古市コータロー

古市コータロー

【古市コータロー インタビュー】
“あいつ、最近やさしいよね”って
言われるようなアルバムになった

アルバムの始まりを告げる1曲目の最初の音が鳴った瞬間から、スッと自然に導かれていく。そして、包み込むようなやさしさ、心地良い温かさ、味わい深いほろ苦さ、静かに心に触れる切なさが、その声と言葉から丁寧に伝わってくる。『Yesterday, Today&Tomorrow』は、古市コータローの円熟したナチュラルな姿そのものの作品集だ。

曲も詞も歌も
2022年の自分の素って感じ

ソロデビュー30周年を迎えられましたが、その歩みをどう感じられていますか?

30年前の最初のアルバム(1992年7月発表の『The many moods of KOTARO』)は、今だからぶっちゃけて言いますと、レコード会社の企画だったんです。プロモーションの一環と言いますか。

そうだったんですね!? では、その企画から、ご自身の意思で作品を重ねていくようになったきっかけは何だったんでしょう?

最初の企画作品はとても大事な、好きな作品なんですけど、今思うと振りきれなかったところがちょっとあったんです。なので、2ndの『MOUNTAIN TOP』(1995年11月発表)でロックをやりきるようなものを作ったんですよ。そこで、まぁ、完結していたんですね。ところが、50歳の時に3rdの『Heartbreaker』(2014年11月発表)を作りまして、そこから気分が変わりました。あのアルバムを出して、同時に弾き語りのツアーも始めたんですよ。そうしたらバンドでやっているのとは違う味わいが出てきまして、それを大事にしていこうと思ったんです。で、せっかくそこで立ち上げたものを中途半端なところで放り出すのはやめようと。そんな気持ちでいますね。ただ今回のアルバムは、3月という早い時期のリリースになるとは思っていなくて。昨年の8月にこの話が出てきて、そこから焦って曲作りに入ったんですよ。でも、それが良かったですね、今回は。

前作『東京』(2019年3月発表)はさまざまな作家の方が描いた古市コータロー像を歌われていましたけど、今作は共作を含めて6作の歌詞をご自身で書かれていますね。

そういう気分になったんでしょうね。“自分でやるか!”みたいな。でも、誰かが作ってくれたものを演じるのも好きですから、多少はそういう曲もやりたいんですよ。今回、その辺のバランスは良かったかな?

昨年の8月からアルバム制作に向けての制作過程は、どのような流れだったのでしょうか?

話をもらったその日から曲作りに入りました。プロデューサーの浅田信一くんがいますから、書いた曲が全部OKになるわけではないので、一曲ずつ作ってその中から選んでいきましたね。前作はシティポップをコンセプトにしていましたが、今回はそういうのは一切なくて、“今の素直な気持ち”という感じだったので、もう気の向くままに作っていました。だから、“今、自分は何を感じているんだろう?”というのが曲を作ってみて分かったりもして、自分でも面白かったです。“こういう曲を作ろう”とか、あまり思わないものですから。

収録された楽曲で、一番最初に生まれたのはどれだったのでしょうか?

浅田くんの曲も入れて考えるとですね…今回のアルバムを出すことが決まった際、まずジャケットを海で撮りたいと思ったんです。で、なんとなく海のジャケットをイメージしている時に、1曲目は絶対にスローなバラードでいきたいと思って、浅田くんに“バラードを書いて”と依頼しまして。なので、「Yesterday, Today&Tomorrow」が一番最初にできた曲ですね。で、次にできたのが「Fall in Love Again」。僕が作って、その完成形を浅田くんに送ったら、“これ、共作にしてAメロを書き換えていいですか?”と言うので、“アイディアがあるならそうしよう”と。

この2曲はアダルティー…いわゆる品のあるポップスで。

そうだと思います。「Fall in Love Again」は野口五郎さんの「グッド・ラック」を意識したんです(笑)。アレンジを打ち込みにして、70年代のソウル的な雰囲気が出せたらいいなって感じで詰めていきました。

「Yesterday, Today&Tomorrow」の持つ軽やかさや愛しいタッチ、温かみは、浅田さんの詞曲だけでなく、コータローさんの声にもすごく表れていて。

いい歳になってきて、あんまツッパってもいられない感じなんですね。たぶん自然なことだったと思うんですけど。だんだん丸くなってきた…という言い方はあまり好きじゃないですが、この歳になって人間ができ始めたのかなって感じです。

やわらかな円熟味…みたいな?

あぁ、今おっしゃってもらったようなものが出るといいなと思って歌っていましたね。うん。

ステージでの硬派でワイルドなイメージとは違って、今作は特に内面から滲み出てくる人間性みたいなものが表れている気がします。

THE COLLECTORSでギタリストに徹している時は、やっぱりモードが違うんですよね。ひとりの古市コータローっていうミュージシャンなんですけど、ギターを弾いている時はちょっと攻撃的だったり、“なんだよ、クソ野郎!”みたいな気持ちもあって(笑)。でも、歌っているソロに関しては、もっと歳相応な感じが出ればいいと思っているし、今の歳なりのやさしさだったり…“やさしさ”っていう言葉が一番かな? そう思ってやっていましたね。歌詞はほとんど飲み屋で書いたと思う。“思いつくままに書いて、あとで整理すればいいいや”って。

飲み屋で書くと内面がすごく出そう。

普段だったら我慢しちゃうところも出るからいいんですよね。それを翌日に見て“あー、やりすぎた”って消すか消さないかが大事。

でも、“ちょっとやりすぎたかな?”くらいのところが良かったりもするんでしょうね。

そうなんですよ! “恥ずかしいけどいいや”みたいなところはありましたね。

そこは本当に素直に素なままで。

まさしくそんな感じです。“素のままで”というのがぴったりな…2022年の自分の素って感じなんですよ、曲も詞も歌も。
古市コータロー
アルバム『Yesterday, Today&Tomorrow』

OKMusic編集部

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