鹿賀丈史&市村正親「ラブだけでなく
ヘルシーもフォーエバーに」ミュージ
カル『ラ・カージュ・オ・フォール』
製作発表レポート

鹿賀丈史と市村正親が5度目のタッグを組むミュージカル『ラ・カージュ・オ・フォール』の製作発表が、2022年1月25日(火)に都内にて開催された。
『ラ・カージュ・オ・フォール』は“夫婦愛”と“家族の絆”をテーマとし、1985年の日本初演以来長く愛され続けるミュージカル・コメディ作品だ。2008年からは南仏サントロペのゲイクラブのオーナー・ジョルジュを鹿賀丈史が、クラブの看板スター“ザザ”ことアルバンを市村正親が演じ、心温まるストーリーを通して本作のテーマを体現。『ラ・カージュ』史上最高のコンビとして愛されてきた。
この日の製作発表には鹿賀と市村の二人が登壇し、3月の開幕に向けたそれぞれの想いを語った。その模様を写真と共にレポートする。
(左から)鹿賀丈史、市村正親
『ラ・カージュ・オ・フォール』の「プレリュード」と共に姿を見せた二人。ピンクの花があしらわれた高砂が設置された席に着くと、鹿賀、市村の順に挨拶をした。
鹿賀:『ラ・カージュ・オ・フォール』には5回目の出演になります。それから10何年経って自分自身いい歳になりましたものですから、前回までは黒いカツラを被っていたんですけれども、カツラを被っている場合じゃないだろうという思いがあり、今回は地毛で出演いたします。今はいろんな芝居を新しく考えて稽古している最中です。こういう状況の中でお客様に訴える力、人との繋がり、人への愛、他人を思いやる気持ち、そういうものがふんだんに散りばめられた素晴らしいミュージカルでございます。少しでも多くのお客様に来ていただければと思います。
鹿賀丈史
市村:僕はこの作品と出会ったのが確か44、45歳のとき。かれこれ30何年この役をやっているんですけども、約30年前は非常に元気で美しく華やいでおりました。時が経つというのは、役をよりリアルにしてくれるのだなと最近思います。今回また鹿賀くんと夫婦役をやれるということで運命的なものを感じますし、30年前には出せなかったような、よりザザに近いところに行けるんじゃないかなと期待で胸が膨らんでいるところです。去りゆく美しさをどこまで自分の手元に置いておくことができるか・・・・・・最近はメイクの技術も発展しておりますので、いろんな方からメイクの技を盗んで束の間の嘘の輝きを放っていけたらと思っております。大変素敵な作品ですので、このコロナ禍、みなさまに愛と喜びと感動を与えられたらいいなと思います。
市村正親
二人が挨拶を終えると、質疑応答の時間が設けられた。
――ジョルジュはアルバンの、アルバンはジョルジュのどこに惹かれていらっしゃいますか? そして鹿賀さんは市村さんの、市村さんは鹿賀さんのどこに俳優としての魅力を感じていらっしゃるか、それぞれ教えてください。
鹿賀:どこに魅力を感じているかと言えば、奥さんとしてかわいいということと、二人で力を合わせてゲイクラブをやっているということにおいてはかけがえのない人だなと。喧嘩したり普通の家庭にあるようなことがこの家族の中にもあって、その辺が面白いところかなと思います。
俳優としては49年の付き合いになるのですが、20代で劇団四季で一緒にやっていた頃から、市村正親という俳優の魅力は知っています。一番言えるのは芸の幅が非常に広いということと、舞台ならではの芝居の押し出しというものが非常に強いということ。的を外さないすごい役者だなという風に思っています。長く付き合っているということもありますけれども、やっぱり息が合うというのはやっていて非常に気持ちのいいものです。この二人の関係を中心に舞台は展開していくので、お客様にも楽しんでもらえたらと思っております。
市村:やっぱりザザのわがままを全部聞いてくれるところが、アルバンとしてはジョルジュの魅力なのかなと思っています。それとダンディであるということ、品があって大人で、全部私のわがままを聞いて支えてくれる。そういうところに惚れているんじゃないかなと。
俳優の鹿賀丈史についてはですね、私が24歳で劇団四季のオーディションを受けたときから、常に舞台のセンターに立っていたのが鹿賀丈史。『ジーザス・クライスト・スーパースター』でも『ウエストサイド物語』でも『ヴェローナの恋人たち』でも『カッコーの巣をこえて』でも、常にセンターに立ってとても良い声で、良い手本でありました。僕はいつもその横でコバエのようにブンブンブンブン、(鹿賀)丈史からうるさいなと言われながらやってきました(笑)。そんなコバエのように生きてきた男が丈史と夫婦になり、最近ではWキャストで同じ役をやったり、市村も随分頑張ってきたなと。僕にとって憧れの丈史がいたからここまで来れたのかなと思っています。今回はジョルジュとアルバンになるんですけども、どこかで役が鹿賀丈史と市村正親にダブってくる場面があると思います。
写真提供/東宝演劇部
――宣伝文句に「鹿賀ジョルジュ&市村ザザ ラブフォーエバー!」とあるのですが、これはどういう意味でしょうか? “フォーエバー”ということはファイナルという風にも受け取れるのですが。
鹿賀:いや、そういうことではないですね。僕たちは70を越して、これから先も元気で芝居ができる限りまたこうやって一緒にやる作品はあるかもしれないですし、そういう意味でのフォーエバーと僕は捉えているんですけども。どうですか?
市村:先日二人で占いの番組に出たのですが、その占い師によると僕らは「ずっと舞台に立ったまま舞台の上で果てる」と(笑)。そういう意味でフォーエバーなんじゃないかなと(笑)。お互い風邪に気をつけて、ラブだけでなくヘルシーの方もフォーエバーにしたいなと思っている次第でございます。
鹿賀:でもねえ、舞台をやっている人は、舞台の最中に息を引き取ることが最高だとかよく言われますけども、それは事実無理で(笑)。
市村:フォーエバーというのは気持ちの問題ですね。肉体はどんどん滅びていきますので。歳を取るということは恐ろしいものだと『オリバー!』のセリフにもあったので実感を持って言っていましたけども。気持ちはフォーエバー! だけど現実は悲しいと思います、はい(笑)。
写真提供/東宝演劇部
会見の途中、1985年の日本初演から出演し続けている真島茂樹(振付/ハンナ役)と森公美子(マリー・ダンドン役)からのメッセージが読み上げられる場面があった。一部抜粋して紹介する。
【真島茂樹からのメッセージ】
「実は市村さんは若いときにバレエの学校が一緒でした。毎日スタジオの鏡や床を掃除し、お金がなくて先生にご馳走になりながら一緒にダンスのレッスンに励んだ時期がありました。鹿賀さんは若いときから活躍されていて、出演された舞台はずっと拝見していましたし、市村さんの舞台も何度も観劇させていただいています。このお二人がまさか『ラ・カージュ・オ・フォール』でコンビを組むなんて。最初に聞いたときは本当に驚きました。鹿賀さんはダンディな方で、市村さんは小鳥のように可憐で、本当にお似合いのカップルです。
僕も稽古場で自分の心と体にムチを打って汗を流しています。初演から37年、あっという間でした。僕が知っている全部を若い出演者のみなさんに伝授して、舞台に立つ全員が花開き幸せな気持ちになれるよう、そしてお客様にもっと幸せな気持ちになってもらえるように情熱を注ぎます。こういう時期だからこそ、ゴージャスで華やかな世界を通して、物語の中にある全ての愛をお客様にお届けしたいと思っております。 真島茂樹」

鹿賀:真島さんは稽古場で常に中心に立っていて、彼の芸歴やテクニック、そして想いが稽古場を支配するような力と存在感がある方です。僕はその姿を見て非常に頼もしいなあと思いますし、あの人こそ舞台の上で死ぬんじゃないかなあって思います(笑)。
市村:マジーは若い頃からバレエで一緒で、いつも酔うと彼は道の真ん中でザンレールするんですけれど、今やザンレールすると舞台に立てなくなっちゃうんでね(笑)。とにかくムチを振るうハンナですけども、こんなに高いヒールを履くんですよ。マジーが無事大千秋楽を迎えられるよう、影になってサポートしていきたいなと思っています。
【森公美子からのメッセージ】
「鹿賀丈史さんは『レ・ミゼラブル』でもご一緒しているのですが、リハーサルではフランクで面白くて。しかし本番になるとあまりにも凛々しく近づけない存在でした。『ラ・カージュ』では最近市村さんより女性っぽくなって、「(ジョルジュとアルバンという役が)逆の日があっても楽しいかも」という思いもあります。『ラ・カージュ』のお二人は本当に最高です。世界一のコンビ、カップルです。市村さんとは『ラ・カージュ』で長いこと共演させていただいていまして、初めていっちゃん(市村)にお会いしたときから全く変わらなくて年を取っていないのですよ。私と二人のアドリブもあるんですけど、長くなってきていると。袖に入った途端全員でいつも爆笑になってしまいます。私の中で、アルバンの市村さんは間違いなくかわいい人の代名詞です。時代と共にアドリブも変わってきていて楽しいです。
毎回これで最後の『ラ・カージュ』と思ってここ5、6年を過ごしてきましたけれども、今回コロナ禍の中、この愛に満ちた、そして「今この時を何よりも素晴らしい」という素晴らしい歌詞と共に、みなさまと今を楽しみたいと思っています。ちなみに、私のわがままボディは益々わがままになり、今調整中です。 森公美子」

鹿賀:モリクミちゃんはですね、初演からずーっとやってこられて芝居も安定しているし、一番驚くのは体型をずっと維持されているということ。モリクミちゃんはゲイに反対している政治家の奥さんという役なんですけれども、我々の世界に入ってきたときにその場を包んでくれるような空気があって、彼女が出てくると非常に安心するんです。そういうところもあって非常に感謝しています。
市村:モリクミちゃんの“カジェル愛”っていうのがものすごくて。彼女の体はカジェルへの愛であんなに大きくなっちゃったのかなという感じがするんです。彼女は2幕からしか出ないんですが、1幕は袖にいて、特にプロローグでは舞台上のカジェルが一瞬パッと振り向くときがあるのですが、そのときのためだけに不思議な格好をしてカジェルたちを喜ばせてくれるんです。本当に縁の下の力持ち。またモリクミちゃんのとてもかわいいハイレグが見れると思うので、今回しっかり目に焼き付けておきたいなと思います。
――49年の付き合いになるお二人ですが、お互いの変わらないところと変わったなと思うところを教えてください。
鹿賀:変わらないのは、市村正親というのは舞台が大好きで、表現することにものすごく貪欲であるということ。それは変わりませんね。若い頃のいっちゃんは非常に線が細くてね。ここへ来て何がきっかけだったのかわかりませんけど、非常に太くなったんですよね。それは肉体も表現も。いっちゃんが芝居を続けていくうちに自分で見つけたものだと思うので、その辺の変化というのは非常に尊敬しています。そういう意味では随分変わったなあという印象があります。
市村:丈史の変わらないところは、相変わらずステーキというところ。舞台の上にドーンと立っていると、色気があって華があって大柄で、やっぱりステーキだなあと。僕は昔、鹿賀丈史の横にいるとステーキの横のクレソンって言われたんですけども、最近はミニッツステーキくらいにはなれたかなあ(笑)。
(左から)鹿賀丈史、市村正親
――お二人はゲイ夫婦の役を演じることになりますが、この作品を長年続ける中、セクシャルマイノリティの方を取り巻く環境の変化を感じることはありますか?
鹿賀:僕は『ラ・カージュ』の原案者であるハーヴェイ・ファイアスタインの自伝を舞台にした『トーチソング・トリロジー』という作品を34年前にやっているんですね。ゲイである彼の生き方を理解してくれない母親と、でも本当は愛し合っているという姿を描く作品で非常に面白かった。当時観に来られたお客様のほとんどの方が大変喜んでくださいました。でも中には楽屋にいらして「いやらしい。何これ」と言うような方もいました。それから何年か経って『ラ・カージュ』をやるわけですが、世界と比べて日本というのは非常に理解が遅れているなと思います。でも、この舞台をご覧になって「いやらしい」と言って帰ってしまうお客様は今はいらっしゃらなくなりました。そういう意味では非常にお客様に感謝しているところでもあります。
市村:30年前に初めて出演したときは地下鉄を利用して稽古場まで通っていたので、電車の中でセリフを確認していたんですね。するとやっぱり足が閉じるし、肘は内側に入るし、つい小指も上がっちゃうし。で、それを見た人が一瞬引くんです。30年くらい前はそういうムードがある中での上演でした。けれどあるときから「ありのままの私」というナンバーを歌うときに、それが明らかに自分がゲイであることへの反抗ではなく、自分が愛する人に裏切られていたという事実に対して「私は私よ」と歌っていたんですね。その瞬間を舞台の上で生きることが、僕は俳優としてこの職業について非常に嬉しいことだなと思っています。僕の30年間でいろんなものが変わってきているけれども、変わらないのは愛だなと思います。
(左から)鹿賀丈史、市村正親
製作発表の最後は、鹿賀と市村の一言で締めくくられた。
鹿賀:『ラ・カージュ・オ・フォール』というのは問題提起も含んでいるんですけれども、ミュージカルとして非常に楽しく面白く、そしてまた考えていただける素晴らしい作品です。なんとか3月頭には舞台がちゃんとできるように、お客様も安心して劇場に足を運んでいただけるような状況になることを願うばかりです。自分はこの作品に真摯に取り組んで、どんなことがあろうと役者としての想いを曲げずに稽古を続けていきたいと思います。今日はありがとうございました。
市村:コロナ禍でこの2年くらい舞台が中止になったり再開したりしてきましたが、お客様が満杯に入って舞台で表現されたことに素直に反応できるときが、一番劇場が喜ぶはずなんです。声を出しちゃいけないとかいろいろ規制が多い中、とにかく感染者が出ないように俳優、スタッフ一同気をつけながら大千秋楽まで乗り切れたらいいなと思っています。舞台の上からの愛は、カンパニー一同ものすごい勢いで出し続けていくと思うので、それをしっかり受け止めて、マスクの中で笑ったり感動してくれたらいいなと思っています。そういう作品になるよう一生懸命頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします。

(左から)鹿賀丈史、市村正親

東京公演は2022年3月8日(火)〜30日(水)まで日生劇場にて上演される。その後は愛知、富山、福岡、大阪、埼玉と全国を巡る予定だ。
『ラ・カージュ』史上最高のコンビと称される二人の名優の姿が劇場で観られる日を、心待ちにしたい。
取材・文・写真=松村蘭(らんねえ)

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