TOMOO、静かに未来へ思いを馳せるよ
う優しく柔らかな歌声を届ける「あな
たと生きるための弱さとして、そこか
ら見えるものも書いていきたい」

TOMOO「TOMOO one-man live "YOU YOU"」2022.02.06 WWW X
シンガーソングライター・TOMOOが、大きく羽ばたこうとしている。
ステージに姿を現したTOMOOは、オーディエンス一人ひとりに視線を送るように、フロアの隅々までじっくりと見渡した後、「HONEY BOY」「オセロ」を立て続けに披露。ソウルやファンクを土台にした、瑞々しくてダンサブルなポップソングを、くるくると回ったり、飛び跳ねたりと、ステージの上を常に動き回りながら歌いあげていく。サポートメンバーの演奏はかなりグルーヴィー、かつ低音強め。身体のどこか一部が自然と動いてしまうぐらい迫力があるのだが、それに負けずとも劣らないパワフルさと、落ち着いたトーンの歌声が印象的で、それが最高に心地よかった。
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MCでは「こんな時期なのに、今日は来てくれて本当にありがとうございます」と、心から感謝を伝えた後、これまで自分のライヴに足を運んだことがあるか、フロアに訊ねていたのだが、初めて観に来たというオーディエンスが約7割という結果に。自身の音楽が着実に広まっていることを目の当たりにして、驚きと喜びの声をあげていた。
ライヴ中盤では、MCを交えながら、ピアノの弾き語りで曲を届けていくTOMOO。ステージドリンクはいつも水にしているが、「40年後ぐらいにコーヒーを飲んでみたい」という話から、歌詞に〈コーヒー〉が出てくる「雨粒をつけたまま」を、柔らかなタッチで演奏すると、「中学校時代の帰り道の思い出が少し入っている曲」として「地下鉄モグラロード」を披露。軽やかに奏でられる鍵盤の音色で温かな空気を広げていった……かと思いきや、そこから続けた「Cigarette」で感傷にどっぷりと浸らせるという、3曲それぞれまったく違う表情でオーディエンスを魅了していた。

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そんな弾き語りブロックの後、ラジオ番組風の映像がスタート。ファンから事前に募集していた様々な質問にTOMOOが答えていく構成になっていたのだが、その中で、今回のライヴタイトルについての話題があった。『YOU YOU』というタイトルは、昨年の夏に行なったワンマン以降、いろいろなアーティストのライヴに足を運ぶ中で、彼女が感じたあることが基になったそうだ。
「人に何かが伝わるときって、まず最初に伝わるのは“熱”だし、残るのも“熱”だなと思って。それってどんなときに生まれるんだろうと思うと、歌っている人が、目の前にいる人に心の矢印が向かっているとき。“I”じゃなくて、ひたすら“YOU”なんだなと思って。人って、普通にしていたら自然と気持ちが“I”に向くけど、ライヴをするときは“YOU&I”の“I”はいらないなと思って、このタイトルにしました」
そんな彼女の想いが一際強く溢れていた後半戦では、「Ginger」を披露。歌詞に出てくる〈ginger cat〉のように(ちなみに彼女は茶トラ猫(=ginger cat)を飼っている)、自由奔放に跳ね回るキュートなサウンドでフロアのテンションをあげていくと、「脳内ダンスということで」と、間髪あけずに「POP'N ROLL MUSIC」へ。熱量たっぷりのバンドサウンドと、オーディエンスのクラップを受けながら力強く歌い上げれば、その勢いのまま「まだエナジーは残ってますか!?」と、キラキラとした甘酸っぱいサウンドに胸を躍らされる「恋する10秒」で、さらにその熱を高めて本編は終了。洗練されたアレンジと、耳にするりと入ってくる人懐っこさを持った楽曲群であり、それを過不足なく絶妙な温度感で届けていくボーカリゼーションに、とにかく惹きつけられた。
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フロアからアンコールを求める拍手が起こる中、スクリーンに映像が映し出された。ライヴで放映されたラジオ番組風の映像を撮影した後、スタジオを後にしたTOMOOが、ひとりどこかへ向かって力強く歩いていく後ろ姿が映されていたのだが、その映像の合間に、今後の活動について3つのトピックが発表された。1つ目は、3月30日にデジタルシングル『酔ひもせす/グッドラック』をリリースすること。2つ目は前述の通り、今夏にポニーキャニオン内レーベル・IRORI Recordsからメジャーデビューをすること。そして最後に、映像の中で彼女が向かっていた場所でもあるLINE CUBE SHIBUYAで、8月7日にワンマンライヴを開催すること。大きな拍手で迎えられたTOMOOは、今回のメジャーデビューについて、今の思いをまっすぐに伝える。
「活動を始めてそろそろ10年ぐらいになるんですけど、じりじりと歩みを続けてきた中で、みんなと出会って、いろんな思い出が降り積もって。そういう中でずっと信じてきたこと、信じたかったことを、少しも壊さないまま、心を大事にしながら一緒に音楽を作って届けていける人達に出会うことができました」
「いまは環境が新しくなるところに差し掛かっているんですけど……何かの完成形がここにあって、自分の持っているデコボコをその形にはまるようにつるっとさせるのではなく、このデコボコは、誰かと一緒に歩いていくためのものとして、希望を持てるまでの10年間だったような気がしています。これからはもっと楽しくなっていくと思うので、次の10年もまたよかったらよろしくお願いします!」
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そして、「最後にもう1曲だけ」と、アンコールで「高台」を披露。これまで起こったすべての出来事をそっと抱きしめながら、静かに未来へ思いを馳せるように、優しく、柔らかな歌声をフロアに届けていた。
ドラマティックなエンディングとなったが、「高台」を披露する前、TOMOOは昔あったある出来事について、オーディエンスに話していた。彼女が音楽活動を始めた頃、「あなたはメンタルがとても弱い」「海外に行ったりして、もっとタフになりなさい」と言われたことがあったそう。結局、海外には行かなかったそうなのだが、「最近気づいたことがあって」と話すTOMOO。その言葉には、改めて自身がどんな活動をしていきたいのか、その想いに溢れたものであり、それと同時に、ライヴタイトルを『YOU YOU』にした理由と通じるものがあった。このレポートは、彼女のその言葉で締めたいと思う。ここからさらに大きく広がっていくTOMOOの歌を、とにかく楽しみにしていたい。
「心が弱くなっちゃうときって、自分の中の矢印が、自分に向きすぎちゃっているときがあるよなと思って。逆に、もし強くなれるとしたら、その矢印が“あなた”に向かうとき。そのときしかないんじゃないかなって。だから、これから強い人間になろうというよりは、あなたと生きるための弱さとして、そこから見えるものも書いていきたいと思っているんですよね。でも、これは私ひとりの話じゃなくて。人って調子がいい時もあれば、よくない時もあって、吹っ切れた!と思ったら、また迷ってしまったり。そういうのって繰り返しちゃうし、そのことを見失ってしまうこともあると思うんですけど、たぶん大丈夫ですよ。みんないるので。」

取材・文=山口 哲夫 撮影=ゆうゆ
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