北条義時役の小栗旬(左)と源頼朝役の大泉洋

北条義時役の小栗旬(左)と源頼朝役の大泉洋

【大河ドラマコラム】「鎌倉殿の13人
」第4回「矢のゆくえ」現代語のせり
ふが醸し出す臨場感

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。1月30日に放送された第4回「矢のゆくえ」では、源頼朝(大泉洋)による反平家挙兵の前日と当日の2日間に焦点を当て、大事を前に揺れ動く人間模様を描いて見せた。
 思うように兵が集まらず、ついに自ら坂東武者たちに頭を下げる頼朝の必死さ。平家に従う父・伊東祐親(浅野和之)と元夫・頼朝との間で板挟みになる八重(新垣結衣)の葛藤。戦勝祈願の読経を行う政子(小池栄子)とそれをやめさせる継母・りく(宮沢りえ)のやりとり…。
 ユーモアを交えながらさまざまなドラマが繰り広げられる中、どこか身につまされる気がしたのは、兵集めに苦労する主人公・北条義時(小栗旬)の姿だ。
 前回、頼朝の前で味方の兵の数を「ざっと見積もって300」と大見得を切ったにもかかわらず、前日までに集まったのは、20人にも満たない。頼朝に「申し訳ありません!」と平身低頭した末、「何とかします! 300は難しくとも、明日までに200はそろえます。必ず!」と宣言して奔走する。
 その姿に、会社の行事の準備に苦労する現代の会社員の姿がダブった。間もなく本番を迎えるが、準備は思ったように進んでいない。それでも会場は押さえて、参加者に案内もしてしまった。もはや、延期も中止も不可能。どうにかしなくては…。
 そんな状況を思い浮かべたのは、筆者だけではないはずだ。いや、会社員に限らない。学生でも、文化祭や体育祭など、学校行事直前の緊張感を思い出せば、義時の焦りに共感できるに違いない。
 小栗や大泉ら俳優陣の的確な演技が、そんな義時への共感を呼び起こしていることは言うまでもない。だが、しばらく考えて、その共感に大きく寄与している要素が他にもあることに気付いた。それは、本作の特徴である現代語を使ったせりふだ。
 例えば、頼朝、義時、義時の父・時政(坂東彌十郎)、義時の兄・宗時(片岡愛之助)が、集まった兵の数を確認する場面。300には程遠いその人数を、義時が恐る恐る「18人」と報告した後、「こりゃ幸先いいぞ。これだけ集まれば、心強くなりますね」「おう、そうよのう」と無責任に盛り上がる宗時と時政を、頼朝がこう制する。
 「ちょっと、ちょっといいかな?」
 こうして話の流れを変えた頼朝は、義時に「兵が少な過ぎないか?」と問いただす。この「ちょっと」については、小栗がインタビューで次のように驚きを語っている。
 「普段、時代劇の場合は『ちょっと』という言葉を使ってはいけないと思って参加するのですが、三谷(幸喜)さんの脚本には『ちょっと』が結構出てくるんです。それを見て、『言っていいんだ!?』と(笑)。頼朝役の大泉(洋)さんも『ちょっといいかな?』というせりふがあって、『まさかこんなせりふを大河で言うとは思わなかった』と言っていましたし(笑)」
 確かに、「ちょっといいかな?」というせりふだけに注目すれば、時代劇らしくない気もする。だが、このせりふがあることで、700年以上昔の出来事が、あたかも今目の前で起こっているように感じられないだろうか。
 実際、私たちの日常で「ちょっといいかな?」という言葉が飛び出しそうなのが、さまざまな会議の場だ。いつの間にか本題から脱線して盛り上がっていく話題に、司会者が「ちょっといいかな?」と割って入って流れを変える…。そんな状況に遭遇したことがある人も多いのではないだろうか。
 現代語のせりふには、そんな自分たちの経験を義時や頼朝たちのやり取りに重ね、物語を身近に引き寄せることで、臨場感を高める効果があるように思うのだ。(もちろん最終的には、三谷幸喜が書いた台本に基づくコミカルな演出や芝居も含めた総合的な結果であるのだが)。
 劇中では、ついに注目の源平合戦が幕を開けた。結果自体は分かっているとはいえ、そこにたどり着くまで、どんなドラマが繰り広げられるのか、気になるところ。その行方を、現代語のせりふが醸し出す臨場感とともに味わっていきたい。
(井上健一)

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