くるりのライブにまた足を運ぶ日を一
際楽しみなものにしてくれた、結成2
5周年『くるりの25回転』東京公演レ
ポート

くるりの25回転

2022.2.11 東京ガーデンシアター
結成25周年を記念して大阪と東京で行われた『くるりの25回転』。アニバーサリーイヤーは昨年(2021年)だったのだが、こうして、ようやく開催されることを心から喜んでいるムードが、感染症対策を遵守して静かに過ごしている観客の様子から伝わってきた。
そして迎えた開演。お揃いのセットアップの衣装に身を包んだ岸田繁(Vo,Gt)と佐藤征史(Ba)が現れて、ステージのセンターで一礼。「今晩は、くるりです」と挨拶をした岸田のカウントを合図に演奏が始まった。オープニングを飾ったのは、「ランチ」。1999年4月にリリースされた1stアルバム『さよならストレンジャー』でも1曲目だったこの曲から始まるのが、なんだかとても嬉しい。アルバム音源と同様に佐藤がコントラバスを演奏して、温かな音色がメロディを浮き彫りにしていく様にワクワク! 続いて「虹」が始まるという『さよならストレンジャー』と同じ展開にも痺れるオープニングであった。
様々なサポートプレイヤーが加わった編成が曲毎に変化して多彩なアンサンブルを構築する様は、序盤からとにかく圧倒的だった。イントロ、間奏、アウトロも含めて、ステージ上の全員が音を交わし合う喜びで溢れている様に息を飲まされ続けた。「窓」「惑星づくり」「ばらの花」「ワンダーフォーゲル」……2ndアルバム『図鑑』から3rdアルバム『TEAM ROCK』にかけての曲が演奏される中で当然懐かしい気持ちにもなったが、活動の軌跡を経て辿り着いている最新の表現が楽曲をフレッシュに輝かせているのを感じた。
歓声を上げて踊りたくなる衝動を抑えながら高鳴る胸を思いっきり躍らせる――という現在の状況だからこその独特な昂揚感を噛み締めさせてくれた「ワールズエンド・スーパーノヴァ」、岸田のボコーダーボイスと佐藤の歌のコンビネーションが夢見心地を誘った「水中モーター」を経て迎えたMCタイム。お互いの衣装がセットアップであることに触れて、岸田と佐藤は少し照れくさそうに微笑み合っていた。そして、「お気づきの方もいらっしゃるでしょうけど、過去の曲から時系列にやってる感じなんですよ。わりとくるりにしては人気の曲をやってるつもりでございます。節目をみなさんとお祝いできることに心から感謝致します!」という岸田の挨拶を経て、さらに様々な曲たちが届けられていった。「Morning Paper」「ロックンロール」「The Veranda」「BIRTHDAY」が続けて披露されたが、“そろそろ『アンテナ』の曲が来るはずだな。何をやるんだろう?”などと想像しつつ待ち構えているのも楽しい。意外な選曲を交えつつも、ファンのツボを突くポイントが満載のセットリストだった。
会場内の換気を行う約15分間の休憩時間を挟んで、ライブの後半は2007年6月リリースの『ワルツを踊れ Tanz Walzer』に収録された「ジュビリー」からスタート。同アルバムから選曲されていた「アナーキー・イン・ザ・ムジーク」が猛烈に刺激的だった。エレキギターから様々な音色を放ち、時には効果音的なアプローチでミステリアスな色合いを添えていく岸田の姿が神々しい。耳を傾けていると、異世界へと吸い込まれていくかのような不思議な感覚になった。この昂揚感を温かなメロディで潤してくれたのが「さよならリグレット」。続いて届けられた「pray」と「魔法のじゅうたん」も至福のひと時であった。「everybody feels the same」も印象深い1曲として思い出される。それまで客席に座っていた人々が一斉に立ち上がり、頭上で手拍子をし始める様が壮観であった。演奏が終わった瞬間、ステージに向かって届けられた大きな拍手。3層のバルコニーがあるガーデンシアターの客席から降り注ぐ拍手は、我々観客にとっても非常に心地よい。ステージ上の岸田と佐藤、サポートプレイヤーたちにとっても堪らない感触があったに違いない。
「everybody feels the same」を演奏した直後のMCで、この曲を書いたのが約10年前であることに触れた岸田。当時は「面白いのができたなあ」というような漠然とした感触だったそうだが、先ほど歌いながら意味が分かった気がする旨を語っていた。「どこがどうというわけではないですけど……オリンピックやってるからかな?」――様々な都市の名前が歌詞に盛り込まれているので、約10年越しでそのような感覚になったということなのかもしれない。リラックスしたムードのMCタイムを経て、「o.A.o」を皮切りに25年間の日々を辿るライブはいよいよ佳境へと差し掛かっていった。2本のサックスが曲全体に鮮やかな色合いを添えていた「loveless」、バックコーラスによって瑞々しいハーモニーが生まれた「There is(always light)」、岸田のラップも交えつつ届けられた「琥珀色の街、上海蟹の朝」、オーガニックな風味のサウンドで我々を包み込んでくれた「ふたつの世界」と「How Can I Do」――多彩なサウンドが心地よくて仕方がない。バンドアンサンブルの様々な理想形を体感できるという点でも贅沢な場面の連続であった。
松本大樹(Gt)、大石俊太郎(Sax,Cl)、副田整歩(Sax, Cl)、山﨑大輝(Per)、石若駿(Dr)、野崎泰弘(Key)、ハタヤテツヤ(Key)、加藤哉子(Cho)、ヤマグチヒロコ(Cho)、沢圭輔(Mp)――サポートのプレイヤー陣を紹介した後、抱いている想いを語った岸田。「また気が向けば何十周年とか何百周年とか、お祝いに来てください。みなさんと一緒にお祝いできて光栄です。本当に感謝しています。ありがとうございました!」。そして、本編を締め括ったのは「ソングライン」。色とりどりの音色が重なり合い、無数の表情を浮かべる様が心から愛おしく思える演奏だった。《生きて 死ねば それで終わりじゃないでしょ》という一節が印象に残っている。“くるりと共に年齢を重ねながらどうにかこうにか今に至っている。この先も彼らの音楽を聴きながら生きていくのだなあ……”と、ふと考えてとても嬉しい気持ちになった。
アンコールではまず「心のなかの悪魔」が届けられた。穏やかなサウンドに誘われて身体を揺らす人々が平和な風景を作り上げていた。そして、「月並ですけど、ほんまにお体気をつけて。元気な顔でまた会えればと思います。また会いましょう!」という言葉を岸田が添えて、ラストに披露されたのは「潮風のアリア」。様々な曲を生み出し、幅広い作風を発揮してきたくるりだが、その根幹にあり続けているのは“音を鳴らすって楽しい!”“心の底から通じ合える仲間と音を重ねるのってワクワクするよね?”という無邪気な喜びなのだろう――そんなことを改めて感じさせてくれたこの曲の余韻は、くるりのライブにまた足を運ぶ日を一際楽しみなものにしてくれた。
取材・文=田中大 撮影=岸田哲平

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