ヨーロッパ企画の約2年半ぶり劇団本
公演『九十九龍城』全国ツアーのファ
イナルは横浜~上田誠・石田剛太に聞

京都を拠点に活動する劇団「ヨーロッパ企画」による新作本公演『九十九龍城』の横浜公演が2022年2月26日、関内ホールで上演される。昨年(2021年)12月23日からの京都公演を皮切りに、東京(1/7〜23)、広島(1/26)、福岡(1/28〜30)、名古屋(2/3)、魚津(2/6)、高知(2/11)、大阪(2/19、20)と全国ツアーを実施中で、横浜はそのファイナル公演となる。どんな舞台になるのか、作・演出の上田誠、出演者の石田剛太に横浜で話を聞いた。
ヨーロッパ企画第40回公演『九十九龍城』プレビュー公演より [撮影]清水俊洋
ーー劇団としての本公演は2019年夏『ギョエー! 旧校舎の77不思議』以来、約二年半ぶりの劇団による舞台本公演ですね。今日までの全国ツアーの手応えをぜひ教えてください。
上田誠(以下、上田) まず2年ぶりの本公演ですから、上演できて嬉しいです。お客さんに会えたのが久々ですし、笑い声を聞いたのも久しぶり。これがやりたくて劇団をやっているので「ようやくこの空間に戻ってこれた!」という喜びが大きいですね。本当に久しぶり〜!という感じです。
上田誠
石田剛太(以下、石田) 本当にそうですね。こんなにたくさんお客さんが入ってくれるんだと思いました。というのも、おかげさまで、前売りが好調だったんですよ。これまで発売日や先行予約の時点でこんなにチケットが動くことなかったので、今回は待ち望んでいただいていたんだなというのを感じて、嬉しいですね。
発売前はめちゃくちゃ不安でした。公演はやろうと思えば、できたのかもしれないですけど、お客さんが入らなかったら、「ざんない」んで......
上田 「ざんない」は標準語じゃないね(笑)。
石田 お客さんが入らなかったら、残念だと思っていたら、予想を遥かに上回る売れ行きで。完売の回も多くて、とてもありがたいです。僕たちのことを忘れないでいてくれていたんだなと思います。
石田剛太
ーーツアーの最後の地は、横浜です。横浜への思い入れはありますか?
上田 僕ら大体ツアーのファイナルが横浜ということが多くて。自分らの中で、京都から始めて、東京行って、各地を回って、大阪行って、最後は横浜という流れがあるんです。だから横浜はいつもウィニングランの気分です。いや、ウィニングじゃない公演もあるのかもしれないけど(笑)、劇も出来上がって、寂しさとともに最後の横浜公演を迎えることが多い印象ですね。
石田 そうですね。東京公演が終わった後で、ツアー終盤が多いので、リピーターさんがよく来てくださっている印象ですね。今回の劇も多分2回3回と見たくなるような劇だと思うんです。だから特にリピーターさんが多くなるのかなと思います。
上田 また横浜には中華街があるのでね! 今回は特にぴったりなのではなんじゃないですかね。
石田 確かに。劇見終わった後に中華街に繰り出すみたいなね。
上田 きっと観劇後に中華食べたくなると思います(笑)。
上田誠
ーーちなみに横浜のおすすめのお店などはあります?
石田 ごめんなさい、中華中華言っておきながら、パン屋なんですけど(笑)、「のり蔵」というお店がおいしかったです。岡田義徳さんと撮影でご一緒した時に、連れて行ってもらったパン屋なんですけど。
上田 各地でいろいろなものを食べるのは喜びの一つでありますよね。観に来たお客さんも、観劇後に中華街を歩いてほしいですね。
ーー劇団の地上波テレビ番組「ヨーロッパ企画の暗い旅」をオンエアしているのも、京都(KBS)と神奈川(tvk)だけということで、コアなファンも多いのでは?
石田 そうですね! 昔、コロナ禍の前にイベントをtvkでやらせていただいたときに、たくさん横浜の方に来ていただいたんですよね。浸透しているんだなというのを感じました。「暗い旅」をきっかけに僕らを知った方が多いんですよ。だから横浜公演は客層がちょっと違う気もします。
石田剛太
ーー客層が違うとは?
石田 僕らのお客さんはおじさんが多いんですよ(笑)。
上田 そう、おじさんがおじさんを見にくるというのが僕らの特性なんですよ。
石田 最前列に白髪の方がよくいらっしゃるんですよね。でも横浜は高校生とか大学生とか若い女性の方とかが多くて。暗い旅から知った方が多いからでしょうか。
上田 広く見てもらえるのは嬉しいですし、下の世代に見てもらえるのは心強いですよね。
上田誠
ーー今回の『九十九龍城』。改めてどんなところが見どころでしょうか?
上田 ヨーロッパ企画はここ2年ぐらい、それこそコロナ禍で、演劇公演より映像や配信に力を入れてきました。ヨーロッパ企画は劇団と言いながらも割とそれぞれがいろいろな創作活動をやっていて、それの力が結集したものが本公演になったら面白いなといつも思っています。作品の本質とは関係ないようなことでも、僕らが今取り組んでいることや「こういう技術があるんですよね」みたいなことは、なるべく劇の中に入れようとしていて。
今回はそれでいうと、映像ですね。開演前も本番中も、いろいろな映像をスクリーンの内外に流していて、それと舞台との掛け算が、自分たちの最近強みになってきています。もちろん、俳優と脚本家のチームから始まった劇団ではあるんですけど、スタッフ力もすごいことになっていますね。彼らも10年来やっている人たちだから。
特に舞台美術がすごいですね。過去最長の仕込み・バラシ時間を誇るんです。演劇を観る喜びとして、僕は舞台美術を見る楽しさというのはすごく大きいと思っています。ワクワクする。舞台上に何か建っているということが。今回は中で進む物語もそうですけど、魔窟そのものも見てもらいたいです。
ヨーロッパ企画第40回公演『九十九龍城』プレビュー公演より [撮影]清水俊洋
石田 うん、舞台美術セットはそれだけでお金とれるんじゃないかというぐらい、見応えがありますし、格好いいです。劇場に入ってね、香港のような『九十九龍城』がどーんと建っている感じというのは圧倒されると思います。僕らも圧倒されたので。ここで舞台をやるのかとワクワクしました。見どころですね。
劇を観終わった後にチラシを見直す人が多いようです。まさにチラシの雰囲気がそのまま舞台にあるんですよ!ここにちょっと秘密が隠されていたり、逆にこのチラシがネタバレになっていたり。今回チラシをSNSをたくさんアップしていただいていますが、ゲームっぽい感じが印象的なんだと思います。
上田 あと藤谷理子という新劇団員が入ったことも大きな変化です。17年ぶりのことですから。もともと僕らは『サマータイムマシーン・ブルース』みたいな、年の近い人たちの物語をずっと作ってきて、そのまま20年経って、同世代集団みたいなところがあったんですが、スタッフも下の世代が入ってくれて、それでだいぶできることが増えたんですよね。前回公演『ギョエー〜』も、なんとなくそういう流れを意識して、先生と生徒、二世代の物語を書き、教育をモチーフにしました。
映像のこととか、配信のことが如実に変わりました。若い世代からの文化が入ってきて、縦の分厚さみたいなところがぐっと出てきました。藤谷理子さんは同じ事務所ではあったんですけど、僕らがこの先を見据えた時に、そういう縦の分厚さは出た方がいいと思ったし、単純に藤谷さんが面白い人で。入ってもらえたら百人力のような人。僕らにはない技術、能力、魅力を持っている人だから、入ってもらうことをお願いするのはだいぶドキドキしましたけど、言ったら「是非」というお返事をいただけました。
ヨーロッパ企画第40回公演『九十九龍城』プレビュー公演より [撮影]清水俊洋
ーー藤谷さんは入団前と後で変化があるように見えますか?
上田 彼女自身にとってはあまり変わらないと思います。バラシと仕込みを手伝わされるぐらいで(笑)。でも僕らとしては明らかにチームのバランスというか、関係性が変わりましたよね。ドリフターズに志村けんさんが入ったような感じです。
石田 例え自体が古いな(笑)。
ーー石田さんは、今作の舞台のモデルとなっている香港の「九龍城」に行かれたことがあったそうですが。
石田 そうなんですよ! でも、行ったら跡地だったんです(笑)。高校の卒業旅行で、友人と二人で、格好つけてパリに行こうと。でもお金がないから香港経由だったんですよね。香港に5時間ぐらいトランジットだったので、時間があるからどこかへ行こうと。九龍城が空港から近いみたいと、古いガイドブックになんか載っていたんですよね。で、実際に行ったら、公園になっていて、なんもないんですよ。それで帰った(笑)。飲茶食べて帰ったという感じです。
ーーあはは、トランジットの暇つぶしでいったとは。
石田 僕、ジャッキー映画大好きだったので、『ポリス・ストーリー』で見た世界がジャッキー・チェーンがその場でアクションしているような、街が本当にセットに見えるような。そこには感動しました。......九龍城はきれいな公園だったんですけど(笑)。
石田剛太
ーー今回の作品を作るにあたって、上田さんはどう調べられたんですか?
上田 九龍城砦はファンが多くて。結構、九龍城の中を図解した本とか写真集とか、インタビュー集なんかがあるんですよ。資料が豊富にあって、九龍城を舞台にした漫画作品もあるんです。しかも、今の時代、YouTubeで調べたら当時の九龍城の映像が出てくる。まずはそういうので九龍城を調べて。どんな住人たちが実際にいて、どういう暮らしをして......というのを見るところからでしたね。
石田 僕、現地に行ったことあるというのを今回初めて稽古場で言ったんです。それまで黙っていたんですけど。写真を見つけたので稽古場に持っていたら、(跡地だったので)馬鹿にされました(笑)。
ヨーロッパ企画第40回公演『九十九龍城』プレビュー公演より [撮影]清水俊洋
ーー劇団としての本公演は二年半ぶりですが、この間に、映画、配信、テレビ番組、外部公演など、劇団のみなさんの活動実績は、例年以上の多忙さだったようにも思えます。この2年間の活動の中で思い出深かったことは?
上田 2年間でいうと『ドロステのはてで僕ら』かな。初めて劇団で映画を撮ったんですよ。自分たちの手の届く風景を映画にしようと思い、京都の事務所近くのカフェとビルを借りて。楽しかったですね。劇団で映画を作ると、やっぱり劇団らしい映画になるし、それが思いもよらない広がりを見せていて、海外で賞をいただいていて。逆輸入されるように、日本でもAmazon PrimeやNetflixで見れるようになって。
演劇って、劇場の近くのお客さんーー例えば僕らがその街に行ったら、その街のお客さんーーが観てくれる。日本で上演すると、日本のお客さんが観に来るという、割とご当地のものなんだけど、映画は海を渡るし、逆に向こうの映像も渡ってくる。射程距離の長さみたいなことを感じて、面白かったですね。
石田 YouTubeの生配信は定期的に続けています。定期的に覗いてくれている方がいて、ずっと応援してくれている。それはとてもありがたいなと思いますね。昨日も舞台終了後に生配信をやっていたんですけど、たくさん見てもらっていて。全国どこからでも見られるのでね。嬉しいですよね。
上田 Vlogをね、今撮っているんですけど(※取材中も上田さんはカメラを回していました!)、演劇って割とブラックボックスだなと感じていたんです。配信や映像がこの2年ぐらいですごく発達しているのに、稽古場や劇場で行われていることは見えづらい。なかなか劇場に足を運びづらい今だからこそ、稽古場でやっていることなんかをオープンに、ちょっと窓を開けるようなことが必要な気がして。
それでVlogをやり始めたんですけど、演劇以外のことが変わり始めているので、演劇も多分そういう意味で変わっていく。ヨーロッパ企画は劇中でもいろいろな映像技術が入っていますけど、宣伝の仕方にも映像や配信を駆使するようになっていますね。
上田誠、石田剛太(左から)
取材・文・写真(人物)=五月女菜穂

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