アツキタケトモ

アツキタケトモ

【アツキタケトモ インタビュー】
やろうとしたことが
しっかりかたちになった曲

2020年代の最新モードを取り入れたサウンドメイク、そして、歌謡曲〜J-POPを受け継ぐソングライティング。その両方を結びつけるシンガーソングライター、アツキタケトモからニューシングル「Period」が届けられた。自分で終止符を打てない恋愛をテーマにしたこの曲は、優れたポップネスを感じさせる歌メロディー、先鋭的なトラック、抒情豊かな歌を含め、彼の音楽的なスタイルが端的に示された楽曲。これまでのキャリア、そして、“アツキタケトモの第一章のピリオド”とも位置づけられる「Period」について語ってもらった。

やっぱり歌が良くないと
意味がない!

アツキタケトモさんは2020年9月に1stアルバム『無口な人』をリリース。

作詞作曲はもちろん、アレンジ、演奏、録音まで全てひとりで手がけた作品ですが、“ひとりで完結する”というスタイルは、いつ頃からですか?
高校生の時にシンガーソングライターとしてデビューしたんですが、その頃はプロデューサーの浅田信一さんのアドバイスもあって、歌だけで聴き手を説得できるアーティストを目指していたところがあって。ソングライティングと歌に重点を置いていたんですが、音も作りたいと思って、2012年くらいからDTMを始めたんですよね。最初は趣味みたいな感覚だったんですけど(笑)。その後、バンドを組んでた時もメンバーに渡すデモを自分で作っていたんですけど、またひとりでやり始めた時に、初めて世に出す作品としてDTMに本格的に取り組んだという流れですね。

ジェイムス・ブレイクが象徴的ですが、2010年代はシンガーソングライターとしての魅力とトラックメイカーとしての才能を併せ持ったアーティストが次々と登場しました。その流れとも親和性を感じていた?

そうですね。2012年くらいに一番聴いていたのはまさにジェイムス・ブレイクの1stアルバム(2012年発表の『ジェイムス・ブレイク』)だったので。当時の日本のシーンでは、“シンガーソングライターと言えば、ギターの弾き語り”みたいなイメージが今以上に強くて。自分の活動もそれに即していたんですが、“ジェイムス・ブレイクがやっていることが自分の目指すところだな”という感じはその頃からあったんです。なので、作品として世に出せる技術に追いつくまで8年かかったということですね。

アルバム『無口な人』は歌や歌詞のすごさとトラックメイクの質の高さが共存していて、音楽ファンからの注目度も上がっていますが、アツキさん自身の手応えはどうですか?

それ以前から曲は発表していたんですが、『無口な人』をリリースしてから再生回数がすごく増えましたね。僕が好きで一方的に聴いていたミュージシャンから嬉しい言葉をいただいたり、活動するためのチームもできて、環境は大きく変わりました。『無口な人』は自分にとって、アレンジやサウンドを含めて“ようやくプロレベルの作品を作れた”という手応えを初めて得られたアルバムなんです。たくさんの方から反響をいただけたことで、自分の感覚が間違っていなかったと思えたというか。あと、歌詞や歌い方もそうですが、聴き手を意識した作品でもあるんです。それ以前は何よりもまず自分の理想を追い求めていた気がするんですが、『無口な人』はリスナーの存在をイメージして、“どうすれば届くだろう?”と考えながら作ったので。

アツキさんの音楽の入口はMr.Childrenだったそうですし、ポップな志向はもともと持ってたんでしょうね。

そうですね。ミスチルを好きになったことで、“いい音楽=いい歌”という意識がずっとあったんですよね。その後、ジェイムス・ブレイクなどを聴き始めて“それ以外の軸があるんだ!?”と気づいて。“いい歌”だけではなく、グルーブのカッコ良さだったり、アンビエントな音響などにも興味が出てきて、一時はいわゆる歌謡から外れたくなったんです。本当は全ての要素が絡み合ってるのが理想なのに、音響やビートばかりに意識が向くようになって…ちょっと極端だったんですよ(笑)。それを経た上で、“やっぱり歌が良くないと意味がない!”というところに戻ってきて、それが『無口な人』につながったんですよね。

なるほど。歌謡曲、J-POPを再発見したというか。

はい。そのきっかけはシティポップ、80年代の邦楽だったんです。大学生の頃に90年代以前の日本の音楽を遡ってみたら、音としてカッコ良いし、当時の洋楽にも引けを取らないサウンドメイキングと普遍的で耐久性のある歌が共存している楽曲がすごく多くて。音楽家がしっかり意地を持ち続けながら、商業的にも広げようとしていた気概を感じたんです。

細野晴臣さんが松田聖子さんの曲を手がけたり、すごいことが起きていましたからね。

そうなんですよね。最近はまたインディー系のミュージシャンとマスな存在のアーティストとコラボする感覚が戻りつつあるし、音楽リスナーとしてもワクワクする時代になったと思っています。

確かに。昨年末にリリースされたシングル「Family」も歌詞とトラックを含めて、エッジとポップの比率が絶妙でした。

ありがとうございます。実はポップな曲の方が得意だったりするんですが(笑)、ときどき器用になりすぎる瞬間もあって。「Family」は最初のシングルだし、“一発目に自分のエゴイスティックな部分を示しておきたい”という気持ちがあって。この後、どれだけマスのほうに向かっても、“でも、この人の最初の曲は「Family」だよね”と認識してもらえるような曲というか。

テーマは“家族”ですが明るさや温かさではなく、ダークな側面に焦点を当てていますよね。

これはシンプルに自分の家族観なんですよ。実際に経験したことを歌詞にしているわけではないですが、“家族”と言っても“他人”、理解できない部分もあるという感覚がずっとあるんです。小さい頃は“大人=親”だったけど、外に出ていろんな人と知り合う中で、“いろいろと思い込まされていたところがあったな”と思うようになって。でも、世にあるファミリーソングって“家族は温かい”みたいなステレオタイプなものが多いじゃないですか。そこに窮屈さを感じていたし、“こういう家族観もある”と示したかったんですよね。家族にもいろいろなかたちがあるはずだし、家族じゃない人同士のつながりもあるので。

“家族も他人”という当たり前の認識に立つことで、初めて家族を大事にできることもありそうですよね。

そうだと思います。どんどん個の時代になってるし、統一された価値観に縛られて窮屈さを感じている人に対して、“自分らしくあっていい”と言いたい気持ちもありました。特にコロナ禍になってからは“これが正しい”や“こうすれば安泰だ”みたいな常識が壊れたと思うし、『無口な人』以降の制作にはそのことも影響しているでしょうね。
アツキタケトモ
配信シングル「Period」

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • SUPER★DRAGON / 「楽楽★PAINT」
  • OLDCODEX / 「WHY I PAINT ~なぜボクがえをかくのか~」
  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • POP TUNE GirlS / 『佐々木小雪のイラスト花図鑑』
  • POP TUNE GirlS / 『涼水ノアの、ノアのはこぶ絵』
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」

新着