見逃し厳禁、3月に観られる関西+広
島アート展覧会8選ーー中国古代から
『東京卍リベンジャーズ』原画展情報
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春の気配が近づいてきて、外に出かけたくなっている読者の方も多いのではないだろうか。そんな時こそ美術館やギャラリーに足を運んでほしい。というのも、3月からは意外にも「あれもこれも入れたい」と絞りきれないほど、多くの展覧会が開催されていく「アート情報飽和」状態が続くからだ。今月は関西から広島まで範囲を広げ、この3月に西日本で開催中のものから、気になる展覧会を過去最多の8つピックアップ。漫画やイラストの原画展から古代中国文化まで、バラエティ豊かなラインナップなので、興味のあるものをチェックしてみよう。
「ワタシの迷宮劇場」シリーズより 1984‒ (c)Yasumasa Morimura
●現代から中国古代までアート展覧会4選●
京都市京セラ美術館開館1周年記念展『森村泰昌:ワタシの迷宮劇場』/京都市京セラ美術館​
京都市京セラ美術館の開館1周年記念展のひとつとして、3月12日(土)から6月5日(日)まで開催されるのは、現代美術家・森村泰昌の大規模個展。
「ワタシの迷宮劇場」シリーズより 1984‒ (c)Yasumasa Morimura
名画の登場人物や歴史上の人物、女優などに扮してセルフポートレートを制作し続けてきた森村泰昌。性別や年齢、人種を超えて作品の中に入り込み、何者かになり変わることで自己を解体、個人のアイデンティティの多面性を視覚化した彼の表現は、スマホやSNSの普及で身近になった私たちが行う「自撮り」にどこか通ずるものがある。多様な生のあり方を認め合おうとする現代人の姿と重なる部分、異なる部分を作品から感じとってほしい。
見どころは、これまでほとんど発表されることのなかった、1985年から撮りためている秘蔵のインスタント写真約800枚。これらはアトリエなど森村の私的空間で撮られる儀式の痕跡のようなもの。膨大な写真群からは、35年にも及ぶ作品制作のバックグラウンドの全貌を伺うことができる。
「ワタシの迷宮劇場」シリーズより 1984‒ (c)Yasumasa Morimura
また、1994年に森村が自作の小説を自ら朗読したCD「顔」の音源をもとに、展示室にしつらえた特設の音響空間で、無人朗読劇「影の顔の声」を再制作。近年は精力的に舞台に取り組んでいる森村が、セルフポートレートとしての「声」の空間を立ち上げる。
会場構成は、建築家である西澤徹夫と森村のコラボレーションによるもの。京都市京セラ美術館のリニューアルプロジェクトを手がけ、本館の建築空間を知り尽くした西澤と森村とのコラボは、新館東山キューブを「迷宮劇場」へと変貌。京都においては1998年以来の大規模な個展。展示空間そのものにも注目だ。
『日中国交正常化50周年記念 兵馬俑と古代中国~秦漢文明の遺産~』/京都市京セラ美術館
『日中国交正常化50周年記念 兵馬俑と古代中国~秦漢文明の遺産~』
3月25日(金)〜5月22日(日)に同じく京都市京セラ美術館にて開催されるのは、『兵馬俑と古代中国~秦漢文明の遺産~』。今年、1972年の日中国交正常化から50周年を迎えることを記念して行われるもので、中国史上初めて統一帝国を打ち立てた、秦の始皇帝の陵墓などから出土した「兵馬俑」が来日する。
兵馬俑坑
兵馬俑とは、古代中国で死者を埋葬する際に副葬された俑(人形)のこと。1974年、中国のりんご畑で井戸を掘っていた農民が偶然発見、2000年以上前に作られた実物大の兵士や馬の陶器が大量に出土した。同展では、黄金時代だった秦漢両王朝の中心地域である関中(現在の陝西省)の出土品を中心に、日本初出品の「一級文物(国宝級を指す中国国内の区分)」を含めた約200点をダイナミックに展示する。
「戦服将軍俑」 統一秦 秦始皇帝陵博物院 一級文物
見どころは、世界的に有名な始皇帝の遺物をはじめ、戦国、漢時代を含めた総計36体の兵馬俑が一堂に会すること。しかも、11体しか確認されていない希少な「将軍俑」のうち、日本初公開となる1体を展示。高さ196cmの大きさで、同じ顔はひとつとしてないという、個性的な姿をじっくり観察できる。
「鎏金青銅馬」 前漢 茂陵博物館 一級文物
また、漢の武帝の墓から出土した秘宝「鎏金青銅馬」も36年ぶりに日本で展示される。ほかにも、戦国時代には極小だった騎馬俑が、始皇帝陵では等身大の兵馬俑となり、漢代皇帝陵では再び小さな兵馬俑に変化した歴史の謎を実際の遺物から紐解いたり、紀元前770年の周王朝遷都から220年の漢王朝崩壊までの、1,000年に渡る中国の歴史資料を展示する。国宝級から最新の発掘調査による出土品まで、日本初公開を含む貴重な文物が目の前で観れる貴重なチャンスだ。
「騎馬俑」 戦国秦 咸陽市文物考古研究所 一級文物
また、人気漫画『キングダム』を通して、時代背景を伝える特設展示コーナーも登場する。音声ガイドは、同作にも呉鳳明で出演した声優の浪川大輔が担当(貸出料金600円)。中国の壮大な歴史ロマンを感じてほしい。

『安野光雅 追悼展 安野先生のふしぎな学校 安野光雅美術館コレクション』/美術館「えき」KYOTO
3月27日(日)まで美術館「えき」KYOTOにて開催中の、『安野光雅 追悼展 安野先生のふしぎな学校 安野光雅美術館コレクション』もオススメしたい。
1926年島根県津和野町に生まれ、2020年12月24日に94歳でこの世を去った画家、安野光雅。幼少期より絵を描くことが大好きで画家になることを夢見ていた彼は、戦後、小学校の教員になったが、教科書が十分になかったため教える内容や方法を自身で考えていたそう。上京後は小学校の美術教師として働きながら、本の装丁や挿絵なども手がけ、活躍の場を広げていく。『もりのえほん』や『天動説の絵本』をはじめ、彼の作品に見られる独特な世界観は、幼少時代に親しんだ自然や、教員時代に試行錯誤した経験によって生み出された。
同展は、文字や数字、風景まで安野流の楽しみ方が詰まった作品を「こくご」「さんすう」といった授業の科目に見立てて展示。「安野先生」の学校に入学した気分で、様々な不思議を感じ、考えながら楽しめる展覧会となっている。
『ミニマル/コンセプチュアル:ドロテ&コンラート・フィッシャーと1960-70年代美術』/兵庫県立美術館
ドロテ・フィッシャーとコンラート・フィッシャー(1969年) Photo: Gerhard Richter
兵庫県立美術館にて3月26日(土)から5月29日(日)まで開催されるのは、『ミニマル/コンセプチュアル:ドロテ&コンラート・フィッシャーと1960-70年代美術』。20世紀後半のアートに決定的な変革をもたらした、1960〜70年代の「ミニマル・アート」と「コンセプチュアル・アート」を、主要作品によって振り返る展覧会。
同時代の実験的な作品を紹介したとして、伝説的なギャラリーとして語り継がれるフィッシャー・ギャラリー。ギャラリーを立ち上げたドロテ&コンラート・フィッシャー夫妻が所蔵していた書簡や制作指示書などの貴重な作品と資料によって、ミニマル・アートとコンセプチュアル・アートの作品制作のプロセスを紐解いてゆく。
ソル・ルウィット「ストラクチャー(正方形として1、2、3、4、5)」1978-80年 滋賀県立美術館   (c)2021 The LeWitt Estate
また9つのセクションで、カール・アンドレとダン・フレイヴィン、ソル・ルウィット、河原温、ゲルハルト・リヒターなどの作家の主要作品を通じて、ふたつの芸術動向を振り返る。シンプルな作品やコンセプトの強い作品が好きな人にはおすすめだ。

●漫画やイラストの原画展4選●
『キューヴル美術館』/心斎橋PARCO 14F・PARCO GALLERY​
『キューヴル美術館』
3月4日(金)から3月27日(日)まで、心斎橋PARCO 14F・PARCO GALLERYにて開催されるのは、漫画家キューライスの作品を美術館風に展示した展覧会『キューヴル美術館』。どこかシュールでゆるっとした独特のキャラクターたちが、油絵や立像といった重厚な表現で展示される。
『キューヴル美術館』
同展では、過去の人気作品から新作まで約200点の原画を展示するほか、「スキウサギ」や「スキネズミ」、「悲熊」など、今回初展示となる人気キャラクターたちの立像、キューライスが同展のために2021年のひと夏を使いきって描き上げた渾身の油絵、 ステンドグラス風の描き下ろし作品などの特別展示が行われる。
『キューヴル美術館』
また会場内のショップでは、新作書籍『キューライスのシンデレラ』や会場限定ミニサイズ原画、油絵作品を用いたキャンバスアートなどをはじめ、 描き下ろし作品をモチーフにした展覧会記念グッズなど、 多数のグッズが販売される。さらに、来場時には展覧会限定の「オリジナルチケットホルダー」がプレゼント(有料入場者限定1回の入場につき、1人1枚)されるという嬉しい特典も。キューライスの世界観が、「美術館風」になるとどうなってしまうのか、その目で目撃してほしい。
『びじゅチューン!EXPO ~ときめき立体ミュージアム~ リターンズ』/グランフロント大阪
びじゅチューン!EXPO ~ときめき立体ミュージアム~ リターンズ
昨年4月、グランフロント大阪で開催されたものの、コロナウイルスの影響でほとんどの会期が休止になった『びじゅチューン!EXPO』が、『びじゅチューン!EXPO ~ときめき立体ミュージアム~ リターンズ』となって帰ってきた。2022年3月5日(土)から、前回と同じくグランフロント大阪 北館 ナレッジキャピタル イベントラボにて開催される。
世界の「びじゅつ」を歌とアニメで紹介するNHK Eテレの人気番組『びじゅチューン!』。アーティストの井上涼が、作詞、作曲、歌、アニメーション制作の全てを手がけ、2013年の放送開始以降、100を超える作品が放送されてきた。シュールでチャーミングなキャラクターたち、耳に残って離れない楽曲が魅力で、幼稚園児から大人まで夢中になる人が続出。
展示会場は、大型の立体模型や映像を駆使して、様々な作品のキャラクターのブースがひしめきあい、賑やかなお祭り空間になっている。世界中の「びじゅつ」を楽しみ、遊び、体験しながら、美術作品そのものへの興味も掻き立てられる展示が盛りだくさんだ。
「ダンス寿司」(アンリ・マティス 「ダンスII」)
今回の新作展示となる「ダンス寿司」をモチーフにしたコーナーでは、アンリ・マティスの「ダンスII」を題材にしたもの。頭の上に回転寿司を乗せたダンサーたちの一員になって、ダンスの輪に参加できるフォトスポットが登場。前回に引き続き「風神雷神図屏風デート」や「曜変天目ディスコ」などの人気作品も登場する。
「曜変天目ディスコ」(「曜変天目茶碗」、国宝)
そして大人気のワークショップコーナーには「書記に必要なギャルの精神」が新たに追加。「書記座像」にちなんだエジプトの古代文字ヒエログリフで、名前入りのオリジナルカードを作成できる。また「アニメーションの作り方」の解説、井上涼の絵コンテや原画、スケッチの複製、展覧会限定映像など、ファン垂涎の内容が用意されている。1人でも大人数でも楽しめる、クスッと笑える魅惑の展示をぜひ味わってほしい。

「書記に必要なギャルの精神」(「書記座像」)と井上涼
『東京卍リベンジャーズ』原画展『TOKYO 卍 REVENGERS EXHIBITION』/大阪南港ATC Gallery

『TOKYO 卍 REVENGERS EXHIBITION』
2017年より『週刊少年マガジン』で連載開始、累計5,000万部を突破した大人気漫画『東京卍リベンジャーズ』。2021年4月からテレビアニメが放送開始、2021年7月には実写映画も公開されるなど、世間を震わせる話題作だ。
そんな『東京卍リベンジャーズ』のエンタメメディアを横断する「原作コミック✕TVアニメ✕実写映画」のハイブリッドな原画展が、1月〜2月の東京展を経て、いよいよ大阪に上陸。大阪南港ATC Galleryにて、3月19日(土)から3月27日(日)まで開催される。原作者、和久井健の貴重な原画展示を軸に『東京卍リベンジャーズ』の世界を体感できる、様々な展示内容が予定されている。
入場特典として、特典ステッカー(全6種からランダムで1種)を入場時に会場入口にて配布されたり、アニメイト梅田ではグッズのサテライト販売も行われる。まさにファン必見、待望の原画展。チケットは忘れずにゲットしよう。
『こぐまちゃんとしろくまちゃん 絵本作家・わかやまけんの世界』/ひろしま美術館
『しろくまちゃんのほっとけーき』(こぐま社)より  (c)わかやまけん
ひろしま美術館で2022年3月19日(土)から5月15日(日)まで開催されるのは、『こぐまちゃんとしろくまちゃん 絵本作家・わかやまけんの世界』。わかやまけん(若山憲)の創作の全貌を辿る、初めての展覧会だ。
『こぐまちゃんえほん』下絵 1970年/こぐま社蔵
半世紀にわたり世代を超えて読み継がれ、累計発行部数が1,000万部を超えるロングセラー絵本『こぐまちゃんえほん』シリーズ。同展では、『こぐまちゃんえほん』の秘密を、色や形、言葉の視点から大解剖。『こぐまちゃんおはよう』『しろくまちゃんのほっとけーき』など、初公開を含むリトグラフを一挙に公開する。
また、若山の代表作である『きつねやまのよめいり』『おばけのどろんどろん』シリーズなど、約30冊の絵本の原画や、制作の過程で刷られたリトグラフも展示。雑誌の表紙原画や貴重な資料など、約230点に及ぶ展示物を通して、彼の幅広い表現活動に触れることができる。

春になり、多くの展覧会が開催されはじめた。その他にも、SPICEでも取材を行った3月11日(金)から大丸梅田13階にて『QUEEN50周年展 - DON'T STOP ME NOW -』がスタート。同じくSPICEにてレポートを掲載している『挑む浮世絵 国芳から芳年へ』が京都文化博物館で4月10日(日)まで開催中など、まだまだ見逃せない展覧会がある。ぜひ時間を作って足を運び、新しい刺激や感動に触れてほしい。
文=ERI KUBOTA

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