ACIDMANが『INNOCENCE』携え回る2度
目のツアー、その初日を振り返る

ACIDMAN LIVE TOUR“INNOCENCE” 2022.3.5LINE CUBE SHIBUYA
※以下のテキストはセットリスト、衣装、演出など全てのネタバレを含みます
ACIDMANの4年振りのアルバムリリースに伴う『ACIDMAN LIVE TOUR“INNOCENCE”』が、3月5日、東京・LINE CUBE SHIBUYAで初日を迎えた。
アルバム『INNOCENCE』の楽曲をワンマンライブで披露するのは、リリース前の昨年夏に開催して大きな話題を呼んだ『『INNOCENCE』プレリリースツアー』以来のことだ。同じアルバムで二度ツアーを回るほど、メンバーがこの作品にかける思いは強く、強烈なブルーのバックライトに照らされたドラマチックな「introduction」から、気迫みなぎる演奏で圧倒する。オーディエンスも、声の代わりに熱い拍手に気持ちを込めて返す。序盤から感情を揺さぶられる、エモーショナルなシーンだ。
ACIDMAN 撮影=Victor Nomoto - Metacraft
「その拍手で、うるっときちゃいます。本当にありがとう。この瞬間だけは共にイノセンスな、真っ白な気持ちになれるような、そんな1日にしましょう」(大木伸夫
3人の衣装はすべて鮮やかな白。セットリストはアルバムの曲順通り、ミラーボールの美しい演出が映える「Visitor」、「歪んだ光」へと熱気を増しながら突き進む。リリースからおよそ5か月、アルバムを聴き込んでいるオーディエンスは爆音に身を浸しながら体を揺らす。さらに「Rebirth」から「イコール」「スロウレイン」「Ride the wave」へと、過去の楽曲へとさかのぼってゆくが、カラフルでポジティブな解放感のある『INNOCENCE』の空気感がステージを覆い、ライブ全体のムードが明るい。演奏はラウドで激しいが、あたたかく包まれるような高揚感が、これまでのACIDMANのライブとは一味違う。
ACIDMAN 撮影=AZUSA TAKADA
「「灰色の街」は非常にポジティブな曲です。世の中が、特に音楽業界が大変な中で、この曲がずっと僕たちを引っ張っていってくれたなと思います」(大木伸夫)
まるでコロナ禍を予言したかのような、灰色と化した街に、やがて芽吹く小さな花という希望を歌う歌。「灰色の街」は、2019年暮れにライブで初披露して以降、聴くたびにメッセージの深みを増してゆく、「育つ歌」だ。そして、大木の弾くアコースティックギターの生々しい響きが心揺さぶる「素晴らしき世界」へと、『INNOCENCE』の核心を成すメッセージチューンを2曲続けて。ソウルやゴスペルを思わせる力強く前進するリズムに乗り、音楽の力が空気を伝って直に届く。これがライブだという実感がじわりと身に沁みる。
ACIDMAN 撮影=AZUSA TAKADA
中盤、恒例のユーモラスな浦山一悟のMCのあとを受けた大木が、11月に開催が決まった主催フェス『SAITAMA ROCK FESTIVAL“SAI”2022』の詳細を発表した。結成25年、デビュー20年の晴れ舞台に挑むバンドを励ますように、会場内はあたたかい拍手に包まれる。曲はフェスのテーマ曲でもある「彩-SAI-(前編)」から、大木がピアノを弾くダンサブルなインスト「Link」を経て「ALE」へ。願いはきっと星に変わる、という歌詞を体現するように、ミラーボールの閃光が光の矢のように宙を刺す、とても美しい光景。だが一転して「2145年」では、人の心が持つ希望と愚かさの両面を、心を持ったロボットを主人公にした近未来的設定で描く歌詞を歌いながら、大木が声を詰まらせてしまった。おそらく、現在の東欧で起きている出来事が脳裏をよぎったのだろう。歌い終わり、暗転したステージに向けて、会場いっぱいの拍手がいつまでも鳴りやまない。歓声や掛け声がなくても、気持ちは届くことを証明する、素晴らしいシーンだ。
ACIDMAN 撮影=Victor Nomoto - Metacraft
「人と人とはもっと繋がり合えるはずだと、きれいごとだからこそ、歌い続けたいと思います。この世界は、闇と光が同居しているからこそ、意味が生まれてくるんだと思います。だからどうか、嫌なことがあっても、最後まで生き抜いてください」(大木伸夫)
生き抜くんだ、と何度も叫ぶ「夜のために」は、アルバムの中でも特に激しいロックチューンで、ライブの盛り上がりもすごい。さらに「Stay in my hand」から「ある証明」へ、ACIDMANが誇るラウド&ファストチューンを連ねて一気に突っ走る。佐藤雅俊が、かぶっていたキャップを飛ばして暴れ回る。点滅するライトがぐるぐる回る。「心の中で叫んでください!」と大木が叫ぶ。クライマックスはもうすぐそこだ。
ACIDMAN 撮影=AZUSA TAKADA
「ライブはやっぱり、かけがえのないものです。こんなにも感情が動くものは、何にも代えがたいものだと気づかされました。これからも前だけ向いて音楽をやっていきます」(大木伸夫)
本編を締めくくったのは、『INNOCENCE』のフィナーレと同じく「innocence」「ファンファーレ」の壮大なラウドロックバラード二連発。強烈な白い光がステージから流れ出し、多くのファンから送られた歌声をコーラスに配した「ファンファーレ」の、最上級にドラマチックなラストシーンを、どう言葉にすればいいだろう。「この声の一人一人に背中を押されました」と、アウトロの深い余韻の中で大木が叫んだ。激しさと、儚さと、美しさと、光と闇と。音楽の力だけでいくつもの感情と情景を聴き手の心に映し出す、ACIDMANはやはりすごいバンドだ。
ACIDMAN 撮影=AZUSA TAKADA
アンコールは1曲。「Your Song」を歌う大木の顔は晴れやかで、ポジティブな情熱に溢れて見えた。「またライブで会いましょう」。『INNOCENCE』の演奏の完成度はすでに高く、全国9か所を巡って7月3日の新潟LOTSでのツアーファイナルに近づく頃には、とてつもないレベルになっているだろう。ACIDMANはやはりライブバンドだ。この2年間で忘れかけているライブの興奮を思い出したいなら、ACIDMANのライブを観るべきだ。

取材・文=宮本英夫 撮影=AZUSA TAKADA、Victor Nomoto - Metacraft
ACIDMAN 撮影=AZUSA TAKADA

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