「充希さんと一緒でホッとする」高畑
充希と平祐奈が挑む舞台『奇跡の人』

これまで何度も上演されてきた舞台『奇跡の人』が3年ぶりに上演される。
孤独に生きてきた20歳の家庭教師アニー・サリヴァンと、見えない・聞こえない・しゃべれないの三重苦の少女ヘレン・ケラーという逃れ難い運命で結ばれた二人の女性と、彼女らを取り巻く家族をめぐる物語を描いた本作。今回も演出を手がけるのは森新太郎だ。
これまで2度ヘレン・ケラー('09年・'14年)を演じ、アニー・サリヴァン役も前回('19年)から2度目となる高畑充希と、初舞台でヘレン・ケラーを演じる平祐奈に話を聞いた。
■プライベートでしか会ったことがなかった
――高畑さんは『奇跡の人』は4度目となります。今、どんな気持ちでいらっしゃいますか?
高畑:実は3年前の公演中に今回のお話があったんです。でもその時は初めてサリヴァンを演じて、体力も消耗していたし満身創痍で、できる自信がありませんでした。だけど周りの方が「もう一回やってみなよ」と言ってくれたり、森(新太郎)さんも「時間が経って気付く、想像もつかないことが絶対あると思うよ」と言ってくださって。それでも悩んじゃうくらい気持ちを消耗する役ではありましたけどね。それからあっという間に3年経って、自分にまた務まるかがちょっと不安ですが、せっかくの機会なので楽しんでやれたらいいなと思っています。
高畑充希
――その前にヘレン・ケラー役も2度やられていますが、その時はそういう気持ちにはならなかったのですか?
高畑:そうですね。ヘレンは何回でもやりたい役でした。役柄的に周りの影響を受けないから、あまりストレスがなかったんですよね。でもサリヴァンって(ヘレンに対して)教えても教えても振出しに戻る、というのを3時間やるので。それでやっと奇跡が起きた!と思ったら、すぐまた夜公演があったりして絶望で(笑)。そういうところでも、想像していたより過酷な役だと思いました。
――高畑さんはいつも役にものすごく力を注がれている印象があるのですが、それでもサリヴァンはかなり大変だったんですね。
高畑:大変でしたね。ただ、サリヴァンが20歳でヘレンは7歳ですから。若い塊が爆走して奇跡が起きちゃった、っていう話で、落ち着きがある人たちだったら起こせなかった奇跡なのかなと思うし、毎回あとのことは考えずにやるようにしていました。
――平さんは初舞台です。なぜ今回、挑戦しようと思われたのですか?
平:舞台に挑戦してみたい気持ちはずっとあったのですが、今年の3月まで大学に行っていたので試験期間があったりしてなかなかタイミングが合わなくて。今回、『奇跡の人』のお話をいただいて、「大学も卒業したし、挑戦してみよう」と決めました。そしたらまさかのヘレン・ケラーという難役をいただいて、今は私で務まるのかすごく不安なんですけど。でもきっとこれはいいチャンスだと思うので、がんばってみようという気持ちです。
平祐奈
――おふたりは初共演ですが、プライベートで交流があるそうですね。
高畑:そうなんです。でも仕事場では一度も会ったことがなかったので、今回ちょっとびっくりしました。
平:私はすごくほっとしています。うれしいです。
――おふたりでこの作品のお話はされましたか?
高畑:まだしてないよね。今日久々に会ったんですよ。コロナもあって、この1、2年会えてなかったので。
平:充希さんにいろいろと教えていただきたいです。ゼロからだから。
――今のうちに平さんから高畑さんに聞いておきたいことはありますか?
平:稽古が始まるまでにどうヘレンと向き合っていたのか聞きたいです。
高畑:どうかなあ……。あ!「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」って知ってる? 真っ暗で何も見えない状態でいろんな体験をする企画なんだけど。そういう体験もしながら、少しずつ「“目が見えない”とか“耳が聞こえない”ってなんだろう」ってことに寄り添っていった記憶がある。でも、ヘレンとしてずっと稽古していると、だんだんそれが普通になってきて、目で見るのもやめちゃうっていうか。だから当時は柱に激突したりしてた。
平:うそ……。
高畑:でもヘレンを演じていて悶々とはしないはず。暴れ回ってくれて大丈夫だよ。
平:充希さんがいてくれるから、安心して暴れられそう。
高畑充希、平祐奈
■森新太郎さんは絶対にいい状態で舞台に立たせてくれる
――前回、前々回に引き続き、演出は森新太郎さんですね。
高畑:森さんの演出作品が初舞台というのは、めちゃくちゃ素晴らしいことだと思います。演出家さんによってはおまかせするスタイルの方もいらっしゃるけど、森さんは一緒になって試して、「今のはよかった」「これはダメ」って言ってくれるし、妥協がゼロだから。森さんに言われたことを普通にちゃんとやっていくことが良くなる方法のひとつだと思うし、絶対にいい状態で舞台に立たせてもらえるので、祐奈もきっと安心できると思う。祐奈がどんなふうに作品に近づいていくのか、私もすごく楽しみです。
平:森さんとは先日ご挨拶をさせてもらいました。森さんが演出されていた『ジュリアス・シーザー』がすごく難しくて大変そうな舞台だと思ったのでそれを伝えたら、「(『奇跡の人』は)ここまで大変じゃないから大丈夫だよ!」って言われて。
高畑:(笑)。大変だよ。大変だと思う!
平:私も「あれ?」と思いました(笑)。
――ただ、平さんには“追い詰められたい欲”があるそうですね。
平:そうなんです。今まで出会った監督が皆さんやさしい方で、だけど本当は“言われたい欲”がすごくあるので、今度こそそういう演出家さんに出会えそうだなとちょっと楽しみにしています。多分ドMなんです、私(笑)。
高畑:かもね!

平祐奈

――(笑)。森さんのお稽古はそういう感じになりますか?
高畑:私はドMじゃないんですけど(笑)、でも厳しい方にお世話になってきたというか、10代の頃からぺしゃんこにされてきているから、森さんのことを怖いとは思わないです。ただ、森さんがすごいなと思うのは、若い世代にももちろん言うけど、すごく年配の大御所の方にも「全然だめですね」とか言うのよ。
平:へえ!
高畑:つまり、人を見て言ってるわけじゃないから、そこがすごく信頼できる。本当に森さんがそう思ってるんだなって思えるし。それに森さんのダメ出しは本当に的確で、本当に良くなるから。自分で気付いてなかったダメなところがわかってくるし、襟を正せる。一緒になってつくっていこうと思えます。すぐ仲良くなると思うよ、ちょっとシャイだけど。
平:なれるかしら。えへへ。
■お互いに感じる、サリヴァン・ヘレン
――平さんはヘレン・ケラーという役を、現時点ではどう思われていますか?
平:ヘレンは、「見えない・聞こえない・しゃべれない」というものを抱えている役で、それは一体どういうことなんだろうっていうのはすごく思います。実際、真っ暗な部屋で目を瞑って物を触ってみたりもするんですけど、すごく怖く感じるんですよ。ヘレンはこの中で生きているのか、と思いました。本当に難しい役ですけど、自分の生活にも「見えない・聞こえない・しゃべれない」を取り入れたりしながら、しっかり取り組んでいきたいです。
――高畑さんはアニー・サリヴァンのことをどんな人だと思われていますか?
高畑:すごく不器用な人ですね。若くして負っている傷は大きいし。でも頭もすごくいいので、言い過ぎちゃったり、やりすぎちゃうこともあって。それを「やっちゃった」って思うけどうまく謝れない。そんな不器用で粗削りな人なんだけど、憎めないんですよ。愛すべき人だなと思っています。
高畑充希
――ヘレンとサリヴァンを演じたことで、なにか視点は変わりましたか?
高畑:二役をやったのはすごく面白い経験でした。同じ空間にいるのに見え方がガラッと変わるんです。ヘレンを演じている時は、見てないし聞いてないから、周りとか本当にどうでも良かった。それより今自分が触ってるものが面白いかそうじゃないかなんですよね。その「面白い」っていうのも、どこか違う感覚があって。私がヘレンを演じている時はずっと口からプーッと息を出していたんですけど、それはその時の唇の振動を面白く感じるってことを以前聞いたからなんです。ヘレンを演じている時はずっとそういう感覚でいたのに、サリヴァンを演じたら、全然違う世界が広がっている。親との関係性もあるし、お兄ちゃんもこじれてるし、ヘレンは言うこと聞かないし、わー!みたいな(笑)。でも『奇跡の人』っていうタイトルは、サリヴァンのことを指しているんですよね。奇跡を起こすくらい諦めなかった人っていうことなので。サリヴァンもがんばったから私も諦めずにがんばろうって思います(笑)。
――平さんから見て、高畑さんとサリヴァンとで重なるものはありますか?
平:あります。充希さんは人にちゃんとものを伝えようとする方だし、その話もいつも簡潔で的確でわかりやすいです。なにか教えてくれる時の教え方も上手なんです。そういう充希さんが持っている表現力だったり、芯の強さだったり、話を聞いていると楽しいところとか、ついていきたくなる感じは、サリヴァン先生と重なるなと思います。充希さんってかわいらしいイメージがあると思うんですけど、私はカッコいい人だと思います。中身がカッコいいし、姉御感あるし、付いていきたくなっちゃう(笑)。
高畑充希、平祐奈
――平さんのことをご存知の高畑さんは、どんなヘレンになると思いますか?
高畑:祐奈はちゃんと芯が通っている人だし、すごく頭もいい。ヘレンもすっごく頭のいい人だから、その印象はピッタリだなと思います。あと、キックボクシングをやってるって言ってたから、暴れるのとかお手の物だと思うし。
平:あはは!
高畑:私がやっつけられないように気をつけなきゃ(笑)。今回、祐奈がどんな感覚でヘレンを組み立てていくのか、すごく楽しみにしています。
――初共演ということはどう思われていますか?
平:充希さんはやっぱり普段の自分を知ってくださっているので。
高畑:むしろ普段しか知らないもんね(笑)。
平:そう(笑)。19歳から知ってくれていて、今よりもっと幼い時から成長を見守ってもらっているので、どこかで“お姉ちゃん”みたいな感覚があるんです。それに加えて、実際にヘレンを2回演じられていて、『奇跡の人』は4回目ですから。いろんな意味でホッとするし、いろいろ教えてもらいたい。ずっと守ってもらえているような存在です。
高畑:祐奈はしっかりしてるから、私が守るなんておこがましいくらい、己の力で立ってるし全然大丈夫だと思うけど(笑)。でもやっぱり初めてのことは多いと思うから。お芝居のことを私が言うことは全くないし森さんとつくっていくと思うけど、例えば段取りとか、怪我しない方法とか、喉をつぶしにくいやり方とかは、経験で知っていることも増えてきているので、伝えられることは伝えようと思っています。あとは……自由にやっちゃってください!!
平:やっちゃうぜ!
二人:(笑)。
高畑充希、平祐奈
取材・文=中川實穗 撮影=中田智章

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