スキマスイッチ 約3年半ぶりのアル
バム『Hot Milk』と『Bitter Coffee
』がライブでどのように生まれ変わる
のか? ツアー5公演目の神奈川公演
をレポート

スキマスイッチ TOUR 2022 "café au lait"

2022.2.23 神奈川県民ホール
約3年半ぶりのオリジナルアルバム『Hot Milk』『Bitter Coffee』をリリースしたスキマスイッチ。2作のリリースを記念した全国ツアー『スキマスイッチ TOUR 2022 "café au lait"』が現在開催中だ。現状スケジュールが発表されているのは7月31日までの35本だが、ホームページには“and more...”の記載があり、時間をかけて全国をじっくりまわるツアーになりそうな予感。この記事では、ツアー5公演目にあたる2月23日・神奈川県民ホール公演の模様をお届けしたい。
【※以下のテキストには一部演奏曲目の記載も含まれているため、あらかじめご理解の上お読みください。】
オリジナルアルバムのリリースが約3年半ぶりということは、新作音源を引っ提げたツアーが行われるのも久しぶり。セットリストの自由度が高い“引っ提げない”ツアーにももちろん別の楽しさがあるが、今回のツアーに関して言えば、『Hot Milk』『Bitter Coffee』収録曲がライブでどのように生まれ変わるかが最大の見どころだろう。そんななか、大橋卓弥、常田真太郎、そして村石雅行(Dr)、種子田健(Ba)、石成正人(Gt)、浦清英(Key)、松本智也(Per)、本間将人(Sax)、田中充 (Tp)といったおなじみのバンドメンバーが豊潤なサウンドを奏でれば、今、ここで楽曲に命が吹き込まれる。学生時代の淡い恋や社会に出たばかりの頃の踏ん張り時、忙しない日々が過ぎたあとの凪のような時間など、生活の様々なシーンに寄り添ってくれる楽曲たちと観客一人ひとりが直接対面する瞬間はやはり感動的。《調子はどうですか?》と投げかける歌詞に始まり、アコギ中心の親密なサウンドで届ける「吠えろ!」では客席がワイパー(挙げた手を左右に振る動作)で満たされるなど、序盤からグッとくる光景が生まれた。《ウォー ウォー ウォー》とシンガロングすることは今はできないが、その分、アウトロではオブリガード的なエレキギターが重なり、熱量をさらに高めていく。
腕利きのミュージシャンが揃ったこのバンドの骨の太さを直に体感できたのは「G.A.M.E.」。スラップベースが印象的なファンクチューンで、音源にあるサックスソロのみならず、さらにライブではバンドメンバーのソロ回しも追加される「I-T-A-Z-U-R-A」。そして、ちょっとレトロでジャズスタンダード的な雰囲気のある「Ordinary」などによってもたらされる贅沢な音楽体験。しかしバラードも忘れてはいけない。「いろは」は心からの歌を届ける大橋だけではなく、想いを継ぐようにバンドが鳴らすアウトロ、その後1人残された常田のピアノによる切ない結びまで、非常に丁寧な演奏だ。また、「SINK」も印象に残っている。ピアノリフが終始鳴っている曲で、冒頭は海底にいるかのように幻想的な音像だが、映像・照明演出とともに、バンドサウンドが変容していく様がドラマティック。極めつけはラストのボーカル。1番では《Goodnight》だった歌詞が2番では《Goodbye》に変わるのだが、その変化の背景にある感情を表現するような歌に胸がしめつけられた。
そういった具合にアルバム曲を中心に展開しつつ、大橋が「新旧織り交ぜてお届けしたいと思っているので」と言っていた通り、絶妙な温度感で新曲に絡んでくる過去のアルバムからの楽曲や、「全力少年」はじめ、コアなファン以外にも広く知られている定番曲なども披露。ツアーはまだ始まったばかりだが、バンドの演奏にはしっかり脂が乗っていたほか、メンバーのテンションも高く、この日のライブはおよそ3時間半に及んだのだった。
スキマスイッチはMCタイムをわりと長めにとるタイプだが、それでもこの日は特に長く、話が止まらない様子にも調子の良さや高揚感が表れていたと思う。同じように観客のテンションも高く、客席からの手拍子に大橋が「やっぱりすごいな、このパワー!」と驚き喜ぶ場面もあったほどだった。
さらにこの日は常田の誕生日2日前ということで、バースデーサプライズも行われた。しかしサプライズと言っても最初のMCで大橋が「コソコソやっても気づくだろうと思って。今日どこかでやりますよ!」と事前申告する斬新なスタイル。「どこで来るかひやひやしながら今日あなたは弾き続ければいいんですよ」(大橋)、「分かりました。楽しみにしてます」(常田)なんてやりとりもあったが、その後何曲か演奏したあとのMCによると、常田はライブ中盤、舞台袖に指示を出す大橋を見て「え、ここで!?」とまんまと驚いたのだそう。とはいえ、今回のセットリストの中でもかなりいい場面だっただけに、さすがにそのタイミングでケーキが運ばれてくることはなく、「いや、あの曲の前ではさすがにやらないよ!」と笑い合う2人であった。
大橋が仕掛けたのはライブ終盤、「全力少年」が始まる前。バンドでのセッションを経て、「知ってる人は心の中で一緒に唄ってください」と曲に入ると思いきや、ここで演奏がストップ……する算段だったようだが、大橋がバンドに指示を出すのがあまりに直前だったため、上手くいかず。「アニキ(村石)が止まってくれなかった!」と悔しげな大橋、テイク2を提案するも、今度はバンドと一緒に常田も演奏を止めてしまい、これまた失敗。そしてテイク3でようやく“バンドは止まるが何も知らない常田だけが演奏を続ける”という思い描いた状態が実現した。常田は「え、何なに?」「ここだったかー! さっぱり分からなかった!」と2度のやり直しをなかったことにしてあげていて、もはや誰のためのサプライズか分からない(笑)。常田には大きな袋がパンパンになるほど詰められた湖池屋のスコーン(常田の好物である)がプレゼントされた。
飛沫が飛ばないよう、観客がハミングでバースデーソングを歌うと、込み上げてくるものがあったのか、目の辺りをタオルで拭う常田。感情表現豊かな大橋に対し、一歩引いたところから全体を見守るタイプの常田がこういった姿をステージ上で見せるのは珍しい。そんななか、後のMCにて「やっぱりライブできるのはホントに……これがなくなったら生きてけないもんなあ」、「正直自分たちの音楽にどれくらい力があるか分からないんですよね。でもみんながこうして集まって手拍子してくれるのを見るとやっぱりなきゃいけないと思うし、みんなの笑顔を見て僕らも幸せになってるわけですし」と大橋が語る。観客でいっぱいになった会場を嬉しそうに見渡す2人の表情から読み取れた喜びや感慨、それが一時期失われていたという事実。常田のあの涙には様々な想いが詰まっていたのではないだろうか。
全曲の演奏が終わると、目一杯の“ありがとう”を表現するかのように、観客がスタンディングオベーションした。「しんみりするつもりはないけど、いろいろな想いがあるなか、集まってくれてありがとうございます。みんなにもらったパワーを持ってできるところまで全国まわっていきたいと思います」と大橋。音楽を全身で分かち合える喜びを力に変えながら、スキマスイッチの旅は続いていく。

取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=岩佐篤樹

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