山内総一郎

山内総一郎

【山内総一郎 インタビュー】
個人名義のアルバムだけど、
バンドのことを歌いたいと思った

フジファブリックの山内総一郎(Vo&Gu)による1stソロアルバム『歌者 -utamono-』はタイトルどおり、いわゆる“歌モノ”という表現を追求した作品になった。ギタリストとしても高く評価されている彼のアルバムが、なぜそういう作品になったのかの理由をはじめ、制作の中で再認識した自らの音楽との向き合い方について語ってくれた。

聴く人を混乱させないように
バンドとは作るプロセスを変えた

“歌者 -utamono-”と題した1stソロアルバムは山内さんの音楽、人間、人生に対する真心がこもっているように感じられ、とても聴き応えがありました。どんなきっかけから個人名義のアルバムをリリースすることになったのでしょうか?

“ソロアルバムを作ってみたらどう?”と言われたことがあって。その時は僕のギタープレイをすごく評価してくださって、インストアルバムがいいんじゃないかという話だったんですけど、僕は楽曲に対して、例えば志村くんやダイちゃん(金澤ダイスケ)が楽曲を作ってきた時に、“こういうメロディーだったら、こういうカラーリングのギターを弾きたい”というように、ある意味カウンター的な考え方をしていたので、ギターのインストで何か表現したいとはまったく思っていなくて。だから、その時は丁重にお断りしたんです。

ということは、その気持ちが変わったのですか?

いえ、バンドに全てを注ぐ気持ちは今も全然変わってはいないんですけど、今回はバンドの未来を見据えるというか、デビュー15周年を経て思うこともありましたしね。2024年には20周年を迎えることも分かっているから、何かフジファブリックの力になれることはないかと考える中で出てきた発想だったんです。だから、個人名義ではあるんですけど、自分を語るアルバムではないんですよ。むしろ、バンドのことを歌にしたいと思って。自分の中にある音楽の引き出しを開けまくって、自分のアルバムだというかたちで何かを表現するものではないし、それでは歌がなかなか生まれない。それよりもバンドのことを歌ったほうが歌を作れるんじゃないかと思っていたので、山内総一郎という個人の名前でリリースはするんですけど、ソロという感覚ではあまりやっていないです。バンドのひとつのプロジェクトと言うと大袈裟になっちゃいますけど、表現の角度の違いみたいなものととらえているんですよ。

山内さんはソロでいろいろなイベントに出演したり、ライヴをやったりされていますが、それもソロアーティストとしてではなく、さっきおっしゃった表現の角度の違いと考えているのですか?

そうですね。ただ、そういう気持ちでも自分の表現ですから、自分の気持ちは出るものなんです。3月6日に出演させてもらった『J-WAVE TOKYO GUITAR JAMBOREE 2022 supported by 奥村組』で演奏したのは、ほぼフジファブリックの曲のみでしたしね。だから、『歌者 -utamono-』の収録曲はバンドの曲ではなく、山内総一郎として自分の名前を刻んだ歌たちができたという感覚があるんです。そういう歌を作るきっかけとしては“未来を見据えてやってみたらどう?”というスタッフの提案があったからですけど、それにはまず歌がないといけない。僕はバンドに全てを注いでいるし、ギタープレイも歌もフジファブリックに注いでいるので、最初はひとりで曲を作ってもバンドの時と一緒じゃないかと思ったんですよ。でも、“個人の名前でバンドのことを歌えるというのはなかなかないことかもしれない”と考えたところから歌が生まれてきたんです。

スタッフからの提案はインストアルバムとか歌モノのアルバムなどの限定的なものではなかったのですか?

正直言って最初はソロアルバムを作るつもりはなかったんですけど、バンドの未来を見据えた時に何が必要かを考えてみたら、歌唱力も含めて伝える力を自分自身にもつけたいと思って。もちろん普段から発声にしても、ギターの運指にしても、練習はしていますけど…そういう意味でも今作の制作はいい経験になるんじゃないかっていう提案だったと思うんです。ただ、バンドマンがソロアルバムを出すって一大事じゃないですか。バンドを信じてくれている人たちに“裏切るの⁉”という気持ちをさせることになりかねない。それだったらやりたくないと思いました。そんな想いをさせるんだったらやらないほうがいいと思っていたので、バンドのことを歌うとか、自分がバンドマンとして歌える歌ができるまでは作ろうという気持にはなかなかなれなかったところはありましたね。

では、アカペラの「Introduction」と「Interlude」を含めた今回の10曲は、ソロアルバムを作るために作った曲ではなくて普段から作り溜めてきた曲から選んだのですか?

いえ。それをやっちゃうとフジファブリックと同じ作り方になって、聴く方を混乱させると思ったので、作り方のプロセスから変えました。7曲でアレンジャーの方に参加していただいているのもそのひとつなんです。ほぼ全曲になりますが、楽曲はまずピアノの弾き語りから作りました。そこがバンドの時とは全然違ったのと、歌詞がある8曲はそれぞれにちゃんと魂を込めた歌を歌わないといけないと思って。過去を振り返る内容の歌も含めですけど、今現在、東京に暮らしている8人の物語をプロットから書いていったんです。これは裏テーマ的なことになりますが、住んでいる場所、仕事、年齢、性別とか、主人公が普段どんなふうに過ごしているのか…みたいなことを具体的に書いていって、そこからその人の魂を歌に込めるにはどこを切り取るかもしっかりと考えて生まれてきた歌たちなんですね。そういったプロセスなので、歌そのものを聴いていただきたいです。

歌詞を書くにあたって一曲一曲をプロットから作っていっただけあって、情景描写を含めたストーリーテリングはこれまで以上に意識されたことがうかがえます。

そういう意味では四季も表現したいと思ったので、花に例えてみたりもしました。それぞれの楽曲でやっているんですけど、例えば「地下鉄のフリージア」のように直接的な言葉で言っているものもあれば、「大人になっていくのだろう」の《同じ話咲かせよう》とか、「青春の響きたち」の《君への言葉が咲いた》とか、「あとがき」の《二人育てた花が》とかね。

なるほど。

そうなんです(笑)。「歌にならない」の《傘が消えた》も咲いていた傘が消えた気持ちで書いているんですけど、季節を意識する中でそういうことをやってみたいと思ったんです。それが情景描写につながったのかな? うん、確かに意識したかもしれないですね。

また、ピアノの弾き語りから作ったせいか、ギターはそんなに鳴っていないですね。

そうですね。アコギに加えてエレキも弾いていますけど、歌に寄せるために印象的なギターソロみたいなものはあえて入れていないですね。

ギターソロは「白」と「青春の響きたち」の2曲のみでしたね。「白」は《「ギターを弾いて欲しいんです」》という歌詞があるから弾かないわけにはいかなかったんじゃないかと思うのですが、2曲ともに歌詞のストーリー的にギターソロが必要だったのかなと聴きながら想像したのですが。

今回は作りながら“そうか! 自分はこう思っていたのか!?”と発見したのが、しゃべるみたいに弾きたいギターがあって、そういうギターみたいに歌いたい歌があるんだけど、それってすごいループだってことだったんですよ。自分はギターみたいに歌いたいと思っているところもあると気づいたけど、もはや自分のヴォーカルとギターというものが一緒になっていて…もちろん音色は違うんですけどね。アルバムを作りながらそれに気づいた時は、だいぶ嬉しさもあって。ただ、僕は肉体的にも精神的にもギターを持っていたほうがめちゃめちゃ安定するので、ずっとギターを持って弾いていますけど(笑)。表現としてはギターと歌がひとつになってきたので、今回はギターのサウンドということよりも歌に集中して、ギターのあるなしに関しては全然気を配っていなかったかもしれないですね。

今回は百田留衣さん、mabanuaさん、桑田健吾さん、川口大輔さん、FANNELEさんという5人のアレンジャーを立てていますが、その人選はどんなふうに?

アレンジャーのみならず、ミュージシャンも僕のことを本当によく知ってくださっている方々なんです。留衣くんは地元の先輩ですし、桑田健吾は今回初めて一緒にやりますけど、弟の友達で(笑)。

えぇ! そうなんですか!?

僕が中学生の頃、彼は小学生だったんですけど、ずっと家におったんです(笑)。僕は兄として、それなりに威圧感のある態度をとっていたらしいですけど、彼が高校生になって音楽を始めてからは弟の部屋で漏れ聴こえてくる音を聴いたりしていて。逆に“これ、聴けよ”という意味でRadioheadのアルバム『KID A』の音を僕の部屋から漏れさせたりしていたので、ふたりに影響を与えていたっぽいです(笑)。ミュージシャンで言えば、「風を切る」でベースを弾いている“スナパン”こと砂山淳一は、僕が音楽を始めた時に一緒にやっていたメンバーですし、ストリングスの内田麒麟もそうです。前々から知っていたけど、すごく仲良くなった人で言うと、mabaちゃん(mabanuaの愛称)とか。あと、「白」で参加してくれた河村カースケ智康さんとか、「風を切る」の東京事変のとしちゃん(刄田綴色の愛称)とか、「青春の響きたち」ではフジファブリックでドラムを叩いてくれた伊藤大地くんにもお願いしています。僕はフジファブリックで表現できなかったことがあるとは思っていないんですよ。だって、素晴らしい人たちに支えられてきたんですから。だから、今回はその方たちに引き続きお願いしたという感覚です。
山内総一郎
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OKMusic編集部

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