劇団☆新感線主宰・演出いのうえひで
のり、劇団のスタイルから最新作『神
州無頼街』までを語るーー記者会見に
は福士蒼汰と宮野真守も出席

2022年劇団☆新感線42周年興行・春公演 いのうえ歌舞伎『神州無頼街(しんしゅうぶらいがい)』が、3月17日(木)~29日(火)の大阪オリックス劇場を皮切りに、静岡公演、東京公演と5月28日(土)まで上演される。本作は、博識の若き町医者と陽気でお調子者の口出し屋の強力バディが、ヤクザな猛者たちが暴れ回る無頼の街で、それぞれの過去の因縁に立ち向かっていく幕末伝奇活劇。一昨年、コロナ禍で公演が叶わなかった舞台が満を持しての上演となる。大阪市内では記者会見が開かれ、町医者の秋津永流(あきつながる)を演じる福士蒼汰、口出し屋の草臥(そうが)を演じる宮野真守、劇団☆新感線の主宰・演出を務めるいのうえひでのりが出席。記者会見後には、いのうえに単独インタビューを敢行。改めて、劇団☆新感線の現在に至る成り立ちや思いも明かしてくれた。
『神州無頼街』
■福士「全身全霊でぶつかりたい」宮野「絶対やるんだと諦めず進んできた」
記者会見で福士は、それぞれの役柄について「まっすぐなキャラクターだなと思いました。でも裏がある、陰があるのは、僕らしいかなとも感じました」と自己分析。宮野は「(脚本の中島)かずきさんが僕らと過ごす中で、僕らから受けた印象を当て書きしてくれてますが挑戦的にも感じます。僕が声優という生業なので、口出し屋という声を表現するオリジナルの職業を書いてくれたのかな」と語った。
福士蒼汰
劇団☆新感線に2度目、いのうえひでのり演出作品としては3度目の出演となる福士は、「(中止から上演の)2年間でスキルアップしたいなと殺陣を教わったり、稽古したりしてきました。お芝居をより好きになりましたね。2年間で培ったものをアウトプットしたいです。本当に全身全霊でぶつかっていきたいですし、もっと出来ると思っているので、自分の裸を見せて頑張ります」と意気込む。
宮野真守
また、福士とふたりきりで台本の読み合わせをした事も嬉しそうに話した宮野は、「とにかく、この状況下で芝居をさせてもらえる事が幸せ。2年前、本当に悔しくて、絶対やるんだと諦めずに進んできたし、みんなで一緒にコロナ禍に気を付けていきながら、エンタメを止めずにいきたい」と決意を新たにした。
『神州無頼街』
会見中もずっと仲良く喋っているふたりを、いのうえは「本当に仲が良いんだねー!」と笑いながらも、「今回はいのうえ歌舞伎とはいえ、久しぶりにうるさい、やかましい、しつこい感じなので、お祭り好きの関西の方々には思いっきりお祭りに参加してもらいたい!」と熱い思いを口にした。
■いのうえ「新しい人との出逢いがあって、初めて色々な可能性や新しい物語が生まれる」
いのうえひでのり
――去年春のYellow⚡新感線『月影花之丞大逆転』では、古田新太さんと阿部サダヲさんにインタビューさせていただいたのですが、古田さんが「久々の少人数でのおポンチな芝居」という話をされていたのが印象的でした。
わりとネタものなのに、ちゃんとお話もあってね。元々、月影先生シリーズ最初の『花の紅天狗』(1996年、2003年公演)が漫画『ガラスの仮面』をオマージュしているので、ある種、バックステージものだし、その上でのおポンチ芝居の系譜というか。どうしても、新感線でフルスペックでやるとスタッフ含め100人前後になるので、あの当時のコロナ禍では怖いなと。ちょっとでもリスクを減らそうと少人数にして、客席数も減らしてやりましたね。
――私も観させていただきました。いつもと違う新感線ではあるのですが、とにかく楽しくて面白くてたまらなかったのを覚えてます。
それは本当にありがたいです。僕らもコロナ禍になってから、お客さんを笑わせるような芝居を初めてやって、お客さんが喜んで下さっているのを感じたし、幸せな劇場空間で、こういうのが良いなと思いました。お客さんも待ってくれていたし、そういう良い客席でしたね。そういう意味では余計にラストの方で公演が中止になったのは、僕らの現場どうのこうのではなく、人流を減らすという僕らのあずかり知らぬところで規制が始まったので、何とも言えぬ悔しさがありました。こればかりはどうしようもないですから……。
――そうですよね……。そして、去年秋の『狐晴明九尾狩』では、いわゆるフルスペックでの公演が復活となりました。
何年かぶりに(演者とスタッフが)フルスペックで、客席も全員入れるという満杯な状態でできましたね。東京はTBS赤坂ACTシアター、大阪はその倍のキャパのオリックス劇場でやったんですけど、お客さんたちが大阪で待ってましたという気持ちでいてくれて、その舞台の真ん中に(中村)倫也がいるという……、幸せな気持ちになりました。カーテンコールでお客さんの喜びみたいなものが凄く爆発していて、ちょっと感動的というか、一瞬コロナが終息したんじゃないかと錯覚するくらいに「舞台はいいなぁ」と思わせてくれる大阪初日でしたね。実は陰陽師を研究されているアドバイザーの方から、安倍晴明ものをやると祓いになって災害が去るといういわれがあると聞いていて、実際に公演が始まったあたりから感染者数が減って。大阪千秋楽時にはかなり感染者数が減ったんです。もうすぐ三宅(健)くん主演の陰陽師の舞台(『陰陽師 生成り姫』)もあるので、また感染者数が減るんじゃないかなと願ってますね。
いのうえひでのり
――先程の会見で、今回は凄い情報量のある芝居になると話されていて、また去年の2本とは違う魅力があるのではと楽しみになりました。
最初の脚本が書かれたのはコロナ前でして、4時間くらいやるんじゃないかという凄い情報量だったんです。流石に今はまだコロナ禍だし、タイトにしようと少し(内容を)摘まんだんです。だけど、この間ストレートでおとなしい『狐晴明九尾狩』という、いのうえ歌舞伎を終えてやっぱりもっと楽しいものをやりたいと思って。今回は、マモ(宮野)と帝劇(帝国劇場)の真ん中でミュージカルをバンバンやっていた髙嶋のお兄ちゃん(髙嶋政宏)がメインキャストにいるので、脱線というか、歌とか踊りとか色々な要素を入れたもっとガチャガチャなものにしたいなという欲が凄く出ました。今回は、いのうえ歌舞伎とはいえ、音楽劇に近いものになりますね。
――Yellow⚡新感線、『狐晴明』、『神州無頼街』と連続で、3作ともタイプやジャンルが違う新感線が観れるというのは凄く嬉しいです。
本当に図らずも、こういう流れになりました。ひとつは『神州無頼街​』が飛んで2年後に上演が出来るというのが一番大きい。Yellow⚡新感線も元々予定していた公演じゃなかったですし。この3つが並んで順番に上演されていくのは、コロナ禍で予定変更した結果で、今までやった事のないラインナップになりましたね。そうじゃなかったら、少人数のおポンチ芝居をやる事は無かっただろうし、通常だったら『狐晴明』も、もっとゴチャゴチャしてたかもしれない。『狐晴明』は3時間以内に収まっていたので、お客さんが「やれば出来るじゃないか!」と驚いていましたが「うるせーよ!」みたいな(笑)。キャラが減れば、芝居は短くなるけど、そんなにキャラが減ってないわりにはタイトになりましたよね。Yellow⚡新感線も2時間で短いと言われましたけど、映画にしてみれば全然ある時間ですから。
――凄い情報量のお話でいうと、「全部(情報を)拾おうとしなくてもいい」と会見で仰っていたのが心に残っています。
そうそう、全て拾わなくていいんですよ。お客さんはやっぱり色んな事を拾いたいと思うので、そこに「拾うな!」というのもおかしな話ですけど(笑)。でも、全部(情報を)追いかけてると、こんがらがるし、置いてけぼりになって、せっかくのおいしいとこを逃してしまう。ここ観てれば、何となく楽しめるというようには作っていると思うんで。「今の何だ?」という部分があれば、もしかしたら逆に戯曲を読んで楽しんだり。二度三度観て楽しむというのもあるんですけど、映画館で上映する「ゲキ✕シネ」になった時やDVDになった時に「ここは、こういう裏があったんだ!」という楽しみ方も出来ますから。やはり一度で物語全部を奥行まで押さえようと思うと、かえって楽しめないんじゃないかな。観たままの楽しさを、そのまま享受して欲しい。実はかずきさんが裏設定やおもしろい仕掛けを作っているという事に気付いて、そこがおもしろいと思って興味を持ってくれたら、深堀りして答え合わせをしてくれたらいいし。そうじゃなくて、そのままドーンとお祭りで楽しんでもいいし。
――以前、他のインタビューで、「昔のお芝居は、よくわからなくても何かおもしろいよねと思える良さがある」という話をされていて、凄くそこに共感した事も思い出しました。
そうそう、特にアングラ(芝居)は、観ても多分わかってなかった。でも、何か訳わからないけど感動するというのがあったじゃないですか。それが、いつしか、お芝居の観方が、「わからない=つまらない」というふうになったんですよ。みんなが理解しなきゃ駄目みたいな。「訳わからなくても凄い物を観せられたな」とか、「もしかしたら、こういう事をこのお芝居は言ってたんじゃないかな」というのを色々考えるから、観るのが楽しかったりするというのもあるので。逆に観客としての知的な遊びとしては、そういう観方の方が大人だなと思うし、是非そういうふうにも観て欲しい。そういうお芝居に比べれば、新感線は観た通り楽しめれば良いわけで。
いのうえひでのり
――今回もそうですが、新感線の凄いところは、客演の新しい若い俳優の方が主役を演じられても、しっかりと新感線になっているというシステムを作られた事だなと思っていまして。以前のインタビューで劇団員だけがガチでメインをやるのは、2000年くらいまででやりきったと話されていたのも凄く新鮮でした。
『古田新太之丞・東海道五十三次地獄旅~踊れ!いんど屋敷』(2000年公演)という芝居が、劇団だけでやる芝居の集大成でした。その頃に、現在の松本幸四郎さんである市川染五郎くんと新橋演舞場で『阿修羅城の瞳~BLOOD GETS IN YOUR EYES』(2000年公演)を開催した際に、今のいわゆる客演さんが真ん中にいて、それを劇団員が固めるというスタイルが出来たんです。ちょうど、その頃が節目かな。関わってくれるゲストの俳優さんたちも劇団の公演に参加するという気持ちで出てくださっていますしね。そこは通常のプロデュース公演とは違う。劇団の形にゲストさんが出るというイメージは変わらない。プロデュース公演はイチから作らないといけない時間的な問題もあるし、上手くいくか上手くいかないかという可能性もある。新感線の公演は、ある方向性に向かう集団としてのベクトルが既にありますから。かと言って、集団にこだわるんだというわけでも無いし。そういう意味では新しいというか、それぞれの良い方向を上手いとこ取りできているんではないかと思います。古田がいる公演といない公演ではニュアンスも違うけど、ゲストさんたちを楽しんでももらえますので。近い事を色々と始めている人たちもいますけど、やっぱ先駆けにはなっているかなと。
――歌舞伎、宝塚のようなジャンルのひとつとして新感線が確立していると、舞台関係者やお客さんの中には考える人もいるので、やはり改めて凄いと思います。
Twitterでエゴサをすると、例えば「今回の宝塚は新感線味がある!」とかで「新感線味」という言葉を見て、とても気になるんですよ(笑)。宝塚の演出家の方で新感線を好きな方がいらっしゃるみたいですし、ひとつのジャンルみたいなニュアンスで捉えられているのはありがたい事ですね。まぁ、狙ってやってきたわけじゃないですし、必要に迫られて、そうなっていったところがあったと思います。必要は最大の何とかという言葉じゃないですけど、そんな感じはしますね。元々、幸四郎さんと一緒にやるきっかけになったのも『髑髏城の七人』(1997年公演)を観て下さって、「これが現代の歌舞伎だ」と言ってくれて、「それじゃあ、一緒にやりましょう!」と盛り上がった事なんで。ゲストさんで来てくれる方たちも、自分の中で新感線に参加するという事に意義を感じて手を上げてくださっているので、そこはありがたいです。それと同時に1回やって「本当にしんどい!」という方たちもいらっしゃいますけど(笑)。でも、今回のマモも福士も「また出たい!」という方たちだし、楽しんでやってくれているので本当にありがたいですよ。そういうのが良い方向で舞台に出れば嬉しいですし。
――そういう新しい若い俳優の方々と毎回ご一緒するのは、いのうえさんにとっても凄い刺激になりますよね。
刺激になりますね。やっぱり、あのIHIステージアラウンド東京で2年(2017〜2018年)かけて、『髑髏城の七人』を花鳥風月極の5シーズン6作品に分けて、上演したのは大きいです。新感線のことをよく知ってる人、関りが深い人ばっかりとやっていたら、あのステージ数は回せなかったので。だから、今まで一緒にやった事のないジャンルの人たちに来てもらわないといけない必要性が出てきたんですよ。そこで出逢ったのが、マモであったり福士であったりだし、あと2.5次元の俳優さんたちにもアプローチかけようかとも思いました。そういう意味では凄い可能性や、色んな広がりが出来たなと。やっぱり新しい人との出逢いがあって、初めて色々な可能性とか新しい物語とかが生まれるし、そうやって作品が出来上がっていくのが楽しみなので、そこは尽きないなと思っています。決して狙ってやってはいないし、必要性に迫られた時に求められているというのもありますね。
取材・文=鈴木淳史 撮影=田浦ボン

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