2022年も関西でアートを楽しもうーー
リニューアル&新設美術館や日本初来
日多数『イスラエル博物館所蔵 印象
派・光の系譜』など見逃せないアート
情報5選

新しい年が明けて、早くも20日が過ぎようとしている。読者の皆さんは、もう2022年のアート初めをしているだろうか。筆者は昨年入場券を購入したけれどまだ行けていなかった、『コレクター福富太郎の眼 昭和の名実業家が愛した珠玉のコレクション』展(あべのハルカス美術館にて1月16日(日)まで開催)がアート初めだった。その後に東京でも展覧会を観てきたのでその感想も交えながら、今回は新年一発目のコラムとして、2022年にリニューアルオープン・新館ができる西日本の美術館の紹介と、直近で開催される必見の展覧会『印象派・光の系譜』を紹介しよう。
先日、東京森美術館で終了間近に迫った『アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人』と、21_21 DESIGN SIGHTで開催中の『2121年 Futures In-Sight』展を観に行った。
『アナザー・エナジー展』は、出展作家が全員70歳以上の女性作家のみで構成されており、最高齢は106歳。今でこそ、女性が社会的な立場や扱いについて声を上げやすくなっているが、彼女たちは女性であることで受けた不当な扱いや疑問を作品に昇華し、世の中に提示してきた。50年以上作家活動を続けてきた彼女らの言葉と作品から感じる、なみなみならぬ情熱と探究心、好奇心、そして挑戦する力は、ものすごいパワーでこちらへ向かってきた。
対して『2121年 Futures In-Sight』展では、パンデミックが私たちの生活様式やコミュニティのあり方、物事の考え方や価値観に及ぼした劇的な変化を目の当たりにした上で、これからの未来をどう考えるかを、「Future Compass(未来の羅針盤)」というツールをきっかけに、作家や有識者が「未来への問い」を、作品や言葉で表現していた。両展示を通し、図らずも「時間の流れ」を考える体験をした。
50年を超える作家人生から生み出された作品の展示と、これからの100年を考える展示。これらの展示から、人間の本質は想像力だなと思った。私たちは、思い込みの世界で生きている。作品を通して知らない世界や背景を知る。それもアート鑑賞の役割のひとつだ。ただそれだけではなく、知ったあとにどうするか。「自分はどう見るか、何を感じるか」に目を向けて鑑賞してみてはいかがだろうか。そうすることで、生まれる感情や自分の体験と結びつけることができる。その行為が、思い込みを覆し、世界を広げてくれる。それはきっと人生にとって大きな意味を持つだろう。2022年には西日本で美術館が新設、リニューアルオープンされ、この体験の場がさらに拡大する。
2022年にリニューアルオープン・新館ができる西日本の美術館
1.ベネッセアートサイト直島
ヴァレーギャラリー 撮影=矢野勝偉 
●杉本博司ギャラリー
住所:香川県香川郡直島町琴弾地(ベネッセハウス パーク内)
開館:2022年3月
鑑賞料金:検討中
●ヴァレーギャラリー
住所:香川県香川郡直島町琴弾地
開館:2022年3月
鑑賞料金:ベネッセハウス ミュージアムの入館料に含む

瀬戸内海に浮かぶ直島、豊島、犬島を舞台にベネッセホールディングスが展開する「ベネッセアートサイト直島」。今年30周年を迎える同施設に、2022年3月、新しいアート施設「杉本博司ギャラリー 時の回廊」と「ヴァレーギャラリー」がオープンする。

ヴァレーギャラリーは、世界的な建築家・安藤忠雄の設計によるもの。ベネッセアートサイト直島では9つ目の安藤建築となる。既設のベネッセハウスと地中美術館の間にある、李禹煥美術館向かいの谷間に沿うよう、祠をイメージして建てられた。内部空間は内省的ながら、半屋外建築であることにより、光や風など自然エネルギーの動きも直接的に感じ取れる。
ヴァレーギャラリー 撮影=矢野勝偉
建物内外では、草間彌生の「ナルシスの庭」が大規模に展示される。また、2006年より池の横に恒久展示されている小沢剛の「スラグブッダ88-豊島の産業廃棄物処理後のスラグで作られた88体の仏」も一部改変し自然、建築、アートの共鳴をより深く体験できるように設置される。
Hiroshi Sugimoto, Glass Tea House ” Mondrian” , 2014 (c) Sugimoto Studio The work originally created for LE STANZE DEL VETRO, Venice by Pentagram Stiftung
杉本博司ギャラリー 時の回廊は、2006年に開館した宿泊施設ベネッセハウスパークにおける杉本博司の作品空間を、周辺のラウンジやボードルーム、屋外にまで拡大したもの。現代美術作家である杉本の代表的な写真作品やデザイン、彫刻作品などを、継続的かつ本格的に鑑賞できる、世界的にも例をみないギャラリーとなる。また、自然の変化や壮大な時間の流れを体感することで、歴史や生きることについて思いを巡らせられるだろう。
2.大阪中之島美術館
大阪中之島美術館 外観
住所:大阪市北区中之島 4-3-1
開館:2022年2月
鑑賞料金:展覧会により異なる

水都大阪を象徴する街、中之島に新しくオープンすると話題沸騰中なのは大阪中之島美術館。構想から約40年、準備室が設置されてから30年。長い年月を経て2月2日(水)、国立国際美術館の隣に満を持してお目見えする。黒い箱のような外観は、建築家の遠藤克彦による設計。「大阪と世界の近代・現代美術」をテーマに6,000点を超える作品を所蔵し、これを中心に展覧会やイベントが展開される。
開館記念展として大阪中之島美術館 開館記念『Hello! Super Collection 超コレクション展 ―99のものがたり―』が、2月2日(水)から3月21日(月・祝)まで開催。美術館のコレクションから、ルネ・マグリットや佐伯祐三などの代表作を紹介する。その後、4月9日(土)からは開館記念特別展『モディリアーニ─愛と創作に捧げた35年─』を開催。エコール・ド・パリの1人としてパリを代表する画家として活躍し、35歳で早世したモディリアーニの国内外の作品とともに、芸術の成り立ちを探る。SPICEでもレポートをする予定なので、ぜひお楽しみに。
3.藤田美術館
藤田美術館 外観
住所:大阪市都島区網島町10番32号
リニューアルオープン:2022年4月
鑑賞料金:1,000円(20歳未満無料、要年齢確認)

大阪市都島区にある藤田美術館は、明治に活躍した実業家の藤田傳三郎とその子息らが蒐集した東洋古美術品を収蔵する私立美術館。「国宝曜変天目茶碗」をはじめとする国宝9件、重要文化財53件を含む約2,000件のコレクションを所蔵する。1954年に藤田邸の蔵を改築して開館した歴史のある館だが、老朽化対策などのため、2017年6月から建て替えに取り組んでいた。そして2022年4月1日(金)、建て替えられた新美術館でリニューアルオープンする。新美術館はガラスを多用した開放的な建物で、旧建物の部材を再利用しつつ、歴史も感じるモダンな現代建築として生まれ変わった。これまで展覧会は春季・秋季の年2回開催されていたが、リニューアルを機に通年で美術館活動を展開する。
4.大原美術館
大原美術館 本館外観(既設)
●新児島館(仮称)
住所:岡山県倉敷市本町3-1
開設:未定(2021年10月より暫定開館)
鑑賞料金: 暫定開館特別展示期間のみ無料

大原美術館 新児島館外観(仮称、新設)
岡山県倉敷市にある大原美術館は、倉敷を基盤に幅広く活躍した事業家の大原孫三郎が、前年死去した画家児島虎次郎を記念して1930年に設立した、日本最初の西洋美術中心の私立美術館。本館、分館、工芸・東洋館からなり、児島虎次郎の絵画や古代オリエントの美術品など計約3,000点を収蔵、常時600件を展示している。これらに加えて、旧中国銀行倉敷本町出張所を改修し「新児島館(仮称)」として新館がオープンする。昨年10月1日から暫定開館されており、ヤノベケンジの「サン・シスター(リバース)」などの作品を鑑賞できる。本格的な開館が待たれる。
関西で開催間近の『イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜―モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン』
そして、1月から関西でスタートする美術展の中で特に見逃せないのは『イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜―モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン』。1月28日(金)からあべのハルカス美術館でスタートする。
イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜ーモネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン
古代から現代まで約50万点にのぼる文化財を所蔵する、エルサレムのイスラエル博物館。珠玉の印象派作品をコレクションしていることでも知られている。今回、モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガンら印象派全盛期の傑作を中心に、約70点が来日。そのうち、なんと8割が日本初公開。日本でとりわけ人気の高い印象派、その前後のバルビゾン派からナビ派までを含む「光の系譜」をじっくり楽しめる展覧会だ。それでは簡単に構成を紹介しよう。
第1章 水の風景と反映
ジャン=バティスト・カミーユ・コロー「川沿いの町、ヴィル=ダヴレー」 1855-1856年頃、油彩/カンヴァス、44.5×73.5cm、イスラエル博物館蔵
猛スピードで工業化と都市化が進む、19世紀後半にフランスで誕生した印象派。第1章「水の風景と反映」では、彼らが好んで描いた移ろいゆく自然の様相の中でも、水の風景にフォーカス。水面に反射する風景や光が刻々と変化する様を鑑賞できる。バルビゾン派を代表する画家のひとり、ジャン=バティスト・カミーユ・コローは、「川沿いの町、ヴィル=ダヴレー(日本初来日)」で、銀灰色ともいわれる色調を生かして、穏やかで抒情的な風景を描いた。他にも、クロード・モネの「睡蓮」連作48点から、初来日の1点も展示される。
第2章 自然と人のいる風景
ポール・ゴーガン「ウパ ウパ(炎の踊り)」 1891年、油彩/カンヴァス、72.6×92.3cm、イスラエル博物館蔵
ありのままに起きる自然の変化や風景を克明に描きとろうとした第2章「自然と人のいる風景」では、多彩な視点や構図にトライするとともに、自然の一部として生きる人間の営みにも目を向けた。バルビゾン派の風景画ではごく慎ましく描かれていた人間の姿が、印象派の画家によりクローズアップされ、モチーフとしてかけがえのないものに変化した。
フィンセント・ファン・ゴッホ「プロヴァンスの収穫期」 1888年、油彩/カンヴァス、51.0×60.0cm、イスラエル博物館蔵
印象派の実験精神を受け継ぎながら、表現を深化させたポスト印象派には、近代化が進むヨーロッパ社会において、次第に希薄となる人間と自然の根源的な関係性を取り戻そうとする動きも現れた。ゴッホやピサロと親交があることでも知られるポール・ゴーガンは、1891年、原始的な生活に憧れてタヒチへ移住。「ウパ ウパ(炎の踊り)」では、ゆらめく炎に照らされる先住民たちの官能の踊りを描いた。
第3章 都市の情景
急速に近代化していったパリの街には、社会的にも文化的にも同じく変化が訪れた。この時代の潮流にも印象派はしっかりと呼応。裕福な市民階級から、交通網、工場、労働者階級の姿まで、社会の光と影までも描き出すようになった。
この章で特筆すべきは、大阪会場に先駆けて開催された東京会場において、非常に大きな話題となったユダヤ系ドイツ人画家、レッサー・ユリィの作品が4点初来日したことだ。日本では調べても情報が出てこないほどの無名作家だったにも関わらず、実物を見ると、釘付けになってしまうというユリィの作品、一体どれほどのパワーがあるのか、その目で確かめてみてほしい。筆者も必ず行く。そのほか、ドガやピサロの作品も初来日する。
第4章 人物と静物
ピエール=オーギュスト・ルノワール「レストランゲの肖像」 1878年、油彩/カンヴァス、54.6×66.2cm、イスラエル博物館蔵
近代化による環境やライフスタイルの変化は、その時代を生きる人間の表情や仕草、内面にも少なからず影響を与えていく。人物の「ひととなり」を、生き生きとしたタッチと色彩でとらえた肖像画はまさに新時代の芽吹きを象徴している。また、花や果物などの静物も豊かな生命感をもって描き出した印象派の画家たち。ピエール=オーギュスト・ルノワールは1870年代、印象派の手法を独自に探求しながら富裕層の肖像画を手がけていたが、身近な友人の肖像画も描いた。初来日の「レストランゲの肖像」は、のびやかなタッチが友人に向ける穏やかな表情を引き立て、2人の親しい関係性を物語っているようだ。
『イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜―モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン』は、1月28日(金)~4月3日(日)まであべのハルカス美術館で開催される。追って詳細なレポートをお届けする予定だ。
2022年の関西アートシーンとして、4月には京都市京セラ美術館に特別展『ポンペイ』が巡回、7月には大阪市立美術館で開催される『ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展』で、修復された「窓辺で手紙を読む女」が来日することも注目しておきたい。また『スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち』展が神戸市立博物館で開催されるほか、『『鬼滅の刃』吾峠呼世晴原画展』、『庵野秀明展』の巡回もある。コロナで長らく延期になっていたが、秋にはいよいよ『アンディ・ウォーホル・キョウト / ANDY WARHOL KYOTO』も開催。今年も全国各地で様々な美術展が開催されるため、ぜひ最高のアート体験をしてほしい。SPICEでは今年もいろいろな展覧会やギャラリーを取り上げていくので、お楽しみに。アートにたくさん触れる1年になるよう願いを込めて。
文=ERI KUBOTA

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