鉄郎を演じ続けることは「運命」なん
だって思っています──『銀河鉄道9
99 THE MUSICAL』中川晃教インタビュ

2018年、2019年と上演されてきた『銀河鉄道999』が、『銀河鉄道999 THE MUSICAL』として三度目の幕を開ける。これは、一作ごとに新たな切り口でクリエイトされてきた本作のいわば“集大成”だ。主人公・星野鉄郎を演じるのは過去2作でも同役を生きた中川晃教。満を辞してオリジナルミュージカルとして新たな旅に出るその決意、自身の中に広がり続ける宇宙に見出す表現者としての思いを語ってもらった。
ーー中川さんにとって3度目の『銀河鉄道999』。予感はありましたか?
『999』が舞台になるということ、「どうやってこの作品を表現するんだろう?」というおそらく誰も想像できないようなところからまず始まったんです、僕たちの挑戦は。過去2作は音楽劇として創られ、もちろん音楽の要素もたくさんあったんですけど、今回はミュージカル。それはやっぱり2度の挑戦から導かれてきたこと、あの経験はやはり「『999』でミュージカルを創る」という目標に直接繋がってきたことだと思います。どちらの舞台もあったから、この『銀河鉄道999 THE MUSICAL』が生まれた。それを思うともう今の時点ですっごいワクワクドキドキしてしまいます。
ーーそれくらい何度もトライしたくなる魅力を持った原作でもある。鉄郎を演じ続ける中、ご自身に芽生えて続けている表現への思いや新たな目標というのもあるのではないかと。
まさにその目標ですけど、様々なクリエイターたちが手がけてもブレることのない核を持ったこの強靭な原作、鉄郎もメーテルもハーロックも……みんなが憧れるこの世界のキャラクターたちが立体的に見れる、生身の人間が演じてるというそれだけでもう魅力的だと思うんです、舞台版としてね。そこでさらに今回は「THE MUSICAL」とうたっている。映画『グレイテスト・ショーマン』や『ラ・ラ・ランド』なんかをきっかけに、今ミュージカルというジャンルが世の中でたくさん話題になって、ミュージカルに対して少しずつ敷居が下がっているこのタイミング。そこで僕らが『999』をミュージカルにすること自体が大きなテーマなんです。「ミュージカルってどういうものなの?」を実際に体感してもらうということが、今回の『999』の中でも重要な挑戦なのかなと思っていて。
ーー“親しみ度”を武器にしていく、と。
『999』だから観に行ってみようかなと思うけれどミュージカルを知らないしという人には、ミュージカルを知ってもらえるチャンス。また、「『999』ってなんとなくは知っているけど」とか、全然知らない人もでも「THE MUSICAL」と付いていることによって、「よし、行ってみよう」って思ってもらえる。それだけの原動力が今、ミュージカルにはあるし、それを生かしたい。「THE MUSICAL」の一文字が今回、とても意味が大きいなと思います。
中川晃教
ーーそこはやはりミュージシャンからミュージカルの世界に飛び込み活躍してきた中川さんだからこそキャッチしている空気、“時代の変化”の肌感なのかも。
本当にそう思います。自分が20年培ってきた……ミュージカルで経験させてもらったあれこれ。ブロードウェイミュージカルも、ウエストエンドのミュージカルも、韓国のミュージカルも、オリジナルの和製ミュージカルも様々な作品をやらせていただいていますけど、その経験を前作、前々作と鉄郎をやらせていただきながら今回ミュージカルになる上ですごく意味を感じるというか──“運命”を感じてる、このために自分はこれまでの全部を経験させてもらってきたんだと思えるぐらいに。集大成と、言うとちょっと大げさなんですけど。
ーーでもある意味、絶対そうですよね。
はい。そう思ってやっていきたいと思っています。
ーー今回脚本・作詞を担当されるのは高橋亜子さん。それぞれのキャラクターの内面にも迫る人間ドラマ、ラストに向かって加速していくドラマティックな展開、そこにあの名曲も存在する意味。掻き立てられますね。
台詞、歌、また歌、台詞、歌っていうふうに、台本の書き方も……楽曲は今ミッキー吉野さんが絶賛作業中でまだメロディが僕の手元には来ていないですけど、もうミュージカルの“音楽”というものがそこにあり、人物たちの言葉があり、物語が、芝居が進んでいく。全部がちゃんと共存している台本だなと感じています。亜子さんがこうやって書き上げてくださったんだなっていうのをね。受け取った瞬間に、すごい重みを感じ、あたらめて責任を感じたっていうか。
ーーそこで自分はどう鉄郎になっていくのか。
初演も再演も同じ脚本では上演していないので、鉄郎を演じる上で“進化”というと都合がいいかもしれないですけども……やはり毎回舞台版として、どうこの『銀河鉄道999』を完成させようか、というプロセスがありました。一番最初は16歳を演じるってことで、拠り所としてどこかでアニメの劇場版の鉄郎から力を得て自分が鉄郎になる、というスタートラインだったと思う。そこから稽古に入り……でもそっちにとらわれることで自分の中での足かせ、プレッシャーに思う気持ちがちょっとあったんですよね。「みんなが知ってる鉄郎像」みたいなところに。
ーー世の中にある“正解”のイメージにハメようとしてしまった?
ただ、脚本の中から、また、『銀河鉄道999』という原作の中から感じる生きていくことの素晴らしさとか、鉄郎は何に気付いて、何を感じ、どう心動いて、何が自分の中で今実感していることなのかっていうことを見つけていくと、それはやっぱり僕自身が生きてきた時間というものの中で想像する、あるいは共感する、あるいは自分はこうかなと思うっていう、そういうクリエイションというものを持って表現する、“中川晃教が演ずる星野鉄郎”というものが絶対あるんだと気づけました。つまり星野鉄郎を演じているけれど、存在するのは星野鉄郎なんだけど、そこに自分という距離感をしっかりと持って挑んで作っていっていいんだっていうこと。それに気付けたのは、やっぱりこの作品の持ってる大きな懐っていうか、テーマの深さですね。
人類が思い描く未来は人類にとって最高の幸せに満ちた未来であってほしいという願いと、でもその未来は果たして正しい未来なんだろうかっていうところでの永遠の命や機械化人というモノへの疑問。この問いかけ、答え、それに対するアンチテーゼ。そういった要素がこの作品を時を越えて永遠に人々の心に印象付けているんじゃないかな、と思うし、そういうところに今生きている私たちというものも、やっぱり何か感じるものがあって……。
中川晃教
ーー原作の持つ強靭さ、ですね。
だから我々もこうして繰り返し舞台の上で『999』の歴史を創り続けていく意義があるのかな、と感じているところです。星野鉄郎って生きていくことにまっすぐで、でも自分一人が生きるってことだけに生きているんじゃなくて……うまく言えないんですけど……いろんな様々な出会いを通して、その出会いが自分を生かしているとか、その出会いがあって自分は生きていくと思えてるんじゃないかなって、僕は思ってる。つまり、『999』は一人の青年の物語のようだけど、宇宙全体の物語だって思えるんです。
ーー誰もが鉄郎である、とも言えるのかも。鉄郎が出会う人々も今回、また新たな顔ぶれが揃っています。今回の座組みの印象は?
新鮮です。漫画原作の舞台という意味では本当に2.5次元ならぬ2.8次元っていうぐらいのね(笑)、より高みをいこうとしてカンパニーなのかなという感じ。ワクワクします。楽しみですよ。
ーー演出の小山ゆうなさんとも、原作モノの舞台で出会っていて。
昨年『チェーザレ 破壊の創造者』でご一緒する予定だったんですけど……公演中止で、今のところ幻の作品になっているんですけどね。当時、小山さんが初めてミュージカルの演出を手掛けるというタイミングでそれも楽しみだったんですが、中止を経てそこからこの『999』までの間に小山さんも劇団四季など何作かミュージカルを経験されているので、そこで再びご一緒する新たな楽しみがあります。小山さんってとても丁寧に作品を作っていく方なんです。役者の持っている芝居、アプローチ、また、作品や脚本にもともと備わっているモノをとても尊重し、そこから自分が演出家としてこうしたい、という方向性をすり合わせていくような作業を丁寧にしてくださる。『999』のビジュアル撮影にも来てくださって、「中川さん、どうやって鉄郎を作ろうとされていますか?」とか「この『999』ってどういう作品なんだろう」みたいな漠然としたところからお話ができました。小山さんも『999』が大好きなんですって! そういう小山さんの在り方に、同じ気持ちでミュージカルを作っていくことができる人だなと感じてます。ミュージカルを新しく作っていく挑戦の中での「何がミュージカルなのか」の答えは、作品に携わる誰もがその鍵を握っているわけですから。小山さんもそう。共に向き合っていける演出家さんです。
ーー先ほどもお名前が出ましたが、今や国民的名曲となったアニメ主題歌を世に送り出したゴダイゴのリーダーでもあるミッキー吉野さんが音楽監督というのも大きなニュースです。ミッキーさんとはコンサートでご一緒されたりと、以前から交流はあったんですよね。
縁がね、まさかここに繋がるとは思ってなかったんですけど……本当に夢のよう。前作の『999』の舞台を観に来てくださって、それがこの「THE MUSICAL」に繋がるきっかけになったのですが、あのミッキー吉野さんが音楽を書いてくださると決まった時、「すごいことが起こる」と思いました。ミッキーさんっていろんなことを経験してきている方だから、話していてもいつも本当にいろんな気付きをいただくんですよ。それが今度は音楽となって、クリエイションの中で作品が生まれていくっていう関係で……だから様々な入り口でこの『999』に入ってきた僕たちと、そして多くのスタッフのみなさん、プロデューサーの方々の「この作品を舞台版として残していきたい」という情熱の元でオリジナルミュージカルを作っていく。これはすごいエキサイティングな経験だと実感しています。
中川晃教
ーー原作の松本零士先生との交流も貴重でした。
松本先生って本当に自由な方で、『999』の物語はもう完成して完結しているんだけど、でもまだ答えは出てないよって、新しい思いをお話ししてくれたりもする。やっぱり夢を追いかけたりとか『999』に対しても「終わらない青春」っておっしゃられる先生の言葉を聞いていると、先生も未だに毎日の中で鉄郎のように様々なことを考えながら、感じながら、純粋な少年の心で、終わらない青春を生きているんだろうなぁと思うので……そういうところからも、パワーをもらえます。
ーー「終わらない青春。時間を超越し、いつまでも青年・鉄郎を演じてくださいそうな中川さんにもぴったりな言葉だと思います。『999』だけでなく、表現としての作品選びなどにも常々そういう在り方を感じさせてくれて。
16歳を演じられるっていうのは本当に俳優として貴重な……貴重って、自分で言うのもあれですけども(笑)、でも誰もがずっと16歳を演じられるわけじゃないと思うんです。たくさんの俳優さん、仲間たちがいる中、僕がこの鉄郎をやらせていただいたというのは実際、自分が引き寄せたかもしれないですね。作品選びという面ではやっぱりいろんな役を演じたいと思っていますけど……僕、ミュージカルがすごい好きかって言われると、元々ミュージカルがやりたくてこの世界に入ったわけではないんです。例えば(山崎)育三郎くんみたいにミュージカルが好きで、子役の頃からミュージカルをやっていて、今やテレビでも大活躍されているのも素敵だし、今このミュージカルシーンの中で同じこのフィールドの中に様々な入り口を持って入ってきてミュージカルを盛り上げていこうとしている仲間たちがいて、今の自分がいるんだと思っている。そこで大事にしているのはやっぱり出会ってきた仲間たちと、作品を通して何を作っていくのか。そしてそれを観に来たお客様、若い人やお年を召した人も、ミュージカルってすごくいいなって思ってもらえるようになって欲しいなっていうのをずっと考えていて。だから「作品ファースト」って言うとちょっと聞こえがいいんですけど、やはり自分は「ミュージカル」の作品自体を伝えたい思いが一番です。
そういう意味でも自分がどの作品に出るのかよりも、その作品の中のその役として存在し、芝居をし、そしてセリフから歌に繋がっていくっていうところは、表現する上で絶えず目指すようにしています。
中川晃教
ーーミュージカルは「歌」だけではない。音楽家として俳優としてミュージカルと真摯に向き合う中川さんの思いの詰まった誠実な言葉ですね。
僕が「ミュージカルって本当にすごいな」と思うところは、スコアの中とか音楽が“持って”いるってことがあるんです。こういうふうにこの作曲家は思ってこの曲を書いて、こういうふうに流れるように物語を作っているからこの表現になるんだよ、と。それに対して自分の意図みたいなものを重ね過ぎてしまうと、持っているものと反する場合もあるわけです。だからやっぱりその音楽の中に乗る、その音楽をちゃんと体現するにはちゃんと芝居を分かって……いくら歌が上手くても、いくら声が出ても、もちろんそれは素敵なことかもしれないけども、ミュージカルはそれだけではない、というところを経験しながら僕は舞台に立っている。いつも「そこって難しい」って感じますよ。けれどそういうことを重ねていきながら……海外作品だけでなく日本のオリジナルミュージカルっていう現場の中でもそういう作業を重ねていきながら、よりミュージカル文化がもっともっとみなさんへと広がっていく、ミュージカルが注目されて、みんなに「舞台のミュージカルって今一番熱いエンタメだよね」って思ってもらえることを願ってきたし、もう、目指すところもそれだけです。そういうことを自分も自信を持って発信できるようになった今、自分自身の活動も20年目という節目を迎えられた。嬉しいなって、噛みしめています。
ーーこれからまだまだやりたいこともたくさんおありだと思います。エンタメの世界に生きる中川晃教、表現者としてさらに目指すべき道とは。
今、社会として逃れらないこととかいろんな厳しい現実があるけれど、僕は「やっぱりエンターテインメントだよなぁ」って。世界にはエンタメが絶対必要なんだって思えるようになってきたというか……エンターテインメントってプラスもマイナスも全てをエンタメに転化してしまう力があるんです。そしてそれを見てなぜか人は笑ったり、泣いたり、感動したり、頑張ろうと思えたりするんですよね。そういう世界に自分は生きることができているっていうのはとても大きい。僕自身の存在っていうものを振り返る時に、“そこ”に必ず実感があるんです。なので、僕はエンタメをやっていきたい、僕がエンタメなんですっていう思いを決して失いたくないのと同時に、それがあることで逆に自分の可能性というものに蓋をしたくはないっていう両方の気持ちを持っています。その上で生きている限り出会いを広げていきたい、可能性をどんどん広げていきたいっていう欲求に導かれながら活動してきた20年だったりするので、これからはそこも変わらずにと思っています。さらに深くエンタメを追求していくと、そこにある根幹は「音楽」なんです……シンプルにね。鉄郎に終わらない銀河鉄道の旅があるように、僕にとっては音楽がまさにそれ。それがあるからミュージカルとも出会うことができたと実感しています。やっぱり僕にとって音楽というのは永遠に終わらないものなので、これからも音楽を通してすべてと出会い続けていきたいなって思います。
中川晃教
ヘアメイク=松本ミキ   スタイリスト=KAZU(Ten10)
取材・文=横澤由香   撮影=池上夢貢

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