋げ、その後初めてSEが鳴り……というオープニングは同ツアーを踏襲したものだった。3曲目は「霹靂」。容赦ない豪雨の中、毅然と立つ4人が、地鳴りのような、雷鳴のようなバンドサウンドを鳴らしていく。
BRAHMAN
BRAHMAN
こういった紗幕と映像を使った演出、そして序盤・終盤の選曲(冒頭に「Kamuy-pirma」と「Fibs in the hand」を、クライマックスに「PLACEBO」、「今夜」、「鼎の問」、「満月の夕」、「Slow Dance」を配置)は、ツアーからの流れを汲んだもの。ライブハウスでは‟モッシュもダイブもできないし、唄えない、叫べない”という状況が相変わらず続いていて、かつてのように、人の上を転がってやってきた人をTOSHI-LOWがさばくこともなければ、グータッチし合うこともない。そういった行為は本来バンドの演奏に気持ちが高ぶった結果として出てくるものだが、手段と目的が逆転し、肉弾戦こそがBRAHMANのライブの本質だと思われてやしないか。魂の交感が本質ではなかったか。あの光景は今でも恋しいが、物理的に密になれない状況でも心と心は通じ合える。それを証明するバンドの果敢なトライとしてあのツアーはあった。
BRAHMAN
一方、中盤4~9曲目はツアーとは異なる選曲だった。8分の6拍子で描く円が命・自然・輪廻を連想させる「霹靂」のダイナミクスを継いで鳴らされたのは「賽の河原」。シャウトが飛び交う中、変則的にテンポを変えながら勢いを増していく同曲を経て「BASIS」、そして細美に「2年ぶりに聴けて満足」「やっぱりTOSHI-LOWには暴力が似合う」と言わしめた「露命」が演奏された。スローナンバーだけに留まらず激しい曲も演奏したのは、ルールの中で心を解放させる観客への信頼、そして自分たち自身の演奏や曲自体に対する絶対的な信頼からか。間を置かず、「Speculation」、「SHADOW PLAY」と続けると、「ANSWER FOR…」を終えたタイミングで万雷の拍手が起こった。さらに、「PLACEBO」と「今夜」では細美が登場。息の合ったハーモニーを聴かせた場面もこの日ならではのもので、Zepp Tokyo最後の日にして歴史に残る名場面が誕生したのだった。
BRAHMAN
<目の前の何度目の/祈りを超えて何度でも>と唄う「鼎の問」のあと、TOSHI-LOWが言う。「来年は災害もなく、疫病もなく、みなさまよいお年を……って言いたいけど、まだまだ何が来るか分からねえ。でも、来ても大丈夫。俺たちには歌がある」と。そうして始まった「満月の夕」。連綿と受け継がれる人々の祈り、そして意思に、今を生きる自身の想いを重ねたTOSHI-LOWの歌唱が見事だった。ここでステージを紗幕が覆いエンディングに入ると、BRAHMANがこれまでZepp Tokyoで行ったライブのタイトルと当時の写真が投影された。最後には今日のライブタイトルとELLEGARDEN・BRAHMANのメンバーが写った写真も登場する。
BRAHMAN
そして「Slow Dance」で終了……と思いきや、ラストには「真善美」が選ばれた。これもまたツアーとは違ったポイントである。再び幕が開き、TOSHI-LOWがフロアを指しながら<さあ 幕が開くとは/終わりが来ることだ/一度きりの意味を/お前が問う番だ>と唄う。突きつけられたメッセージ、そしてマイクを落とした音とともに暗転してライブが終了した。
ELLEGARDEN
Zepp Tokyoのステージに最後に立ったバンドはELLEGARDEN。スカルにバンド名が入ったあのロゴがゆっくりと上昇する中、登場したメンバー4人を観客が熱い拍手で迎え入れた。1曲目は「Space Sonic」。‟そういえば音って振動だったな”と原始的な感覚を目覚めさせられるほど、バンドサウンドにはビリビリとした気迫が乗っている。続く「Fire Cracker」もすごい音圧だ。「The Autumn Song」や「風の日」を前に問答無用で盛り上がる観客。その中にはELLEGARDENの曲とともに青春を過ごしたファンももちろんいたと思うが、慣れ親しんだ曲かどうかはもはや関係ない。この4人で鳴らす輝度の高いサウンドには聴く人の心を芯から熱くさせるような、何歳の人でもキッズに変えてしまう力が宿っているように感じられた。
ELLEGARDEN
バンドのテンションはかなり高く、初めの4曲の時点でこうなのだから、いったいこの先どこまで行ってしまうのだろうと期待に胸が膨らむ。細美曰く、ELLEGARDENもBRAHMANも相手が強ければ強いほど燃える性格のバンドだけに、自分たちも今「燃え盛っている」とのこと。また、毎年『GT』で共に年越しをしていたホリエアツシストレイテナー)には悪いけど……と前置きしつつ「今年ほどこんなに清々しく、ワクワクする大晦日はないね」と心境を語った。
ELLEGARDEN
その後も「Supernova」、「金星」、「スターフィッシュ」とベスト・オブ・ELLEGARDEN的な選曲が続いた。それにしてもバンドの勢いが止まらない。‟天井知らず”とはまさにこのことといった感じだ。先日ELLEGARDENは、今年2月から6thアルバムの制作に入ることを発表し、そのニュースには各方面から喜びの声が上がっていたが、こうして実際にライブを観てみると、今バンドが持っているエネルギーが既存の器ではもはや収まりきらなくなってきていて、だからこそ、バンド自身が新曲を求めている状態なのだろうと合点がいく。それこそ、結成から25年以上経っても新しい表現へ手を伸ばすバンドがそばにはいたわけで、受けた刺激もあったかもしれない。
ELLEGARDEN
2008年に松山サロンキティでBRAHMANと対バンしたことや、当時TOSHI-LOWから「なんで俺が終わっていくバンドと対バンしなきゃいけねえんだ」と一度断られたことに触れた上で、‟全ての伏線を回収してあの日の先へ行く”という気持ちで今ライブに臨んでいると語ったのは「金星」演奏後のMC。「今の俺たちは未来しか見てない。こんなのは初めてだよ」とのことで、要は、“終わっていくバンド”ではなくなった今だからこそ実現したのがこのツーマンだったというわけだ。これまでのELLEGARDENを形作ってきた曲たちを鳴らしきり、年明けにはもう、来たる未来に目を向ける。それがELLEGARDENの選んだロックバンドとしてのZepp Tokyoへの別れの告げ方だった。
途中には細美が、「別にZepp Tokyoって人じゃねえし、話したことないし、場所に思い入れがあるわけじゃないんですよ」と言いつつ、近くのビルでサラリーマンをしていた頃から「いつかここでワンマンがしたい」と思っていたこと、この会場でWeezerを観たこと、先ほどステージ上でTOSHI-LOWから「ここが一番大好きなライブハウスなんだろ?」と言われて「確かにその通りだ」と思ったことも振り返る。そして「正直エルレの中で今の気持ちにぴったりな曲はなかった。でも近い曲が1曲あった」と「I Hate It」をZepp Tokyoへ捧げた。
ELLEGARDEN
ELLEGARDEN
アンコールの「虹」がZepp Tokyoで最後に鳴らされた曲だった。虹色の照明の下、生形真一(Gt)が凄まじいギターを鳴らし、<僕らはまた 今日を記憶に変えていける>という言葉が私たちを明日へ向かわせる。終演後は「本日をもちまして、Zepp Tokyo全ての公演が終了となりました。ご来場いただきました全ての皆様、ご出演いただきました全てのアーティストの皆様、公演に関わった全てのスタッフの皆様に、厚く御礼申し上げます。22年間、Zepp Tokyoを応援いただき誠にありがとうございました」という最後のアナウンスに温かな拍手が送られた。その瞬間、本当に今日で最後なのか……と改めて実感させられたが、この胸に残った感情は悲しみでも寂しさでもない。しんみりした空気にならなかったのはELLEGARDENとBRAHMANが未来への希望に満ちた音楽を鳴らしてくれたからであろう。こうして22年の歴史に幕を下ろしたZepp Tokyo。そのラストシーンは実に晴れやかなものだった。

取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=三吉ツカサ
ELLEGARDEN / BRAHMAN

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